“機関リポジトリ”としての学校図書館

学校図書館やデジタル教科書の話題もときおり掲載されるので観測範囲に入れている『教育新聞』に、「学習意欲をもち論理的に表現する 創作物語を図書館に」という記事(2013年3月14日付け)が掲載されていました。



記事では、東京都武蔵村山市立第三小学校の国語科の公開授業のようすが紹介されています[*1]。教育上の工夫についての記述が多いんですが、注目したのは、5年生の「自分の想像した世界を物語にして学校図書館に置こう」という単元[*2]です。

その授業中、それぞれの生徒が起承転結を意識して物語を構想し、書き進めるシーンが具体的に述べられています。

近未来の東京を舞台にストーカー事件を追う刑事の活躍の物語を構想した児童は、〝はじめ〟の場面に盛り込む、時、場所、登場人物を押さえた内容として、「2050年」「東京・渋谷のような都会」「刑事」「正明さん」という内容を記述。続いて、〝中〟場面の内容では「ストーカー事件の捜索を依頼され、犯人の写真を手渡される」などの出来事を、そして、〝終わり〟の場面では、「犯人は逮捕。事情聴取から振られた恋愛相手をあきらめきれずにストーカーに至った」という結末と動機をそれぞれ付箋紙に記述、ワークシートに添付していく中で、物語の具体的構成を見いだしていった。


また一連の整理とともに、授業導入時に意識を深めた文章の起承転結や山場の効果も振り返った。児童らは、グループ協議を通じて互いの物語の山場場面の内容について吟味。物語の〝中〟場面に掲げた様々な内容から、山場として「刑事がストーカーに話しかけたところ逃走。それを正明と刑事が共に追いかけた」などを選び出していった。

正明さんの存在が気になってしょうがない、という時点で記者の掌中に落ちてしまっています。自分も中学校のころだったか、芥川の『羅生門』の「その後」を想像して書いてみるという授業を受けたことがありました。いまでもこうして記憶しているということは、楽しかったんでしょうね。なんかミステリ仕立てにしたことくらいしか内容は覚えてないけど。

それはともかく、単元名に従えば、こうしてできあがったものを学校図書館に置くんだと思います。どのようなかたちでかは分かりませんが。



この記事を読んで頭に浮かんだのは、「“機関リポジトリ”としての学校図書」というイメージでした。

生徒たち、あるいは教師たちの“学術”的な生産物を収集して、蓄積、保存していく存在としての、学校図書館。大学図書館などの機関リポジトリと違って、収集したものをウェブで公開したりっていうのはさすがに厳しいでしょうけれど。正直学校図書館については不勉強極まりないという状態ですが、この2年間情報をチェックしてきたかぎりでは“読書支援”や“学習支援(調べ学習)”については多く目にするものの、こういったアーカイブとしての機能について言及されることってあんまりなかったような、という印象です[*3]。んー、でも「図書館を使った調べる学習コンクール」の作品とかって、学校図書館で保管してたりするんだろうか。



ちょっと意識していたいテーマです(こんなのばっかやな)[*4]。


*1:立派なことに、学校のウェブサイトにも記録がありました。http://musashimurayama.ed.jp/mmced3s/30katsudou/2013-0201-1609-10.html

*2:わたし、この「単元」という単語の定義がよく分かってません。

*3:ウェブによる情報収集が中心。学校図書館関係の知人はかなり少ないです。関連団体だと全国学校図書館協議会や国際子ども図書館、雑誌だと『あうる』と『学校図書館』あたりは押さえてます。

*4:CiNii Articlesと「授業に役立つ学校図書館活用データベース」はざっと見てみました。http://www.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/