カレントアウェアネス-E No.263感想

この土日は九州地区国立大学附属図書館ソフトバレーボール大会ってので大分大学に出かけてました(のでいまごろ書いてる)。参加は任意にせよ、九州の各大学から図書館員が一堂に会してスポーツをするって、ふしぎな感じ。うちの部長が挨拶でおっしゃっていたように、他の地区ではなかなか見られないよなあ。近畿では毎週のように勉強会やら研究会やらが開かれていたけれど、こういうのも良いものです(結局優勝したし、由布川渓谷も湯布院も楽しかったけど、太ももが痛い)。



今回は6本中、外部原稿が5本。しかも5本のうち3本(鳥澤さん含む)が調査局関係とは……重たい……(現編集担当は元調査局だから苦にならないのかもしれないがー)。


■E1584■ 進化する学術レコードと変わりゆくステークホルダーの役割

巻頭は id:otani0083(初執筆)。自分が企画提案した記事なので事前になんども読んだ。久々に校正の過程も垣間見て、相変わらず的を射たアドバイスするなあとしみじみ思ったり。

ネタはOCLC Researchのコンパクトなレポート。学術レコードを抽象的にとらえていては実用性に欠ける。かといって具体的に(例えば従来の目録規則のように媒体別に分けるなど)しすぎると本質を見失う。そこで抽象と具象のあいだでちょうどいい塩梅のポイントを探ろうという趣旨のもの。記事ではその結果をまとめたフレームワークを中心に解説している。

後半のステークホルダーの役割については他で言及されていることとそう変わらないと感じたけれど、前半の

学術レコードのコンテンツの分類については,ジャーナルや書籍に代表される学術成果,研究過程で生成される資料,成果公開後に補足的に生成される資料の3つに分けている。研究過程で生成される資料には,ソフトウェアや実験プロトコルなどの「メソッド」,データセットなどの「エビデンス」,学会発表や研究助成金の提案書などの「ディスカッション」がある。また,公開後に生成される資料には,メーリングリスト,ブログや学会発表などの「ディスカッション」,追加の発見や誤りの修正を加えた「リビジョン」,要約や一般向けリライトなどの「リユース」がある。

という分類にはそうきたかっと刺激された。大学の機関リポジトリにしばしば「学術成果リポジトリ」や「研究成果リポジトリ」と名前がついていることからも分かるように、大学図書館では従来、主に「学術成果」というコンテンツにフォーカスしていたわけだけど、今後、それ以外のコンテンツにどこまで絡んでいるのか、成果公開時点で固定化されがちなメタデータをどこまで「成長」させていけるのか、実務的にはかなり難しいけど面白いよなあ、と思いながら。

なお、渋沢財団の松崎さんから、scholarly recordの訳出についてコメントをいただいた。recordという単語へのこだわりはアーキビストならではだなと思いつつ、そこまで意識が及んでなかったことを反省(とはいえこう訳すしかないとは思う)。



■E1585■ 「忘れられる権利」をめぐるEUの裁定とGoogleの対応

調査局の今岡さん。

このネタは先月のE1572で扱ったばかりなのにもう続編が……! 前回はEU側のはなしで、今回はGoogle側に視点を移している。忘れられる権利について自分ではほとんど追ってないんだけど、E1572の感想で疑問として述べた部分(の一側面)が解説されていてすっきり。

ただし,対象国において検索結果の削除がなされたとしても,対象国以外では,従前どおり,検索結果が表示される。ここを捉え,海外メディアは自社の記事が英国における検索結果からは削除されているが,米国では表示されること等を報じており,検索結果が削除された記事について,より注目を集める事態が起きている。

当然だけど削除申請はURL単位かぁ(裏側では名寄せされてそうで怖い)。



■E1586■ HathiTrust訴訟,第二審でフェアユースが一部認められる

CA1702でGoogle Books裁判についてレビューを書かれた鳥澤さん(調査局から異動されたんですね)。

基本的なことから丁寧に書かれていて読みやすい。こちらの裁判もまだまだ先が長そう……。記事では言及されてないけど第一審の結果についてはE1406でちらっと触れており、HathiTrust側は「a decisive victory for libraries and Fair Use」と述べている。それに比べると、今回の第二審(連邦第二巡回区控訴裁判所)では原告側に流れを戻した感じ。つまり、第一審でフェアユースとして認められた

(3)参加図書館が一定の図書等(所蔵図書等,喪失・盗難等された図書等,代替物の購入が公正な価格では困難な図書等)について作成したデジタル複製物の利用者への提供

が、今回は

代替物を公正な価格で入手できない可能性,参加図書館が所蔵図書等を喪失又は破損することにより他の参加図書館が複製する可能性などに関して,第一審裁判所がフェアユースに当たるかどうかの審理を尽くしていない

という理由で差し戻されたという結果になっている。尽くしていない、か。第一審ではどういうポイントが足りなかったんだろう。。



■E1587■ 創意工夫を促す大学図書館の取組:職員向け小額助成金制度

安原さん。

米国のヒューストン大学図書館で2006年にスタートしたユニークな制度について、Library Innovation誌の文献にもとづいて紹介。面白い、面白い。この記事が巻頭でも良かったんじゃないかなあというくらい。

特に

図書館で試験前の深夜にパンケーキを提供する“Finals Mania”は,2008年に初めて開催されたイベントである。春学期と秋学期の最終週に学生協会等との共催で行われたこのイベントは,初回から約400名の学生が参加した。今では助成金の必要もなくなり,完全に独立したキャンパスの恒例行事となっている。2012年の春学期には1,600人の学生が参加する規模となった。

がゆるくていいw 申請プロジェクトは同館の4つの戦略目標のどれかに合致してないといけないはず。これは「(4)図書館のブランドを再構築する」なのかしら。Refで紹介されていたFinals Mania Spring 2014というFacebookのアルバムを見ると、みんなとても楽しそう。図書館でなんでパンケーキなんだろうか、とも思うけれど、大学のなかでこんな光景が見られるのなら、そんな疑問は正直どうでもよくなってくる。

これで思い出したのが先日東洋大学で行われていた「図書館de朝カフェ」という企画。そうは書いてないものの、これも時期的には試験勉強応援キャンペーンだったのだろうか。

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各プロジェクトの予算については「当初の助成金の年間総額は1万8,000ドルで,一つの企画に対して支給される金額の上限は2,000ドル(のち5,000ドルまで引き上げられた)」という。日々「例えば20万あったら何がしたいかな?」と考えながら仕事をするのは意義がありそう。自分の思いつくアイディアの場合は、どちらかといえば予算よりも異動(による継続性の崩壊)のほうがネックになったりするけど……。



[http://current.ndl.go.jp/e1588:title=■E1588■ 労働者階級女性の図書館利用:ハダスフィールドの事例から

八谷さん。

今回で3本目。トリニティカレッジダブリンを扱ったE1439でも、ロンドン図書館を扱ったE1521でも、図書館利用を通じた読書傾向の実態というのがテーマになっている。

今回の舞台は、1856年ごろのハダスフィールドの女子教育機関。労働者階級には「まず読書習慣をつけることを優先すべきであるため,それが好ましくない読み物であっても」という理由で、その図書館ではフィクションを多く所蔵していて、よく貸出されていた、という。E1521で紹介されていた文献でも、「知識人(high-brows)を対象に創立されたロンドン図書館」で、当時非倫理的とされていた「フランス小説がどれほど,またどのように利用されていたか」が調査されていたのを思い出した。記事後半はこちらもE1521と同じく公的資料(貸出記録)+私的資料のはなし。このあたりが八谷さんご自身の研究テーマなんだろうか。

