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カレントアウェアネス-E No.269感想

CA-E感想

感想と感想の合間に何も書かなかった10月(下書きはいろいろある)。

今回は、5本中、外部原稿が1本。



■E1619■ 公共図書館でお金の借り方教えます:金融リテラシー教育支援

巻頭は篠田さん。

米国における経済不況を背景にした、米国消費者金融保護局(CFPB)と公共図書館の連携のはなし。9月に、CFPBが支援のための情報源をまとめたウェブページをリリースし、図書館側からもRUSAがガイドラインを出し、とまとまった動きがあったというのが今記事のトリガー。

ビジネス支援や健康情報サービスにつらなる流れ、なんだろう。こういうはなしではいつもそうだけど、連携相手として図書館が選ばれた理由(図書館以外ではだめだと *外部から* 判断された理由)がいちばん気になる。CFPB側は「図書館員自身が金融の専門家として教育を担うべき」だと無理目な期待をしているわけではないという。が、RUSAのガイドラインは「図書館のレファレンスサービスをより高度に展開するため,金融リテラシーに注目したもの」と紹介されていて、単に専門家への橋渡しをする以上のより踏み込んだことを目指しているように思えた。ガイドライン(未読)ではどのくらいまで手を出すのか適切かというようなことが書いてあるんだろうけど……。



■E1620■ Europeanaの2015-2020年の戦略:文化で世界の変革を

篠田さん2本目。

Eurpeanaの5か年戦略。2011年に出されたもの(E1148)がまだ記憶に新しいのだけど、もう次のが……。

冒頭の3つの行動原則(usable, mutual, reliable)を見て、Europeanaは、とにかくオープンにしたコンテンツを再利用してもらい、それによって社会的・経済的価値が生み出されることに重点を置いているんだなあと改めて。この姿勢を徹底できているサービスって、案外ない。後半では、Europeanaというプラットフォームを、「コア」「アクセス」「サービス」という3つのレベルに分けている。アクセスとサービスを区別するのが面白いな、というか、この内容でサービスって表現はいまいちピンとこないなあ。「ユーザ」とか「コミュニティ」とか言われたほうがしっくりくる。Europeanaというプラットフォームの上で、各プレイヤーが2次的なサービスを展開していってほしいというニュアンスなのだろうか。

(3)エンドユーザー(end-users),新規サービス製作者(creatives),文化機関の専門職(professionals)の三つの利用者グループを想定する「サービス」

第三の課題はサービスレベルに関するもので,三つの利用者グループ間で相互に価値が循環する「コモンズ(Commons)」を育てていくことである。

しかし「欧州の文化遺産3億件のうち,10%しかデジタル化されておらず,そのうちオンラインで利用できるものは34%,再利用されたものはたった3%であった」って、たった3%いうても100万件(≒3億 x 0.1 x 0.03)近いですやん……。そもそもどうやって積算したのか分からないけど。こういった再利用の状況を(事前申請を前提としない制度のもとで)機械的にトラックできることが必要だと思うんだけど、どうやったらよいのだろう。

順調そうに見えるEuropeanaだけど、予算大幅削減のはなしがあったのか。



■E1621■ ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2014)

福山さん。

毎度のDC-2014レポート、今年はテキサス。あのね、自分もポスター発表してきたということをちゃんと書かないと……。

今年のテーマは「メタデータの交差点:文化的記憶の島々をつなぐ架け橋」だったそうで、こちらもEuropeanaよりのネタ。

中でも印象的だったのは,情報資源の提供におけるコンテクスト(文脈)の必要性に対する認識の高まりと,そのコンテクストを提供する手段としてリンク可能な識別子が重要性を増していることである。

コンテキスト? 読み進めると、Europeana Data Modelにおける、文書館のメタデータの階層構造のはなしが出てくる。

これまで1つのレコードにパッケージングされていたメタデータを小さなパーツに解体していって、それらに識別子を振り、相互にリンクさせるという流れ。極論を言えば、記述の世界から、識別子と典拠とリンクだけの世界へ。BIBFRAMEも(RDFを念頭に置いているんだから)当初からそういう話をしていたと思う。そうやってばらばらになっていったときに、それらのつながりとしてコンテキストの持つ意味が重要になってくる、という話なのかな。

