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カレントアウェアネス-E No.265感想

感想と感想のあいだになにも書かない2週間。その間、JSTにDOIな出張したり、ソフトボール大会に出なかったり、Library Lovers'キャンペーンの準備が本格化してきたり。



今回は6本中、外部原稿が5本。


■E1596■ MOOCを活用した図書館での大学レベルの学習機会の提供

巻頭はARG岡本さん、嶋田さん。読んでいてあんまり岡本さんの顔が浮かばなかったので、嶋田さんがメインで書いたのかなあ。

指宿市立指宿図書館とくまもと森都心プラザ図書館で始まったMOOC(gacco)の試験提供のはなし。アクセスのコストの少ないMOOCでも、端末によるウェブへの接続というコストは存在し、そこを公共図書館として支え(う)るというもの。ちょっとだけ、英国で行われてるAccess to Research(E1534参照)のことを思い出しました。まあ、オープンアクセス文献に対するアクセス提供というものではないし、こちらについては先日「Access to Researchの残念な船出(記事紹介)」というニュースが流れていて気になっているのだけど……。

コスト面で問題がないひとに対しても、MOOCコンテンツのショーケースとしての役割や、関連文献の紹介というサービスは提供しうるのでしょう(そのへんはあんまりMOOC関係なく、公共図書館で行われる一般的なセミナーと同じですね)。記事中にも「またブースがあることにより,オンラインサービスであっても存在が認知されやすい。実際,物珍しさから機器を操作してみる方も少なからずいるようである。」とありました。

どうして熊本で始まったのかは知らない/分からないのですが、「指宿市には大学がない」という環境なんですね。

個人的には

そこで今回の図書館での提供にあたっては,既に閉講になった講座も受講できるように特別に取り計らってもらっている。

という部分が結構重要じゃないかと思えました。アーカイブ。図書館ならむかしの講義が受けられるよ。



■E1597■ 2014年学校図書館法一部改正:学校司書法制化について

今井先生。

ようやく学校司書の法的な位置づけができあがった、という件。これで「学校司書」と括弧付きで書かれたり、「いわゆる学校司書」などと呼ばれたりということがなくなり、思いっきり学校司書ということばが使えるようになったんですよね。

内容はたんたんとしていて、それでいてポイントはしっかり押さえていただいてるんだろうなあと安心感の持てるレビューだという感想を持ちました。こういうレビューが後々いちばん役に立つんだよなあ。。



■E1598■ 公共図書館によるローカルミュージック・プロジェクト始まる

依田さん。

すてき。今回いちばん面白く読んだ。はてブ図書館×音楽タグに追加。同じく依田さんの書いた「公共図書館のOPACでラジオ番組を:シアトル公共図書館の取組」を思い出しつつ。

地域のミュージシャンの音楽作品を、公共図書館のウェブサイトを通じて利用者に無料提供するというもの。これもひとつの地域資料。アイオワシティ公共図書館の取り組みが、2012年6月にLibrary Journalに取り上げられ、その後あちこちに広まったというもの。ラジオのときはOPACに登録していたけど、少なくともアイオワシティの場合は専用サイトを用意しているんですね。

端緒となったアイオワシティ公共図書館では,このサービスを実施するために,1アルバムあたり100ドルでミュージシャンから2年間の使用権を得ている。図書館はこの期間中利用者に提供するが,利用者は,個人での利用を条件に,いったんダウンロードしたファイルは,そのまま保持し続けてよい。

ごちゃごちゃ言わない、シンプルなしくみだなあ。

こういったサービスからブレイクしたミュージシャンが出てきたら面白いんだけど。



■E1599■ エルゼビア社のテキスト・データ・マイニング方針とその論点

なちさん。今回一番真剣に読んだ記事。

エルゼビアさんが1月に改訂したテキストデータマイニング(TDM)方針に対し、LIBERらが7月にいちゃもんつけた件。エルゼビアでテキストマイニングというと個人的にはPiwowarさんの一件を思い出します。TDMについては、欧州であれこれやってるし、IFLAはstatement出してるし、そのうちちゃんとレビューしないといけないよねーとCA編集会議で話をしております。

エルゼビアの新方針についてはひととおり読み込んでいたのですが、LIBERのほうは原文スルーしていたので、今回の記事はありがたかったです。読んでみて、LIBERは求めすぎじゃないかという印象を持ってます。「(4)研究者がクローリングを行えるプロトコルの採用を奨励し,むしろ,TDMによるアクセス負荷に耐えうる環境を保証することが重要である」とか特に……。

それはともかく、いちばん気になっているのは以下の部分(編集担当の依田さんと絶賛ディスカッション中)。

研究者がスニペット(200文字以内に制限)や書誌データを配布する場合,CC BY-NCライセンスを含めること

エルゼビアさんの文書では、

2.1.2 to distribute the TDM Output externally, which may include a few lines of query- dependent text of individual full text articles or book chapters which shall be up to a maximum length of 200 characters surrounding and excluding the text entity matched (“Snippets”) or bibliographic metadata.

