カレントアウェアネス-E No.268感想

10月、新体制になって初めての号。

6本中、外部原稿が3本(依田さん・篠田さん・安原さんの3人がそろってるのは久々に見る……そして最後か……?)。


■E1613■ Open Annotation,Web標準へ W3C Annotation WG始動

安藤さん( id:kzakza )。

アノテーションというネタを日本でもっとも熱心かつ継続的にウォッチしつづけてこられた図書館員、による記事。ブログで「日本よっ!これがOpen Annotationだっ!!」と高らかに叫び声をあげてらっしゃったころがなつかしい。

とのこと。うん、むかしブログで読んだから知ってる。←

でもどうしてデジタルリソースに限定してるんだろう? 2014年に知った最も衝撃的な事実は「DOIというのは digital object の identifier ではなく、object の digital identifier だ」になるのはほぼ間違いなさそうで、IDさえ振ってあればべつにデジタルじゃなくてもいいんじゃないかなあ。と、思わずDOIのことを連想してしまうほど、このアノテーションという概念は広くて、おぼつかない感じを受ける。BIBFRAMEでは所蔵データすら「アノテーション」だから……(E1386参照)。極端に言えば、RDFの主語とほとんど同じ概念なんじゃないのというくらいに思ってしまっている。

2016年にはrecommendationを出す予定らしいので、それまで待機、で。

アノテーションについては、もともとW3CにOpen Annotation Community Groupというグループがあって、それを引き継ぐかたちでこのたびWGが設置(昇格?)された、というのが今回の肝。「デジタルリソースに関係する分野全てに影響を与える議論が新たなステージに進んだ」と締められていて、じゃあCommunity GroupとWorking Groupの違いについて解説しておかないとちょっと片手落ちじゃないかと安藤さんに伝えたところ、これを読めと言われた。ふむ。いわゆるInterest Groupみたいなものなのかな。



■E1614■ 貴重書デジタル化プロジェクトの計画立案時に考慮すべき事項

文献提供課に異動された依田さん。

IFLAの“Guidelines for Planning the Digitization of Rare Book and Manuscript Collections”というガイドラインの概要紹介。Planning = 計画立案というフェーズにフォーカスしているところがポイント。まあそんな感じになるよな、という感じ。あ、でも予算獲得はこのフェーズには入らないのか? 選定には大きな影響を与えるとこだろうに。そこは済んだというところからスタートしてるのかな。

管理メタデータのうまい設計の仕方は悩むところだし、原資料の「利用にどのようなインパクトがあったのか」というところは落としがちだな、と思った。

そういえばNDLは

という手引き・研修を提供していたなあと思い出した。このぶんだと一生関わることはないと思っていたけど現在はデジタル化の担当でもあるわけだし、勉強してみようかという気に。



■E1615■ 100周年を迎えた国立台湾図書館

アジアの水流添(つるぞえ)さん。

台湾国家図書館は前を通りかかったときに入口まで入ったことはあるんだけど、他にも、国立台湾図書館、国立公共資訊図書館という国立図書館があったらしい。主な任務をざっくり分けるとそれぞれ、納本、サービス、電子化ということでいいのかな。

そのうち国立台湾図書館が100周年を迎えたというのが今回のおはなし(前身は台湾総督府図書館で、いまの名前になったのは2013年1月)。2013年に台湾国家図書館が80周年、国立公共資訊図書館が90周年を迎えていたということなので、3館のなかでいちばん歴史が古いんだ。

ちなみに英語で書くと同じになっちゃうんじゃないかと心配したんだけど、国立台湾図書館=National Taiwan Library、台湾国家図書館=National Central Libraryという違いだった。

国立台湾図書館では戦前の日本関係資料を10万冊以上と豊富に所蔵して」おり、

所蔵資料のマイクロ化や電子化も,日本関係資料から開始された。現在は,雑誌約350タイトルを収録する「日本統治期雑誌全文画像システム」,図書約22,000冊を収録する「日本統治期図書全文画像システム」などのデータベースや,同館および他機関作成の台湾関係データベースを横断検索できる「台湾学電子資源総合検索システム」を提供している。

という。「在台湾日本関係歴史資料の保存と活用」ワークショップのことを思い出した。そして「E1404 - 米国統治時代の沖縄関係資料の現地収集及びウェブ公開の意義」のことも。

「100周年記念特別仕様の利用者カードを発行した」というのが面白いなあ。実物を見てみたいけど画像をうまく見つけられず。(国立台湾図書館のサイトを見たら台湾銀行のバナーが貼ってあった。。ふしぎな感じ。)



■E1616■ 公共図書館カードの所有率と図書館満足度(米国)

安原さん。

続いて(?)図書館カードネタ。米国の図書館界では毎年9月が「Library Card Sign-Up Month」とされていて、そのタイミングで実施されたオンライン調査(ALAとは関係ないんだよね……?)の結果の紹介。図書館利用に関するさまざまな質問について、性別、学歴、カード所有の有無という観点から分析しているもよう。収入は聞かなかったのか。結果のなかでは「学歴が高い回答者ほど,図書館カードの所有割合が高くなり,そのうち大学院修了者の所有割合は79%と最も高い」「(子どもが図書館カードを所有することの重要性についてとても重要であると回答した割合)学歴でみると大学院修了者が71%と最も高く」と、学歴との相関が気になった。