恥ずかしながら読書史についてはまともに本の一冊も読んだことがないんだけど、だんだん興味が湧いてきた。個人的には、

このように,中産階級を多く含む同機関の運営委員会の思惑と実際の利用とはしばしば食い違った。労働者階級女性が上からの読書指南に「反抗して」いたとする著者らの結論は少々極論であるかもしれないが,少なくともそうした指針に準拠せず,能動的に読書を楽しむ読者の姿が本論文においても描かれている。

というような「ズレ」が好み。そうか、そういう意味では読書史は選書史とも言えるのか。



■E1589■ 100周年を迎えた米国議会図書館議会調査局

調査局の帖佐さん[*1]。

調査局のモデルでもあるLCのCRSの概要についてまとめた記事。こういうのは辞書的に使えるので重宝する。1915年立法レファレンス部門→1946年立法考査局→1970年議会調査局という名称変遷をたどっていること、ウェブサービスとしてはCogress.govへと統合されていっていること、をインプット。

「2012年度では,議会に対し約70万件の調査依頼等への回答及びサービス提供を行っている」という規模にはびびった。サービス日数が不明だけど、ざっと1日あたり二千数百件になるか。でも職員が600人もいるようだから、1人あたり1日4〜5件程度という計算になり、そうべらぼうに多いわけでもないのかな。

1991年に国立国会図書館で講演したW・H・ロビンソンCRS次長は,CRSの果たす役割として「情報工場」「政策コンサルタント」「シンクタンク」の3つを挙げている。

立法サービス、かっこいいよなあ。

むかし中国出張したときにも痛感したけど、「レファレンスサービス」は、レポートをまとめてクライアントに提出するくらいのレベルまでやって初めて胸を張ってそう言えるんじゃないだろうか、という感覚がちょっとあって。きっちり調べて、正確かつわかりやすく書く。NDLなんていう組織に出向してしまったおかげか、図書館員にとって最も基本的で重要なスキルはそれだと思えてしまっていて。そのせいでこんなブログを書き続けているんだろうなあ(幸いいまの業務は調べものが多くて楽しい)。



次は8月7日(その間、8月1日には機関リポジトリ推進委員会技術WGのキックオフミーティングでNIIに行ってきます)。

*1:お名前の読み方が分からないのでぐぐってみたところ、ああ、この(大根と絡んでる)方か……、となった。

カレントアウェアネス-E No.262感想

先日「地域活性化志向の公共図書館における経営に関する調査研究」のEPUB版が追加公開されてましたね。

EPUB形式でのパブリッシュは、カレントアウェアネス・ポータルのコンテンツでは初めてのはずだし、もしかしたらNDL全体でも初めてなんじゃないだろうか……(曖昧)。ただ、PDF版は国立国会図書館デジタルコレクションに登録されているけれど、EPUBのファイルはそうではないというのが気になるところ。登録ポリシーかなにかによるものなのかな……。



さて、今回は6本中、外部原稿が5本。


■E1578■ 神戸市立図書館が「神戸賀川サッカー文庫」を開設

神戸市立中央図書館の松永さん。

賀川さんという、神戸市出身の編集者からの寄贈資料5000点を特別コレクションとして整備し、館内の専用資料室(火・木・土のみ開室)で公開したというはなし。どうもフリューゲルスが合併したときに私のなかでサッカーに対する興味は失われたので資料自体についてはコメントできないのですが、会話OKというデザインによって生まれた場のありかたが素晴らしいなと思いました。

賀川氏の「図書・資料に囲まれて仲間とサッカーを語り合うルームを持ちたい」という望みを叶えるため,室内では自由に会話をしていただけるような配慮を行った。開室日は毎週火・木・土となっており,それに合わせて賀川氏も来館される。開室日にはサッカー資料の閲覧より賀川氏との“サッカー談義”を楽しみに来館される方もおられる。

「神戸賀川サッカー文庫」は賀川氏の望んだサッカー関連の図書や雑誌に囲まれた人と人がつながる場となりつつある。中央図書館内にありながら,ドアを開けて部屋に入ると別世界なのである。

特に、ご本人が来館されるというくだりからは、公共図書館での「住み開き」とか、ヒューマンライブラリー(リビングライブラリー)といったキーワードが頭に浮かびました。同じような文庫をたくさん作るのは場所やコストの面からいって無理があるでしょう。でも、今回のようにパーマネントなコレクションとして受け入れるという方法ではなく、市民のコレクションをもっと“動的”に公共図書館に取り込む方法を考案できたら、さまざまな展開が考えられるのではないか、と想像していてちょっと楽しくなりました。図書館のコレクションだけが、その自治体のコレクションではないはず。(大学でいえば研究室資料みたいな。ちょっと違うか。)

お願いしたいことが2つあって。1つは書き出しが「神戸市」になっているところ。今回は別の箇所で「兵庫県」という単語がなんとか含まれているからいいものの、この記事が「兵庫県」という検索キーワードでヒットするようにしておいてほしい。というのも先日E1484が「北海道」でヒットしなくて困ったという経験があったので(札幌じゃなかったっけ?と数分悩んだ)。日本については都道府県別のタグを付与するのもアリかもしれない(遡及入力が大変だけど)。

もう1つはサッカーやスポーツに関するコレクションというのは日本でどれくらいあるのかという言及が欲しい。「レビュー」という特色を大切にしているカレントアウェアネス・ポータルの一コンテンツとしては、事例報告であっても、単にそれだけにはとどまらずに、レビューという視点を持って他館の取り組みについても盛り込んでいってほしいなと。



■E1579■ 日本におけるOAジャーナル投稿とAPC支払いをめぐる調査

NIIの高橋さん。意外にも初めてのご執筆だったそうで(自分のときにお願いしておけばよかった……)。

SPARC Japanが5月に出した「オープンアクセスジャーナルによる論文公表に関する調査」という報告書の紹介。高橋さんと調査の関わりが明記されてないけど、WGのキーパーソンということで良いのかしら。

なお、この調査をテーマにしたSPARC Japanセミナーが8月4日に行われますね。早川さんが紹介されるJAEAの事例が気になってます(長屋くんからちょこちょこ聞いていたけど)。

APCの訳語はまだ定着してないと認識してますが、今回は「論文処理費用」を使用している。調査は、予備調査と本調査(アンケート調査、インタビュー調査)の2段階で構成されている。予備調査はDOAJとScopusをもとに作成した「APCによるOAジャーナルリスト」をベースに、53大学に呼びかけ、44大学が参加。本調査のうちアンケート調査はウェブで実施し、44大学から2475件の回答。インタビュー調査は8機関。アンケート調査の対象は理系研究者のようで、人社系でAPCのOAジャーナルって多くはないだろうけど全くないのかなというのが気になった(Open Library of Humanitiesはまだなのか)。

結果に関しては、研究者の行動も図書館の現状も特に自分の認識とはズレはなく。でも、

・論文の投稿先を選ぶ際に「オープンアクセスであること」はあまり重視されておらず,「分野における評価」,「雑誌の対象範囲と論文の合致」,「適切な査読の提供」等の従来からの決定要因に適合するOAジャーナルの出現が,OAジャーナルでの掲載論文数の増加を駆動している可能性がある。

