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明治大学のElsevierビッグディール契約中止の事例(文献紹介)

文献紹介 電子リソース

2年前に「東邦大学がElsevierのビッグディールを切ってコストダウンに成功した事例」というエントリを書きました。以来、このテーマについては(担当でもないのに)継続的にウォッチしています。



ここ最近では以下の大学で動きが見られました。

加えて、うっかり見逃してましたが、明治大学も2014年度からElsevierのビッグディール契約を中止し、トランザクション(PPV)の導入に踏み切ったそうです。確かに3月17日付けで「【※重要】ScienceDirect利用方法変更について(2014.4-)」というニュースが流れています。



そんな明治大学の事例を報告した文献が出ていたので、さっそく読んでみました。

仲山加奈子, 菊池 亮一. ビッグディールのおわりとこれから. 図書の譜 : 明治大学図書館紀要. 2014.3, (18), p. 227-239.
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020039101

以下、かんたんに内容をご紹介します。



文献によると、明治大学の状況は、

  • 図書館資料費は10年間で大きな変更はないが、外国雑誌価格が2.9%(2001年)→30.6%(2010年)と増加

という感じ。

そこで、

  • 2012年度末に電子ジャーナル契約見直しの着手を機関決定
  • 2013年3月に各キャンパスの図書館員からなる「雑誌・電子資料契約検討ワーキンググループ」を形成(メンバー6名)

と動く。

このWGでは、まずはElsevierを対象に、冊子/電子の重複、バックファイルとコンプリートコレクションを合わせた契約巻号範囲、バックファイルの利用状況の調査を行った。その結果、

  • 購読誌217タイトルのうち2011年度に1回もアクセスがなかったのは6タイトル(2.5%)
  • 非購読誌約2200タイトルのうち2011年度に1回もアクセスがなかったのは922タイトル(39.3%)
  • ダウンロード単価は最低576円、最高613800円

などが分かった。首都圏の他大学のヒアリング(私立理系2、私立総合1、国立理系1)も実施したそうです。

これらの検討を経て、

予算効率を最も高めるには、1ダウンロードあたりの費用がトランザクション単価よりも安価なタイトルをトランザクション方式で契約し、それ以外(ダウンロード単価トランザクション単価)のタイトルは購読誌とすればよい。他大学の聞き取り調査においてもこの方法を採用している場合があった。

# ……ん。「安価」→「高価」、「>」→「<」じゃないのかな。

というように、トランザクション(PPV、現在の単価は1200円)の導入へと進む。

結果としては、2014年度から購読誌を217タイトル→49タイトルと減らして、ビッグディール契約は中止し、トランザクションは3万度ぶんを購入した(3600万円ぶんってことか)ということです。



文献を読んでいて興味深かったのは、選書の“失効”に関する言及。例えば、

こうなると、どのタイトルを購読するかは、利用者からの希望や本学の学習・研究に必要、という基本的な概念からは完全に離れ、数値上の問題のみとなる。図書館がこれまで担ってきた選書というプロセスはもはやなく、購読誌の意味合いは、ペイ・パー・ビュー数が多くタイトル全体を購入した方が安価な物、という以外になくなった。エルゼビア社と契約さえしていれば、どのタイトルを購読するかは問題ではなくなったわけである。

という部分。

また、別の箇所では、「ダウンロード数の多さとインパクトファクターの高さに関連性を見出すことは難し」かったという分析結果を受けて、

このインパクトファクターの調査は、図書館として限られた予算で収集(購読)・保存する資料として、より資料価値の高いタイトルを選定したいという思いがあったためである。しかし議論を進める過程で、「資料の学術的価値」を購読誌の選定基準に持ち込むことに無理があることが明らかになってきた。「購読規模の維持」というビッグディール契約の維持条件に縛られず、かつ必要とされる論文を可能な限り図書館として提供できるよう費用対効果を上げることがペイ・パー・ビュー方式導入の目的であった。そして論文のダウンロード単価(定期購読費/ダウンロード数)とトランザクション単価の比較のみによって機械的に購読誌を選定することが最大の費用対効果を生むことであり、そこに選定基準として「資料の価値」を盛り込む余地はないからである。

と述べています。

上の不等式にしたがって機械的にタイトル選定を行うことがコスト上最適戦略なのだと。