そう、性別聞くんだよなあ。。聞いたほうがいいのかなあ。。聞いたところでどうにもできないんじゃという思いもあるんだけど。。(ひとりごと



■E1617■ 大学図書館版『ホライズン・レポート』,初の刊行

篠田さん。

ホライゾンレポートは大学図書館版作る気があったんだwというのが最初の驚き。作成過程において公開Wikiで議論が行われていたというのは知らなかった。

レポートでは「トレンド」「課題」「技術の発展」がそれぞれ6つずつ挙げられている。他のバージョンのホライゾンレポートでもそうですが、そうたいしてトンガったことが書いてあるわけではない、です。出ている要素はちょっと現状追認かなあという印象を受け(そりゃそうでしょうけど)、トレンドで「1〜2年」とされているものはだいたい「今」のほうが適当だと感じることが多いし、時間的順番にも違和感を覚えることが少なくない。

いずれにせよ大学図書館関係で使いやすいレポートがいっこ増えたことはときどきありがたい、はず。



■E1618■ 図書館におけるLinked Data:実現させよう!<報告>

電子情報サービス課の竹鼻さん。

8月にBnFで開かれたIFLAのサテライトミーティング「図書館におけるLinked Data」の報告。発表資料・動画は公開されているんだ。

午前に,特に多言語化・多様なデータモデルへの対応を中心とした事例紹介として図書館からと開発者側から発表する2つのセッションがあり,午後に,語彙のコントロール・知識組織化体系などLinked Data(CA1746参照)を実現する技術要素にポイントを置いた発表のセッションと開発ベンダ3社によるパネルディスカッションがあり,全体として4部構成で行われた。

自分はLinked Dataよりもむしろ多言語メタデータのマネジメントに関心があるので、この午前中のはなしが特にありがたい。WorldCatばかり見ていたけど、そうか、Europeanaだってそうだった……(不覚)。メタデータマネジメントを担当していると、オープン、オープンと言うよりも、まずはきっちり管理したいという思いのほうが強くなって、それはあんまりよいことじゃないのかもしれないけど……。Europeanaのスライドをぱらぱらめくっていて、p.14になんとなく嫌な気持ちになったw

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WorldCatについては、先日出た書誌情報ニュースレターに「現在、OCLCでは、WorldCatの多言語の書誌データを活用し、さまざまな言語に翻訳されている作品のグルーピングの精度を向上させる取組みが行われています。この取組みの詳細は、次号でご紹介する予定です」と書いてあって、ちょー楽しみにしている。

後半の「ExLibris社の代表者は最新の製品ではURIアクセスとJSONでの返戻を行う」ってのはPrimoのことですかね? data.bnf.frのシステムってまったくチェックしてなかったけど、そんな面白そうな感じなのかしら……。



次号は10月30日、と3週間インターバル。

カレントアウェアネス-E No.267感想

夏休み最終日。id:haseharu の新居に遊びに行って、あとはひたすら模様替えやら断捨離やらをしていたら終わってしまった。


今回は5本すべてが外部原稿(うち1本はインタビューだけど)。苦労がしのばれます。おつかれさまでした。


■E1608■ 図書館のインパクト評価のための方法と手順 ISO 16439:2014

永田先生。ISO 16439(中身は見れない)のオーバービュー。

インパクト」という単語は最近よく目にする(主に「研究インパクト」として)。記事を読むと、評価手法が具体的に書いてあって、国際規格というか実践ハンドブックみたいだなという印象を持った。

で、「インパクト」というのはなんぞやということなんだけど、

それに対してこの規格は,未着手の,図書館がもたらす「変化」を対象とする。

インパクトとは「図書館サービスとの接触によって生じた,個人又は集団における異なり・変化」と定義され,個人に現れるインパクト(例:個人の能力や態度・行動の変化等),機関やコミュニティへのインパクト(高等教育機関のランキング等),社会的インパクト(例:社会的包摂や文化的遺産の保存などへの影響),それに経済的インパクト(例:投資収益率,地域経済への影響等)があげられる。

ということで、ポイントは「(図書館サービスのもたらした)変化」らしい。

自分のなかではこういったものも含めて「アウトカム」という単語でとらえていたので、混乱してしまう。アウトカムとインパクトの本質的な違いはなんなんだろう? ためしに「アウトプット アウトカム インパクト」でぐぐってみるといろいろ出てくる出てくる。これとか斜め読みしはじめてみて、ちょっとやっかいだなと思ってやめた。このへんに踏み込むとめんどうくさくなるので、今回の記事ではスルーされたのかしら。



■E1609■ 大学図書館員の将来を示唆する図書館評価会議<報告>

慶應・酒井先生。Library Assessment Conferenceの報告で、評価ネタが続く。

ポイントは、この、“図書館の評価が図書館を評価するだけで間に合うなら”[*1]という話でしょうね。

会議では様々な図書館評価の指標や実施事例などが発表されていたが,その範囲は広く,伝統的な図書館サービスの評価から大学における教育そのものの評価にまで及んでいた。

自分がむかし書いた「E1324 - 大学図書館の生み出した価値をデータに基づいて示す試み」や、先日読んだばかりの「平成26年度第18回大学行政管理学会定期総会・研究集会に参加しました(2日目) - Clear Consideration(大学職員の教育分析)」を思い出しました。id:high190 さんのレポートでは、図書館以外の部署がいろいろなデータを保有していて、図書館のデータとあわせて分析したいなあという欲望を刺激します。

(まったく詳しくないので不用意発言ですが)図書館評価とInstitutional Researchはまだしっかりと出会っていないという印象で、カレントアウェアネス・ポータルでもこの用語は渋田さんのCA1817という例外を除いてまだ登場していないという状態ですね。この記事でも登場しなかったので、北米でもそんな感じなのかなと思いました。



