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カレントアウェアネス-E No.245感想

今回は6本中,外部原稿が5本.しかもその5本のうち4本は(ある意味で)海外出張報告という.



E1478 - IFLAでベストポスター賞を受賞の鈴木史穂さんにインタビュー

福島県立図書館の鈴木さん.受賞を最初に知ったのは @sabarya ねえさんのツイートでした.

ポスターはクレヨンで描かれているんですね! この記事中では触れてないですが,福島民友の記事によると「日本人の受賞は初めてという」(裏が取れなかったから触れなかったのかな?).「夏休みを利用して会議に参加した」とあるから自腹で参加されたんですよね……そんな方が「図書館はどのような被害を受けたのか,現在はどのくらい復旧しているのか,原発事故のため避難区域にある図書館はどうしているのかなど,多くの方から質問を受けました。セッションでは,被災した図書館や避難所に作られた図書室の写真などをiPadで見ていただきながら,説明し」てくださったということの意義.



E1479 - シンガポールで「未来の図書館」を考える:IFLA WLIC 2013

こちらはそんな @sabarya ねえさんの報告.

「国立大学図書館協会海外派遣事業および九州大学附属図書館からの助成を得て」の参加ということで,国大図協の派遣事業でこういう会議参加が可能だったんだというのがまず最初の驚き(そして九大の助成って何? こうやって複数のファンドを組み合わせての海外出張って珍しいのでは).

南洋理工大学では「図書館の職員が全員ブログやFacebookTwitterなど何らかの形で利用者とのコミュニケーションに関わることとし,そのための研修も行っている」というのは面白いですね.どのくらいコミュニケーションが取れているのかは分かりませんがー.また,Linked Dataについて「目録業務の効率化にもつながるとも説明され,特に国の中心的な図書館が推進することの意義がよく理解できた」というのは,次の村上さんのRDA調査報告とつながりますね.New Professional SIGへの参加は天野さんらしいな,と.「私が参加したのは,国際的にキャリアを築くことについて考えるグループで」にニヤニヤし,「海外で働くことは考えたことがなかったので,新鮮な経験であった」にそれはほんまでっか?と疑問を抱いたりしました.

最終段落の「ぜひこの数千人の渦の中に飛び込み,ライブラリアンの一人として,自分の知識や経験を未来につなげてほしいと思う。」という呼びかけも,らしい.天野さんは読んでるひとを元気づける,勇気づける文章を書くのがめちゃくちゃうまいなあと思ってます(自分がちょうど乗せられやすいだけかもしれないけど).こういうひとが,ひとの上に立つ資格を持つのだ,と思います.



E1480 - 北米図書館でのRDA実践に関する調査報告

村上さん@東外大.こちらも国大図協の派遣事業(を受けたひとたちみんなに執筆依頼したらと提案したのはわたしなのですが).

彼女はかなりおもろいキャラの持ち主でいつも笑わせてもらってるですが,カタイ文章でまとめてきたなw……というのが第一の感想です.でも読みやすくて,分かりやすい記事でした.「二〇一三」の例示のあたりとかいいですね.

出張で話を聞いてくるだけじゃなく,「シカゴ大学ではRDAを使用した書誌登録作業を実践する機会を得た」というようになにか触らせてもらうのはいいなあ.

デメリットとして挙げられてる「(2)書誌作成時間の増大:多くの情報が入力可能になった点は評価できるが,データ作成のために調査時間が増えたことが問題点として指摘された。」は天野さんの記事の「効率化」とややズレるんじゃないかと感じました.うがった見方かもしれませんが.そもそもLinked DataとRDAという話の違いがあるので比べても無意味なんですが,同じ方向を向いたものではあると思うので……どうなんでしょう.



E1481 - 大学図書館による研究データ公開支援にむけて:英国調査報告

筑波大の池内さん.10月25日のSPARC Japanセミナーでも報告されますね(東京に住んでたらぜったい行くのに……).

研究データ管理まわりのはなしは力入れて追ってきたテーマなので,自分にとってそれほど目新しい情報はないのですが,それでもやはり「資料を記述し,保存してきたエキスパートとして期待されている」や「(図書館は)研究者の意思決定やデータ公開を援助することが可能だから」といった発言からは,彼我の差を感じます(そのギャップを埋めるべきかどうかはまた別の話).