識別子が大切というのはそりゃそうで、その表現だとポイントが伝わらないのではないか。むしろ識別子を振る単位をどう考えるのかが大切だとと言うべきなんじゃないか(言い換えにすぎないと言われたら認める)。「また,データ構造やソフトウェアが変化しても,識別子は変わらない。したがって,技術や時代の変化にフレキシブルに対応して,永続的に利用することができる。」 本当にそうだろうか? 例えば世の中から数字が消えたら……というのは単なる与太だけど、識別子を与えるべき、あるいは、与えることのできる「単位」のほうは、技術や時代に応じて変わっていくのではないだろうか。過去に振られた識別子を使い続けることはもちろんできても、それが(歴史的な意味以外の)意味を失ってしまうことはありうるのではないだろうか。識別子の永続性というのは、いうほど盤石なのだろうかと、ちょっと思ったりした。



■E1622■ 論文のアクセス権・ライセンス権を表現する試み<文献紹介>

武田さん。

ダウンロードしたっきり読んでなかったんだけど、NISOのInformation Standards Quarterly誌の26(2)巻はOA特集だった。そのなかからAccess and License Indicators(旧Open Access Metadata and Indicators。まだドラフトだったんだ。2014年秋に最終版公開予定)という推奨指針の解説記事をコンパクトに紹介。

推奨指針に挙げられているメタデータの要素は、free_to_readとlicense_refの2つだけらしい。状況が混沌としてるからすごい複雑な仕様になるのかと思っていたので、正直拍子抜けした。あとはデータをしかるべきタイミングで入力して、きちんと流通させていけというだけのことなんだろう。

ひとつめのfree_to_readは「料金やその他の制限なしにオンラインで著作が利用可能」な期間(開始日・終了日)を入力する。ともに空欄の場合は「永続的なフリーアクセスである」か。

もうひとつのlicence_refはその名のとおりライセンス(例:Creative CommonsのCC BY)へのURIを入力する。以下の例(推奨指針の原文より)のように「エンバーゴ期間や権利内容の時間的変化に対応するため,参照する各々のライセンスに対して異なる開始日を指定することができる」。

<license_ref start_date="2014-02-03">http://www.psychoceramics.org/license_v1.html</license_ref>
<license_ref start_date="2015-02-03">http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/deed.en_US</license_ref>

ちょっと逃げた感じ。結局、ライセンスのURIからどういった利用(テキストマイニングOKとか)が許可されているのかを取得するAPIなりなんなりを別に用意するはめになるような。Creative Commonsだけで済むならほぼ決め打ちでいいんだろうけど、そうじゃないだろうし……。

そういえば、同じNISOのKBARTも、バージョン2でaccess_typeっていうフィールドが追加されていて、OA or Fのいずれかを選択できるようになっている(参考:ユサコニュース)。ここもKBART3(?)で統一されていくのかな。



■E1623■ 図書館によるテキストマイニングの研究利用支援<文献紹介>

ラストは安原さん。

Information Technology and Libraries誌から、コロラド大学の事例。

冒頭で、研究チームにレファレンスライブラリアンを派遣しってさらっと書いてある。その研究チームでは生物医学系の雑誌記事をテキストマイニングする必要があって、ライブラリアンがBioMed Cntral、PLOS、Wileyなどと個別交渉していった。その他の出版社も機械的なクロールをしたら「出版社側はこれを異常なダウンロードとみなし,キャンパス全体の資料へのアクセスが停止され」って、また地味に素人くさいオチを挟んできたな……。でもそれによって収集担当の別のライブラリアンの協力を得るきっかけができ、「XML形式の雑誌記事のフルテキストの大規模なコレクション購入のための契約フレームワーク」を作り上げるに至ったという。結果オーライ。なるほど、XMLデータだけを安く買ったのか……(対象タイトルは雑誌本体の契約はしてないの?)。で、次の契約更新のときには、ライセンスにテキストマイニングの条項を含めるというスマートな手段に。

そんなノリだから、CrossRef Prospectのはなしは出てこなかったんだろうなあ。

スピリッツには共感するけど、この契約フレームワークとやらはあんまり真似したくないな……。



次は11月13日。