■E1610■ マイクロ・ライブラリー憲章の制定と今後への期待

マイクロ・ライブラリーサミット(ナカグロはひとつでいいのか)の主催者である、礒井さん。

今年のサミットで採択された「マイクロ・ライブラリー憲章」のはなし。「マイクロ・ライブラリーとは何か?」と「そのために次のことを応援します」という部分に分かれている。この憲章を、次の記事のネタである「図書館学の五法則」(およびその再解釈)と比べてみるととてもおもしろい。それぞれにないものはなにか?など。またにくい記事の並べ方をしたなあ、依田さん。

冒頭で「マイクロ・ライブラリー(私設図書館)」としているのはちょっと気になる。公的なマイクロライブラリーはないという認識なのかな。あとすげーどうでもいい話だけど「本のないマイクロライブラリー」はこの憲章上は存在できないw 箱のふたを開けたら何も入ってないというマイクロライブラリーも、それはそれで哲学的。

与太はともかく、定義をさだめることで、「マイクロ・ライブラリー」の存在がくっきりし、さらなる広がりを目指すことが目的とされている。定義が決まればそこから漏れてくるものも出てくるはずで、今度はそっちの動きに注目したいところ。次はなにが出てくるんだろ。



■E1611■ 時代は変わり順序も変わる:『図書館学の五法則』再解釈の試み

日本でランガナタンといったらこのひと、の吉植さん。

6月に出たOCLC Researchのレポートを、9月27日という命日に合わせて紹介。現代の利用者の情報行動にサービスを沿わせろというはなしで、それ自体は多く方がすでに知るところなんだろうけど、それを五法則の再解釈(順番入れ替え)という見せ方で出してきたのが非常におもしろい。レポート本文はけっこうごついのでまったく読んでません。。

記事はドラフトの段階で見せてもらっていて、第五法則の「share of attention」ってのがよく分からないよねーという話を吉植さんとしていました。E1387を書いたときに勉強したのでattentionはアレじゃないかというアドバイスをしたり。一方のshareについては「共有」だと思ってましたが、

さらに,今後も図書館が成長する有機体であることの重要性を確認した上で,成長可能な一つの領域として,“share of attention”を成長させること,すなわち,情報を得る上での人々のアテンションについて,図書館サービスに振り向けられる割合を高めることを挙げている(E1387参照)。そしてその成長を様々な観点から測定することの重要性を説いている。

という部分を読むと「市場のシェア」ということだったのかな。……というのも、オリジナルの第五法則で主語が単数形(A library)になっている点がかれこれ10年近く気になっていて、特にOCLCの“The world's libraries. Connected.”というスローガンを考えると、ここにツッコミを入れないわけはないだろうと思ったわけですよ。だから、share of attentionというのは、図書館というコミュニティ全体でアテンションを共有することで、Googleなどへ立ち向かおうという話なのかなと。



■E1612■ GreyNet Award受賞の池田貴儀さんにインタビュー

JAEAの池田さんインタビュー。CA-Eに誕生日を刻んだひとはさすがに初めてではないか。

受賞の一報[*2]を目にしたときから、震災アーカイブという注目の集まる活動で池田さんという個人が表彰されるというのが不思議だったんだけど、その謎が解けた感じ。

やー、すごいなー、と思いながら読み進めて、でも、最後の「ぜひ,一度,海外の会議に参加してみください。図書館や図書館員に対する見方が,ほんの少し変わるかもしれませんよ。」というメッセージがとても響いたのでいろいろどうでもよくなったw こんなふうに国際的な仕事ができるような人間になりたいものだ、そのためには何が足んないのかなあ、いつかは、などと思いつつ。

世に多数ある専門図書館のなかでも、友人が勤めていることもあってJAEAはいちばんなじみのあるところで。人数が少ないせいもあるのかもしれないけど若手にきっちりチャンスを与えていく組織だなあという印象を持ってます。

しかし「データ・フラッギング」、気になる。



次号は10月9日。2014年度も後半戦ですね。

*1:by スーパーカー「My Girl」

*2:2014/8/1: [eastlib] Congratulations to Librarian Kiyoshi Ikeda on receiving the GreyNet Award

カレントアウェアネス-E No.266感想

今回は6本中、外部原稿が5本。わたしも1本書きました。



■E1602■ 黒板による広報の可能性:京都大学吉田南総合図書館の事例

巻頭は古巣の皆さん。CA-E初の写真掲載、というパンドラの匣を開けてしまった感ある。

去年一年間働いていた職場の話で、自分が企画協力をした記事でもあるので、非常にコメントしづらい、です。最初は企画者の想いみたいなものをだらだらと書こうかとも思ったんですが、この記事に対してそんなことしても興ざめだしね……。あくまでひとつの事例報告なので、読んだ方に何かを得ていただけたらいいなと願うばかりです。

といいつつ、ひとつだけ。

多数のご想像の通り、この黒板広報は非常に属人的なものです。描き手が変われば、内容も、テイストもがらっと変わる。そのひとがいなくなったら、同じものは提供できない。みんないなくなったら、維持すらできないかもしれない。そこに継続性の危うさを感じるひとは多いと思います。それはなかのひとたちだって十二分に分かっている。けれど、たぶん、広報は“ひと”なんだろうと思うのです。“ひと”は“ひと”に惹きつけられる。属人的であることから逃げてはいけない。図書館のサービスは図書館員という、利用者とおんなじ人間が行っている。いま、図書館広報というものでなにより伝えなくてはならないメッセージはこれなんだろうと思っています。

