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カレントアウェアネス-E No.260感想

感想と感想のあいだに何も記事を書いてないと情けない。。

今回は5本。外部原稿はうち1本。

そういえば、実は前号あたりから編集担当が依田さんにスイッチしたらしく(篠田さん、1年弱の間おつかれさまでした!)。





■E1567■ ILLにおいて優れた業績を残した図書館員を表彰:バウチャー賞

巻頭は文献提供課の牧さん。お名前は存じ上げないけど、もしかして昨年くらいに入館された方なのかな。業務でILLを担当されているのでしょう(推測)。

ILLでバウチャーといえばIFLAヴァウチャーがまず頭に浮かんでしまうけど、バウチャーさんという図書館員の名前を冠した賞なんですね。2000年に創設。受賞資格に「組織内のILLやドキュメントデリバリーサービス,リソースシェアリングの分野で責任ある地位に就いていること」という条件があるので下っ端には与えてもらえないものらしい。ILLiadの開発者も2005年に受賞しているというのになるほどとうなづく。お、2011年はIDS Projectのひとか(「Information Delivery Services Project(情報配信サービス事業)」ってなんのことだろうと思ってしまった)。

キルゴア賞が有名だと思うんですが、OCLCには他にもいろいろな賞があります(一覧?)。日本でいえばNIIが一図書館員を表彰しているのに相当するようなもので、不思議な感じもしますね。

今回、シカゴ大学のラーセンさんの受賞理由は「新たな手法や作業フローの効率化に意欲的に取り組むことでリソースシェアリング(資源共有)への革新的かつ実際的なアプローチが評価され」ということだけど、なんのことかよく分からない。。あとで詳しく紹介されるのかと思ったけど、出てこない。原文を見ても、確かに「Larsen was selected for his innovative and practical approaches to resource sharing, willingness to learn and test new products and improved workflow efficiencies.」としか書いてない。うーん。これは牧さんのせいじゃないのでしょうが、かなり残念。記事には訳出されてないようですが「new products」とあり、その名称くらいは知りたいところ。

さて。私がILL担当だったときはこんな仕事さっさとなくなってしまえと思いながら日々コピー枚数を数えたりゆうメールやEMSの小包をこさえたりしてましたが、電子ジャーナルやデジタル化やオープンアクセスと言ったところで、困ったことになかなか仕事がなくなってくれないようで。ビッグディールが崩壊したらまた揺り戻しがきて仕事が増えるのかなあ。そんなわけでILLの重要性というのはまだまだゼロではないようで、こうした現場の努力に光を当てる賞の存在意義もまた、ゼロではないのかな、などと、らしくないことを考えたりもしました。





■E1568■ 日本の研究者等による学術情報利用に関する調査報告

安原さん。おなじみのSCREAL(すくりーる)の調査報告書。

久しぶりにSCREALのサイトを見たらさとしょー先生も委員に入っておられる! 第一回目の調査が2007年に行われ、2011年の今回が第二回目。4〜5年のインターバルで調査を積み上げていってくださるのでしょうか。今回は「45の対象機関から協力を得て,回答者総数は3,922名,回答率は6.04%とされている。対象機関は2007年に実施された第1回調査の25機関から拡大され」ということなので、調査対象の“裾野を広げた”感じなのかな。

第一回目からの対象機関(=より電子リソースが整備されている環境?)と、今回から対象になった機関との比較が興味深かった。

まず電子ジャーナルの利用状況に関して,自然科学分野全体では「週に1回以上」利用するとの回答が76.1%であった。2007年調査の82.3%から6.2ポイント減少している。しかし,調査結果を2007年と2011年の両方の調査に参加した機関と,2011年から新たに参加した機関にわけて集計すると,「週に1回以上」利用するとの回答が,前者は84.8%と2007年の結果よりも2.5ポイント増加しており,後者は67.8%であることがわかった。

また、以下の部分は、印刷体雑誌が新着雑誌の認知という点で効果的だと受け止められているということなのかな。バックナンバーはあんまりブラウジングしないのでサーチだけでいいけど、新着雑誌は全体をパラパラ眺めておきたいというニーズもあるか。では「電子ジャーナルか印刷体か一方だけを選ぶならどちら?」と聞いたらどうなるのだろう。

印刷体雑誌の必要性に関する質問において,新着雑誌については「電子ジャーナルがあれば印刷体の雑誌は不要である」とした回答者の割合は47.6%,「電子ジャーナルと印刷体の雑誌の両方が必要である」とした回答者の割合47.4%とほぼ拮抗していることが分かった。バックナンバーについては,印刷体は不要とする回答が56.4%で,両方必要とする回答37.9%を18.5ポイント上回った。

電子書籍端末の利用については2011年はターニングポイントになると思うので、次回調査ではより大きな変化がありそう。

SCREALの調査は研究者と大学院生を対象にしているので、学部生が抜けている。学習支援、アクティブラーニング、電子教材といった関心から、高校生〜学部生による電子リソースの利用についてもデータの積み上げが必要になるのかも。





■E1569■ ICTへのパブリックアクセス:IFLAブリーフィングペーパー

IFLAのペーパー。インクルージョンだし、依田さんですよね。

IFLA+ワシントン大学→国連に提示。政策立案者に対するチェックポイントを6つ。

大きな話すぎてコメントを差し込むのが難しいのですが、次の部分が面白かった。

五つ目には,地方に関連性の高いサービス等の開発,特に電子政府サービスに投資することの重要性が指摘されている。これについては,アクセスに対する需要を増大させるのに役立ち,パブリックアクセス施設をより持続可能なものとするとされ,また,とりわけ図書館が,地方での電子政府戦略の実施において効果的な施設となることが指摘されている。

ICTへのパブリックアクセスにおいては,コンテンツが充実すればそれに見合ったデバイスや通信速度をあらゆる人に利用可能なように対応してくことが必要になるものであり,継続的に意識を保っておくべき課題であると思われる。

インフラを整備していくために、そのうえで流通するコンテンツをリッチにしていくというアプローチ。なんかモバイルファーストとかと逆行するような気がしないでもない。





■E1570■ RLUK Hack Day:図書館資源のLOD化がもたらすものは?