はきちんと押さえておく。プロの研究者の大多数は、OAジャーナルだから投稿しているわけではない、のだな。(OAじゃない媒体になにか書きたいとはあんまり思わない自分とは違う。)

記事にもあるように、まずは大学全体としてのAPCの状況を把握することが必要で、次いで大学全体としてのOAポリシーの策定(とそれに伴い求められるAPC支出への支援)の検討、ですよね。OAから話ずれますが、紙の図書についても、費用(消耗品)として購入されているものって図書館で把握しきれてないよなあ。大学によって状況は違うだろうし、国立と私立でまた異なるのかもしれませんが。図書館を通さずに購入されている消耗品の図書から見える利用者のニーズってものがあるのかもしれない。

しかし、シリアルズクライシス→OA(機関リポジトリ)だ!→APCだっ!→……? という一進一退の攻防が面白いといえば面白いです。まあ、図書館サイドはちっとも勝ててないのですが。

なんにせよ、こういう報告書を読むたびに思うのは、自分も早くこういう調査/報告書に関われるようになりたいとことだけです。



■E1580■ ニューヨークとシカゴで公共図書館がインターネットを“貸出”

いろいろ貸します系記事に定評のある依田さん。

タイトルは若干ミスリーディングな気もするんだけど(ダブルクォーテションはインターネットに付けるべきだと思う)、NYPLのプロジェクト名“Check Out the Internet”を受けているのだろう。

公共図書館の館内におけるインターネットアクセスの提供からさらに一歩踏み込んで、モバイルWi-Fiルーターを貸し出すという取り組みを、ニューヨークとシカゴ(またエマニュエル市長か!)で実施予定だという。いずれも財源はナイト財団の助成。どちらも在住者向けなので旅行者がふらっと借りられるようなものではないらしい。ニューヨークでは最大1年、シカゴでは最大3週間と貸出期間には違いが見られるが、貸出のバーターとして、オンラインでの?学習プログラムやリテラシー講習に参加しないといけないというしくみになっている。

タイミング的に記事には含められなかったのだと思いますが、オハイオでも同様の取り組みが。



■E1581■ 文化情報資源と創造産業の融合:Europeanaアプリコンテスト

電子情報サービス課の安藤さん(恐るべき新人さんと耳にする)。

図書館・博物館・文書館でデジタル化した文化情報資源は学術領域だけではなく産業分野において(どういった)活用が可能なのか? というような問題意識にもとづいたアプリコンテスト。今回は第1回目で、テーマは「2つの教養部門(自然史教養部門,歴史教養部門)」という。最優秀賞を受賞したのは“Pathway Authoring Tool for Museums”、“Trimaps”、“Zeitfenster”という3つのアプリケーション。それぞれキュレーション、古地図(伊勢ぶらり的な)、AR、という感じ。最後のZeitfensterはGoogle Glass向きかな。

このコンテストでは,(中略)市場での成功可能性や,実現にかかる予算などの運営計画も重要な評価ポイントとなる。

ということなので、最優秀賞のアプリはその点でも高く評価されたんだろう。各アプリの評価されたポイントについての言及もちょっと欲しかったかなあ。いまいち市場での成功可能性が見えてこなかったので。

以前にも書いたような気がするけれど、こういったアプリコンテストから、コンテンツのメタデータに足りないものへのフィードバックができると嬉しい。



■E1582■ 英国政府,孤児著作物利用促進のための制度設計の方針を公表

南さん。この感想執筆史上もっと難しかった記事。

ECの孤児著作物指令の英国内適用の期限が10月末迫っているという状況で、英国政府が規則案を策定してパブコメを行った。英国政府からの質問に対して寄せられた意見を、政府方針とともに取りまとめた報告書「孤児著作物に関する専門的コンサルテーションへの政府回答」が5月末に公表された。今回の記事はこの報告書の内容紹介で、27の質問のうち5つを取り上げている。著作権者サイドと利用者サイドで意見が分かれ、その間で政府が落としどころを見つけているもよう。

……概要はこうだと思うのだけど、読むのにすごい時間がかかってしまった。編集の工夫でもっと読みやすくできるのではと思い、理由を考えてみた。

つまづいた箇所は主に次のふたつ。ひとつは、第4段落で登場する「27の質問」が誰から誰への質問なのかが分からなくなったこと。ネタが「政府回答」なので国民からの質問なのかとつい思いこんでしまったけど、これは政府の質問に対する国民からの意見に対する政府の回答なんですよね。ややこし。もうひとつは、質問1で質問と回答が対応してるのか理解できなかったこと(今でもよく分かってない)。「認可機関」の解説がないし……。最初の質問でつまづいてしまって、以後ちょっとつらかった。質問6の「請求がなかった料金」もしくみがよく分からず(請求しないというケースがありうる制度なのかな)。

あとで他の記事も読みつつ勉強していたら、E582、E1206は参照しておいたほうがいいと思えた。

また、

この報告書は,上述の経過を示した上で,(1)英国でのみ適用されることを想定するライセンスの枠組み案と,(2)EU指令を適用する場合の枠組み案を示し,2014年1月10日の意見募集の際に提示した,これらの枠組みを適用する際の27の質問について,質問ごとに,意見の要約と,これらに対する英国政府の方針を示している。

この1・2と各質問の関係が気になってしまった。そこはあんまり重要じゃないのかなあ。



■E1583■ 持続可能なデジタル人文学のために:大学における支援の現状

菊池さん。

Ithaka S+Rの「Sustaining the Digital Humanities」というレポートの紹介。レポートの内容についてはコンパクトにまとめ、文脈を丁寧に解きほぐしているからとても読みやすい。今回のレポートは2011年の「Funding for Sustainability: How Funders' Practices Influence the Future of Digital Resources」(CA-Eで未紹介)の続編になる。Digital Resourcesから、Digital Humanitiesへ。主題がこう変わったことによって、中身に実質的な変化はあるんだろうか?というのは気になった。単にこう表現するのが今風だということなのかな。

記事のポイントは

しかし,大学内においてプロジェクトの企画立案段階での支援は充実しているものの,プロジェクトのライフサイクル全体を考慮した支援は少なく,特にプロジェクトの持続に関わる段階へのサポートは,どの部署が担当するのかすらはっきりしていないようであった。

にあると思う。で、「持続に関わる段階へのサポート」ってなんだというと、デジタル保存やアウトリーチについての支援だという。

うーん、そうなのだろうか。大学内で次々に生まれては死に体のまま放置されがちな数々のプロジェクトの維持に必要なのはほんとうにそんな支援なんだろうか?という事務屋側からの疑問は残る。あんまり書かないけど。

DHに限らず、長期的なサステナビリティを確保するためには、そのプロジェクトを親機関のミッションや目標と密接にからめていくのが最善の手だろう。そういった意味でベストプラクティスとされているDHのプロジェクトってどういうものがあるんでしょう?>菊池さん 例えば、機関リポジトリが博士論文の公開プラットフォームとして(そう法で定められているわけじゃないけど、事実上)認められたというのはひとつの成功事例だと思う。

しかし「toolkit」ってなんかいい訳ないだろうか、とよく悩む。このことばが実際に指すものとしてはExcelファイルやチェックシートだったりするんだけど、「ツールキット」と訳すとどうもおおげさな感じになってしまう。「フレームワーク」についても同じで。



