学術情報ソリューションセミナー2017 in 福岡「WALK ON THE WILD SIDE〜正解からの解放〜」

http://www.sunmedia.co.jp/information/2017solution_fukuoka.pdf

行ってきました。

福岡では例年九州大学が会場になっているけど、キャンパス移転大詰めのため、今年は西南学院大学で開催(来年はどうなるんだろう)。折しも、ちょうど4月にフォトジェニックな新図書館がオープンしたばかりで、その1階にある多目的ホールが会場になっていた。午前中は新図書館見学会・説明会も企画されていたものの、そちらはパスして職場で仕事をしていた。

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https://opac.seinan-gu.ac.jp/library/

キャパは100人程度ということだけど、カウントしたら椅子は70席程度だったかな。後ろにブースも設置するとちょっと手狭なのは否めない。でもアイスコーヒーを用意してくださったり、例年のようにサンメディアさんがいろいろと工夫されていた(が、ブースを見たりスタンプラリーする時間がまったく取れなかった……無念)。

開始前の会場には小粋な音楽が流れ、このセミナーのメイキング映像(スタッフの皆さんの準備のようす)で幕開けするなど、サンメディアの皆さんが楽しく仕事されてるのが伝わってくる。

個人的なことでは、4年ぶりにフロリダ大学のNさんとお会いして、顔を覚えていてくださったことに感涙。


以下、軽くメモを。

研究データ管理サービス〜⼤学図書館とNIIの新たなチャレンジ〜

NII尾城さん。

  • 研究者の意識調査(DOI: 10.1371/journal.pone.0021101、10.1241/johokanri.59.514)を引いて「データを公開したい、あるいは公開しなければならないが、実現できずにいる研究者が多数存在する」と。翻って日本では倉田ら(10.1241/johokanri.60.119)を引いて「日本の大学・研究機関では研究データの管理、保管、公開について、十分な認識もなく、現時点では具体的な動きは何もみられない」と。
  • 千葉大のいつもの植物画像の話を聞いていて、今後こういう画像類は従来のリポジトリとデータリポジトリのどちらで公開していくべきなんだろうねえと考える。
  • JPCOAR製作のRDMトレーニングツール。プロモーションビデオを作っていたとは知らなかった。2017.11にJMOOC/gaccoで提供開始予定。これを使って、自学自習するだけでなく、利用者向けの情報リテラシー教育の一部に位置づけるなどして欲しいとのこと。

お話する時間がなくて質問できなかったのは

  • JSTのオープンサイエンス方針に即してDMPの作成支援を始めている大学図書館は国内にあるんだろうか?
  • NII/大学図書館として組織的にJSPSに対してきちんとオープンサイエンス方針(まずはオープンアクセス方針だけでも;現状のようなのじゃなくて)を策定するように働きかけたほうが良いと思うんだけど、何かしているのかどうか?

という点。

新図書館への資料移設から見えてきたこと

西南学院大学・坂本さん。

  • 専任職員は7名のみ(他は嘱託・業務委託など)というけして恵まれているわけではない体制。私大は関連会社を作ってそこに業務委託をしていることが珍しくないけど、国立大学もそのうちそうなるんじゃないかとか思いながら聞いていた。
  • 2016.10ごろから移設と同時にシステムリプレイスを敢行したという(うちも同じっちゃあ同じだけど)。
  • 電子ブックを資産計上しているのは大変そうだなあ。PDAを実施したときの想定課題についてはうまく理解できなかったので、気になる。
  • 移設中にILL無料化を行ったが、完全閉館の時期(2〜3月)が授業期間を外したこともあって、予算内に収まったという。
  • 新図書館になって、入館者数が昨年同時期の1.5倍になったというのがすごい(初の5000人/日超えも達成)。なお、入館ゲートだけじゃなく、退館ゲートも導入していた。

学術情報のトレンドと最新情報

ベンダープレゼンタイム。例年は4〜5のベンダーから立て続けに勢い良くプレゼンが行われ、ちょっと疲れてしまうのだけど、今回は2+2に分割されていた。以下のメモはまとめて。

