カレントアウェアネス-E No.259感想

id:negadaikon 経由で知りましたが、E1533を書かれた方(って、名前出していいのかもですが)がその執筆過程をブログで紹介してくれてます。

こういうのありがたいですね。編集者冥利につきますね(担当したのは篠田さんだけど)。また、ここに書いてないですが、CA-Eについては謝金はありません(CAは字数に応じて支払われます。もちろん館内の人が書いた場合はゼロですけど)。



さて、今回は6本中、外部原稿が4本。基本的にカレントアウェアネス-Eは隔週=月2回発行ですが(ということもけっこう認知されてなかったりしますが)、実際のところは年22回発行で、1月と5月は休みが多いからか月1回だけになります。そのせいで気が緩んでしまうのか、締切ギリギリでいつもより慌ててしまうことが多かったような……。





■E1561■ 京都府立総合資料館による東寺百合文書のWEB公開とその反響

のっけから福島さん。前回ご執筆されたE1461(いま読み返しても最終段落がかっこいい)からちょうど+100本目とキリの良い感じですね。

3月に公開された「東寺百合文書WEB」でCC BYを採用したという話。以前京都府立総合資料館で実物とその時点でデジタル化されていた資料をちらっと見たことがあったけれど、あれももう1年半前になるのか……。

その上で,特に工夫しようとしたのが利用規則等の仕組みの面である。担当や館内での議論を経て東寺百合文書WEBで提供するコンテンツについては,「クリエイティブ・コモンズ 表示2.1 日本 ライセンス」(CC BY)で提供することとした。このクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの採用については,様々な議論があったが,資料自体の著作権に配慮する必要がないこと,世界記憶遺産の候補である以上,世界との共通ルールにする必要があること,そしてなによりも東寺百合文書を自由に使ってもらいたい,という百合文書担当者の熱意によって実現された。

とさらっと書いてある、この「議論」の内容を知りたいのですよね……。外に出せないあれこれがたくさんあるんだろうけど、いつかまとめて伺いたいところです。「当webサイトのコンテンツを利用して作成された,書籍・雑誌・論文・パンフレット・映像作品・新聞記事・TV番組等を当館にご提供ください」という「特段のお願い」については、さすがにまだ報告できる事例がないってことなのかな。

先日、国立国会図書館デジタルコレクションや近代デジタルライブラリーも含めたNDLのウェブサイト上のコンテンツのうち、著作権保護期間が満了しているものについては、転載の申し込みが必要なくなったというニュースが流れていました。転載申請の処理にも時間と人手がかかっているわけで、利用者のみならず、提供者サイドにもメリットのあるはなしです。テレビ局から図書館に対して「この貴重書画像使いたいんですが、明日の番組で」などと電話がかかってくることは多いと思いますが、そのたびに申請してもらって、お金を払ってもらったり、館内決裁取ったりして、、、というのはなんというかばかばかしいように思えます。使ってもらうためにデジタル化したんだし、テレビで使っていただくのは大きなアピールになりますし、スピーディに使ってもらえるようにしたい。できれば。

また、システムが「2013年12月からという短期間の開発」というのは初耳で驚きました。おりしも京都府立総合資料館の図書館システムの入札公告が出て、その7月開札→10月稼働開始というかなりタイトなスケジュール(構築期間が3ヶ月しかない)におののいていたところでした。仕様書が公開されてないので分かりませんが、これって京都府立大学と共用するシステムなんだろうか。

CC BYというかCC 0はEuropeanaでも、ということで次の記事はEuropeanaについて(まったくよくできている)。





■E1562■ Hispana:スペインにおけるEuropeanaアグリゲータ

タイトルだけで執筆者が分かるw

Hispanaって、何、最近CA-Rになってたっけ?と検索してみると、過去に2回(2011/5/182012/9/16)取り上げられている。どちらも菊池さんが書いたんでしょう……すっかり忘れていました。

Hispanaは2010年3月にスペイン文化省が公開したデジタル文化遺産ポータル。MLAにわたるナショナルレベルのアグリゲータってことで日本ではいまのところ相当物がないかな……。そのHispanaがこの3月にEuropeanaに対してパブリックドメインの新聞資料のデータを提供したという話をトリガーにして、Hispanaの概要→代表例と呼ばれる理由→その裏にはEuropeana Local、とぐいぐい読ませる構成。最後は「Hispanaをはじめとする様々なデジタル化プロジェクトで,スペインはその存在感を増しつつある。」と締め。