次は7月24日(その週末は大分大学ソフトバレー大会が……)。

カレントアウェアネス-E No.261感想

昨日(6月20日)はカレントアウェアネス・ポータルの8歳のお誕生日でした(笠間さんのブログとは7日違いらしい)。

年表にある通り、カレントアウェアネス・ポータル(ウェブサイト)は2006年3月に試験公開開始、2006年6月20日に正式公開開始です。ポータル誕生と同時にスタートしたカレントアウェアネス-R(ブログ)も同様。また、カレントアウェアネス-E(メールマガジン)は関西館開館の2002年10月創刊なので今年で12周年、カレントアウェアネス(季刊誌)は1979年8月創刊なので今年で35周年になります。カレントアウェアネスの30周年の際には特集号が出ていますが、今回は特に何もなしかな……。

さて、おかげさまで今年度もぶじに編集企画員を継続できることになり、先週は今年度第1回の編集企画会議@関西館に出席してきました。いろいろ自分の企画が通ったので、執筆者決定までスムーズに進むといいんですが……。今回の企画が世にでるのは12月末になります。

そういえば、いまさら知ってびっくりしたんですが、倉田先生の書かれたCA1820のライセンスはCC BY-SAになっているんですね(通常はNDLに著作権を譲渡)。ご本人のご要望だと思うのですが、大きな一歩。なんかあんまり宣伝してないらしいので、ここでご紹介。





……と、前段が長くなりましたが、今号は6本。うち前半3本が外部執筆者。





■E1572■ 「忘れられる権利」と消去権をめぐるEU司法裁判所の裁定

局の今岡さん。こういう各国の法/司法制度を踏まえた解説を書けるひとがいるのはやはりNDLの凄さだなあと思う。

欧州司法裁判所が5月に下した裁定の背景について。

個人が忘れられることを望む過去の情報に関して,検索エンジンの運営者は,EUデータ保護指令第12条(b),第14条第1項(a)の規定に従い,一定の削除義務を負うと裁定した。

記事のポイントのひとつは、「忘れられる権利(Right to be forgotten)」と消去権(Right to erasure)の区別だと思った。今回の裁定は「忘れられる権利」そのものの権利性を認めたものではなく、あくまで消去権にもとづいたものである、と。前者はまだ権利として認められているわけではないということだよね(なのでカッコ書きになっている)。現在、今年中の成立に向けてEUデータ保護指令の規則化が進められており、その動向に注目しておく必要がある。

もうひとつ気になるのは、消去対象が検索エンジン(のインデックス?)だけでいいのかどうかという点。前半、スペインの情報保護局への申し立てについて触れられているけど、新聞社に対する元記事の削除への請求は退けられている。また、前述の保護規則案では、

欧州議会の修正により,「忘れられる権利」の文言が削られ ,「消去権」として規定されるにとどまったが,実質的な権利の内容や対象は拡大された。消去権の内容としては,(1)管理者に個人データを消去させる権利,(2)管理者に個人データの頒布を停止させる権利に加え,(3)第三者に個人データのリンク,コピー又は複製を消去させる権利が入った。そして,EU域内の裁判所又は規制機関が,消去されるべきであると判断した個人データについても,消去権の対象となった。

となっているらしく、このまま(1)と(2)が認められれば元記事の削除も可能になるということなんだろうか。Googleなどの検索エンジンだけじゃなく、新聞記事データベースなどでの削除が行われると、学術研究上も影響が出るのではないだろうか。以前、新聞記事データベースで個人(とある有名人の家族)の没年を調べるレファレンスをやったときのことを思い出したりした。

ぜいたくを言えば、記事の中で「忘れられる権利」そのものについての解説があれば良かったかなあ。





■E1573■ 2014年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

恒例のIIPC(国際インターネット保存コンソーシアム)レポート。今回はBnF開催で、前田さんが参加。

毎年この一連のレポートを読んでいると、ウェブアーカイブは徐々に単なる収集から、その研究利用へと力点を移していっていることが感じられます。ド素人ながら、ウェブアーカイブに基づいた歴史学というのが成立しうるのかという点や、あるいは研究成果として作られたウェブサイトやデータベースの活用のされかたが研究評価の基礎データとして使用できるくらい指標化できるのかとか、めっちゃ関心があります。ウェブアーカイブが広く商用利用されるようになったら一人前なのかなあ、とか。

INAが共催に入っているのが面白いと思ったんですが、少なくとも報告からはその色はあまり感じられず(「オランダ音響・映像研究所による公共放送局サイトの収集」くらい)。

紹介されているプロジェクトのなかで気になったのはHiberlinkOpen Waybackのふたつ。前者は「学術論文内のURIリンク保障を目指すHiberlinkプロジェクト(エディンバラ大学ロスアラモス国立研究所の共同プロジェクト)」ってことで、ウェブアーカイブの文脈なのかよく分かってないけど、サイトを見てみたらやっぱりSompelが絡んでた。ほんともう「Sompelの動向」だけでカレントの記事が1本書けちゃうよな……。

ウェブアーカイブは実務との距離が遠いうえ、ふだんあんまり意識してない領域なので、読んでいてもよく分からないところが多いのがつらいところ。2013年1月にリニューアルして以後、NDLのWARPではなにが課題になっているんだろう。これから先もウェブアーカイブに直接関わることはないのかなあと思ったけど、学内サイトの収集とインデクシングとか、可能性としてはなくはないのか(意義はさておき)。

去年は志村さんが参加されて、来年はシリコンバレーか。兼松さんが行かれるのかしら。





■E1574■ つくばリポジトリのJAIRO Cloudへの移行

筑波の真中さん。

つくばリポジトリは2007年3月構築、2014年5月に移行(第一号)。そのむかしNIIでは機関リポジトリクラウドサービスはしませんと聞いたような気がするんだけど、いつのまにかJAIRO Cloudが始まり、めでたく参加機関が200を突破し、こうして大規模機関が移行するようになり、隔世の感。あのDSpace祭りはなんだったんだろうとか、ちょっと思わなくもないですが。先日、「JAIRO Cloudが無料なのは民業圧迫だー」というような声をお聞きしてなるほどと思ったり。

そうか、図書館システムのリプレイスに合わせての移行だったのかといまさら気づく。「更新後の電子図書館システムには機関リポジトリの機能を持たせていない。」とある。一方、九大では今回のリプレイスでDSpaceを捨て、図書館システム(E-Cats Library)のなかでリポジトリメタデータとコンテンツを管理するようになっています(提供インタフェースは九大コレクション=eXtensible Catalog)。きっかけは同じなのに、外へ出した筑波と、より内へ入れた九大と、違いが面白いなあ。流れとしてはJAIRO Cloudへの移行に傾いていくと思うけど。

移行に伴う作業で一番大変だったのが何だったのか明記はされてませんが、やっぱりデータ移行なのかな。マッピング自体はそんなに難しくないと想像するんだけど、データの抽出と一括登録のくだりが丁寧に紹介してあった。運用上は「なお,6月中には移行前にTulips-RのURLに直接リンクを張っている他のシステムへの対応のため旧つくばリポジトリに対しURLのリダイレクト設定を行うこととしている。」も気を使ったんだろう(TwitterFacebookでいろいろクレームを見かけたような)。handleの普及してなさ。はよDOI振ろう。