黒板を書けない側にいる人間がこの事例を広く紹介したいと思った理由は、ただその一点に尽きます。



E1603■ 庭先の本箱“Little Free Library”,世界へ,そして日本へ

依田さん。

積年の想いを込めたなあ、という記事。一文目で敢えて「の」を四連続させているあたりとか。

Little Free Libraryという活動に注目しはじめたのは2011年の後半だった、と思う。最初のころは「これはなんだろう。重要な動きなんだろうか?」という戸惑いが強くて、同僚ともそんな会話をしていたと記憶している。例えば、それまでもたまに見かけた、使われなくなった電話ボックスを小さな図書館に変えてしまうような取り組みとどう違うんだろうかと。じつはその印象はいまでもそんなに変わってなくて、「その小さくてシンプルな仕掛け」が効いてるにしても、「普及の大きな推進力となったのは,たくさんのメディアに取り上げられたことだった」という一文に対して「どうして人々はこんなにもLittle Free Libraryに惹きつけられるのだろう?」という疑問が頭に浮かんでくる。記事では、トッドさんが「これはマジックのようなものだと感じ」たというくだりが紹介してあって、当のご本人も似たような不思議さを感じてはったんだなあと分かって、なんか嬉しくなった。

# マジック、っていいですよね。自分がマジックという単語で必ず思い出すのはスーパーカーの「Lucky」という曲で(ジュンジくんが言ったんだっけ?)。こういう魔法みたいな瞬間をいちどくらい手にしたいものだ、と思ったりします。



■E1604■ ディスカバリーサービスの透明性向上のためになすべきこと

書きました。1月にE1522を書いてから半年ぶりになります。自分の記事では初のCC BY。

6月に出たドキュメントなので取り上げるのが遅すぎなんですけれども。ユサコニュースさんを超える記事にするぞという後発っぽい目標を持って執筆しました。自分の記事はどうにも具体的な情報がぎっしり詰まって読みづらいものになりがちなんですが、たぶんそれで良い、自分はそういうものが読みたいんだ、と思ってるんでしょうねえ。最後、EBSCOさんの話は取ってつけた感が拭えないと思うのですが、字数的には限界だし(これで2000字ほぼジャスト)、さりとて触れないわけにはいかないし、ごめんなさい、という感じです。

編集担当(依田さん)のコメントを受けて都合4回ほど手直ししました。例えば、

  • 出だしちょっと飛ばしすぎじゃないか →ちょっとだけ抑えめに
  • セントラルインデクスと統合インデクスのどちらを使うか
  • インデクスとインデックスのどちらを使うか
  • "take specific measures"でmeasure=評価と誤訳していた点を修正
  • メタデータスキーマのくだり(原文は、robustなスキーマを推奨する、現在普及しているスキーマは〜である、というやや間接的な表現になっていて、現状のスキーマに対する不満足がニュアンスとして込められているように思える。そこをどう表現するか、しないか。)

など。誤訳んとこは完全にすっぽ抜けだったなぁ……(いや、文脈に引きずられたんです)。



■E1605■ 大学図書館のコレクション構築とデジタル・コンテンツ<報告>

日大・小山先生。

前回の池内さんのキリ番レポートの続編。冒頭、おふたりがどういう報告をされたのかも書いてある。

「筆者が特に印象を受けたのは,各大学がいずれも,デジタル・コンテンツ優先のコレクション構築方針を打ち出していたこと」。日本では、電子ジャーナルはともかく電子書籍についてはその段階まで行ってないようで、もちろん主な原因はそこまでコンテンツが充実していないことでしょう。仕事で選書をしていても、利用者として資料を探していても、ご存知のようにまだまだという感触。とはいえ、コンテンツが充実してきたときに、どう方針を振るのか、その方針をどういうしくみ(例えばPDA)で支えるのか、というのは今のうちに考えておかないといけないのだろうと思うのですが。

今回の記事で一番引っかかったのは、

その結果は,図書館員の役割や業務にも大きな影響を与えている。すなわち,デジタル・コンテンツの収集を優先することで,相応の手間がかかったり,課題はあったりするものの,冊子体資料に比べて手続きや管理が簡素化されたことなどから,より多くの時間を教育や研究,革新的な図書館サービスの開発にあてられるようになったとのことである。

というくだり。やっぱ手間かかってんだ、もうちょっと具体的に知りたいな、どうしたら減らせますかね、というところ。



■E1606■ 大学/研究機関はOA費用とどう向き合うべきか<報告>

さとしょー先生(先月も見かけたような)。8月のSPARC Japanセミナーの報告で、こちらもCC BY。

2012年12月のSPARC JapanセミナーでAPCというトピックががっつり扱われたときと比較すると、大学図書館業界の雰囲気(「機関としてAPCに向き合う必要性は感じているが,しかしどう関わればいいのかわからないという図書館側の戸惑いが感じられた」)はそれほど変わってないのですが、先日の調査報告書がまとまって、事例が把握できてきたのは大きな前進だなあ、と。いやもちろん、APCに対する認識は確実に広まってきているとは思うのですが。

原研の抜刷料のはなしはそれこそAPCなんていうことばを知るよりずっと前に id:haseharu から聞いていたものでした。ただ、当時は正直ピンと来てなくて、その重要性は2年前くらい前から理解できてきたところ。旭川医科大学の事例は大学図書館にとってひとつのモデルになりそう。「機関全体のAPCに関連する情報を図書館が得ることはそれほど難しくはない」に軽く驚き、「伝票等からはAPCであることや,支払先がわかりにくい場合も多く,集計は困難である」にへええと。このあたりは標準化の余地がありそうだなあ。

各大学のアクションとしては,やはり「機関がAPCに関与するにしてもしないにしても,予算化の前提としてOAに対するポリシーをまず固めること」と「いずれにしても判断を下すためには,現在のAPC支払い状況を把握すること」の2点ですか。



