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カレントアウェアネス-E No.251感想

CA-E感想

ここのところ立て続けにカレントアウェアネス・ポータルの“オープン化”の流れを象徴するようなお知らせが2つ出てましたね.

2013年は図書館総合展でのフォーラムでメッセージを発したのをきっかけに,こうした外部の力を借りてコンテンツを作っていく(編集部の役割はクオリティチェックによりシフトしていく)という姿勢を強めていった一年だったなあと思います.




さて2013年ラストは,6本中,内部原稿が2本.今回はさらっと感想書きます.



E1515 - 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2013/12/24現在)

12月4日で発災1000日目を迎えたこともあって,マイルストーン的な記録がちらほら.日本アーカイブズ学会および日本物理学会という縁遠そうな二学会による共同声明が出たことと,長らく活動を続けてきた東京文書救援隊(とうぶんきゅー)が活動終了したことが印象強い.

「●イベント・その他」の「その他」が記事の途中出てくるのはちょっと違和感.あと,グッドデザイン賞のところで「金沢大学大学院地震工学科」とある(ソースにもそう書いてある)んだけど,存在しない組織なんじゃないか.「金沢大学大学院自然科学研究科環境デザイン学専攻地震工学研究室」が正式な名称なのかな.





E1516 - CCライセンスが6年振りに改定,4.0版に

南さん,なので安心して読んでしまう.分かりやすくまとめてありましたが,

●原著作者名の非表示要求を認める範囲の拡大

これまでは,二次創作物の場合にしか認められなかった,原著作者がその氏名をコンテンツに表示しないことの要求につき,単なる複製の場合にも認めることとした。

という箇所だけ飲み込めず.どういうシーンで必要なのかうまく想像できない.表示要求ではなく非表示要求ということですよね…….





E1517 - 図書館データとWikipediaをつなぐVIAFbot

OCLCカナダの石橋さん(どういう経緯でOCLCで働いてらっしゃるのか興味津々).E1433に次いで2本目ですね.

まず,どうしてこのタイミングでVIAFbot?一年くらい前に聞いた話のような?と疑問に思ったんですが,Code4Lib Journal最新号の掲載記事の紹介なんですね.

OCLC ResearchおよびBritish LibraryのWikipedian in Residenceのおふたりが国を超えてタッグを組んでやった仕事というのがまずステキだなあと思いました.WIkipediaからVIAFにリンクをはった結果,VIAFのアクセスが3倍に増加したという話は,CiNii(現CiNii Articles)がGoogleにインデクスされたときのインパクトを思い出します.

機械的にマッチングして,だめなものは手作業.具体的には,「不一致がみつかったものは, 手作業での修正分として記録された」とありますが,「英語版Wikipediaの“Authority Control”,ドイツ語版Wikipediaの“Normdaten”とVIAF.orgのVIAF IDが不一致であった確率は,10.5%から15.9%であった」ということなので,一万件弱が手作業になったんじゃないかと思うのですが……(違う?).結構大変だ.クラウドソーシング的に実施したのかしら.

Wikipediaに「Authoritiy Control」という項目(テンプレート?)があることは初めて知りました.記事中の紹介だけではちゃんと理解できなかったけど,WIkidataWikimedia Commonsの構造化データ版?)も面白そうなプロジェクトだなあと.また,

性別データを例に取ると,米国議会図書館は性別を(変更が判明したものは)その変更年とともに記録する

という箇所には地味に感心しました…….





E1518 - 大阪市立図書館「書評漫才(SBR)グランプリin Osaka」

大阪市立中央図書館の和田さん.

カレント-Rでも取り上げたことのある企画について読めて嬉しかったです.「ふだん図書館に足を運ばない層にも,「お笑い」という図書館らしくない取り組みによって,働きかけることができた」という.あまり使わない体言止めの多い文体も,このネタに合ってますね.しかし,カレント-Eで大阪弁が登場したのは初めてではw

動きがあって,面白く本を紹介するにはどうしたらいいのか?ここで,「お笑いコンテスト」を望む声が多いということを思い出した。各種催しのアンケートで「次はどんな催しに参加してみたいですか?」と問うと多く寄せられる。「お笑いコンテスト」と「ビブリオバトル」…好きな本を紹介する相手は不特定多数ではなく,友達のように小人数なのがふつうでは?ビブリオバトルは一人でやるけど,話し手と聞き手の二人にしてもいいのでは?身振り手振りが入ってもおもしろいよね。…「これって漫才!?」。大阪らしいやん!

アンケートで「お笑いコンテスト」という声が多く出るというのもさすが大阪というか.





E1519 - 米国民はどれほど公共図書館に価値を置いているのか

篠田さん.