そのDOIについて、最後に「JAIRO Cloudによる紀要論文へのDOI登録への対応をNIIと協力して進める予定」とあった。紀要DOIの話は3月に流れていたけど、まずはJAIRO Cloud上で始めていくということなのかな。初耳。






■E1575■ CELA,プリントディスアビリティのある人へのサービスを開始

依田さん。

4月にカナダで誕生したCELA(Centre for Equitable Library Access)という団体の話。公共図書館を支援する、公共図書館によって運営されるNPO。カナダ国立図書館・文書館の関与がよく分からないけど、「カナダ最大の視覚障害者向けの図書館を運営する」CNIBの代表が理事会に入っている。(そして、ファーストネーションって言葉があるんだ。へええ。)

CELAの主な役割は、代替フォーマットの資料の用意か。利用者はそれを直接(インターネットや郵送)、あるいは公共図書館を通じて利用するというかたちかな。そうと明記はされてないけど、べつに公共図書館を介さなくてもいいという理解で良いだろうか。「CELAに登録している利用者は」という記述もあるし、そうだよね。

ところで、

カナダでは,300万人を超える人たちが,プリントディスアビリティを抱えており,学習障害,身体障害,視覚障害により,従来の形態の資料の利用ができないとされている。そして,そのうち10%の人たちにとっては,代替フォーマット,すなわち録音資料,点字資料,ナレーション付きビデオなどのようなメディアへのアクセスが,依然として課題となっているという。

10%というのは少ないという印象で、90%は課題を感じてない(含む・ニーズがない?)ってことなのか。





■E1576■ インターネット・フィルタリングの現在:CIPAから10年(米国)

篠田さん。

2000年成立のChildren's Internet Protection Act(CIPA)の影響に関するALAレポートの紹介。Googleの支援を受けて作成されたということから、背景が透けて見える。

過剰なフィルタリング。フィルタリングを外して欲しいというリクエストとプライバシー。フィルタリングというアーキテクチャで縛るのか、情報リテラシーを身につけさせることで対応するのか(少なくともエロサイトについてはリテラシーの問題ではないと思うけど)。そもそもの、インターネットアクセスの提供で割引(E-Rate)を受けるためにはフィルタリングを導入しなければいけないという点を認識してなかった。そのE-Rateってのはどんなくらい割り引かれるものなのか。そんなもの要らん、うちはフィルタリングなどしない、という矜持をもった図書館や学校はどれくらいあるのか。あたりが気になるところ。

インターネットフィルタリングは大学(図書館)にいるとあんまり意識することのない話題で、自分にとっては、教育上の問題よりも、それによって仕事上の効率が落ちることのほうが心配だったりするのですが。某独法で働く友人のはなしとか聞いてると特に……。

でも例えば、

国学校図書館協会(AASL)の2012年の全国調査によれば,Facebookなどのソーシャル・ネットワーキングのためのウェブサイトがブロックされている割合は88%にものぼり,インスタントメッセージやチャットは74%でブロックされているという。WikipediaGoogle Docsなどのインタラクティブなサイトもブロックされる傾向があるという。

というように、Facebookはダメというたって、最近だとFacebookが公式サイトになっているような組織や活動も少なくないわけで。そういうのが見られないのはもったいないなあと思う。一方、学内ネットワークからWikipediaにアクセスできないようにすればそこからのコピペが減るのではないかとならないところが、大学という環境の良さかなと。






■E1577■ 図書館ウェブサイトのデザイン及びユーザビリティ調査(米国)

ラストは安原さん。RUSQ誌から“The Website Design and Usability of US Academic and Public Libraries”という文献を紹介。

意外にも、

ウェブサイト評価とオンライン調査に先立ち包括的な文献調査を行ったところ,現在の大学・公共図書館のウェブサイトのデザイン及びユーザビリティについての大規模調査は見当たらず,また,“デザインのガイドラインに従っているのか”,“誰がデザインし,管理しているのか”といった問いは既存文献では答えが見当たらなかったとしている。

ということで、画期的な調査らしい。紹介ありがたい。SPEC KitsでARL参加館に限定した調査してないかなと思ったんですが、見当たらない。

今調査の対象は米国の大学図書館および公共図書館1,469館。うち203館はランダムサンプリングによる評価で、残りの1,266館はオンライン調査による評価(対象は9,000だけど有効回答数がそれだけだった)と手法が異なる。「5つのセクションにわけられた67項目を10段階で評価するLibrary Website Usability Checklistが用いられ,オンライン調査の質問は,この項目を改正した44項目により構成されたもの」ということなので、あくまで「1469」ではなく「203+1266」だと思っておいたほうがいいのかも、と思った(原文未確認)。

調査結果としては、

この論文で評価対象とされた図書館のホームページのレイアウトは,文献調査で取り上げられた複数の文献で提案されているデザインガイドラインを順守するものであった。ホームページから9つの質問に答えられるかによりユーザビリティを評価する調査では,圧倒的に多くのホームページが適切なものとなっていることが確認されている。しかし,ウェブサイトのユーザビリティに関するテストを行っていると回答した図書館は3割にすぎなかった。論文は,このことがウェブサイトのユーザビリティに利用者の視点が考慮されていないことを示していると述べている。

のあたりを読むと、ほんとかぁ? なんか甘々な評価なんじゃないだろうか……という心配になってくる。

個人的には、研究図書館というカテゴリでくくるならまだしも、大学図書館公共図書館とではやはりウェブサイトのつくりも違ってくると思うので、大学図書館にかぎった調査が読みたいところ。





次は7月10日。

カレントアウェアネス-E No.260感想

感想と感想のあいだに何も記事を書いてないと情けない。。

今回は5本。外部原稿はうち1本。

そういえば、実は前号あたりから編集担当が依田さんにスイッチしたらしく(篠田さん、1年弱の間おつかれさまでした!)。





■E1567■ ILLにおいて優れた業績を残した図書館員を表彰:バウチャー賞

巻頭は文献提供課の牧さん。お名前は存じ上げないけど、もしかして昨年くらいに入館された方なのかな。業務でILLを担当されているのでしょう(推測)。

ILLでバウチャーといえばIFLAヴァウチャーがまず頭に浮かんでしまうけど、バウチャーさんという図書館員の名前を冠した賞なんですね。2000年に創設。受賞資格に「組織内のILLやドキュメントデリバリーサービス,リソースシェアリングの分野で責任ある地位に就いていること」という条件があるので下っ端には与えてもらえないものらしい。ILLiadの開発者も2005年に受賞しているというのになるほどとうなづく。お、2011年はIDS Projectのひとか(「Information Delivery Services Project(情報配信サービス事業)」ってなんのことだろうと思ってしまった)。

キルゴア賞が有名だと思うんですが、OCLCには他にもいろいろな賞があります(一覧?)。日本でいえばNIIが一図書館員を表彰しているのに相当するようなもので、不思議な感じもしますね。

今回、シカゴ大学のラーセンさんの受賞理由は「新たな手法や作業フローの効率化に意欲的に取り組むことでリソースシェアリング(資源共有)への革新的かつ実際的なアプローチが評価され」ということだけど、なんのことかよく分からない。。あとで詳しく紹介されるのかと思ったけど、出てこない。原文を見ても、確かに「Larsen was selected for his innovative and practical approaches to resource sharing, willingness to learn and test new products and improved workflow efficiencies.」としか書いてない。うーん。これは牧さんのせいじゃないのでしょうが、かなり残念。記事には訳出されてないようですが「new products」とあり、その名称くらいは知りたいところ。

