大学図書館における電子書籍タイトル数(日米比較)

早稲田大学図書館の荘司雅之さんによる「大学図書館と電子書籍」(『図書館雑誌』2015.2)は次のような衝撃的な一節で始まる。

「昨年、全米の大学図書館が購入した電子書籍(E-Book)の冊数は紙の書籍の約二倍」OCLCリサーチのマルパス女史が、二〇一四年二月末に開催された『KEIO大学図書館国際フォーラム』の基調講演で述べた情報である。

続いて、その数字の典拠や日本の状況が端的に綴られている。

じつは、

でレポートしたようにこのフォーラムには参加したんだけど、正直「そんなこと言ってたっけかなあ……」という状態だったので、改めて調べてみた。


Academic Libraries: 2012 First Look(米国)

マルパスさんの挙げた数字の典拠は、全米教育統計センター(NCES)が隔年で発行している統計の2012年版(最新版)である。

全米教育統計センター(NCES)、米国大学図書館統計の2012年版を公開 | カレントアウェアネス・ポータル

2014年に発行されたもので、2012会計年度(FY = Fiscal Year)における大学図書館の状況がまとめられている。その表5(Number of volumes and units added during the fiscal year and total volumes and units held at the end of the fiscal year at academic libraries, by types of volumes and units and state/jurisdiction)によれば、

  • Books, serial backfiles, and other paper materials, including government documents: 27,605,440
  • E-books: 52,738,755

となっていて、たしかにE-Booksのほうがおよそ1.9倍になっている。しかも紙のほうはBooks以外の資料も含んでいるので、いわゆる書籍どうしで比較した場合、その差はさらに広がりそうである。統計のレポートを見てみると、Selected Findingsではこの点についての言及がない(ので、当然カレントアウェアネス-Rの記事でもスルーしたのだろう)。

過去に遡ってみると:

当該年度の購入数

FY2012 FY2010 FY2008 FY2006
Books, ... 27,605,440 27,163,548 23,990,187 22,241,445
E-Books 52,738,755 32,033,008 20,021,312 16,212,823

累積

FY2012 FY2010 FY2008 FY2006
Books, ... 1,099,951,212 1,076,027,407 1,052,531,290 1,015,657,807
E-Books 252,599,161 158,652,457 102,502,182 64,365,781

となっていた。FY2010で紙と電子の購入数が逆転し、FY2012でその差が広がったらしい。資料数累積で比べるとFY2012で紙:電子=4:1っていうところ。

http://nces.ed.gov/pubs2014/2014038_supp.pdf
http://nces.ed.gov/pubs2012/2012365_1.pdf
http://nces.ed.gov/pubs2010/2010348_1.pdf
http://nces.ed.gov/pubs2008/2008337_s.pdf


学術情報基盤実態調査(日本)

日本の大学図書館の状況は文部科学省学術情報基盤実態調査で毎年調べられている。

同調査の調査項目に電子書籍が加わったのはH23年度調査からで、すなわちH22年度以降の状況である。タイトル数が「3 蔵書数」に、資料費が「6-1 図書館資料費」にまとめられている。最新のデータはH26年度調査=H25年度の状況。過去4年の経年変化は「平成26年度「学術情報基盤実態調査」について(概要)」にまとめられているが、元のExcelファイルにはそれ以上の数字も掲載されており、必要な部分を自分でまとめなおしてみた。

H25年度(H26年度調査)の時点で、電子書籍が総資料費に占める割合は1.3%ちょい。総タイトル数は、蔵書冊数の全国合計が32,247万冊、電子書籍は469万冊なので、紙:電子=69:1となる。統計の取り方が異なるので米国の「4:1」と単純比較はできないけど。