  • IOP:電子ブックのフォーマットについて、HTML、PDF、EPUB3に加えて、Kindle MOBIが加わる。
  • ProQuest:EBook CentralのMediated DDA(5分試読→必要なら図書館に購入リクエストを送信)について。Title Matching Serviceとして、冊子体蔵書のISBNのリストを遅ればEBook Centralに入っているかどうか1〜2週間で調べてくれるという。やってくれるのは有り難いけれど、EBook CentralのISBNリストを公開してくれていればこちらでExcelでも使って瞬殺のような気がした。
  • Wiley:電子ジャーナル。個別タイトルモデル(プライスキャップなし)、コアコレクションモデル(プライスキャップあり)に次いで、データベースモデル(例外なく全ジャーナルにアクセス可能、プライスキャップあり)というシンプルなモデルが出たという。On the Shoulders of Giants: The Growing Impact of Older Articles (Google Scholar)を引いて、バックファイルの需要について語っていた。
  • OUP:Nucleic Acids Researchが2005年にFull OAになってからIFが上がっているという(2006年6.317→2016年10.162)。OUPのジャーナルのCost Per Citationのグラフも面白かった。『博士と狂人』の映画版。

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)

e-Port Update

サンメディア・前田さん、宍戸さん。

  • サンメディアのドキュメントデリバリーサービスの話。紙でも電子でも対応しているけど、そのフロントエンドサービスとしてARROWというのをリリースしたという。

日本の学術論文:世界に向けて発信力を強化するために

エダンズグループCEO・山下さん。一番面白かった。あとでお話したかったのに、お忙しいのだろうすでに帰られていた……。

  • よく名前はお見かけするし、グローバルに展開しているけど福岡創業(港のかもめ広場んところにビルがある)なので長らく身近に感じていた会社ではある。けれど、どんなサービスを展開しているのかその全体像を把握してなかったなあと気づく。
  • ちょうど昨日(7/27)、Author Pathという「リアルタイム、オンライン・コラボレーション執筆プラットフォーム」のプレスリリースを出した。要はOverleaf、Authorea、PubPub(これだけ知らなかったけど、MIT発らしい)に類するようなツール。ただ、エディタをオンラインに載せたサービスを作ったわけじゃなく、長年の著者向けサービスのノウハウを活かして、論文執筆の「ガイド」をするようなサービスになっているのが特徴だという。例として、論文のタイトルを入力しようとすると、まずはメソッドから書いてはどうかとメッセージが出るという機能が紹介されていた。また、他のサービスが欧米発である一方、Author Path/edanzはESL(English as Second Language)という立場に立っていることも大きい。これは注目したい。

www.author-path.com

ディスカバリーサービス事始め〜知っているようで意外と知らない ディスカバリーサービスの本当〜

サンメディア・馬淵さん、大和田さん。恒例の寸劇タイム。毎年ハラハラしながら見守っている。「さとしくんは外資に行っちゃったよ。いいね、外資」が面白すぎた。

内容的にはここ1年くらいにリリースされたSummonの新機能(Altmetric、bX、統計ツール、Open Access Filter、Syndetics Unboundなど)の紹介。統計ツールがOracle Business Intelligenceに変わって、ノーヒット、キーワード検索/ファセット検索の別、が分かるようになったのは良いね。見逃していたのでチェックしよう。

文教大学における、ディスカバリーサービスの導入事例

文教大学越谷図書館・常盤さん。一番かわいかった(プレゼンが)。勉強になるなる。とりあえずプレゼンで駆使されていたBUNKOちゃんのLINEスタンプを買った(先代ののじのじくんもかわいい)。


  • サービス担当としてガイダンスもやり、Summonも担当しているという。大変だろうけど、自分で導入に関わったシステムを、自らガイダンスで売り込んでいくというのは良いありかた、とうちとこのことを振り返った。
  • 2016.3まで越谷キャンパスと湘南キャンパスの図書館でそれぞれOPAC(図書館システム)を導入していたという。偶然にも同じベンダーだったというが、なんとも……(日大もキャンパスごとにOPACがあるけど、似たような感じなのだろうか)。2つのシステムを統一するときに浮いた予算でディスカバリーを入れた、って感じらしい。
  • Summonの主たるターゲットを「図書と論文の区別がつかない」層と「図書と論文の区別はつくけど、データベースの使い分けはできない」層に定めた。ただし、ガイダンスをしてみると前者にはSummonを説明しづらいとか。
  • 商品選定は7名のチームで行った。重視した点は、操作性・直観性、リンクリゾルバー・文献管理ツールとの連携、価格、コンテンツ、検索の精度、の5点。中でも前3つ。特に、ターゲットを意識して「操作性・直観性」。で、Summonに決定。
  • 文教Searchのアイコンはサンメディアが作ってくれたという(そんなことまでやってるのサンメディアさん……)。

そういえば文教大学さんはウェブサイトの色味がうちとこと似ていて、前から気になっていたのだった。。Summonの検索対象を★印で示しているのは良いアイディア。

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https://www.bunkyo.ac.jp/faculty/lib/klib/