さて。私がILL担当だったときはこんな仕事さっさとなくなってしまえと思いながら日々コピー枚数を数えたりゆうメールやEMSの小包をこさえたりしてましたが、電子ジャーナルやデジタル化やオープンアクセスと言ったところで、困ったことになかなか仕事がなくなってくれないようで。ビッグディールが崩壊したらまた揺り戻しがきて仕事が増えるのかなあ。そんなわけでILLの重要性というのはまだまだゼロではないようで、こうした現場の努力に光を当てる賞の存在意義もまた、ゼロではないのかな、などと、らしくないことを考えたりもしました。





■E1568■ 日本の研究者等による学術情報利用に関する調査報告

安原さん。おなじみのSCREAL(すくりーる)の調査報告書。

久しぶりにSCREALのサイトを見たらさとしょー先生も委員に入っておられる! 第一回目の調査が2007年に行われ、2011年の今回が第二回目。4〜5年のインターバルで調査を積み上げていってくださるのでしょうか。今回は「45の対象機関から協力を得て,回答者総数は3,922名,回答率は6.04%とされている。対象機関は2007年に実施された第1回調査の25機関から拡大され」ということなので、調査対象の“裾野を広げた”感じなのかな。

第一回目からの対象機関(=より電子リソースが整備されている環境?)と、今回から対象になった機関との比較が興味深かった。

まず電子ジャーナルの利用状況に関して,自然科学分野全体では「週に1回以上」利用するとの回答が76.1%であった。2007年調査の82.3%から6.2ポイント減少している。しかし,調査結果を2007年と2011年の両方の調査に参加した機関と,2011年から新たに参加した機関にわけて集計すると,「週に1回以上」利用するとの回答が,前者は84.8%と2007年の結果よりも2.5ポイント増加しており,後者は67.8%であることがわかった。

また、以下の部分は、印刷体雑誌が新着雑誌の認知という点で効果的だと受け止められているということなのかな。バックナンバーはあんまりブラウジングしないのでサーチだけでいいけど、新着雑誌は全体をパラパラ眺めておきたいというニーズもあるか。では「電子ジャーナルか印刷体か一方だけを選ぶならどちら?」と聞いたらどうなるのだろう。

印刷体雑誌の必要性に関する質問において,新着雑誌については「電子ジャーナルがあれば印刷体の雑誌は不要である」とした回答者の割合は47.6%,「電子ジャーナルと印刷体の雑誌の両方が必要である」とした回答者の割合47.4%とほぼ拮抗していることが分かった。バックナンバーについては,印刷体は不要とする回答が56.4%で,両方必要とする回答37.9%を18.5ポイント上回った。

電子書籍端末の利用については2011年はターニングポイントになると思うので、次回調査ではより大きな変化がありそう。

SCREALの調査は研究者と大学院生を対象にしているので、学部生が抜けている。学習支援、アクティブラーニング、電子教材といった関心から、高校生〜学部生による電子リソースの利用についてもデータの積み上げが必要になるのかも。





■E1569■ ICTへのパブリックアクセス:IFLAブリーフィングペーパー

IFLAのペーパー。インクルージョンだし、依田さんですよね。

IFLA+ワシントン大学→国連に提示。政策立案者に対するチェックポイントを6つ。

大きな話すぎてコメントを差し込むのが難しいのですが、次の部分が面白かった。

五つ目には,地方に関連性の高いサービス等の開発,特に電子政府サービスに投資することの重要性が指摘されている。これについては,アクセスに対する需要を増大させるのに役立ち,パブリックアクセス施設をより持続可能なものとするとされ,また,とりわけ図書館が,地方での電子政府戦略の実施において効果的な施設となることが指摘されている。

ICTへのパブリックアクセスにおいては,コンテンツが充実すればそれに見合ったデバイスや通信速度をあらゆる人に利用可能なように対応してくことが必要になるものであり,継続的に意識を保っておくべき課題であると思われる。

インフラを整備していくために、そのうえで流通するコンテンツをリッチにしていくというアプローチ。なんかモバイルファーストとかと逆行するような気がしないでもない。





■E1570■ RLUK Hack Day:図書館資源のLOD化がもたらすものは?

篠田さん。

Linked Open Dataと言っても、それに対応するためにはコストがかかるわけで、その結果いったいどういうことができるようになるのかというのが分からないとなんとも、という話がよくあるようで。その解決を目指したイベントと言えるでしょうか。

私も、自分が担当しているサービスのメタデータをLinked Open Dataにしたらとかたまに考えますが、それがどう活用されるのか、本当に活用されるのか、いまいち自信が持てない。そのへんのイメージができるようになるまでは動けないかなあと思う一方で、とりあえずやってみたらなんか変わるかもしれないというのもあり。まあ、ディスカバリーサービスもLinked Open Dataも、その基盤となるメタデータがきっちり整備・管理できていないと、と思うわけですが。(なんかぐだぐだした段落)

今回はRLUKの総合目録の書誌データ2000万件と、TEL参加館の書誌データおよびデジタルコレクションのデータが提供されたという。こういったイベントによって何ができたのか、よりも、こういうものを作りたかったけれど、このあたりがハードルになってうまくできなかった、というメタデータ側へのフィードバックが欲しかったりする。

記事の本筋ではないのですが、

(1)英国図書館(BL)の英国全国書誌(BNB)のLODでの提供,(2)フランス国立図書館BnF)の蔵書目録とデジタル資料のデータを統合的にLODとして提供する“data.bnf.fr”,(3)ケンブリッジ大学がOCLCと共同開発した,同大学図書館の目録をLOD形式で提供する“The Cambridge Open Metadata:COMET”,(4)オランダ王立図書館(KB)のLOD戦略,(5)ロンドン大学キングス・カレッジ校によるアーカイブズ目録“AIM25”のLOD化,(6)スペイン国立図書館(BNE)がマドリード工科大学との共同プロジェクトとして開発した,同館の書誌データと典拠データをLODで提供する“datos.bne”,(7)ドイツ国立図書館(DNB)の典拠データのLODでの提供である。

と、欧州での先進的な取り組みとして紹介された事例のまとめがありがたい。





■E1571■ ニュージーランド国立図書館,利用及び再利用の方針を公表

依田さん2本目。

前の記事はメタデータのreuseの話でしたが、今度はコンテンツのはなしで。ニュージーランド国立図書館の“Policy for Use and Reuse of Collection Items”という新方針について、9つの原則をひとつひとつ紹介。最後に「国立図書館が利用・再利用について包括的な方針を提示した例として,注目される。」とあって、確かに類例がぱっと思いつかなかった。

冒頭で、“Collection Items”にはいわゆる図書館の所蔵資料だけではなく「研究者によりデジタルカメラで撮影された物理的なコンテンツ」をも含むと解説されているのがまず気になる。原文を対照すると、「physical/analogue content captured by a researcher on a digital camera」とあるからほぼ直訳か(「on」のニュアンスがそれでいいのかちょっと疑問)。これは物理的なコンテンツそのものではなく、デジタル化されたほう(この場合は写真)のことを指しているんだよね……?