最終段落に「インタビューを通じて,英国ではDCCが各大学の活動を集約し援助することによって,研究データの公開が効率的に進められていると感じた。」とあるように,とにかくDCCという存在が大きい.DCCのカウンターパートになるような機関は日本にはないと思うし,できないと思うので,もし同様の展開を考えるのならばコミュニティベースになるのかなあ(DRFとか?).

「日本においても大学図書館が研究者や国内外の機関と密なコミュニケーションをはかり,先行事例を活用することによって,研究データの公開が進展することを願う。」と締められてますが,果たして願っていいものなのか.みんな(図書館)そんなに研究データの管理にタッチしたいのだろうか.まだよく分かっていません.



E1482 - 山形大学の事例からはじまる学認の次世代認証基盤構想

NIIの山地さんと中村さん.今回いちばん嬉しかった記事はこれだったりします.

8月に次のニュースを見かけたとき,はっきり言ってまったく意味が理解できませんでした.なんかすごそうだけど,なんでPubMedへのアクセス程度で?……と.

情報・システム研究機構 国立情報学研究所(所長:喜連川 優)が推進する「学術認証フェデレーション」(学認)では、山形大学(学長:結城章夫)からの申請に基づき、同大学が発行するオンラインIDとそのIDを用いた認証の信頼性についての認定を行いました。その結果は米国Open Identity Exchange(OIX)の確認後、GooglePayPalと並ぶ7番目の認定済ID提供機関としてOIXのリストに登録されました。山形大学の同リストへの登録は、アジアにおいて初めての事例となります。この登録により、同大学が発行するオンラインIDを用いて、米国連邦政府機関NIH(国立衛生研究所)が提供するPubMed(日本を含む世界約80カ国で発行される生物医学系文献の検索サイト)等のサービスへのアクセスが可能となります。


http://www.nii.ac.jp/news/2013/0821

そのちょうど一年ほど前に書いたニュースのときもかなり苦しんだ(日本語のプレスリリースを紹介するだけのことに3時間くらいかけた記憶がある)んですが.

今回の記事のおかげでその疑問が氷解しました.肝はここですね.

利用者を認証する場合,そのサービスで扱う情報や資源の重要さに見合う信頼性をもった認証方法が要求される。例えば,単純な情報交換のための掲示板にログインする際にはIDとパスワードで十分である。しかし,財務会計や人事給与システムにアクセスする際には,ICカードによる認証が必要とされる場合がある。機微な情報へアクセスする際には,より信頼性の高い方法で,ユーザが誰であるかを確認する必要があるからである。

つまり,信頼性のレベル(LoA)を設定する必要があるのだと.そのうち今回名前が挙がっているPubMedは最低レベルのLoA1に当たる(そりゃそうですよね).そして「現在のLoA1の認定は第一歩であり,学認はより高いレベルのTFPとなることを目指している」.

良記事.



E1483 - 出版を志す人たちをサポートする公共図書館の諸活動

ラストは依田さん.

「400ページほどある同レポートでは,その多くを大学図書館の取組みに割いているが,ここでは,前半部分に掲載された公共図書館の活動をいくつか紹介」……ああ,これがうわさの400ページレポートですか…….この分量構成は,大学図書館については library as publisher と呼ばれるような取り組みが多いけれど,公共図書館ではまだ珍しいという事情が反映されているのかな?

タイトルだけ見てダグラス郡図書館のはなしかなと思ったら,違った,と思っていたらやっぱり最後にちょろっとだけ登場していました.先日,ダグラス郡図書館がThe Wire: A Writer’s Resourceという新しいブログを開始したというニュースが流れていました.人々の執筆を支援するための情報提供ブログのようで,当記事で紹介されている路線に沿った取り組みと言えますね.

当のレポートをダウンロードしようと思ったらIDS Publishing Pressというサイトに飛ばされたのが今回のハイライト.というのも,IDS Projectはリソースシェアリングに関するプロジェクトで,ILL担当時代から(つまり4年くらい前から)ずっと注目していたので.なんで??





次は10月10日ですか(夏休み初日で旅先にいる予定なので感想書けるだろうか).