■E1607■ IFLA,電子書籍の貸出をめぐる各国の動向を紹介

支部図(しぶと)の横田さん。

IFLAのeLending Background Paperって、懐かしい。まだ2年しか経ってないのにもう改訂版が出たんですね。こうしてちょくちょく動向をアップデートしていってくれるんならとても助かるところ。

文末にある通り、メッセージとしては「図書館は,自らの役割を果たすべく一層声を上げていかねばならない」ということなんだろう。「技術的中立の観点から,紙の複製品も電子データの複製品も本質的には同じであるため,後者だけに制限をかけることは不当」というカナダの判例は非常に気になるなあ。記事中にOverDriveという単語がなかったのでまさかと思って原文を見てみると「OverDrive dominates the English language library market. 」とちゃんと書いてあった。そういや、紙の本がない図書館が誕生というニュースにはもはやまったく動じないけど、「電子書籍を出さない出版社からは買わない」というボイコットを行う図書館はあったっけ。などと、ネタが大きすぎるときは散発的な感想になりがち。

冒頭が電子書籍の定義から始まっていて、何をいまさらという感じもあるけれど、難しいですよねえ。自分とこのサービスでも、デジタル化した古典籍のコンテンツタイプを「電子ブック」にすべきか「デジタル化画像」にすべきなのかという問題について考えたことがあって。いまのところ、360 MARC Updatesで提供されている書誌データを「電子ブック」として登録しているのが現状で、そりゃ管理の観点からはすっきりしているけれど、ユーザの感覚からしたらどうなんだろうね、というのは頭の片隅にある。(PCではなく)タブレットスマートフォンで読むものが電子書籍だ、というのもひとつの感覚だろうし。



次は、9月25日(そのころはようやく夏休みのはず)。

カレントアウェアネス-E No.265感想

感想と感想のあいだになにも書かない2週間。その間、JSTにDOIな出張したり、ソフトボール大会に出なかったり、Library Lovers'キャンペーンの準備が本格化してきたり。



今回は6本中、外部原稿が5本。


■E1596■ MOOCを活用した図書館での大学レベルの学習機会の提供

巻頭はARG岡本さん、嶋田さん。読んでいてあんまり岡本さんの顔が浮かばなかったので、嶋田さんがメインで書いたのかなあ。

指宿市立指宿図書館とくまもと森都心プラザ図書館で始まったMOOC(gacco)の試験提供のはなし。アクセスのコストの少ないMOOCでも、端末によるウェブへの接続というコストは存在し、そこを公共図書館として支え(う)るというもの。ちょっとだけ、英国で行われてるAccess to Research(E1534参照)のことを思い出しました。まあ、オープンアクセス文献に対するアクセス提供というものではないし、こちらについては先日「Access to Researchの残念な船出(記事紹介)」というニュースが流れていて気になっているのだけど……。

コスト面で問題がないひとに対しても、MOOCコンテンツのショーケースとしての役割や、関連文献の紹介というサービスは提供しうるのでしょう(そのへんはあんまりMOOC関係なく、公共図書館で行われる一般的なセミナーと同じですね)。記事中にも「またブースがあることにより,オンラインサービスであっても存在が認知されやすい。実際,物珍しさから機器を操作してみる方も少なからずいるようである。」とありました。

どうして熊本で始まったのかは知らない/分からないのですが、「指宿市には大学がない」という環境なんですね。

個人的には

そこで今回の図書館での提供にあたっては,既に閉講になった講座も受講できるように特別に取り計らってもらっている。

という部分が結構重要じゃないかと思えました。アーカイブ。図書館ならむかしの講義が受けられるよ。



■E1597■ 2014年学校図書館法一部改正:学校司書法制化について

今井先生。

ようやく学校司書の法的な位置づけができあがった、という件。これで「学校司書」と括弧付きで書かれたり、「いわゆる学校司書」などと呼ばれたりということがなくなり、思いっきり学校司書ということばが使えるようになったんですよね。

内容はたんたんとしていて、それでいてポイントはしっかり押さえていただいてるんだろうなあと安心感の持てるレビューだという感想を持ちました。こういうレビューが後々いちばん役に立つんだよなあ。。



■E1598■ 公共図書館によるローカルミュージック・プロジェクト始まる

依田さん。

すてき。今回いちばん面白く読んだ。はてブ図書館×音楽タグに追加。同じく依田さんの書いた「公共図書館のOPACでラジオ番組を:シアトル公共図書館の取組」を思い出しつつ。

地域のミュージシャンの音楽作品を、公共図書館のウェブサイトを通じて利用者に無料提供するというもの。これもひとつの地域資料。アイオワシティ公共図書館の取り組みが、2012年6月にLibrary Journalに取り上げられ、その後あちこちに広まったというもの。ラジオのときはOPACに登録していたけど、少なくともアイオワシティの場合は専用サイトを用意しているんですね。

端緒となったアイオワシティ公共図書館では,このサービスを実施するために,1アルバムあたり100ドルでミュージシャンから2年間の使用権を得ている。図書館はこの期間中利用者に提供するが,利用者は,個人での利用を条件に,いったんダウンロードしたファイルは,そのまま保持し続けてよい。

ごちゃごちゃ言わない、シンプルなしくみだなあ。

こういったサービスからブレイクしたミュージシャンが出てきたら面白いんだけど。



■E1599■ エルゼビア社のテキスト・データ・マイニング方針とその論点

なちさん。今回一番真剣に読んだ記事。

エルゼビアさんが1月に改訂したテキストデータマイニング(TDM)方針に対し、LIBERらが7月にいちゃもんつけた件。エルゼビアでテキストマイニングというと個人的にはPiwowarさんの一件を思い出します。TDMについては、欧州であれこれやってるし、IFLAはstatement出してるし、そのうちちゃんとレビューしないといけないよねーとCA編集会議で話をしております。