各原則では繰り返し「明記」という表現が登場する。たしかに、一括してCC BYなんて提示できるのはまだ楽なほうで、実際にはコンテンツによって権利状態のバリエーションはさまざま。それらをきちんと調査・管理して、(例えばディスカバリーサービス上で)表示するということが大切なんだけど、それは言うほど簡単なことじゃない。という意味で、

原則2は,すべての所蔵資料は,明確で一貫した利用・再利用の権利及び許諾の明示とともに研究者に提供される,としている。これは,利用・再利用に関する情報が存在しなかったり,紛らわしかったり,資料と結び付けられない形で示されている場合には,誤った利用という事態,あるいは利用されないという事態が増えるとの認識に基づき,それを避けるために示されたものである。

や、続く、

原則5は,適用される著作権の制約がない場合には,NLNZは,その資料に関する文化的・倫理的問題について注意深く検討した上で,その資料を“no known copyright restrictions”(知られている限りの著作権の制約はない)と明記して利用・再利用に提供するよう努める,としている。

原則6は,著作権が適用される場合であっても,権利所有者が特定できない,あるいは追跡できない作品がある場合には,NLNZは,その資料に関する文化的・倫理的問題について注意深く検討した上で,“copyright undetermined - untraced rights owner”(著作権は,特定できない,あるいは追跡できない権利所有者にある)と明記して提供するよう努める,としている。

のあたりは国立図書館としての矜持を感じました。各図書館でそこまでやる余力はないかもしれないけど、そこにしかないローカルコンテンツ(郷土資料とか)については責任が問われるようにも思い。

また、原則9の“preferred citation”(推奨される引用形式)を提供するというのは、地味だけどたしかに非常に大きなサポートかもしれないと思いました。文献管理ツール使うよりもそっちのほうがシンプルだったりする。(ちなみに『カレントアウェアネス』はSIST02形式で文末に引用情報を添えています。)





次回は6月19日。

カレントアウェアネス-E No.259感想

id:negadaikon 経由で知りましたが、E1533を書かれた方(って、名前出していいのかもですが)がその執筆過程をブログで紹介してくれてます。

こういうのありがたいですね。編集者冥利につきますね(担当したのは篠田さんだけど)。また、ここに書いてないですが、CA-Eについては謝金はありません(CAは字数に応じて支払われます。もちろん館内の人が書いた場合はゼロですけど)。



さて、今回は6本中、外部原稿が4本。基本的にカレントアウェアネス-Eは隔週=月2回発行ですが(ということもけっこう認知されてなかったりしますが)、実際のところは年22回発行で、1月と5月は休みが多いからか月1回だけになります。そのせいで気が緩んでしまうのか、締切ギリギリでいつもより慌ててしまうことが多かったような……。





■E1561■ 京都府立総合資料館による東寺百合文書のWEB公開とその反響

のっけから福島さん。前回ご執筆されたE1461(いま読み返しても最終段落がかっこいい)からちょうど+100本目とキリの良い感じですね。

3月に公開された「東寺百合文書WEB」でCC BYを採用したという話。以前京都府立総合資料館で実物とその時点でデジタル化されていた資料をちらっと見たことがあったけれど、あれももう1年半前になるのか……。

その上で,特に工夫しようとしたのが利用規則等の仕組みの面である。担当や館内での議論を経て東寺百合文書WEBで提供するコンテンツについては,「クリエイティブ・コモンズ 表示2.1 日本 ライセンス」(CC BY)で提供することとした。このクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの採用については,様々な議論があったが,資料自体の著作権に配慮する必要がないこと,世界記憶遺産の候補である以上,世界との共通ルールにする必要があること,そしてなによりも東寺百合文書を自由に使ってもらいたい,という百合文書担当者の熱意によって実現された。

とさらっと書いてある、この「議論」の内容を知りたいのですよね……。外に出せないあれこれがたくさんあるんだろうけど、いつかまとめて伺いたいところです。「当webサイトのコンテンツを利用して作成された,書籍・雑誌・論文・パンフレット・映像作品・新聞記事・TV番組等を当館にご提供ください」という「特段のお願い」については、さすがにまだ報告できる事例がないってことなのかな。

先日、国立国会図書館デジタルコレクションや近代デジタルライブラリーも含めたNDLのウェブサイト上のコンテンツのうち、著作権保護期間が満了しているものについては、転載の申し込みが必要なくなったというニュースが流れていました。転載申請の処理にも時間と人手がかかっているわけで、利用者のみならず、提供者サイドにもメリットのあるはなしです。テレビ局から図書館に対して「この貴重書画像使いたいんですが、明日の番組で」などと電話がかかってくることは多いと思いますが、そのたびに申請してもらって、お金を払ってもらったり、館内決裁取ったりして、、、というのはなんというかばかばかしいように思えます。使ってもらうためにデジタル化したんだし、テレビで使っていただくのは大きなアピールになりますし、スピーディに使ってもらえるようにしたい。できれば。

また、システムが「2013年12月からという短期間の開発」というのは初耳で驚きました。おりしも京都府立総合資料館の図書館システムの入札公告が出て、その7月開札→10月稼働開始というかなりタイトなスケジュール(構築期間が3ヶ月しかない)におののいていたところでした。仕様書が公開されてないので分かりませんが、これって京都府立大学と共用するシステムなんだろうか。

CC BYというかCC 0はEuropeanaでも、ということで次の記事はEuropeanaについて(まったくよくできている)。





■E1562■ Hispana:スペインにおけるEuropeanaアグリゲータ

タイトルだけで執筆者が分かるw

Hispanaって、何、最近CA-Rになってたっけ?と検索してみると、過去に2回(2011/5/182012/9/16)取り上げられている。どちらも菊池さんが書いたんでしょう……すっかり忘れていました。

Hispanaは2010年3月にスペイン文化省が公開したデジタル文化遺産ポータル。MLAにわたるナショナルレベルのアグリゲータってことで日本ではいまのところ相当物がないかな……。そのHispanaがこの3月にEuropeanaに対してパブリックドメインの新聞資料のデータを提供したという話をトリガーにして、Hispanaの概要→代表例と呼ばれる理由→その裏にはEuropeana Local、とぐいぐい読ませる構成。最後は「Hispanaをはじめとする様々なデジタル化プロジェクトで,スペインはその存在感を増しつつある。」と締め。

Europeanaへのデータ提供はOAI-PMHで。Europeanaのメタデータってどうなってんだっけ……Europeana Data Modelっていうのがあるのか。こういう話を聞くと、まずメタデータマッピングの仕様が気になるような頭になってしまいましたが、マッピングでうまくいってないところ、無理してるところ、トリッキーな手法を取ってるところ、バッドノウハウ、とか、知りたいなあ。





■E1563■ 2013年から2014年の図書館システム市場動向は?(米国)

毎年4月にMarshall Breedingが発表するレポート。そう、今回からなぜかAmerican Librariesに掲載されるようになったんだなあ。2011年(E1169)、2012年(E1282)、2013年(このブログ)と自分が書いてきましたが、今年のは篠田さんが書いてくださった。

例年M&Aの話が少なくないですが、今回はInnovativeがPolarisを買った件が大きい(4月1日発表だったので最初は嘘かと思った)。

Library Services Platform(記事では「Library service platforms」とありますが、原文に合わせます)については、

そのシェアに関しては,ExLibris社のAlmaが31の新規契約を含む329館と契約,OCLCのWorldShare Management Servicesは92の新規契約を含む177館と契約,Innovative社のSierraは33の新規契約を含む113件の契約があり,計336館に導入している。

