H28年度大学図書館職員短期研修(東京会場)
大学図書館職員短期研修の東京会場(NII)で講師をしてきた。
京都で失敗したという反省があったものの、スライドは、新しく出てきた情報を2, 3追加したくらいで、基本的に改訂してない。時間があったら軽くしゃべろうかなと思って最後にRichard Poynderネタを差し込んでみたけど、結局触れずじまいになった。受講生の配布資料とページ番号がずれるのを避けようとすると、なかなか途中でスライドを追加するというのが難しい。
前回とはちがって体調はよかったのでまあまあ普段通りといえば普段通りの調子。とはいえなぜだかエンドが12時だと勘違いしていて、いろいろ端折って15分早く終わらせてしまった。。そのぶん質疑応答の時間が充実したといえばいいのだろうけど。朝もスキニーを履く前にブーツを履こうとしていたくらいなのでやっぱりネジが一本飛んでたのかもしれない。
久しぶりにお会いした金藤さん@東大の司会っぷりがなんだか頼もしかった。
間違いなく、初日に講師をされた井上さん@関学の影響だろう、講義後に多くの方が名刺交換に並んでくださって、わたしの名刺なんてresearchmapを見ればもらう必要ないぞと内心照れたりしつつも、いろいろなお話ができてよかった。
講師の側からすると、準備段階からいったい何を話したものやらと不安を抱えつづけていて、実際に受講生のまえで話してみても届いてるのかどうかよう分からなくて、なんだなんだどうしたらいいんだ、というような情けなさなので、お世辞でも「あのくだりがよかったです」というような *具体的な* 感想をもらえるととてもほっとする、ものらしい。受講者アンケートでもフィードバックをいただいている可能性はあるけど、申し訳ないことに、新人のときベテランにフルスイングでぶっ叩かれたというトラウマがあるのであの手のものは怖くて見ることができない。
こんなのもあってか、全体的に、受講生のアクティビティが京都会場よりも高かったという印象を持った。ちょっといただけでテキトーなこと言うなと怒られてしまうかもしれないけど。そういえば講師でもやんないと、両会場の雰囲気を味わうことはできないんだなと気づく。
時間を置いて異なる場所で同じ話を2回重ねてみて、その間、図書館総合展に行って他の人の話を聞いたりもして、結局、いま自分が話したいのは「オープンアクセスはいろいろ」ってことに尽きるんだろうなと認識する。議論を不必要に単純化しすぎないこと。機関リポジトリの意義を盛りすぎないこと(覚悟のできてないことを中途半端な心意気だけで言わないこと)。研究者のよくある誤解を丁寧に解きほぐしていくこと。短絡的な批判にきちんと前向きに答えていくこと。こんなあたりまえのことが大切だよあと、学内でオープンアクセスに関する議論をしているときによく思う。そこで自分を支えてくれるのは確実な知識以外にありえなくて、それを身につけるためには日々勉強するしかない。(講義中でもぽろっと漏らしてしまったけど、日々の勉強が着実に実務の役に立ってしまうというのは、この領域のやりがいのひとつだと思っている。)
オープンアクセスの進め方、学術コミュニケーションのあり方、その多様さを多様なまままるごと引き受けて、それらのうまいポートフォリオを見出して、あの手この手で攻めていく(誰を?)しかない、そんなことでしかサステイナビリティというのは担保できないんだろう、単純化するほどに危うくなる、ああ、これがダイバーシティってやつか、などと最後は陳腐に落ちるんだけど、そんなことを思ったりした。といっても生のカオスは扱いづらいので、この多様さをなるべく整理してほどよいかたちで見せていくのが、私たち(誰?)の仕事だろうか。
そして、そういう意味でも自分の興味はジャーナルやリポジトリといったパーツではなくて、その上に広がるCRISという包括的なレイヤーにあるんだなと気づく。
……だったらさ、最初っからそういう構成でスライドを作りなはれ、あほたれ、と思うわけだけど、こちらもやっぱり走りながら成長している状態なので、なかなかそういうわけにもいかない。自分もこの4か月で成長できたね、よかったね、ちゃんちゃん、とまとめてしまいたい。ほんと、すみません。
京都・東京のどちらでも、最後の「出版を取り戻す」というフレーズは少なくない方の琴線に触れたらしく、いくつかの反応をいただいた。口だけじゃなくて、ここもしっかり掘り下げられるといいなぁ。
おひるは森嶋さんとらぼくんと3人でメンチカツカレーを食べにでかけた。らぼくんが「彼女なんていらない。むしろ学位がほしい」などと言ってて、さすがだな、若いっていいな、と感心したふりをしてみることにした。
帰りがけに寄った銀座のサロン・ド・アンジェリーナで食べたモンブランは、いや、ほんと、自分史上最強というくらいに美味かった。栗!栗!とみっちり食べたいという向きには物足りないかもしれないけど、中身のクリームは疲れた頭がくらくらしそうなくらいに濃厚だった。タイミング良く教えてくれた id:Ariyosi に感謝感謝。
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13031188/
短期研修は何年か同じ講師が継続的に担当することが多いけど、自分はちょうど1年後に図書館システムのサービスインを控えているので、引き受けてる余裕があるのかどうかよく分からない(ふつーに考えたらない。でもサービスインまでバタバタするような進め方をしない、というのが自分の目標ではある)。もし次もということになっても、おそらくスライドはイチから作り直すんだろう。そのときにはどんな語り口を持ち出してくるのか、自分でもちょっと楽しみだったりする。いつもの癖で客観的な話ばかりしなくちゃいけないとばかり思い込んでいたけど、もっと「自分」というか「私見」の色を強くしてもよかったのかもしれない。今回よりも話のレベルを下げたほうが受講生の平均理解度は上がるんだろうという体感はあるものの、実際に求められてるのはそんな表層的な生ぬるさではないのかもしれないとも思ったりする。このあたりの判断を研修企画者に丸投げできたらもうちょっと楽なんだけど。
まあ、自分、やっぱり講師なんて向いてないなあ、っていうのが改めての感想としてある。笑えるような話はできないし、わたしの声は聞いてると眠くなるやろしね……。
ともあれ、これで2016年の出張もぶじにおしまい。今年は営業日ベースで2か月以上が出張に当てられたというひどい1年だった。来年の出張は1/11からスタートで、2月にはたぶん初めてのアメリカへ。