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CA1775「大学図書館のサービスとしての文献管理ツール」を書きました

日常

2012年9月に刊行された季刊誌『カレントアウェアネス』313号に「大学図書館のサービスとしての文献管理ツール」という記事を書きました.ブクマもたくさんいただいてありがたいです.

論文でも口頭発表でもなんでもいいので,仕事しながら年に1本くらいはまとまったアウトプットをしたいと思っていて,昨年はCode4Lib Journal京都図書館情報学学習会でしたが,今年はこれに.その前の年だと「ILL in 90 minites」になるのかな.



この記事では,文献管理ツールについてよく知らない方や文献管理ツールを導入しようとしている大学図書館員を想定読者として,

  • 文献管理ツールの基本的機能
  • 現在国内でメジャーなEndNote (Web),RefWorks,Mendeleyの紹介
  • 大学図書館が文献管理ツールをサービスのなかにどう位置づけているか

といったトピックについて紹介しています.

お読みいただいたら分かるとおり,特に新奇な視点を提示しているわけではなく,文献にもとづいて現時点での状況を整理・俯瞰したというだけのものです.ただ,単なるツールや機能の紹介であればウェブ上にたっぷり存在しているので,それらとの差別化は当初から念頭に置いていました.今回は「なぜ大学図書館が文献管理ツールと関わるのか?」や「大学図書館は文献管理ツールにどのように関われるのか?」といったテーマを意識しています.

僕は(大学図書館勤務時も含めて)これまで文献管理ツールの契約・導入や利用支援などにほとんど関わったことがないので,実務を知らないものがこういった解説めいたものを書くという点に対して引け目を感じています.偉そうなこと書いてんじゃねえよと思われたら申し訳ないです.ただ,その分,国内外問わず多くの雑誌記事や論文,ウェブ上の情報源に目を通すことで読む価値のあるものにしようと努めました.その結果,4,000字程度の記事にえらい大量の註がつくことに…….なお,こんなができるのもオフィスには図書館情報学領域の(特に和)雑誌の主要タイトルが過去数年にわたるバックナンバーとともに揃えられているというありがたい環境にあるからで,そうじゃなかったら僕のような不精な人間はこんなに読まなかったとは思うのですけどね.この点についてはありがたい環境だなぁと改めて.



参考までに執筆スケジュールを紹介します.全部で4回手直ししました.正直なところ,他の原稿に比べて突っ込みは厳しくなかったなという感じです(参考:simpleA記).校正に携わった方々,特に編集主担当のKさんには大変お世話になりました.おつかれさまでしたというか,いつもおつかれさまです.

  • 2012/4初旬 執筆が決定→プロット作成と文献検索だけ軽くしておく
  • 2012/6中旬~ 執筆
  • 2012/7/2 締切(に提出)
  • 2012/7/13 第1回目修正
  • 2012/7/30 同終了
  • 2012/7/31 第2回目修正
  • 2012/8/8 同終了
  • 2012/8/13 第3回目修正
  • 2012/8/20 同終了
  • 2012/8/21 入稿用原稿完成
  • 2012/8/29 ゲラ到着→校正
  • 2012/9/26 プリント版拝受
  • 2012/9/27 ウェブ版公開



今回,文献管理ツールに関する英語文献もあれこれチェックしたのですが,ツールの紹介や機能比較は多いものの,その図書館における意義について検討している文献は少なかったというのが実感です.ある研究論文の先行文献レビューでもそのようなことが書かかれていたので,どうやら僕だけの印象ではなさそうです.日本語文献で一番参考になったのは『医学図書館』に載った北川さんの「文献管理ソフトEndNoteおよびEndNote Webの講習会開催事例」という記事でした.さすが,と思いながら執筆中に数回読み直しました.この文献がなかったら今回の原稿はまた違ったかたちになっていたかもと思います.




【追記】id:xiaodong がさっそく「文献管理ツールを超えたMendeley―機関内の研究支援プラットフォームとしての可能性」という記事を書いてくれました.何かしらリアクションがいただけるのはありがたいです.

これを読んでいて気になったのは次の2点です.

ひとつは,Mendeley Research Catalogにメタデータが登録されるための条件がよく分からないこと.このデータベースに収録されてないものを自分のライブラリに登録しても反映されるわけではないような(誤解かも)……どういう基準で作られているデータベースなんでしょう.今後,Mendeleyがもっと“shared catalog”としての役割を全面に出してきたら面白いなとか考えます.

もうひとつは「妄想」として述べられている著者版収集というアイディア関して.うまく言葉にできないけどすっきりしない感じが残りました.著者版収集っていつまで続く仕事なんだろう? そもそもMendeleyが分野横断的なプレプリントサーバやセルフアーカイブプラットフォームになったときに,機関リポジトリの著者版提供機能に意味はあるんだろうか?とか(まぁ,永続性という話に落ち着くのかもしれませんが).

いずれにせよ,研究者がホームとして用いる“研究プラットフォーム”になる可能性を秘めているのがMendeleyの興味深いところだという点には同意します.CEOのVictor Henningの書いた「研究者コミュニケーションを根本から変える文書管理の変革 : Mendeley CEOが語る学術情報流通の将来」はとても夢があり,刺激的でした.

今回の原稿のタイトルを考えていた際,候補のひとつに「統合研究環境(Integrated Research Environment)としての文献管理ツール」というのがあったのを思い出しました.プログラミングでいう統合開発環境(IDE)をもじったものです.このテーマだと根拠の薄いアイディアベースの内容になってしまいそうだし,どうしてもMendeleyに偏ってしまうので却下したのですが.