カレントアウェアネス-E No.268感想

10月、新体制になって初めての号。

6本中、外部原稿が3本(依田さん・篠田さん・安原さんの3人がそろってるのは久々に見る……そして最後か……?)。


■E1613■ Open Annotation,Web標準へ W3C Annotation WG始動

安藤さん( id:kzakza )。

アノテーションというネタを日本でもっとも熱心かつ継続的にウォッチしつづけてこられた図書館員、による記事。ブログで「日本よっ!これがOpen Annotationだっ!!」と高らかに叫び声をあげてらっしゃったころがなつかしい。

とのこと。うん、むかしブログで読んだから知ってる。←

でもどうしてデジタルリソースに限定してるんだろう? 2014年に知った最も衝撃的な事実は「DOIというのは digital object の identifier ではなく、object の digital identifier だ」になるのはほぼ間違いなさそうで、IDさえ振ってあればべつにデジタルじゃなくてもいいんじゃないかなあ。と、思わずDOIのことを連想してしまうほど、このアノテーションという概念は広くて、おぼつかない感じを受ける。BIBFRAMEでは所蔵データすら「アノテーション」だから……(E1386参照)。極端に言えば、RDFの主語とほとんど同じ概念なんじゃないのというくらいに思ってしまっている。

2016年にはrecommendationを出す予定らしいので、それまで待機、で。

アノテーションについては、もともとW3CにOpen Annotation Community Groupというグループがあって、それを引き継ぐかたちでこのたびWGが設置(昇格?)された、というのが今回の肝。「デジタルリソースに関係する分野全てに影響を与える議論が新たなステージに進んだ」と締められていて、じゃあCommunity GroupとWorking Groupの違いについて解説しておかないとちょっと片手落ちじゃないかと安藤さんに伝えたところ、これを読めと言われた。ふむ。いわゆるInterest Groupみたいなものなのかな。



■E1614■ 貴重書デジタル化プロジェクトの計画立案時に考慮すべき事項

文献提供課に異動された依田さん。

IFLAの“Guidelines for Planning the Digitization of Rare Book and Manuscript Collections”というガイドラインの概要紹介。Planning = 計画立案というフェーズにフォーカスしているところがポイント。まあそんな感じになるよな、という感じ。あ、でも予算獲得はこのフェーズには入らないのか? 選定には大きな影響を与えるとこだろうに。そこは済んだというところからスタートしてるのかな。

管理メタデータのうまい設計の仕方は悩むところだし、原資料の「利用にどのようなインパクトがあったのか」というところは落としがちだな、と思った。

そういえばNDLは

という手引き・研修を提供していたなあと思い出した。このぶんだと一生関わることはないと思っていたけど現在はデジタル化の担当でもあるわけだし、勉強してみようかという気に。



■E1615■ 100周年を迎えた国立台湾図書館

アジアの水流添(つるぞえ)さん。

台湾国家図書館は前を通りかかったときに入口まで入ったことはあるんだけど、他にも、国立台湾図書館、国立公共資訊図書館という国立図書館があったらしい。主な任務をざっくり分けるとそれぞれ、納本、サービス、電子化ということでいいのかな。

そのうち国立台湾図書館が100周年を迎えたというのが今回のおはなし(前身は台湾総督府図書館で、いまの名前になったのは2013年1月)。2013年に台湾国家図書館が80周年、国立公共資訊図書館が90周年を迎えていたということなので、3館のなかでいちばん歴史が古いんだ。

ちなみに英語で書くと同じになっちゃうんじゃないかと心配したんだけど、国立台湾図書館=National Taiwan Library、台湾国家図書館=National Central Libraryという違いだった。

国立台湾図書館では戦前の日本関係資料を10万冊以上と豊富に所蔵して」おり、

所蔵資料のマイクロ化や電子化も,日本関係資料から開始された。現在は,雑誌約350タイトルを収録する「日本統治期雑誌全文画像システム」,図書約22,000冊を収録する「日本統治期図書全文画像システム」などのデータベースや,同館および他機関作成の台湾関係データベースを横断検索できる「台湾学電子資源総合検索システム」を提供している。

