カレントアウェアネス-E No.276感想

今回も4本、うち外部原稿が3本。大変そうですね。。



■E1652■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2015年2月12日現在)

11月下旬以降の3か月弱のまとめ。まもなく4周年、か。

震災アーカイブの活用事例として、宮城県東松島市図書館の「まちなか震災アーカイブ」に興味を惹かれた。ステッカーやペンスタンドの設置場所にまつわる写真・体験談が見られる、というわけではないんだろうけど。ビジネスホテルに設置するというのは、市外・県外の人に見てもらうのにいい手かもしれないな、自分なら見そうだ、と思った。
http://www.lib-city-hm.jp/lib/osirase/osirase.html
http://www.lib-city-hm.jp/lib/2011y-library%20top/index.html

NDLのリリースした「総合調査 東日本大震災からの復興への取組の現状と課題」も大きい。
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2014/__icsFiles/afieldfile/2014/12/17/pr141225.pdf

まだまだ新しいアーカイブができたりしてるんだ。



■E1653■ 震災20年:神戸市立図書館が震災関連資料室をリニューアル

神戸市立図書館の松永さん。

こちらは阪神・淡路大震災。市の「震災20年継承・発信事業」で図書館の「震災関連資料室」の展示をリニューアルしたというはなし。時間が経つにつれ「最近は入室する方も少なくなっていた」という。最後の「しかしながら,神戸大学附属図書館や兵庫県立図書館で進められている,資料のデジタル化は当館では手つかずである」は認識してなかった。

ちょうどNHKオンデマンド(うちにはテレビがございません)でこの番組を見ていたら、中学生くらいの女の子が学校で防災学習を受けたあとで「でも体験せな分からんなって思うほんまに。話聞いとうだけじゃほんまに分からへん」と言っていた。自分が小学生のころに見せられた伊勢湾台風(昭和34年)のビデオを思い出して、そりゃそうやろうなあと思ったりした。ほかには、ある若い男の子が、両親は不仲だったのにそのときは一致団結して自分を守ってくれて「だからなんかええ思い出としてもなってる」と話していた(いや、えんえんとラップで語っていたんだが)のも印象強く残った。

最初の女の子の素直な感想を考えると、こういう展示ではなおさら“体験”できることが重要になってくるんだろうなあと思った。予防接種、みたいな。体験しなかった世代に疑似体験してもらうためにはどういったコンテンツを残し、どういった見せ方をすればいいのか。……こうして言うのは簡単だけども。

先日は東海新報の連載記事で神戸大学附属図書館の震災文庫が取り上げられていた。小村さんも登場、っていうか出まくり。

震災文庫の小村さんは「こんな内容のものを探している」と同文庫を訪れた人にいろいろと提案し、「それが相手のストライクゾーンに入ったときは達成感がある」と笑顔を見せる。利用者が求めるものを提供するためのノウハウがあるのは、同文庫の強みだ。

「勉強会に使いたいので、当時の消防署員やレスキュー隊の活動を知りたい」と訪れる消防士。「母国で大きな地震が起きたから、阪神淡路と比較したい」とやってくる留学生や外国人研究者もいる。

「本当にこんな物も必要だろうか」「どこまで集めたらいいのか」。職員がそんなふうに悩むことがあろうと、震災文庫が貫くのはあくまで「網羅的であること」だ。

誰が、なんのために、どんな物を求めているか分からない。「『時間が経過したからこそ書ける』というような資料も出てきますし」と小村さん。発災から20年たっても、収集作業の手はゆるめられない。一方にはまったく意味をなさない資料でも、他方にはどうしても必要とされていたりするのだ。

いいお仕事をされてるなあ、と思った。



http://current.ndl.go.jp/e1654:title-■E1654■ 愛知教育大学 図書館『種』プロジェクト

愛知教育大学の沓名さん。

図書館総合展でポスターを見かけて、嬉しくなって、勝手に執筆交渉をしてきたもの、です。(Refに挙がってる中日新聞の記事を見て、おおう、年下の方だったのかーwと驚いたのは内緒。)

海の向こうの取組を単にモノマネするのではなく、しっかりと自大学の環境にあわせてローカライズされてるのがすごいと思う。

米国の図書館で種を貸し出しているという記事を初めて見た時,とても面白いなと感じた。同時に本学でこれを取り入れるとしたら,どのように企画するかを考えた。そして本学の特性から,将来教員を目指す学生の経験と環境教育に重点を置いたものにすることを決めた。

実績としては、2013年度は69名に貸出、17名から返却。2014年度は花だけじゃなく野菜も増やして、140名に貸出、12名から返却。大学祭や、附属小学校・幼稚園にも進出していって、連携講座も実施。「関連資料の貸し出しも増えた」と、ちゃんと本業にもリターンがあったという。種の貸出なんていうのは図書館サービスの“本質”ではないと批判するひともいそうだけど、こうしてなんとなく関係づいてしまうところが図書館という存在の面白さであると、あらためて思ったりした。

最後の

たくさんの図書館で『種』プロジェクトをはじめることで,図書館サービスの新たな一面を多くの利用者に示せるのではないかとも考えている。

という呼びかけにはちょっとわくわくする。



■E1655■ 「忘れられる権利」の適用範囲-EUとGoogleの見解

調査局・今岡さん。

E1572E1585に続く第3弾。過去の経緯は正直すっかり頭から消えていましたよ……。それもあってちょっと難しかった。

ええと、去年5月の裁定に対して、最近、EU側が運用ガイドラインを出し、Google側は報告書を出したらしい。今回の記事では「削除対象ドメインの範囲」についての両者の見解の違いにフォーカスして解説している(ここがいちばん重要なポイントだと判断されたのかな。原文は読んでないので、そのへんはちょっと追いきれてない)。

つまり、削除したいURLが「Google.frなどのEU圏のものからアクセスできないようにすれば十分か、Google全体でアクセスできないようにしなければいけないか」という話、かな。見解の違いといっても、当然、EU側は「不十分」というだろうし、Google側は「十分」というだろう。実際そうだったというふうに読める。

以下はGoogle側の見解についての部分で、

こうした背景によれば,原則として,欧州諸国の地域バージョンについて削除を行えば,現状,データ主体の権利は適切に守られると諮問委員会は考える。確かに,欧州諸国以外の地域バージョンや国際的なバージョンについても削除を行えば,データ主体の権利を完全に保護することができるかもしれない。しかし,そのデータ主体の権利保護と競合し,さらにそれを上回る利益(情報へアクセスできるという公衆の利益)もあるという意見が委員会では多数派を占めた。

難しく書いてあるけど、結局「個人の不都合」vs「公衆の利益」という話らしく、そりゃそうだよね、と思った。

個人的には削除ドメインを限定するかしないかで実際のGoogle側のオペレーションにどう違いがあるのかという点が知りたかったりする。



次は3月5日。