NII学術情報基盤オープンフォーラム2015 #SINET5
2日目にちょっと報告する仕事があったので1日目午後から参加してきた、ののメモ。
プログラム・講演資料、Togetterはこちら。
(特に1日目は)盛りだくさんの内容だったので逐一レポートをするつもりはなくて。尊敬する先輩のひとり、阪大の前田信治さんによく言われてるように「何を聞いたのかではなく、それを聞いて君が何を感じたのかを堂々と発信しなさい。たとえ誰になんと言われようと」ということで。まあ、だいたい思ったことはTwitterで放言しちゃったけど。。
イベントのテーマは昨今話題の「オープンサイエンス」で、要するに「大学図書館にできんの?」と吹っかけられた感じなんだろうと思う。個人的には、
- 連携協力:NIIと大学図書館がスムーズに協力して事業を進めていくためにはどうすればいいのか?
- 人材育成:オープンサイエンスやコミュニティ運営をリードしていく人材を継続的に確保するためにはどうしたらいいのか?
という2つのテーマについて考える機会となった。
前者については、脱〈NII中心〉のために本当に真剣に考えないといけないこと。例えば、テクニカルなことではメールベースでプロジェクトを進めていくのとか限界だよと思っている(NIIでQiita:Teamとかなんかそれ系のツールを契約してほしい)。後者については、研修よりも採用・人事異動のあり方についてきちんと再考していただきたい。
#SINET5 結局は人に依存するという、異動職場につきものの問題。よくわからないんだが、こんなに問題の指摘もあるのに異動職場であることが変わらないのは、図書館人事も図書館外の人事担当がやってるから?
— min2fly (@min2fly) 2015, 6月 12
のように、人材育成についてのはなしを聞いていて「え、それって人事異動を止めたらいいだけなんじゃないの?」と言いたくなる場面は多々ある。人事異動を止めればいいと主張したいわけではない。願わくば、もうちょっと人事のあり方についての議論をオープンに行えるようにならないだろうか。どうもアンタッチャブルな扱い方をされてるように見える。
以下は、各講演等についての一言メモ。
1日目:新コンテンツサービス 発表会
最初の細川課長の発表では、NIIコンテンツ課の座席表を見せていたのがとても良かった。こうやって胸襟を開くというか、組織の内情をストレートに伝えることは、外部組織との対等な協力関係を結ぶためにとても大切な一歩だと思う。集合写真を載せようかとも思った、とおっしゃっていたので次はぜひ期待したい。こういうのは対利用者でも同じだと思うんだ。。
大向先生からはCiNii Dissertationsのお披露目。現状ではNDL-OPACの書誌に寄せているというのはポイントだと思った。ResourceSyncを採用している点にはとてもびっくりして、思わずその場でブログを書いてしまった。最後に、リリースまで苦労を共にしたメンバー(NDLに戻ってしまった白石啓さんも含めて)を紹介しているのがすてきだった。
古橋さんからは4月リリースのERDB-JPの紹介。いっしょにやろう!という情熱を隠さずストレートに伝えようとする、とてもいいプレゼンで感銘を受けた。
最後、片岡さんからは10月ごろに公開予定の新KAKENのはなし。あくまで「イメージ」だけど最後の構想図(下図)に衝撃を受け、自分のプレゼンのストーリーをちょっと修正(なんというか、逃げないようにしようと)することになった。
1日目:オープンサイエンスに向けた図書館の取り組み
2時間弱、休憩なしでひたすら研究データのはなし。これはしんどい。だいたい聞いたことがあることばかりだったとしてもしんどい。他のひともそうだったんじゃないだろうか。。
4年くらい前にはこの界隈を自分の調査テーマにしていた(当時は「e-Science」というくくりで考えていた)けど、もう最近はまともに動向を追う気がなくなってきているのが正直なところ。研究データというコンテンツタイプに限定しているものの、収集、管理、利用、さらには長期保存まで、図書館サービスまるごとに近いようなはなしなので、そもそも全体を抑えることがとてもしんどい領域であると思う。はなしも抽象的になりがち。
そんなわけで、最初から完璧なスキームを組み立てることは望まず、まずは自分のまわりで公開できるデータをどんどん出していきたいなと感じた。イベントの数日前にDRF-MLで千葉大・杉田さんから「サプルメンタルデータを論文と一緒に公開してる事例、ひとつでもふたつでも結構ですのでください」という問いかけがあり、いくつかの大学から回答されていたけどそんなに事例も多くなさそう。図書館で出している刊行物や、図書館情報学分野の論文に付随するデータとか、そういうところから実際のアクションを起こしていくほうがいいんじゃないかな……と。
杉田さんの講演では「出合え、理系図書館員!」という呼びかけがあった。オープンサイエンスに対応できる人材の育成に対して、「そんなのんきなことやってられっか」というもので。「理系の図書館員知らない?」という話題は夜の情報交換会でも出た。同僚には地学専攻がいるし、北大の今年度の新人は2人とも理系らしい。名大にも物理のひとがいる。自分のバックグラウンドは数学で、これを理系に入れるかどうかは議論が分かれる(自分は哲学の兄弟だと思っているし、研究スタイル的にも文系に近い)。概して図書館業界としては「理系の人材が欲しい!」なんてラブコールをきちんと出してきてなかったと思うし、理系の人間が自分のキャリアとして図書館員を目指すことは非常にレアだろう(なので、理系出身だと「なんで図書館員なんかに?」と繰り返し聞かれる)。
NDLが以前理系向けの説明会を開いていたのはとても良かった。
