カレントアウェアネス-E No.240感想

今号は7本中5本が外部原稿(調査情報係以外のひとによる執筆)でした.編集大変だったろうなぁ…….



E1446 - 島根県の学校図書館の現状―学校司書等配置率100%

島根県立図書館・大野さん.島根県の取組みが活発なのは学校図書館の世界に疎い私でも知っているくらいのものですが,このたび「県内の分校を除くすべての市町村立小中学校(315校),県立高等学校(35校),特別支援学校(12校)に,正規職員,非常勤職員,有償ボランティアのいずれかが配置された」と.有償ボランティアが含まれてるから学校司書*等*という表記になっているんですね.ただ,本文を読むと,小中学校には100%学校司書が,県立高校の半数には正規学校司書が,残り半数には嘱託学校司書が,特別支援学校にはすべて非常勤の学校司書が,それぞれ配置されている.ということなので,有償ボランティアはどこに入るんだろう?というのがよく分からなかった……(なんか誤読してる?

大学のオープンキャンパスでは図書館もツアーをやったりしていますが,高校生たちのアンケート回答には「大きくてびっくりした」「きれいだった」「本がたくさんあった」という(心が汚れてしまった大人にとってはw)とても素直な感想が多く見られます.新入生向けのツアーでも同じくその傾向がありますね.ただ,一部の人は「大学図書館を見てがっかりした.高校の図書館のほうがすごかった」と感じてたりするのかなぁ……と思うことがあります.学校図書館は,人がまったくいないところから,大学図書館並みに充実しているところまで,振れ幅が大きいという印象です.今回の記事にあるように学校図書館のレベルが上がっていくとき,大学図書館に求められるものもまた上がっていくのだ.学校図書館のことを考えるときにいつも頭に浮かぶのはこんなことだったりします.



E1447 - 目録カードをアート作品へ

安原さん.こういう記事だと写真が欲しくなりますね.ぱらぱら見ていていちばんきれいだなと思ったのはこの作品です.

http://craftcouncil.org/sites/default/files/duffy_february_raven4.jpg

あと,目録カードで椅子作れるんちゃうかなと思いました(実用的).

図書館員になるまで目録カードを繰ったことは一度もなかった人間だし,目録カードの(利用者にとっての)意義や大切さを語る資格はありません.ここで紹介されてるのは目録カードを“活かした”アート作品ばかりですが,一方で,目録カードを“葬る”ことをテーマにしたアートも可能だなあなどと思いました.また,目録カードボックスは古道具屋さんでよく売り物になっていますが,なんとかリメイクして図書館で再利用できないものかなあ…….



E1448 - 公共図書館が子どもにランチを提供 夏の読書プログラムで

菊池さん.なんだこりゃー.おもろいなあ.ノリノリで書いてるのが文体から伝わる.「そういった子どもたちは昼食代を持っていなかったために,職員に対してしばしばお金をねだっていたという。」に吹いたw で,「お腹が膨れた後に図書館員が読み聞かせを行う」にふむふむ(それ寝ちゃうんじゃないか).

館内のどこで食べてるんだろう?という疑問が浮かびましたが,この記事の写真ではふつーに閲覧室で食べてますね.

オークランド公共図書館は「今夏はガーデニングに力を入れるとしており,これまで行ってきたシードライブラリー(E1398参照)の取組みを継続させ,各家庭に対する野菜のガーデニングの普及に努めたいとしている」と,ここでまさかのseed lending libraryにつながるのかと驚きました.図書館で野菜作ってそれを素材にした料理を提供してっていう妄想が膨らんだぞ.誰かさんのせいで農業づいてますね,カレント.

むかし書いた「ケーキ型、貸します。(記事紹介)」という記事のことも思い出しました.



E1449 - フランスのナショナルライセンス,公共図書館に対象拡大

局・服部さん.クーペラン絡みの,要注目ネタ.フランスネタありがたいです.ここでいう「公共図書館」は「BnF,県立貸出図書館,市町村立図書館等」を指すらしい.2012年4月に6000万ユーロの予算で始動したISTEXの目的は「ナショナルライセンスの学術リソースの「購入」とこれらのデータを集積するプラットフォームの構築」という.電子リソースに対して,通常のような契約ではなく「購入」という(かっこつきの)表現が使われていることを踏まえると,リソースをローカルでアーカイブしちゃうということなのかな(中国でCALISがやってましたね).最後の「Elsevier社の“Freedom Collection”等の25の電子リソースをナショナルライセンス取得対象としてリストアップした」の行方に興味津々.



E1450 - FundRef―その研究助成はどのような研究成果を生んだのか?

えーと,私.3か月ぶりに書きました.ちなみに6月20日に「何か書きませんか?」と依頼のメールをもらって,6月28日〆でした(汗

ネタ選定については,NISOのIOTA(OpenURL形式のリンクの品質向上を目指した推奨基準)も面白いかなと思ったんですが,6月のユサコニュースで取り上げられそうな気がしたので避けました(結局,杞憂でした).IOTAもちょっとテクニカルで好きな話題です.

自分のなかでの助成機関というプレイヤーへの関心は,オープンアクセス(特にAPC)に関する記事を立て続けに書いているなかで高まってきたものです.

大学図書館がAPCとどう付き合っていくのかは,現在もっとも興味のあるテーマのひとつですね.



E1451 - 2013年ISO/TC46国際会議<報告>

あこがれの川瀬先輩(とお隣になって光栄です.キリ番は奪っちゃったけど).ISO/TC46の報告は二年連続ですね(去年はベルリンで今年はパリ! 来年はワシントンD.C.).各国の攻防が垣間見える第三段落は臨場感があってドキドキしますね.そしてISO ILLプロトコルの後継については「ドラフトは今夏には提出される予定」ということで,大変楽しみ.締めの一文もかっこいい:「国際標準となったものを使うだけではなく,国際標準を作りだす活動への,より多くの理解と協力が望まれる。」

こうやっておおきな仕事をされている川瀬さんのこと尊敬しておりますよ.



E1452 - 研究者による研究データ共有の決定要因は何か<文献紹介>

筑波大・池内さん.研究データ管理(Research Data Management)もここ二年ずっと関心を持ち続けているテーマのひとつ.今回紹介されている論文は,DataONEプロジェクトが研究者(ほぼ北米・欧州)を対象に実施したアンケート調査の結果をまとめたもの.アンケートの実施時期は2009年10月〜2010年7月とちょっと古いかな.

データ公開のインセンティブとデメリットについての「記述統計によれば,データの共有に際して回答者が重要だと考えているのは,データの作成者を引用や公式の謝辞に明記することであった。回答者が懸念を抱いているのは,データが予期せぬ方法で用いられること(91%)や,データ自体の複雑性のために誤って解釈されること(90%)である。」は想像しやすい.一方で,「法整備と利用条件は「主著者のウェブサイト」「所属組織のウェブサイト」「国レベルの研究ネットワーク」にデータを公開することに有意に影響を与える要因だが,「地域レベルでの研究ネットワーク」への公開にはほとんど影響を与えない」というのはちょっとよく分からなかった.なぜ地域レベルだけが?

「なお,著者らが用いたDataONEによる調査データは,既に2011年にPLOS ONEで論文として公開されている。すなわち本論文は,研究データを他の研究者が再利用することによって新たな研究成果を得られるという証左でもある。」という締めがいいですね.

池内さんが今後このテーマを追っかけていってくださることを全力で期待しています!



次は7月25日ですか.