エルゼビアの新方針についてはひととおり読み込んでいたのですが、LIBERのほうは原文スルーしていたので、今回の記事はありがたかったです。読んでみて、LIBERは求めすぎじゃないかという印象を持ってます。「(4)研究者がクローリングを行えるプロトコルの採用を奨励し,むしろ,TDMによるアクセス負荷に耐えうる環境を保証することが重要である」とか特に……。

それはともかく、いちばん気になっているのは以下の部分(編集担当の依田さんと絶賛ディスカッション中)。

研究者がスニペット(200文字以内に制限)や書誌データを配布する場合,CC BY-NCライセンスを含めること

エルゼビアさんの文書では、

2.1.2 to distribute the TDM Output externally, which may include a few lines of query- dependent text of individual full text articles or book chapters which shall be up to a maximum length of 200 characters surrounding and excluding the text entity matched (“Snippets”) or bibliographic metadata.

(snip)

Further the TDM Output should include a proprietary notice in the following form:
“Some rights reserved. This work permits non-commercial use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited.”

http://www.elsevier.com/__data/assets/pdf_file/0005/215492/TDM_Elsevier_License_2014.pdf

とある。TDM OutputのライセンスはCC BY-NCにしなさいよっていうことなんですが、そもそもTDM Outputというのはなんぞやというと、

2.1.1 to continuously and automatically extract semantic entities from full-text articles retrieved through the TDM service for the purpose of recognition and classification of the relations and associations between them and mount, load and integrate the results (the “TDM Output”) used for the User’s text-mining system for access and use by the User or the company, institute or organization the User is affiliated with;

まあ、分かるような分からんような。

いずれにせよ、今回の記事にはTDM Outputに相当する表現が必要でしょう。あとはこのTDM Outputには具体的に何が含まれるのかという点が気になる……(記事読んで深夜に3時間くらい調べたんだけどよく分からなかったので、エルゼビアさんに確認ちう。。)

そもそもエルゼビアさんがCC BY-NCを要求する理由がよく分からないんですよねえと依田さんと話していたり。



■E1600■ 電子書籍サービスで変わる大学図書館の業務と展望<報告>

池内さん。

エルゼビアさん主催の「eBooks Forum 2014」というイベント@オーストラリアの報告。日大の小山先生といっしょに参加されていたと昨日届いたエルゼビアさんのニュースレターで読みました。PDAがテーマ→小山先生、ということなのかな。記事中には残念ながら日本側からどういう報告を行ったのか書かれていないので、池内さんがどういう理由で呼ばれたのかまでは分からず。。(いや、研究データ以外にも手広くやってはるんだなあとびっくりして)

前半はPDA、後半はディスカバリーサービスのはなし。

PDAの文脈では、

(スインバン工科)大学では,目録に登録されたDDAのタイトルが4回貸出された時点で自動購入しているが,購入後の平均貸出回数は,自動購入分が6.67回(購入前の貸出を含めると9.67回)である

というような数字をよく見かけますが、貸出回数じゃなくて純粋な貸出者数が知りたいと思ってます。電子書籍については以前から「ちらっと見る」という利用スタイルが指摘されていますが(ソース示さず;すみません)、となると同じひと(例えば購入のトリガーを引いたひと)が何度も何度も貸出しているという可能性が高いんじゃないかと考えていて。貸出回数/純貸出者数という値が、電子書籍のほうが大きくなるんじゃないかなあと予想。(それでも図書館員選書よりも効果的な側面があることは否定できないと思いますが。)

他、オタゴ大学では「PDAにおけるリクエストは,人文学分野のものが多い」こと、オタワ大学では「(2012年に行なったDDAの試験導入の)目的は1990年代の予算不足により不充分だった歴史分野のコレクションの補完」だったこと、をメモ。

後半のディスカバリーサービスについては、エルゼビアさんの報告がめちゃめちゃ興味深い。

電子書籍へのアクセス元については「不明(unknown)」が1位となっているが,2位は図書館の蔵書目録やディスカバリーサービスであり,サーチエンジンを上回っている。そしてこれらのアクセス元から,48%は電子書籍のホームに,13%は章のページに到達する。これはサーチエンジンから論文に到達することが多い電子ジャーナルのアクセスパターンとは異なるという。また,電子書籍へのアクセス元について,2011年から2013年の経年変化をみると,GoogleGoogle Scholarからのアクセスはほとんど変わらないが,ディスカバリーサービスからのアクセスは8倍以上に増えている。

ディスカバリーサービスから電子書籍へのナビゲートについては、力入れなきゃなあと思って仕事でいろいろと地味なことをしているところ。。



■E1601■ 米国議会図書館が長期保存に適したフォーマット仕様を公開

電図課の本田さん。

LCの仕様について紹介。位置づけとしてはNISOのRecommended Practiceみたいなものかな。記事では仕様の内容よりもその意義について丁寧に説明している感じ。電図課という所属とフォーマットという表現で勝手にミスリードされてましたが、デジタルだけじゃなく紙も含めたアナログ媒体も含めた包括的な仕様なんですね。これを「毎年見直す」というんだから、本気度合いが伝わってくる。

仕様原文をぱらぱら見てみると、例えば「Textual works - Digital」なら

B Metadata
1 Title, creator, creation date, place of publication, publisher/ producer/ distributor, ISBN, contact information
2 Include if available: language of work, other relevant identifiers (e.g., DOI, LCCN, etc.), edition, subject descriptors, abstracts