Europeanaへのデータ提供はOAI-PMHで。Europeanaのメタデータってどうなってんだっけ……Europeana Data Modelっていうのがあるのか。こういう話を聞くと、まずメタデータマッピングの仕様が気になるような頭になってしまいましたが、マッピングでうまくいってないところ、無理してるところ、トリッキーな手法を取ってるところ、バッドノウハウ、とか、知りたいなあ。





■E1563■ 2013年から2014年の図書館システム市場動向は?(米国)

毎年4月にMarshall Breedingが発表するレポート。そう、今回からなぜかAmerican Librariesに掲載されるようになったんだなあ。2011年(E1169)、2012年(E1282)、2013年(このブログ)と自分が書いてきましたが、今年のは篠田さんが書いてくださった。

例年M&Aの話が少なくないですが、今回はInnovativeがPolarisを買った件が大きい(4月1日発表だったので最初は嘘かと思った)。

Library Services Platform(記事では「Library service platforms」とありますが、原文に合わせます)については、

そのシェアに関しては,ExLibris社のAlmaが31の新規契約を含む329館と契約,OCLCのWorldShare Management Servicesは92の新規契約を含む177館と契約,Innovative社のSierraは33の新規契約を含む113件の契約があり,計336館に導入している。

と。この一年でAlma/Sierraがずいぶん巻き返したなあ。トータルでもWMSを抜いちゃってる。ある程度落ち着いたら北米に調査に行きたいなあと思ってるんですが、Kuali OLEはのびのびじゃのう……。Intotaも、Assessmentは出たけど、まだまだかかりそう。

ディスカバリーサービスについては、

EBSCO社のEBSCO Discovery Service(EDS)がトップを走っており,5,612館が契約している。次いで,OCLCのWorldCat Local(1,717館),Ex Libris社のPrimo(1,407館),ProQuest社のSummon(673館)等が主要なサービスとして挙げられている。

おお、そんなに差がついてるのか……。日本だとEDSとSummonが横並びっていう印象ですが(エビデンスはない)。最後にちらっと触れてあるEBSCOのメタデータ提供方針まわりもちゃんと勉強しないとなあ。





■E1564■ 欧米の公共図書館による電子書籍貸出イニシアティブ調査報告

安原さん。

北米+欧州のレポートだけど、オーストラリア図書館協会がコンサルに作らせたものらしい。どうでもいい話ですが、オーストラリア図書館協会はALIA VoucherっていうIFLA Voucherのローカル版みたいなものを作っててね……。

本文は40ページ程度で、サマリーなしか。3節でカナダの取り組みが1つ、4節で米国の取り組みが4つ(有名なダグラス郡のも)、5節で欧州の取り組みが4つ、紹介されている。今回の記事では、そのへんはすっ飛ばして、クライアントに対して取りうる選択肢が示されている6節に注目し、以下のうち特に(2)(4)(5)(7)について詳しく説明している。

取り上げられている特徴は以下の8点である。(1)図書館によるデジタルコンテンツプラットフォームを開発しコンテンツを所有する,(2)デジタルコンテンツ購入に国(あるいは州)の予算を割り当てる,(3)革新的な試験的プロジェクトを行うために団体でアグリゲーターと交渉する,(4)法的枠組み内で,“拡張された集中許諾”(Extended Collective Licensing:ECL)を導入する,(5)製品ではなくサービスとして電子書籍にアクセスする,(6)貸出インターフェースに購入を案内する“Buy Now”オプションをつける,(7)国内出版社の既刊本の電子化を支援する,(8)人気タイトルの貸出を有料にする。

「製品ではなくサービスとして電子書籍にアクセスする」というだけではよく分からなかったけど、PPVということか(蔵書にはしないようなのでPDAではない)。

このレポートでカバーされている欧州の取り組みが、デンマーク、オランダ、ノルウェースウェーデンと北欧に偏ってるのが気にかかる。行ったこともないし、文化や出版についてたいした知識もないけど、オーストラリアで参考にするのが目的のレポートで、それでいいのだろうか……(英国とか)。ともあれ、レポートを受けて、オーストラリア図書館協会がどういうアクションを取るのか、続報に期待。





