第45回「情報科学技術協会賞」研究発表賞

3)研究発表賞  
  佐藤翔氏(同志社大学)、 池内有為氏(文教大学) 、
  林豊氏(九州大学附属図書館、現国立情報学研究所)、尾城孝一氏(国立情報学研究所

   対象論文 「オープンサイエンスの今」各単著
    (「情報の科学と技術. 2018, vol.68 no.4」から「情報の科学と技術. 2020, vol.70 no.3」に掲載)

ということで、2年くらい前に関わっていた某誌連載について執筆者一同で賞をいただきました。ありがとうございます!


自分の人生において受賞らしい受賞なんて、小学生のときに授業で描いた水彩画を市の展覧会に出して金賞をもらったとか、漫画雑誌にイラストを投稿してアイスクリームメーカーが当たっただとか、それくらいじゃないだろうか。

この賞は坂東さん&大谷くんが「論文海賊サイトSci-Hubを巡る動向と日本における利用実態」(この論文の謝辞には名前を入れてもらったのが自慢である)で昨年受賞していたもので、それに続くことができたのはちょっと嬉しい。とはいえ、自分の書いてるものはいつも公開情報を咀嚼して整理しているだけで、「研究発表」なんて大したことをしていたつもりはないので、他の皆さんのおかげなんだろうと思います。NIIに来てからろくなインプット/アウトプットができていないので、researchmapに書けることがいっこ増えてよかったです。母も喜んでました。

企画者=南山さんの思いつきに乗っかってしまったときは、きっとなにかが終わったばかりで、目の前に無限の時間が広がっているように思えたんでしょうね(遠い目)。毎回自由気ままな字数だったりいろいろあったけど、締め切りは全部守ったので許してほしい。



以下、自分の書いた4本を振り返ってみる。

初回はグリーンOAの本丸に突っ込もう(最初は王道系)ということで、著作権/出版の話をしようと思ったんだった。Open Repositories 2016@ダブリンの階段教室で開催された次世代リポジトリのパネルディスカッションに参加したとき、話題がテクニカルな側面に終始しようとしていたところで、Tony Ross-Hellauer(当時はまだゲッティンゲンにいた)が「Socialな観点が欠けている」と痛烈な批判を浴びせていたのを間近で見た。そのときの強い印象が根っこにあると思う。だから記事では技術的な話題にほとんど立ち入ってない。そのぶん読み手を選ばないものにはなってるかな、とは思う。


その派生で2本目は版について書いたんだった。別に連載だからって自分の前回原稿を承前しなくてもいいのに、こうやって線にしたくなるのが自分の悪いところ。複数の独立したネタを一本の軸に沿わせてまとめあげていく(三題噺系)というのは、苦労を知ってるわりについ手を出しちゃうので、きっとこういうのが好きなんだろうと思う。個人的に一番思い入れがあるのはこの2本目だったりする。ちんまいネタだけど。


続いて3本目では乱立する版から生じるアクセスの問題について論じた、と位置づけられなくもない。でも、「最近こういう便利ツールが増えてきてるけどしくみや違いがようわからんし日本語圏で誰も紹介しないから調べて解説しておくと便利か」(よくある穴埋め系)くらいの動機だったと思う。いまみたくあちこちの大学図書館のウェブサイトでUnpaywallが紹介されてるような時代じゃなかったのですよ。いざ完成してみると単なるツール紹介ブログ記事になってしまっていて、ひどく落ち込んだ。そんななか、締切直前に舞い込んだRA21陣営からの批判を盛り込むことで、ピリッと締まってくれたかなと思う。ギリギリまで粘ってリサーチしつづけた結果こういうラッキーが舞い込んだという経験が過去に何度かあるのだけど、なんなんでしょうねこういうの。ただのラッキーでしかないけど、トレンディなネタには誰かが微笑んでくれるスキがあるのかもしれない。そうそう、かっこいいタイトルは大谷くんにつけてもらったんだった。


で、ラストはPlan Sという大ネタに挑んだ(ネタ切れで火中に身を投じてしまった系)。この4本目が世間的にはいちばん評判が良いんだろうけど、当時読めるネタを全部(OATP調べ)読んでまとめただけなので、ほんと力技でしかなかったりする。こういう100本読んで1本にまとめるってスタイルは、後戻りしないと心が決まればほとんどルーティンにすぎない。苦労はしたけど、工夫はあんまりない(強いていえば「4. 反響」の分類くらい)。ただ、なんで誰も書いてくれてなかったんだろう……といまだに不思議に思う。そして、いま読み返してみると終盤では明らかに「次世代リポジトリ」に接近しているのに、そこで1本目を自己引用しようとしていない自分が信じられない(まあ、春からの東京移住の準備しながらよくやってたと思うよ)。



当時他のネタ案として検討していたPublonsについては機が熟したタイミングで企画して松野くんに書いてもらった。自分で書けなくても、これはこれで満足。


なお、Implementation guidance改訂後の続編は船守先生が書いてくださっている。


次世代リポジトリの話は最近はPubfairとして言及されるのかな。最近、我らが正治先生の紹介が出た。



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