というように、メタデータに関する言及もあったりして面白い(デジタルプリザベーションはちゃんと勉強したことがないけど、いつもこんな感じなんかな)。この点は記事で触れておいても良かったんじゃないだろうか。



次は9月11日。自分の原稿も載る予定。

カレントアウェアネス-E No.264感想

ソフトバレー大会からはや2週間、ってことですか。その間、機関リポジトリ推進委員会のキックオフミーティングでNIIに出張したり(技術WGのメンバー)、今年のLibrary Lovers'キャンペーンの企画会議をしたりしていました。

今号は6本中、内部原稿が2本。とはいえ残りの執筆者も(元)カレントアウェアネス編集企画員の面々で占められてますね。。



■E1590■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/8/4現在)

4月以来の震災まとめ。およそ4か月の情報がまとめられていて、そろそろ年3回ペースになっていくのかなと。

正直なところ、福岡にいるせいか、震災のことを忘れたわけではないけれど、一日一回は意識の俎上にのぼるんだけど、強く意識することはやはり少なくなってきたように思う。いつだったか、福岡県出身の20代同僚から、2005年の福岡県西方沖地震までほとんど地震を体感したことがなくて、最初はこれが地震だということが分からなかったというはなしを聞いて、そういう土地なのかと驚いたりした。たしかにこちらに移住してきてから揺れを感じたことはいちどもない気がする。

そんなわけでいろいろと見逃しているのだけど、特に、

国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)では,新規コンテンツとして,(中略)国立国会図書館の東京本館における震災時の画像・動画等の記録が追加された。
http://kn.ndl.go.jp/information/292

に反応。たしかに、短いものだけど、3本の動画が公開されている。不気味な映像。

あとはCA-Rにもなっていたこのニュース。

8月4日,灰色文献に関する国際的なネットワークGreyNet(GreyLiterature Network Service)の2014年のGreyNet Awardに,日本原子力研究開発機構の池田貴儀氏が選出されたことが発表された。

おめでとうございます。CA-Rのタイトルに人名が入っているのは初めて見た、かも。



■E1591■ 大震災と小松左京が遺したもの

この4月から宮城県図書館に出向中の眞籠さん。

同館で6月に開催されたトークイベント『小松左京が遺したもの-震災の記憶・未来へのことば-』のレポ。瀬名秀明さんが出演していたり、東北大の教授で作家の方がいるんだと驚いたり、ということでこのイベントは記憶に残っていた。記事では、『日本沈没』(1973年)の執筆に「当時最先端の機器」だった電卓が駆使されていたとか、「関東大震災での情報の混乱がきっかけとなってラジオ放送が始ま」ったとか、本筋と関係ないところが面白かったりした。

個人的には、小松左京のことばよりも、瀬名さんの、

ほんのすこしの想像力があれば防げる災害も,一度“体験”しないと我々は上手く想像できないことを指摘した。故に,個々の事象に関する専門的な解説だけでなく,災害の全体像と人間の心の動きを交えた物語を描くことが,人々に災害を伝えるためには重要であると述べた。

ということばが響いた。記録を残すことはもちろん大切だけど、記録が記録として残るだけで役に立つわけではない。記録の利活用というときに学術利用のことばかり考えていたけど、瀬名さんのような作家にしかできないこともあるんだろう、と改めて。いつか震災アーカイブにもとづいて紡ぎだされた物語が登場するのだろうか。



■E1592■ 少年院法改正の経緯と条文における「読書」への言及について

大阪府立の日置さん。矯正と図書館サービス連絡会でも活躍されており、ARGカフェで「矯正施設に対する図書館サービス」という発表をされたことも。

6月に抜本的改正が行われた(施行日は未定)少年院法について、読書という観点からの解説。とても勉強になり、今号でいちばん時間をかけて読んだ。現行少年院法の条文にも初めて目を通した。。

まず、刑務所の根拠法には規定があるのに、少年院法にはこれまでなかったというのに驚く。今回の改正により全17条→全147条と条文数が格段に増えていて、少年鑑別所法(こちらも全132条と多い)が独立するなど、本当に抜本的改正という感じ。改正の経緯は2009年の広島少年院職員による暴行事件ということだけど、直接読書とは結びつかないと思うし、大幅改正を行うのにあわせてこれまで規定されていなかった読書についても盛り込んだということなのかな。

関連する条文は、少年院法の法案では、

  • 78条(少年院の書籍等)
  • 79条(自弁の書籍等の閲覧)
  • 80条(時事の報道に接する機会の付与)

で、少年鑑別所法の法案では、

  • 65条(少年鑑別所の書籍等)
  • 66条(在院中在所者以外の在所者の自弁の書籍等及び新聞紙の閲覧)
  • 67条(在院中在所者の自弁の書籍等及び新聞紙の閲覧)
  • 68条(新聞紙に関する制限)
  • 69条(時事の報道に接する機会の付与)

となっている。記事では少年鑑別所法は「少年院法より条文数が多い」とだけあったけど、少年院と少年鑑別所という組織の性格の違いからくる差異を除けば、実質的な違いはないように思えた。実際、少年院法の78条は少年鑑別所法の65条に、79条は66条〜68条、80条は69条に対応している。少年鑑別所法で66条と67条に分かれているのは、少年院在院者が一時的に少年鑑別所に在所することがあり、通常の在所者よりも制限が強くなっているからのようだ。68条は66条で参照されているだけかな。ただし、66条は「allow, deny」で、67条(および少年院法79条)は「deny, allow」な構造になっていて、根本的に考え方が違うとは言えるかも。

