カレントアウェアネス-E No.244感想
今号は6本中、外部原稿が1本のみと少なめ。VIVOで力尽きたのでその他があっさりです(すみません)。
E1472 - 「はだしのゲン」閲覧制限に関する図書館関係団体等の動き
係名義。書いたんだ、という。この問題については、ノーコメントで。報道が始まる前、7月にKindle版が販売になっていたというタイミングが面白いなあと思っていました。あと、学内にもあったんだと。
E1473 - People's Palace:欧州最大となるバーミンガム図書館が開館
依田さん。ちょっと前にニュースでバーミンガムバーミンガムと騒がれていたので写真を見てみたらそのド派手さにびびった図書館。銀座の宝石店かなにかのようだ。
公式サイトに画像ギャラリーがありました。
記事ではなぜか(あえて?)踏み込んで触れられてはいないけど、公共図書館の閉鎖とその違法性でさんざんどたばたしている(E1249、E1269参照)あの英国で、これだけゴージャスな、“Palace”とまで称される公共図書館が誕生したというのが、ほんま驚き。「その総工費1億8,860万ポンドという金額についての議論は開館時の報道にも表れており,このような巨大な図書館を建てるくらいなら地域の図書館を維持して欲しいとの論調を伝えるものも」ってそりゃそうでしょー。
「ジュエリーの製造でも知られるバーミンガム」に興味。ちょっと調べてみると、ジュエリー・クォーターっていう宝石屋街があって、そこにミュージアムもあるらしい。
E1474 - 将来の情報環境の動向を見据えて IFLAトレンドレポート
あま……あれ、菊池さん(何
トレンドレポート。IFLAがこの手の文書を出すのはこれが初めてなのかな? だとしたらちょっと意外。というのが最初に思ったこと。
紹介されている内容はIFLA以外の機関が出しているといわれても不思議じゃないほど、“図書館”とは離れている。実際、記事中でも各トレンドの概要部分では「図書館」という単語が登場していない。さらっと読んでいると、抽象的でよくわからない。……五つのトレンドを強引にまるめこむと、アクセス、教育、プライバシー、ソーシャル、ビジネス、という感じでしょうか。そう考えてみると、ちょっと見えてくる気がしてくる。この大きなトレンドのもとで、図書館がどうしていくのか。それは今後議論を重ねるにつれ、トレンドレポートに付け加えられていくのだろうか。
E1475 - 大きな広がりを見せる学際的研究ネットワーク:VIVO
いつもお世話になっております、の四倉さん@シンプレクティック。VIVOの紹介を兼ねて、VIVOカンファレンスの報告をしてくださってます。というか、記事の企画にちょっと関わりました。
この短い記事でVIVOがどういうものかイメージわくかなぁ……もっと書いていただきたかったところ。
VIVOはいわゆる研究者データベース用のオープンソースソフトウェア。各機関ではVIVOをダウンロードして研究者データベースを構築できる。最大の特徴は、世界中のあちこちにあるVIVOのデータをつなげてひとつのデータベースにできること、なんだろう、たぶん。機関リポジトリとJuNiiみたいなもんですよね。標準化されたメタデータ(junii2)とプロトコル(OAI-PMH)ではなく,共通のソフトウェア(VIVO)によって構成される世界。と言い切ってしまっていいのか分からないけれど(VIVO compliant applicationっていうのがあるらしいので)。
例えばコーネル大学のインストールしたVIVOはこれ。それ以外の機関のVIVOのリンクがWikiの“Public VIVO Implementations”にあります。米国を中心に、英国・オーストラリア・オランダも。その下に列挙されているように、現在導入準備中の機関もたくさんあるようですね。四倉さんも指摘しているように、日本の機関は見当たらない。
研究者データの機関横断的な検索はVIVO Searchで試すことができます。そのしくみはAboutでかんたんに紹介されてるんですが、各機関のVIVOからRDFでデータ引っ張ってくる→Solrでインデクシング→Drupalで検索インタフェースを構築、っていう感じみたい。現在検索できるようになっているのは8機関のようで、その対象を拡大していくのが今後の課題なのかな。
このVIVO Searchの応用例として、VIVO Searchlightという、表示しているウェブページと関連する研究者を表示してくれるブックマークレットがあります。インディアナ大学のページには、共著者分析(VIVO Co-Author Visualization)のサンプルも紹介されています。
書籍も出てるんですね。
- 作者: Katy Borner,Michael Conlon,Jon Corson-rikert,Ying Ding
- 出版社/メーカー: Morgan & Claypool Publishers
- 発売日: 2012/09/30
- メディア: ペーパーバック
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安原さん。くわしめに解説。「ダウンロードした画像の加工も認められているが,利用目的に「出版」と回答した場合には,利用者の名前やメールアドレス,出版物のタイトル等が質問される。これらの出版に関する情報は,コレクションの出版目録の更新のために必要とされている。」がうまいなあ。再利用を、メタデータのrefineにつなげていく。
E1477 - もう一つのGoogleデジタル化 “Google Cultural Institute”
菊池さん2本目。筆が乗ってるなぁ。
Google Art Projectはずっと追いかけていたけれど、それがGoogle Cultural Instituteと呼ばれるもののひとつだったというのは恥ずかしながら知りませんでした。Google Books ProjectがGoogle x Lなプロジェクトなら、Google Cultural InstituteはGoogle x MAなプロジェクト、と言えるんですね。自分はこの“Institute”というネーミングに込められたニュアンスが掴みきれて居ない気がする。
「特筆すべきは,小学校から高校までの教育現場での利用を想定した教員向けガイドや教材資料が用意されている」を読むと、なんかもうGoogleは(デジタル)教科書作っちゃうんじゃないかと思えてくる。
次号は9月26日。