カレントアウェアネス-E No.246感想

# 夏休み3日目.関空→仙台→東京と移動して,今日は明治大学米沢嘉博記念図書館でガンスリ展を見てきました.仙台に戻りたいです.@上野桜木



今回は6本中,外部原稿が5本.菊池さんが書いていて,現メンバー3人が誰も書いていないというのが異動シーズンという感じ.以下,旅先なので十分に書けてなくてすみません…….



E1484 - 多様な図書館と人をつなぐ「はこだてLL文庫」の試み

函館市内の図書館連携プロジェクト「ライブラリーリンク」と,その展示企画「はこだてLL文庫」の紹介.執筆者ははこだて未来大学の粟谷さんと,函館高専の山本さんです.

この活動についてはうっすらとは認識していたというレベルですが,僕は,はこだてLL文庫よりもライブラリーリンクというプロジェクトのほうに強く興味を持ちました.プロジェクトには公共・大学・短大・高専の図書館が参加しているということですが,サイトを見てみるとロシア極東連邦総合大学という名前も.なんかすげえ(北海道素人).

記事後半の

函館市には比較的小規模な図書館が多いが,それぞれ特徴的な蔵書を有し,全体を合わせると蔵書数は150万冊以上になる。各図書館が連携し,相互に補完することで大規模な総合図書館の役割を果たすことができると考えている。

という記述にプロジェクトの特徴がよくまとめられています.読了後になんとなくウェブサイトの「開館情報」を見てひどく感心してしまいました.正直この手の連携活動ってそれほど珍しくはないと思うんです.でもこのプロジェクトでは,機関や館種を超えた図書館のあいだで,ほんとうにひとつの“まとまり”を作ろうとしているという姿勢がこのページから感じられたんです(大げさ?).

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私事ですが,自分が昔書いたブクログの記事と後輩がこないだ書いた学生協働の記事がひとつの記事で引用されているのにちょっと感じ入ったりもしたり.



E1485 - 図書館の日常業務を小さな工夫から共有する「図書館100連発」

ARG嶋田さん.有名すぎるので僕が何を書いても今更感がただよいますが,以下の部分は何度も読みなおしてしまいました.

この「図書館100連発」の裏では地道な情報収集を行っている。そもそも,ニュースにならないような事例を集めるためには,メディアには頼れない。収集した事例の多くは,実際に数多くの図書館を訪問して見つけたものである。図書館の訪問が目的でない時でも,出張先では必ず近隣の図書館を訪問するようにし,可能であれば写真を撮る。(中略)これを,ARGの筆者と代表の岡本真が年間100館近くを訪問して集めている。文字通り「足で集めた」事例なのである。

というのも,カレントアウェアネス・ポータル(特にカレントアウェアネス-Rかな)は「足は使わない」メディアだからです.編集部のメンバーやそれ以外の方が参加したイベントの報告を書いたりすることはよくありますが,それでも基本的にはウェブという情報収集手段に依存したメディアです.カレントアウェアネス・ポータルのスタイルは,ウェブ上の情報源を参照して「こういうニュースがありました」と紹介するものであり,ウェブでは公開されていないんだけどこういうのをやってるんですというのは取り扱いの対象外になります.

そういう意味で,嶋田さんや岡本さんの「足で集める」という姿勢をとても尊敬しています(自分は出不精だし……).ただ,その一方で,こうやって誰かが「足で集め」なくても,全国各地の図書館がふだんのなにげない取り組みや工夫をばんばんウェブで公開していただけるようになったらとも願うわけです.

ところでトリガー(=このタイミングで記事にするきっかけ)はない記事なのかな?



E1486 - Code4Lib JAPANカンファレンス宮城県南三陸町にて初の開催

江草さん.「全員が同じ場にいて発表を聞き,議論し,情報共有できるようにすべてのセッションはシングルセッションで行なうことが重要だと考えている」になるほど,と.大向さんの「はやい,やすい,うまい」論と,ライトニングトークの選書系のネタ(新さん前田さん)が面白いなあと思いました.

タイトルは「カンファレンス,宮城県」というように点を入れたほうが良かったと思うのだけど…….



E1487 - 紙の本のない公共図書館“BiblioTech”が米国に誕生

所属の変わった菊池さん.ひとまずラスト記事になるのでしょうか.

BiblioTechの竣工費はトヨタの支援を受けていたんですね.背景の,

BiblioTechが全面デジタルなサービスを提供するのにはもう一つ理由がある。同館が設置されたのはヒスパニック系の低所得者層の多い地域であり,その住民の75%はインターネットにアクセスできていない。また,既存の図書館や書店へ行くにも数マイルの距離を移動する必要があり,住民の情報アクセスは困難をきたしていた。そのため,BiblioTechにはインターネットアクセス環境の提供と在宅でも可能な利用形態,すなわち電子書籍の提供が期待されたのである。

になるほど.ウェブサイトを見てみると,OPACはPolarisSaaS版か.平日は正午開館(Noon to 8pm)というのが面白いなあ.

なお,紙の本がない図書館は公共図書館では初とされていますが,他の館種では先行事例があります.大学図書館では,2010年にテキサス大学サンアントニオ校スタンフォード大学が,学校図書館では,2009年にCushing Academy(E1025E1125参照)という.



E1488 - ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2013)

柴田さんのポルトガル出張レポ.iPRESと同時開催ということもあって「メタデータの保存」というテーマも重要であったと.資料保存という文脈では現物やデジタルデータのことばかり意識しちゃうけど,メタデータ(や語彙)のサステナビリティもたしかに問題.

いくらメタデータを充実させても明日にでも消えてしまう恐れがあるならば,逆に,いくら長期間保存できても適切なメタデータが付与されていないために発見する手段がないならば,その情報は利用者にとって意味をなさない。

最優秀プロジェクト報告賞に選ばれた立命館大学の多言語横断検索システムにも興味.検索対象は浮世絵画像データベースということですが,Web NDL AuthoritiesやVIAFといった典拠データを翻訳辞書のように使っているというところが本質的,なのかな.



E1489 - 図書館システムベンダとユーザ会の共存―IGeLU大会<報告>

川島さん.Ex Librisユーザ会(NDLは同社の図書館システムを入れてます)の参加レポ.いいですね,うらやましい.

さすがに専門のテーマでおおおっと驚く情報は少ないのですが,PrimoはiPhoneアプリが開発中なんですね.このネタは今度のプレゼンで入れよう.

検索精度の向上のために,検索ランキングの最適化に取り組んでいるとの報告もあった。ここでは,Known-item(ユーザが何を探したいかはっきりしている資料)の検索の強化として,利用者がキーワードではなくタイトル等を入力したことを察知し,利用者が欲しいと思った資料そのものを検索結果一覧の第一位に表示させるためのアルゴリズムを開発していることが紹介された。

もメモ.レレバンスランキングはまだまだだとちゃんと認識してくれてるという意味で.



これで4本連続でCA関係のエントリしか書いてない…….次回は10月24日.

あ,図書館総合展のCAフォーラムは事前申し込みで定員100名の枠が埋まったそうで.本当にありがとうございます.