これらの施設におけるインターネットアクセスはどうなっているのだろう、というのも気になった。

自分は少年院にも少年鑑別所にもお世話になったことがないんだけど、数年前に刑務所図書館について調べていたとき、それが日本にどれだけ存在しているのかが分からなくて興味をもったことがある。



■E1593■ Altmetricsに関するNISOプロジェクト第1期のまとめ

さとしょーさん。カレント-E初のクリエイティブ・コモンズライセンス適用記事(CC BY)。

6月に公表された、NISO Alternative Assessment Metrics Projectの第一期の成果をまとめた文書の紹介。文書の内容は、いわゆるaltmetricsに関する論点整理で、「定義」「研究成果」「用途」「研究評価」「データの品質と不正対策」「グルーピングと集約」「分野や国等による事情の考慮」「ステークホルダーの観点」「今後の推進のための方策」という9点がまとめられている。論点整理にもとづき今後も活動を進め、Timelineによると2015年秋冬にはRPが公表される予定らしい。

論点を眺めていて、まあそうだよねえ、COUNTERのときも似たような話が出たんだろうねえ、というなかで、いまさらなるほどと思ったのは、

●用途
Altmetricsは研究成果を「発見」するためのものなのか,つまり出版直後でまだ論文からは引用されていない優れた成果を見つけるためのものなのか,それとも研究成果を「評価」(evaluation)するためのものかという,用途の違いの重要性を指摘する意見が会合等では多く挙げられていた。

という部分。そうか、別に評価に使うだけじゃないのか、と。指標がalternativeになれば、用途もalternativeになるなんて言うと、若干うそっぽいけど。

altmetricsもいつかalternativeじゃなくなるのだろうか、とか、alternativeをはっきり定義しちゃうととそれに対するalternativeもまた登場するだろうな、などと想像しているだけなら楽しい。ただ、個人的には(少なくとも研究評価指標としての)altmetricsは海の物とも山の物ともという印象。かの世界機関リポジトリランキングでは採用されてしまっているけど。

そういえば、NISOのプロジェクトで「大学経営層」がステークホルダーとして登場するのは結構珍しいのでは。Ithaka S+Rではよく見かけるけど。そうでもない?



■E1594■ 電子書籍を長期保存するために:論点整理

篠田さん。

Digital Preservation Coalitionのレポートの紹介で、こちらも論点整理。「電子書籍の所有」「電子書籍の販売モデル」「電子書籍の定義の広がり」「デジタル著作権管理(DRM)」「コンテンツの恒常性」「長期保存を支援するビジネスモデル」「法定納本」の7点が紹介されている。

記事中に、ボーンデジタルという単語が出てこない点は気になった。もっと気になるのは、現在は論点整理をしているようなフェーズだったんだろうかということなんだけど(とはいえ、こういう論点の共有すらできてないというコメントも見かけたし、まだまだそんな段階なのかなあ。電子書店が潰れて騒がれたりもするわけだし)。

論点の内容じたいには特に目新しいものがあるわけではないだろうと思い、学術的な電子ジャーナルの長期保存の場合との本質的な違いは何かという視点で読んでいた。一般ユーザ市場の規模の差、DRMの有無、あたりだろうか。でも一般ユーザのアクセス権の長期保証についてはまとめて議論するのは筋が悪い気がする……。

読んでいてなんかもやもやするのは、長期保存が重要な課題だというのは賛同できても、いち大学図書館員として具体的にどういうアクションが取れるのか思いつかないからだろうか。契約電子コンテンツの長期保存はPorticoやCLOCKSSに任せておきたいし、国内についてはNDLに期待したい。それよりも長期的なアクセス権の保証(必ずしも長期保存を意味しない)や、自館でデジタル化したコンテンツの保存のほうが課題であり。それは自分が目先のことしか考えられてないということを意味するんだろうか、ともやもや。

そういえば最近Porticoのtriggered contentsのニュースを見かけない(カレント-Rにもなってない)なと思ったら、自分が見逃していただけでいろいろあったらしい。2013年8月にK-theory(Springer)が対象になっていてびびる。

法定納本については、昨年7月にeデポが始まって、はや一年。そろそろ報告が読みたい。



■E1595■ 国立世宗図書館開館と韓国の政策情報サービス

アジア情報課の緒方さん。

韓国国立中央図書館の分館として昨年12月に開館した国立世宗(セジョン)図書館の話。先日のカレントアウェアネス企画会議でもちらっと話題になり、そのときは「せじょんってなんだろう」と聞いていたんだけど、韓国では国の行政機関がソウルから世宗特別自治市に移転していっているということだったらしい。自身は移転せず、また、なんとなく韓国は遠隔サービスでいきそうなイメージがあるけれど、近場にサービス拠点を新設したんだね。

世宗図書館の政策情報サービスとして、政策情報総合目録の構築(2014年下半期にサービス開始)、公務員を対象とする学術雑誌目次メーリングサービス、政策分野別オンライン主題ガイドの提供、公務員を対象とする政策メンターリングサービスの提供、の4つが紹介されている。内容はそれほど目新しいものではないけど、「公務員を対象とする」というセグメンテーションが面白いなと感じた(けど、NDLでも支部図書館で同じようなサービスをしているわけか)。大学図書館でいえば職員をターゲットにしたサービスに相当する。はじめ、韓国内の全公務員を対象にしているのかと思ったけど、(セジョンの?)国家公務員ということ?

韓国には政府認証基盤(GPKI)というのがあるらしい。メモ。

そういえば、NDLではこうして中韓国立図書館から来客があった際に、職員が中国語や韓国語の通訳を担当していてとても驚いたのだった(篠田さんも中国からの来客に対応されていた)。



次号は8月28日(自分の原稿の締切じゃないか……)。