読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

NDL図書館送信が始まったら利用者をどうナビゲートするか

# 一応これもディスカバリーネタで.



2014年1月にNDLデジタル化資料の図書館送信が始まりますね(2012年度著作権法改正によって新設された第31条3項の施行に伴い).次のページにいろいろ案内も掲載されています.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/service_digi.html



このサービスに参加する「図書館等」(以下,大学図書館を念頭に置いています)では,送信対象資料(NDLデジタル化資料の一部)の閲覧・複写が可能になります.利用者は,NDLまで行かなくても所属の大学図書館の館内で閲覧できるようになり,複写についても郵送複写のようなタイムラグがなくなりその場(「すぐさま」かどうかは各館の運用によるかも)で入手できるようになります.

NDLデジタル化資料は大きく(1)インターネット公開のもの(47万点.2013年8月末現在)と(2)館内限定公開のもの(179万点)に分かれます.このうち(2)の一部,著作権法上は「絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料」とされているもの,が送信対象になります.現在は出版者による「事前除外手続」の期間中なので最終的に何万点が送信対象となるのかはよく分かりませんが,数十万点というオーダーにはなるんでしょう.例えば博士論文が見られるようになるのは結構大きいですよね.

図書館側の選択肢には(a)閲覧と複写の両方を行う,(b)閲覧のみを行う,(c)複写のみを行う,32つがあります[*1].利用の手順はこんなふうです.利用者から閲覧したいという要望があったら,図書館員が館内に設置した専用パソコンにログインし,利用者に検索・閲覧してもらう.複写を求められたら,閲覧用パソコンとは別に用意した管理用パソコンで図書館員がプリントアウトし,利用者に提供する.――いずれも利用者は図書館に来ないといけないし,来ても自分で勝手にっていうわけにはいかないのですね.なお,対象となる利用者は「「登録利用者」に限られます」というような書き方がされており,いわゆる学外者はアウトか……?



さて,「利用者から閲覧したいという要望があったら」と書きましたが,その利用者はどうやって自分の欲しい資料がNDLでデジタル化されていて,かつそれが送信対象であり,自大学の図書館で閲覧できることに気づいてくれるだろうか,という問題があります.レファレンスサービスとかはなしで,自分ひとりで,です.

図書館送信サービスに参加した図書館としては,利用者にサービスの存在を知ってもらうこと,さらにその資料が送信対象であることを知ってもらうこと,という二重のハードルが待ち構えています.(図書館送信と似たサービスである)ILLの認知度を考えると,前者はけっこう厳しいんじゃないかなぁ.後者について,大学図書館では「学内所蔵なし→他大学所蔵を探す」という流れには対応していても,NDLの資料へのナビゲートは相対的に意識が弱いのではないかと思っています(だって資料を見るまでの道のりが長いし…….そこが図書館送信によって楽になるわけですが!).

利用者が「自分の大学では所蔵していないらしい→でも図書館に行くと無料で読むことができるようだ(それなら見てみるか)」と自然に気づいてくれるようにするためにどうしたらいいのか.



図書館サイド(NDLや周辺ベンダも含めた)の対応にはざっくり以下のようなものがありうるでしょうか.実現の可能性や困難度はさておき.

図書館の対応 利用者の方法
(1) 特になし NDLのサービスを検索する(NDLデジタル化資料/NDLサーチ/NDL-OPAC
(2) 自大学OPACに対象資料の書誌を投入する OPACを検索する
(3) 商用ナレッジベースに対象資料の書誌を登録してもらう OPAC等→リンクリゾルバ経由でアクセス
(4) 商用ディスカバリーサービスにインデクシングしてもらう ディスカバリーサービスを検索する
(5) CiNii Booksに対象資料の書誌を投入してもらう CiNii Booksを検索する

多くの図書館では(1)になるんだろうと思います.OPACのノーヒット画面からNDLデジタル化資料へリンクするというようなアイディアはあるでしょう.

ちょっと頑張れば(2)が可能になりそう.NDLに送信対象資料のリストを公開してもらわないといけませんが,適当なフォーマット(NACSIS-CATPなど)に変換してOPACに投入すればいい.変換スクリプト(あるいは変換後のデータそのもの)は共有できるでしょう.データ更新がどのくらいのインターバルで必要になるか分かりませんが,差分追加 or 全体更新で.各図書館でそれぞれ対応するという方法は手間だけど,それなりにノウハウもある枯れた方法だし,悪くはないかも.その書誌データのページにどう案内を書くか,というのが悩みどころか.

(3)だとOPACに書誌が存在する資料がデジタル化資料 or 送信対象だったらリゾルバの中間窓を通じてアクセスできるというイメージ.サービスを100%は活かせない感じ.

(4)はディスカバリーサービスを導入していないと嬉しくないですが,(2)とは違って中央集中的な方法です.――ところでそもそもNDLデジタル化資料って主要ディスカバリーサービスにインデクシングされてるんでしょうか? わたしそのへんの状況をよく把握してないんですが…….Summonについては,九大佛大で「エロエロ草紙」と検索してみると書誌はヒットする.でもデジタル化資料そのものにはリンクされてないようで,利用者にどうして欲しいのかよく分からない状況になってます.佛大のほうでは九大とは違い「Eブック」の書誌もヒットしますが,これはNDLサーチのうちデジタル化資料の書誌を佛大OPACに投入していて,それがSummonでも検索できるようになっている,と推測.これが上の(2)ですね.一方,お茶大のSummonではヒットしない.(なお,『エロエロ草紙』は書誌がCiNii BooksにはなくてNDLにはある例として重宝します.復刻版すらCiNii Booksにはないですからね.)

(5)についてはこないだ @dorobunemk2 さんたちと「CiNii BooksでNDL-OPACの資料が検索できてもいいんじゃないか? NDL雑索はCiNii Articlesに入ってるんだし」というような話をしていました.(このへんの課題を某WSで取り組んでみたかったんですが選考から漏れたので…….)



まあ,送信対象であることに気づいたあとでどのみち図書館まで来てもらわないといけないわけですけどね.電子ジャーナルほどの広がりを見せることは間違いなくないでしょうが,ILLと同じように“玄人”向けのサービスになっちゃうのかなあ.それはそれでいいかもだけど,ちょっと惜しい気もする.かといって「広報」や「利用者教育」には逃げたくないわけです.

*1:この資料のp.9の「複写のみを希望」を深読みして,え,そんな選択肢もあったんだと誤解してしまいましたが,やっぱり2パターンでした.済みません.http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/02shinsei.pdf