当館では、近年、電子図書館・情報システム関係業務の比重が高まってきており、従来からのレファレンス(科学技術分野)に加え、理系の人材が活躍していく場は着実に増えています。国会向け、一般向けの科学技術分野のレファレンスを経験した職員が、国会、研究者・技術者を支援する仕事をご紹介するほか、IT技術の進展による情報化社会に対応するため、電子情報部の職員がどのようなことを考え、どのような業務を行っているのかをご紹介します。
http://www.ndl.go.jp/jp/employ/explain/employ_explain_ndl.html
NDLの規模だからできる、というのはあるかもだけど。
※この項、文系・理系ということばについて非常に typical な使い方をしていることはご寛恕ください。
1日目:パネルディスカッション「オープンサイエンスの潮流にどう応えるか?」
千葉大・三角さんの発言が印象強く残っている。「自分は理系出身だが、図書館員はサイエンスを恐れすぎていると思う。図書館員は貴重書や難しい言語など中身の分からないコンテンツを扱うのに慣れている。きちんと研修をすれば対応できるはず(だからNIIが研修事業をシュリンクしているのはよくない)」というようなもの。なるほど、と思った。その一方で、大学図書館で貴重書のたぐいを十分に活用できてないというのも事実だと思う。。
2日目:CiNii10周年アイデアソン
2日目は会場を変えて(客層もがらっと)、ワークショップから。CiNii Dissertationsのリリースを受けて、「Dの次」というお題で、4〜5人 x 7グループでアイディアをまとめるというもの。
自分たちのグループはCiNii Eventsという案を出した。学会や会議の情報をまとめたデータベースで、データはイベント主催者側が入力するというもの。効率的にデータを収集するために参加申込機能やアンケート機能、資料公開機能などもつけて、利用するインセンティブをつける。まあ、いわゆるConference Management Systemですね。
他のグループで出たアイディアでCiNii Rare(貴重書)というものもあった。国書総目録とか門外漢にはちょー使いにくいもんな。。でもこのへんは国文研さんの仕事ですかね。貴重書はテレビなどのメディアでもよく使われるし、探しやすさ、使いやすさが社会的に求められていると思う。
2日目:機関リポジトリ推進委員会セッション
出番。何をやっているのかよく分からないと言われる機関リポジトリ推進委員会の活動報告。
具体的には、博論調査報告書、IRcuresILL、JAIRO Crawler-List、researchmap連携の4つのトピックを紹介した。博論とCrawler-Listについてはすでに成果物が公開されており、他は現在進行中。
http://current.ndl.go.jp/node/28634
http://current.ndl.go.jp/node/28636
最後のパネルディスカッション「激論これからのIRコミュニティ」では、DRFと機関リポジトリ推進委員会の統合について話し合うのかと思ったら……むにゃむにゃする感じにとどまったという印象。ただ、このへんの(NIIにべったり依存しない)コミュニティ運営のノウハウは今後の「連携・協力」の根幹をなすテーマになっていくと思う。職場の勉強会でもそうだけど、何かしらのコミュニティを中長期的に引っ張っていくのはとても大変なことだ(そのぶんリターンも大きいんだけど)。幸い本人にやる気と能力があったとしても、定期的な人事異動や上司が邪魔をすることもある。
自分の発表
の続きになる。
どういう展開にするかは直前まで迷っていたんだけど、まわりを見渡したらすでにおねむの方もいらしたので、細かい技術的なはなしは無視してもらうことにして、この「6.1%」というマッチング率をどう考えるか?という点に過度にフォーカスすることに決めた(なので途中ずいぶんはしょった。言うべきだったことも)。ラストは、前日の片岡さん・杉田さんのポンチ絵を急遽引用しつつ、「この連携に意義はあるのか?他のしくみのほうがいいのではないか?」という問いかけをしてみた。この投げかけが届いたひとはそう多くないとは思うけれど。。
質疑応答ではいくつかフィードバックをいただけて嬉しかった。
- 某機構の方「とてもいいと思うのでぜひ進めて欲しい。システムの統合よりも連携のほうが現実的だと思う。researchmapでは不十分な項目もある。少なくともいまはまず機構内で情報をまとめたいので、いますぐにresearchmapに移行しろという圧力は嬉しくない(笑」
- 南山さん@極地研「researchmapに既に入っている書誌情報+論文データ?を遡及してJAIRO Cloudに流すシステムも開発対象になっているか」
Twitterでもちょっと話して、todoが増えた。
@hayashiyutaka そうそう。すべて的確にマッチングされた場合にどれくらいの件数になるかがわからないと評価が難しい。自分だったら片方のランダムサンプリングを250件くらいとって人力で限界までチェックするかな。統計的に95%信頼度の誤差±3%くらいで出せるはず。
— myrmecoleon (@myrmecoleon) 2015, 6月 12
@hayashiyutaka @sabarya @min2fly すみませんー。ざっくり、のべ30万件近い 京大 rmap paper+misc のうち、重複込みで 2万件程度、6%ってとこですかね。 @emondora さんも会場に居て、ちゃんと連携しなさいとツッコまれました…
— Keigo IMAI (@keigoi) 2015, 6月 12
このテーマについては、一度JSTの人としっかり話をしてみたいなあ。そして、ここいらできっちり文章化する必要があるかもしれない。