■E1565■ 2014年ISO/TC46国際会議<報告>

橋詰さん。

去年は川瀬さんでしたね(E1451)。RFIDまわりの攻防が印象強く残ってます。で、それに関連する部分で大きな進展があったというのが今回の記事のヤマ。

今回の大きな成果として,日本が提案する「国際図書館資料識別子(International Library Item Identifier:ILII)」(仮称)に関して,ISO規格化へつながる「新業務項目提案(NWIP)」の提出が了承されたことが挙げられる。これは,昨年の会議において,技術的相互運用性を扱う第4分科委員会(SC4)でRFIDタグ規格の一部として議論され,議論の結果RFIDタグ規格から切り離して,改めて識別と記述を扱う第9分科委員会(SC9)での規格化を探ることになっていた案件である(E1451参照)。昨年の会議以降,日本の国内委員会では検討ワーキンググループを立ち上げ,今回の会議での提案プレゼンテーションに向けて準備を進めていた。


ILIIは,図書館をはじめとする情報提供機関が所蔵する個別資料(FRBRのitemに相当する単位)に付与する識別子で,「図書館及び関連組織のための国際標準識別子(ISIL)」(CA1757参照)に各機関の資料管理番号を付与する形で構成される。SC9総会で行った日本の提案プレゼンテーションに対しては,各国参加者から質問や使用範囲等のアイデアが多数寄せられ関心の高さが伺えた。今後は,日本から正式にNWIPを提出し,そのNWIPが承認されれば,SC9において規格の開発作業が進められることとなる。

ILII=ISIL+ローカル資料ID、か。DOIのデジタルじゃなくてもいいよ版?という表現が思いついたけど、DOIはべつに図書館資料じゃなくてもいいんだからちょっと違うか。図書館のデジタルコンテンツについても付与できるのかな。そのデジタルコンテンツが複数のPDFで分割して公開されている場合、各PDFについてILIIを振るのかな、それともメタデータ単位で振るのかな、でもそれってitemじゃないよね、、、と細かいことが頭に浮かんだのでした。

冒頭の「日本からはISO加盟機関である日本工業標準調査会(JISC)の代表として」という記述に、あ、そういう位置づけなのね、そりゃそうか、、、と。こういう仕事に関われるチャンスがあるのが、NDLに就職することの利点だよなあとうらやましく思います。

川瀬さんの記事で触れられていた新ISO ILLプロトコルについては、ちょくちょくチェックしているんですが、、、

おおっ!!!! 5/22付けでステータスが60.00まで来ている! 次はいよいよ60.66(published)じゃないですか。もうちょっとですね。





■E1566■ 研究データ同盟第3回総会<報告>

倉重さん。2014年3月末、アイルランド。NDLからは初参加なのかな。科経課から出席、なんだ。

3日目には,人文科学分野について,リポジトリ等の研究インフラシステムの重要性が未だ十分に認識されていないのではないかとの問題提起や,同分野の学際的な性格を踏まえたインフラシステム構築を求める提言があった。

学際的な性格を踏まえたインフラシステムってどういうものだろう。。関連分野のコンテンツが発見しやすいとか、そういうの?

図書館員である筆者にとって特に興味深かったのは,「研究データのための図書館BoF(Library for Research Data BoF)」である。(中略)同会議開催直前に新設されたにも関わらず50名もの参加者があった。中心的な論点となったのは,データを扱うスキルを持ったライブラリアン,すなわちデータ・ライブラリアンをいかにして育成していくかということであった。分科会の報告においては,図書館員が研究者と一緒にデータの管理作業を行ったり,研究データ管理に関する無料のオンライン教材を活用して学習したりする等の実践事例の提示があった。最終的な共通認識としては,データ・ライブラリアンとして習得すべきスキルや育成プログラムのフレームワークを整備する必要があるということであった。

その50名にどれくらい図書館員以外のひとがいたのか、というのが気になるところ。つまり、「データ・ライブラリアン」的な存在の必要性が研究者から訴えられたのかどうか。それはともかく「Birds of a Feather」ってことばがあるんですね。BoF→IG→WGと進展していくのか。

先にEuropeanaの記事を読んだせいでふと頭に浮かんだのだけど、文化資源(Europeana)と研究データ(RDAなど)の話って別個に、パラレルに走っていくのかな。いつかどこかでクロスせざるを得なくなる気がする。





次回は6月5日。