デンマークの国家戦略「2022年には100% OA」とOpen Access indicator

Denmark's National Strategy for Open Access (2014)

すっかり見逃していたけど、デンマーク高等教育・科学省(Ministry of Higher Education and Science)が、2014年にオープンアクセスに関する国家戦略(Denmark's National Strategy for Open Access)を発表していた。一年前だ。

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http://ufm.dk/en/research-and-innovation/cooperation-between-research-and-innovation/open-science/open-access-to-research-publications/engelsk-version-national-strategy-for-open-access.pdf

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http://openscience.fi/documents/14273/0/OSR-Denmark/4fcc4732-eacc-4c20-9060-c79c9b7c7116

というスライドの色からも分かるとおりのグリーンOA路線も重要かもだけど、この戦略のなかで何より私がぐっときたのは

Targets

  • To achieve by 2017 via digital archives – repositories – unimpeded, digital access for all to 80 per cent of Danish peer-reviewed scientific articles from Danish research institutions published in 2016.
  • To achieve from 2022 and onwards unimpeded, digital access for all to 100 percent of all Danish peer-reviewed scientific articles from Danish research institutions published from 2021 and onwards.

という具体的で強気な数値目標。2022年までに100%!(どこかの委員会の技術WGのようだ)

そして、

The implementation of Open Access is to be monitored on an ongoing basis to ensure that all parties make a maximum effort to develop and disseminate free accessibility to Danish research findings.

というモニタリングに対する意識。こちらについてはこの戦略について取り上げたOpenAIREニュースレターでも

The second working group will clarify how reaching the goals can be measured ongoing by establishing and running an Open Access Barometer in relation to the Danish National Research Database.

https://www.openaire.eu/newsletter-items/denmark-ambitious-oa-goals

のように紹介されている。ん?Open Access Barometer?

デンマークのここ数年を追ってみると、例えば2011年のカレントアウェアネス-Rの記事「国家規模での研究成果オープンアクセス化方針の導入に向けた提言等をまとめたレポート(デンマーク)」に「全国規模で一つの共通な研究データベースを構築する」とあるので、このへんはずっと以前からきちんと意識されていたんだろうなあ。

これですよこれ。


Open Access Barometer / Open Access indicator

で、このOpen Access Barometerについても調べてみた(実は順序としてはこちらを先に知ったのだけど)。

先日のOAI9@ジュネーブにおけるプレゼン資料(by デンマーク工科大学の @melbaek さん)が非常に面白かった。自分がいまやりたいことが現在進行形で進められている、のを見た、という衝撃。

私が理解した範囲では……

  • どうも現在はOpen Access Barometerというのは発展的解消(?)して、Open Access indicatorというプロジェクトが進行中らしい。メンバーはp.7に。
  • Open Access Barometerがやりたかったことやその結果はp.20-30あたりのグラフを見ているとなんとなく分かる。
  • Open Access indicatorの概要や進捗については後半で紹介されている(p.46-50など)。
  • 2016年第一四半期にはなんらかの成果物が出てくるもよう(p.51)。
  • ざっくりいえば国の研究成果がどれくらいオープンアクセスになっているかを示す("To let the world know how Open Access to science is progressing", p.10)ためのもの。
  • システムアーキテクチャ(p.45)の中心にあるのは「National Danish Research Database」というデータベース。
  • このデータベースでは、現在11の大学等のリポジトリからメタデータをハーベストしている。
  • リポジトリというけど各機関が使っているのはElsevierのPureというCRISのようだ。CRIS as IRだ。
  • どうもデンマークはPureの導入が多いらしい(カスタマーリスト)。なぜだろう。
  • システム設計において議論となった点がp.51以降にあって、参考になる。

という感じ。

National Danish Research Databaseのトップページに出ているグラフはOpen Access Barometerの成果物なんだろう、かね?

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まとめると、こんなふうに、国によるオープンアクセス政策に対する投資とそれへの成果を(これまでのように誰かが時間をかけていちいちレポーティングしなくても)誰もが分かるように可視化できるようにしておくことが必要なんじゃないか。そのために必要なシステムとメタデータはなにか。というのが私の最近の(そして今後数年継続するであろう)問題意識。