カレントアウェアネス-E No.238感想

前号に続き感想をば(というか前号の感想以来ブログを書いてないのか……).



E1434 - 図書館の現場につなぐ(3):明治大学図書館情報学研究会

MULU,同志社大学につづくシリーズ第三弾は明治大学(これでラスト?).Facebookページを作成してることくらいしか知りませんでした.この研究会は,明治大学の司書課程によって2009年に誕生し,月一回の勉強会,年一回のシンポジウム,年二回の例会を開いているということです.今回の執筆者3名が教員だったので,教員主導の取り組みなんだろうなぁ.最後らへんに「研究会は創設5年目と日が浅いこともあり,その活動が学生や卒業生に周知されているとは言えない」とあるように,まだまだ発展の余地がありそう.でも丁寧な就職指導が受けられそうな,贅沢な環境という印象を受けました.記事には「研究会の会員は,本学の卒業生と司書講習修了者であり」と書いてありましたが,規約の第4条によると夏期司書講習の修了者もOKみたいですね.こういう“+α”は司書講習を受ける大学を選ぶときの理由のひとつになりうるんじゃないでしょうか.//僕が司書資格を取ったのは愛知学院大学(2005年度)の司書講習ですが,そんなサービスなかったよなたぶん…….



E1435 - 図書館でデジタル古典・古代史研究を―米デューク大の取組み

菊池さんのデジタル人文学もの.デューク大学古典学・歴史学部の准教授が図書館にも籍を置くという「学部と兼任で図書館にも籍を得るという極めてユニークな取組み」で「図書館員はこれまで学内の様々な学部に“エンベッド”されてきたが,教員が図書館の中に“エンベッド”されるということはこれまでなかった」と.どうなんだろう.珍しいのかな.例えば,日本の国立大学附属図書館のなかには研究開発室を設置して,そこに兼任教員が配置されていることがありますが,そういうのとはどう違うんだろう? DC3というチームの他の2名のメンバーは教員なのかなというのと,テキストエンジニアリングってなんだろうというのが気になりました.



E1436 - 台湾国家図書館が開館80周年―新たなステージへ

アジア情報課の齊藤さん.台湾国家図書館の概要がコンパクトにまとめられていて辞書的に使えそうな記事.この図書館はちょっとだけプライベートで行ったことがあります(時間がなかったのでゲートの中には入らず)が,1933年の設置当初は南京にあったんですねえ.行政院教育部に直属,と.国会サービスについては記事中で触れられていませんでしたが,同館が担っているのかな.しかし80周年記念サイトの右下におわしますキラキラ眼のキャラクターはいったい…….



E1437 - 政府情報のオープンデータ化に関する大統領令制定(米国)

依田さんの政府の透明性シリーズ(そんなのあるのか).ポイント押さえてうまくまとめられていて読みやすかったんですが,覚書の内容にもっと踏み込めたんじゃないかという疑念がつい頭に……w.「2つ目には,“Project Open Data”を,ソースコードのバージョン管理ツールGitHub上に開始することが盛り込まれている。コードやチェックリスト等の各種のツールやベストプラクティス等を共有」と,GitHubを使うというのがすげえなと.Data.govについてはむかし「停止?」なんていうネタも流れてましたけど,これを見るかぎりでは過去の話と思っていいのかしら.



E1438 - 地域の自立的発展のための“図書館”を作るREAD Global

農村とか書いてあるだけで依田さんかと思うけど,安原さん.「READセンターを長期にわたって継続させる資金を生み出すため,READは地域社会とともに営利目的の事業の基盤を築く活動をしている」というところがとてもおもしろかった.“図書館”を維持するために,別の営利事業を行ってるということですよね.なんかピンと来たけどうまく言えない.けどおもしろい.READ Globalの活動範囲はネパール,ブータン,インドということで,シャンティ国際ボランティア会とはかぶってないんだ.



E1439 - トリニティ・カレッジ・ダブリン図書館の300年<文献紹介>

今回いちばんおもしろかった.トリニティ・カレッジ・ダブリンに留学中の矢谷舞さん(またすごそうな方を引っ張ってきたなあ……).300周年を記念して出版された480ページの論文集の紹介で,50本の論文のなかから3本をつまみ読みさせてくれる.1つ目の論文は建築の話で,「納本図書館に必要な規模の蔵書・閲覧スペースの確保は図書館にとってだけでなく,大学全体にとっての懸案事項でもあり続けてきた。図書館の増築とそれに伴う古い建築の再利用を繰り返しながら大学が発展してきたという点から見れば,いわばこの図書館の歴史はトリニティ・カレッジ・ダブリンの歴史そのもの」とか,2つ目は18世紀の貸出記録の話で,「貸出記録から(1)学生がどのような本を読んでいたか,だけでなく(2)学生の読書傾向が年々どのように発展したか,(3)教師が学生に対してどのような教科書を指示していたか,(4)大学では何がどのように教えられていたか,を明らかにすることができる」とか,おもしろい.ラストに,

大学図書館の歴史についての研究文献や記念論文集は従来も多く出版されてきたが,その領域横断性・学際性において本書は類を見ないだけでなく,新たな研究法や技術の利用,アプローチの角度についても図書館史研究に示唆を与えうるものである。本書が良い「着火剤」となり,後に続く研究がより一層実り多いものとなることが大いに期待される。

とあるように,紹介されている書籍は図書館史モノなわけで,それを史学者が読んで解説してくれてるというのがこの記事の魅力だなぁと.というか id:negadaikon さん頑張れ.

なお,お名前でググってみたらこんな楽しげなレポートも見つけました.



そんな感じです.次は6月20日ですね.