(snip)

Further the TDM Output should include a proprietary notice in the following form:
“Some rights reserved. This work permits non-commercial use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited.”

http://www.elsevier.com/__data/assets/pdf_file/0005/215492/TDM_Elsevier_License_2014.pdf

とある。TDM OutputのライセンスはCC BY-NCにしなさいよっていうことなんですが、そもそもTDM Outputというのはなんぞやというと、

2.1.1 to continuously and automatically extract semantic entities from full-text articles retrieved through the TDM service for the purpose of recognition and classification of the relations and associations between them and mount, load and integrate the results (the “TDM Output”) used for the User’s text-mining system for access and use by the User or the company, institute or organization the User is affiliated with;

まあ、分かるような分からんような。

いずれにせよ、今回の記事にはTDM Outputに相当する表現が必要でしょう。あとはこのTDM Outputには具体的に何が含まれるのかという点が気になる……(記事読んで深夜に3時間くらい調べたんだけどよく分からなかったので、エルゼビアさんに確認ちう。。)

そもそもエルゼビアさんがCC BY-NCを要求する理由がよく分からないんですよねえと依田さんと話していたり。



■E1600■ 電子書籍サービスで変わる大学図書館の業務と展望<報告>

池内さん。

エルゼビアさん主催の「eBooks Forum 2014」というイベント@オーストラリアの報告。日大の小山先生といっしょに参加されていたと昨日届いたエルゼビアさんのニュースレターで読みました。PDAがテーマ→小山先生、ということなのかな。記事中には残念ながら日本側からどういう報告を行ったのか書かれていないので、池内さんがどういう理由で呼ばれたのかまでは分からず。。(いや、研究データ以外にも手広くやってはるんだなあとびっくりして)

前半はPDA、後半はディスカバリーサービスのはなし。

PDAの文脈では、

(スインバン工科)大学では,目録に登録されたDDAのタイトルが4回貸出された時点で自動購入しているが,購入後の平均貸出回数は,自動購入分が6.67回(購入前の貸出を含めると9.67回)である

というような数字をよく見かけますが、貸出回数じゃなくて純粋な貸出者数が知りたいと思ってます。電子書籍については以前から「ちらっと見る」という利用スタイルが指摘されていますが(ソース示さず;すみません)、となると同じひと(例えば購入のトリガーを引いたひと)が何度も何度も貸出しているという可能性が高いんじゃないかと考えていて。貸出回数/純貸出者数という値が、電子書籍のほうが大きくなるんじゃないかなあと予想。(それでも図書館員選書よりも効果的な側面があることは否定できないと思いますが。)

他、オタゴ大学では「PDAにおけるリクエストは,人文学分野のものが多い」こと、オタワ大学では「(2012年に行なったDDAの試験導入の)目的は1990年代の予算不足により不充分だった歴史分野のコレクションの補完」だったこと、をメモ。

後半のディスカバリーサービスについては、エルゼビアさんの報告がめちゃめちゃ興味深い。

電子書籍へのアクセス元については「不明(unknown)」が1位となっているが,2位は図書館の蔵書目録やディスカバリーサービスであり,サーチエンジンを上回っている。そしてこれらのアクセス元から,48%は電子書籍のホームに,13%は章のページに到達する。これはサーチエンジンから論文に到達することが多い電子ジャーナルのアクセスパターンとは異なるという。また,電子書籍へのアクセス元について,2011年から2013年の経年変化をみると,GoogleGoogle Scholarからのアクセスはほとんど変わらないが,ディスカバリーサービスからのアクセスは8倍以上に増えている。

ディスカバリーサービスから電子書籍へのナビゲートについては、力入れなきゃなあと思って仕事でいろいろと地味なことをしているところ。。



■E1601■ 米国議会図書館が長期保存に適したフォーマット仕様を公開

電図課の本田さん。

LCの仕様について紹介。位置づけとしてはNISOのRecommended Practiceみたいなものかな。記事では仕様の内容よりもその意義について丁寧に説明している感じ。電図課という所属とフォーマットという表現で勝手にミスリードされてましたが、デジタルだけじゃなく紙も含めたアナログ媒体も含めた包括的な仕様なんですね。これを「毎年見直す」というんだから、本気度合いが伝わってくる。

仕様原文をぱらぱら見てみると、例えば「Textual works - Digital」なら

B Metadata
1 Title, creator, creation date, place of publication, publisher/ producer/ distributor, ISBN, contact information
2 Include if available: language of work, other relevant identifiers (e.g., DOI, LCCN, etc.), edition, subject descriptors, abstracts

というように、メタデータに関する言及もあったりして面白い(デジタルプリザベーションはちゃんと勉強したことがないけど、いつもこんな感じなんかな)。この点は記事で触れておいても良かったんじゃないだろうか。



次は9月11日。自分の原稿も載る予定。