おなじみのPew Research Centerの調査レポートの紹介.調査手法は6,000人を対象とした電話インタビューということで,まずは,すごいなー,いくらくらいかかってんだろうなー,そこまでして調査しなくちゃいけないほどに米国でも「公共図書館の価値」が揺らいでる or 見えづらくなっているのかなー,などと思ったり.PRCのレポートはこれまでいろいろと目を通してきたけど,総体として,どういう目的で,どういった戦略で調査を積み重ねてきてるのか理解できていなかったりします.

公共図書館の新しいテクノロジーへの取り組みについてはどのように認識されているのだろうか。公共図書館が新しいテクノロジーについて行けていないという考えに同意する米国民は34%にとどまる一方で,55%はこの考えに反対している。高校を卒業していない成人は,その他のより高学歴の層よりもこの考えに同意する割合が高く,また,過去1年に図書館のウェブサイトを利用したことのある層は,反対する割合が高かった。図書館の利用経験のある層ほど好意的な認識を示していることがうかがえる。

という箇所は,「新しいテクノロジー」(原文ではnew technologiesかな)でイメージするものが回答者によって異なるのではないかという点が気になりました.原文をちらっと見てみたけどよく分からず.

また,

実際の公共図書館の利用状況については,米国民の81%がこれまでに公共図書館へ来館あるいは移動図書館を利用したことがあると回答し,そのうち48%は過去1年間以内に利用している。また,実際に公共図書館を利用したことのある米国民の91%が公共図書館の利用において嫌な思いをしたことがないと回答しており,米国の公共図書館が,実際の利用に裏付けられた,高い評価を得ているということが浮き彫りになる調査結果であった。

はすげえなと.嫌な思いをしたことのあるひとが1割以下なのか…….





E1520 - 「単発」図書館利用者講習の有効性<文献紹介>

ワシントン大学セントルイス東アジア図書館の小牧さん.

月始めにeastlibで就職されたというニュースが流れたときは衝撃を受けましたよほんと.小牧さんにE1415を書いていただいたときもこの方は論文をサマライズするのが上手だなあと驚いたんですが,今回もガッツリ大胆にまとめてはります.

紹介論文では,「図書館員が授業に招かれておこなう出張講座のような形式の「単発」の利用者講習」を受けた経験があるかどうかで情報利用(今回はウェブ情報の信頼性評価)に影響が出るのかという問題に取り組んでいる.学部生119名を対象とした実験の結果,

図書館員の出張講座を一度でも受けたことのある学生(119人中71人)はウェブ検索の結果として提示された情報の信頼性をより豊富な基準を用いて分析しており,ウィキペディアの信頼性を低く評価する等適切と思われる取捨選択をしていた。また図書館利用に関しても,講習を受けたことがない学生に比べてレファレンスの利用,本の貸出,データベースの利用率が有意に高かった。

だったという.これ,舞台となったブリッジウォーター州立大学では「単発」ではない講習は開かれてない(から,被験者の学生たちも受講してない)という理解でいいんですよね? 記事中に明示的には書かれていないけど.

メッセージとしては「単発でもそれなりの効果があるからやったらいいよ」ということなのかな.逆に考えると「単発のものだけで十分なんじゃないのか?」ということにもなりそう.そこへのカウンターとして,冒頭で,

大学生の情報リテラシーや図書館利活用スキルの獲得,向上には継続的に講習やワークショップを受講できる環境が提供されていることが理想的である。

としてあるんだろうと思うのですが.





次号は1月23日.


P.S.
さて,今年4月の後半号からスタートしたので,この9か月で16本の感想エントリを書いてきたことになります(22 - 6 = 16).隔週土曜日に3〜4時間かけて書くというのが習慣になりました.

担当ではなくなってしまったけどカレントアウェアネス・ポータルを外から応援していきたいという思いから始めたこの企画ですが,カレント-Eを書くという業務を通して身につけてきた読解力と文章力を多少なりとも維持していきたかったという狙いもありました.スクリーン上でさらっと読み流すのではなく,あのころと同じようにメールマガジンを印刷して赤を入れながら読む.そうすることで気づくこと,感じることがやっぱりあるのだと改めて思います.それでもやっぱり,読む力も,書く力も,この9か月でずいぶん落ちてしまったなあと感じていますが.

そんな個人的な動機で始めた感想なのに,「レビュー」だと言っていただいたり(うわ,ハードル上げられた……),「(カレントアウェアネス-Eの)サブテキスト」などと一部でっていうか @sght さんに位置づけていただいたり.他の方の役にも立つというのはちょっとした驚きでした.

そんなわけで,2014年もぼちぼち続けていきたいと思っております.