という。「在台湾日本関係歴史資料の保存と活用」ワークショップのことを思い出した。そして「E1404 - 米国統治時代の沖縄関係資料の現地収集及びウェブ公開の意義」のことも。

「100周年記念特別仕様の利用者カードを発行した」というのが面白いなあ。実物を見てみたいけど画像をうまく見つけられず。(国立台湾図書館のサイトを見たら台湾銀行のバナーが貼ってあった。。ふしぎな感じ。)



■E1616■ 公共図書館カードの所有率と図書館満足度(米国)

安原さん。

続いて(?)図書館カードネタ。米国の図書館界では毎年9月が「Library Card Sign-Up Month」とされていて、そのタイミングで実施されたオンライン調査(ALAとは関係ないんだよね……?)の結果の紹介。図書館利用に関するさまざまな質問について、性別、学歴、カード所有の有無という観点から分析しているもよう。収入は聞かなかったのか。結果のなかでは「学歴が高い回答者ほど,図書館カードの所有割合が高くなり,そのうち大学院修了者の所有割合は79%と最も高い」「(子どもが図書館カードを所有することの重要性についてとても重要であると回答した割合)学歴でみると大学院修了者が71%と最も高く」と、学歴との相関が気になった。

そう、性別聞くんだよなあ。。聞いたほうがいいのかなあ。。聞いたところでどうにもできないんじゃという思いもあるんだけど。。(ひとりごと



■E1617■ 大学図書館版『ホライズン・レポート』,初の刊行

篠田さん。

ホライゾンレポートは大学図書館版作る気があったんだwというのが最初の驚き。作成過程において公開Wikiで議論が行われていたというのは知らなかった。

レポートでは「トレンド」「課題」「技術の発展」がそれぞれ6つずつ挙げられている。他のバージョンのホライゾンレポートでもそうですが、そうたいしてトンガったことが書いてあるわけではない、です。出ている要素はちょっと現状追認かなあという印象を受け(そりゃそうでしょうけど)、トレンドで「1〜2年」とされているものはだいたい「今」のほうが適当だと感じることが多いし、時間的順番にも違和感を覚えることが少なくない。

いずれにせよ大学図書館関係で使いやすいレポートがいっこ増えたことはときどきありがたい、はず。



■E1618■ 図書館におけるLinked Data:実現させよう!<報告>

電子情報サービス課の竹鼻さん。

8月にBnFで開かれたIFLAのサテライトミーティング「図書館におけるLinked Data」の報告。発表資料・動画は公開されているんだ。

午前に,特に多言語化・多様なデータモデルへの対応を中心とした事例紹介として図書館からと開発者側から発表する2つのセッションがあり,午後に,語彙のコントロール・知識組織化体系などLinked Data(CA1746参照)を実現する技術要素にポイントを置いた発表のセッションと開発ベンダ3社によるパネルディスカッションがあり,全体として4部構成で行われた。

自分はLinked Dataよりもむしろ多言語メタデータのマネジメントに関心があるので、この午前中のはなしが特にありがたい。WorldCatばかり見ていたけど、そうか、Europeanaだってそうだった……(不覚)。メタデータマネジメントを担当していると、オープン、オープンと言うよりも、まずはきっちり管理したいという思いのほうが強くなって、それはあんまりよいことじゃないのかもしれないけど……。Europeanaのスライドをぱらぱらめくっていて、p.14になんとなく嫌な気持ちになったw

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WorldCatについては、先日出た書誌情報ニュースレターに「現在、OCLCでは、WorldCatの多言語の書誌データを活用し、さまざまな言語に翻訳されている作品のグルーピングの精度を向上させる取組みが行われています。この取組みの詳細は、次号でご紹介する予定です」と書いてあって、ちょー楽しみにしている。

後半の「ExLibris社の代表者は最新の製品ではURIアクセスとJSONでの返戻を行う」ってのはPrimoのことですかね? data.bnf.frのシステムってまったくチェックしてなかったけど、そんな面白そうな感じなのかしら……。



次号は10月30日、と3週間インターバル。