スタンフォード大学図書館のウェブサイトリニューアルについて

2012年8月28日にスタンフォード大学図書館のウェブサイトがリニューアルされました.

自分の観測範囲ではですが,けっこうあちこちで話題になっていたように思います.図書館が何十館もあるような巨大な大学の事例は気になりますよね…….

レビューというほどじゃありませんが,ざっくり紹介したいと思います.


外観から

リニューアル前

http://www-sul.stanford.edu/

ちょっと古めのデザインという印象を受けます.ヘッダ下部には3つのセレクトボックス(各図書館の開館時間へのナビゲーションもこれで)が並び,中段では各コンテンツへのリンクが「Catalogs & Search Tools」「Research Help」「Libraries & Collections」「Services」「How to...」「About SULAIR」の6つに分類されています.

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リニューアル後

http://library.stanford.edu/

引き続き臙脂色と黄土色[*1]が基調になっています.テキストやリンクの色もなじんでいてしっとりとした雰囲気になっています.固定幅・センタリング.特にレスポンシブウェブデザイン対応というわけではなく.

リボン調にあしらわれたプルダウンメニューがかわいい.フッタは基本的にこのメニューを平に展開しただけですね.メニュー下の検索ボックスは「Search Everything」と「Books & media」の2種類.その右横にはギャラリーめいたものが(コレクションの紹介かと思ったのですがナビゲーション色のほうが強いかな).

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リニューアルの特徴

同大学図書館からのニュースリリースには7つの特徴が紹介されています.ざっくり訳すと,

  • 統合検索(Search Everything)
  • 全図書館の見やすい開館時間
  • 学習場所(Places to Study)の一覧.
  • サブジェクトライブラリアンの一覧&プロフィール
  • 図書館コレクションのページ
  • 研究支援サービスをまとめたページ
  • サブジェクトライブラリアンが作成した100以上のガイド(毎週追加)

という感じ.

単に見せ方を変えただけではなく,コンテンツもかなり増強したんだぞというのが伝わってきます.

これらのうち,統合検索と学習場所の一覧という2点について,OCLCのLocan Dempseyがブログで“Two things prompted by a new website: space as a service and full library discovery”という記事を書いて評価しています.この統合検索はSearchWorks(次世代OPAC Blacklight)だけではなく,おすすめDB,サブジェクトライブラリアンや図書館コレクションのページなどもまとめて検索するというもの(検索例).彼は,この2つは今後ありふれたものになっていくんじゃないかと言ってます[*2].


自分が注目したところ

1. カルーセル

トップページ中央のカルーセルでは,

  • Library Hours
  • Ask us!
  • Print, copy, scan
  • Places to study
  • Collections
  • Supporting SUL
  • Computing

という7種類のコンテンツをクリックで切り換えて表示できるようになっています.これらがこの図書館の推しであり利用者からのニーズが高いと判断したものであり,なんでしょう.もちろんいずれの情報もそれぞれ別に単体のページが用意されています.


2. 学習場所

上の7種類から学習場所(Places to study)を紹介したいです.これがすごい.

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現在全部で29か所の場所がリストアップされていて,それらを

  • めっちゃ静か(absolute quiet)
  • コーヒー買えるところが近くにある(coffee nearby)
  • 会話OK(conversation allowed)
  • 電源あり(electrical outlets)
  • グループ学習ができる(group study)
  • ひとり向き(individual study)
  • 大きなテーブルがある(large tables)
  • 遅くまで開いてる(open late)
  • 屋外スペースがある(outdoor space)
  • 誰でも使えるPCがある(public computer)
  • 学内者のみ使えるPCがある(Stanford-only computer)

という11の条件で絞り込めるようになっています.電源やPC,テーブルといった設備だけじゃなく,静粛さやコーヒーといった“環境”という条件にも目が向けられているのが力入ってるなぁと思いました.

旧サイトにもPlaces to studyというページがありましたが別物になってますね.


3. サブジェクトライブラリアンのページ

http://library.stanford.edu/people/subject-librarians

ここまでいかないまでも,日本でもスタッフリストくらい出すべきなのでは……というのは昔から関心を持っている課題です.図書館は女性が多い職場なのでプライバシー上いろいろ難しいのは分かりますし,自分も顔写真を晒すのは(というか写真を撮るのが)嫌なんですが.

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リニューアルのブログから

http://library.stanford.edu/blogs/library-website-redesign

このウェブサイトリニューアルプロジェクトについては専用のブログに記録が残されています.最初の記事は2011年3月ですので約1年半のプロジェクトだったのでしょうか.

これらの記録の中から参考になりそうなものをリストアップしておきます.それぞれプロジェクト体制,目標設定,ペルソナ,情報アーキテクチャワイヤーフレームについてのものです.


*1:どちらもスタンフォード大学のテーマカラー? 大学のサイトでも使われている色です.

*2:“Each makes so much sense that I imagine they will become routine.”