篠田さん。

Linked Open Dataと言っても、それに対応するためにはコストがかかるわけで、その結果いったいどういうことができるようになるのかというのが分からないとなんとも、という話がよくあるようで。その解決を目指したイベントと言えるでしょうか。

私も、自分が担当しているサービスのメタデータをLinked Open Dataにしたらとかたまに考えますが、それがどう活用されるのか、本当に活用されるのか、いまいち自信が持てない。そのへんのイメージができるようになるまでは動けないかなあと思う一方で、とりあえずやってみたらなんか変わるかもしれないというのもあり。まあ、ディスカバリーサービスもLinked Open Dataも、その基盤となるメタデータがきっちり整備・管理できていないと、と思うわけですが。(なんかぐだぐだした段落)

今回はRLUKの総合目録の書誌データ2000万件と、TEL参加館の書誌データおよびデジタルコレクションのデータが提供されたという。こういったイベントによって何ができたのか、よりも、こういうものを作りたかったけれど、このあたりがハードルになってうまくできなかった、というメタデータ側へのフィードバックが欲しかったりする。

記事の本筋ではないのですが、

(1)英国図書館(BL)の英国全国書誌(BNB)のLODでの提供,(2)フランス国立図書館BnF)の蔵書目録とデジタル資料のデータを統合的にLODとして提供する“data.bnf.fr”,(3)ケンブリッジ大学がOCLCと共同開発した,同大学図書館の目録をLOD形式で提供する“The Cambridge Open Metadata:COMET”,(4)オランダ王立図書館(KB)のLOD戦略,(5)ロンドン大学キングス・カレッジ校によるアーカイブズ目録“AIM25”のLOD化,(6)スペイン国立図書館(BNE)がマドリード工科大学との共同プロジェクトとして開発した,同館の書誌データと典拠データをLODで提供する“datos.bne”,(7)ドイツ国立図書館(DNB)の典拠データのLODでの提供である。

と、欧州での先進的な取り組みとして紹介された事例のまとめがありがたい。





■E1571■ ニュージーランド国立図書館,利用及び再利用の方針を公表

依田さん2本目。

前の記事はメタデータのreuseの話でしたが、今度はコンテンツのはなしで。ニュージーランド国立図書館の“Policy for Use and Reuse of Collection Items”という新方針について、9つの原則をひとつひとつ紹介。最後に「国立図書館が利用・再利用について包括的な方針を提示した例として,注目される。」とあって、確かに類例がぱっと思いつかなかった。

冒頭で、“Collection Items”にはいわゆる図書館の所蔵資料だけではなく「研究者によりデジタルカメラで撮影された物理的なコンテンツ」をも含むと解説されているのがまず気になる。原文を対照すると、「physical/analogue content captured by a researcher on a digital camera」とあるからほぼ直訳か(「on」のニュアンスがそれでいいのかちょっと疑問)。これは物理的なコンテンツそのものではなく、デジタル化されたほう(この場合は写真)のことを指しているんだよね……?

各原則では繰り返し「明記」という表現が登場する。たしかに、一括してCC BYなんて提示できるのはまだ楽なほうで、実際にはコンテンツによって権利状態のバリエーションはさまざま。それらをきちんと調査・管理して、(例えばディスカバリーサービス上で)表示するということが大切なんだけど、それは言うほど簡単なことじゃない。という意味で、

原則2は,すべての所蔵資料は,明確で一貫した利用・再利用の権利及び許諾の明示とともに研究者に提供される,としている。これは,利用・再利用に関する情報が存在しなかったり,紛らわしかったり,資料と結び付けられない形で示されている場合には,誤った利用という事態,あるいは利用されないという事態が増えるとの認識に基づき,それを避けるために示されたものである。

や、続く、

原則5は,適用される著作権の制約がない場合には,NLNZは,その資料に関する文化的・倫理的問題について注意深く検討した上で,その資料を“no known copyright restrictions”(知られている限りの著作権の制約はない)と明記して利用・再利用に提供するよう努める,としている。

原則6は,著作権が適用される場合であっても,権利所有者が特定できない,あるいは追跡できない作品がある場合には,NLNZは,その資料に関する文化的・倫理的問題について注意深く検討した上で,“copyright undetermined - untraced rights owner”(著作権は,特定できない,あるいは追跡できない権利所有者にある)と明記して提供するよう努める,としている。

のあたりは国立図書館としての矜持を感じました。各図書館でそこまでやる余力はないかもしれないけど、そこにしかないローカルコンテンツ(郷土資料とか)については責任が問われるようにも思い。

また、原則9の“preferred citation”(推奨される引用形式)を提供するというのは、地味だけどたしかに非常に大きなサポートかもしれないと思いました。文献管理ツール使うよりもそっちのほうがシンプルだったりする。(ちなみに『カレントアウェアネス』はSIST02形式で文末に引用情報を添えています。)





次回は6月19日。