と。この一年でAlma/Sierraがずいぶん巻き返したなあ。トータルでもWMSを抜いちゃってる。ある程度落ち着いたら北米に調査に行きたいなあと思ってるんですが、Kuali OLEはのびのびじゃのう……。Intotaも、Assessmentは出たけど、まだまだかかりそう。

ディスカバリーサービスについては、

EBSCO社のEBSCO Discovery Service(EDS)がトップを走っており,5,612館が契約している。次いで,OCLCのWorldCat Local(1,717館),Ex Libris社のPrimo(1,407館),ProQuest社のSummon(673館)等が主要なサービスとして挙げられている。

おお、そんなに差がついてるのか……。日本だとEDSとSummonが横並びっていう印象ですが(エビデンスはない)。最後にちらっと触れてあるEBSCOのメタデータ提供方針まわりもちゃんと勉強しないとなあ。





■E1564■ 欧米の公共図書館による電子書籍貸出イニシアティブ調査報告

安原さん。

北米+欧州のレポートだけど、オーストラリア図書館協会がコンサルに作らせたものらしい。どうでもいい話ですが、オーストラリア図書館協会はALIA VoucherっていうIFLA Voucherのローカル版みたいなものを作っててね……。

本文は40ページ程度で、サマリーなしか。3節でカナダの取り組みが1つ、4節で米国の取り組みが4つ(有名なダグラス郡のも)、5節で欧州の取り組みが4つ、紹介されている。今回の記事では、そのへんはすっ飛ばして、クライアントに対して取りうる選択肢が示されている6節に注目し、以下のうち特に(2)(4)(5)(7)について詳しく説明している。

取り上げられている特徴は以下の8点である。(1)図書館によるデジタルコンテンツプラットフォームを開発しコンテンツを所有する,(2)デジタルコンテンツ購入に国(あるいは州)の予算を割り当てる,(3)革新的な試験的プロジェクトを行うために団体でアグリゲーターと交渉する,(4)法的枠組み内で,“拡張された集中許諾”(Extended Collective Licensing:ECL)を導入する,(5)製品ではなくサービスとして電子書籍にアクセスする,(6)貸出インターフェースに購入を案内する“Buy Now”オプションをつける,(7)国内出版社の既刊本の電子化を支援する,(8)人気タイトルの貸出を有料にする。

「製品ではなくサービスとして電子書籍にアクセスする」というだけではよく分からなかったけど、PPVということか(蔵書にはしないようなのでPDAではない)。

このレポートでカバーされている欧州の取り組みが、デンマーク、オランダ、ノルウェースウェーデンと北欧に偏ってるのが気にかかる。行ったこともないし、文化や出版についてたいした知識もないけど、オーストラリアで参考にするのが目的のレポートで、それでいいのだろうか……(英国とか)。ともあれ、レポートを受けて、オーストラリア図書館協会がどういうアクションを取るのか、続報に期待。





■E1565■ 2014年ISO/TC46国際会議<報告>

橋詰さん。

去年は川瀬さんでしたね(E1451)。RFIDまわりの攻防が印象強く残ってます。で、それに関連する部分で大きな進展があったというのが今回の記事のヤマ。

今回の大きな成果として,日本が提案する「国際図書館資料識別子(International Library Item Identifier:ILII)」(仮称)に関して,ISO規格化へつながる「新業務項目提案(NWIP)」の提出が了承されたことが挙げられる。これは,昨年の会議において,技術的相互運用性を扱う第4分科委員会(SC4)でRFIDタグ規格の一部として議論され,議論の結果RFIDタグ規格から切り離して,改めて識別と記述を扱う第9分科委員会(SC9)での規格化を探ることになっていた案件である(E1451参照)。昨年の会議以降,日本の国内委員会では検討ワーキンググループを立ち上げ,今回の会議での提案プレゼンテーションに向けて準備を進めていた。


ILIIは,図書館をはじめとする情報提供機関が所蔵する個別資料(FRBRのitemに相当する単位)に付与する識別子で,「図書館及び関連組織のための国際標準識別子(ISIL)」(CA1757参照)に各機関の資料管理番号を付与する形で構成される。SC9総会で行った日本の提案プレゼンテーションに対しては,各国参加者から質問や使用範囲等のアイデアが多数寄せられ関心の高さが伺えた。今後は,日本から正式にNWIPを提出し,そのNWIPが承認されれば,SC9において規格の開発作業が進められることとなる。

ILII=ISIL+ローカル資料ID、か。DOIのデジタルじゃなくてもいいよ版?という表現が思いついたけど、DOIはべつに図書館資料じゃなくてもいいんだからちょっと違うか。図書館のデジタルコンテンツについても付与できるのかな。そのデジタルコンテンツが複数のPDFで分割して公開されている場合、各PDFについてILIIを振るのかな、それともメタデータ単位で振るのかな、でもそれってitemじゃないよね、、、と細かいことが頭に浮かんだのでした。

冒頭の「日本からはISO加盟機関である日本工業標準調査会(JISC)の代表として」という記述に、あ、そういう位置づけなのね、そりゃそうか、、、と。こういう仕事に関われるチャンスがあるのが、NDLに就職することの利点だよなあとうらやましく思います。

川瀬さんの記事で触れられていた新ISO ILLプロトコルについては、ちょくちょくチェックしているんですが、、、

おおっ!!!! 5/22付けでステータスが60.00まで来ている! 次はいよいよ60.66(published)じゃないですか。もうちょっとですね。





■E1566■ 研究データ同盟第3回総会<報告>

倉重さん。2014年3月末、アイルランド。NDLからは初参加なのかな。科経課から出席、なんだ。

3日目には,人文科学分野について,リポジトリ等の研究インフラシステムの重要性が未だ十分に認識されていないのではないかとの問題提起や,同分野の学際的な性格を踏まえたインフラシステム構築を求める提言があった。

学際的な性格を踏まえたインフラシステムってどういうものだろう。。関連分野のコンテンツが発見しやすいとか、そういうの?

図書館員である筆者にとって特に興味深かったのは,「研究データのための図書館BoF(Library for Research Data BoF)」である。(中略)同会議開催直前に新設されたにも関わらず50名もの参加者があった。中心的な論点となったのは,データを扱うスキルを持ったライブラリアン,すなわちデータ・ライブラリアンをいかにして育成していくかということであった。分科会の報告においては,図書館員が研究者と一緒にデータの管理作業を行ったり,研究データ管理に関する無料のオンライン教材を活用して学習したりする等の実践事例の提示があった。最終的な共通認識としては,データ・ライブラリアンとして習得すべきスキルや育成プログラムのフレームワークを整備する必要があるということであった。

その50名にどれくらい図書館員以外のひとがいたのか、というのが気になるところ。つまり、「データ・ライブラリアン」的な存在の必要性が研究者から訴えられたのかどうか。それはともかく「Birds of a Feather」ってことばがあるんですね。BoF→IG→WGと進展していくのか。

先にEuropeanaの記事を読んだせいでふと頭に浮かんだのだけど、文化資源(Europeana)と研究データ(RDAなど)の話って別個に、パラレルに走っていくのかな。いつかどこかでクロスせざるを得なくなる気がする。





次回は6月5日。