魅力的な掲示物で利用者を引きつけよう
# 2年前の出張参加メモの存在を思い出したのでご紹介.
以下は,2011年1月28日に神戸大学で開催された兵庫県大学図書館協議会研究会「図書館空間をつくる:利用者を引きつける空間づくり」の参加メモ(当時いた課内にはメールで流したもの)です.
2010年11月に開催したところあまりにも好評だったので再演されたというくらいの研究会でした.テーマは「魅力的な掲示物で利用者を引きつけよう」.まずは舞台美術家・尼川ゆらさんが「図書館空間をつくる:利用者を引きつける空間づくり」という講演でポイントを解説し,その後は9班に分かれて,既存の掲示物(チラシ,ポスター)を魅力的に掲示してみるというグループワークを行いました.
ちょっと大げさにいうとこんなことを学んできました(とメモに書いてありました).
- コピー用紙で作ったような平凡な掲示物をそれっぽくする掲示方法
- 同じチラシを大量に掲示するという面白さ
- チラシは切ったり曲げたり貼ったりしてもいい
- 立体的で,遊び心があって,触ってみたくなる掲示のしかた
写真をお見せできるといいんですが……研究会の記録ページにちょっと載ってるので併せてご覧ください.
尼川さんの講演(13:35-14:15)
挨拶
- 母親が図書館員→舞台美術家だが図書館のリニューアルや展示のアドバイザをすることに
- 「図書館を演出する」の出版
人を引きつけるとは?
- 空間にプラス要素(便利,好ましく感じる,など)がある→惹きつけられる
- 空間にはたくさんの要素がある.マイナスの要素を知ってそれを取り除くことが大切
- Ex. 舞台は開幕前に暗転する→客席などの余計な要素を取り除く
- 図書館空間のなかでマイナス要素はなにか?→展示物だ
- 高級旅館と普通のホテルの違い→壁.前者では掲示物が少なく,絵画やオーナメントが飾ってある
- 展示物で空間が変わる.訪れるひとの意識が変わってくる
- 掲示物は情報.掲示物そのものはマイナスではない→マイナスにしないためには?
掲示物を考える
1. 掲示物が貼ってある理由を明確にする
- 情報を伝えたい,壁が寂しい,etc.
- 目的が違えば同じポスターでも掲示方法が変わってくる
2. 目的・条件を整理する
- 目的を整理する
- 情報を伝えるのが目的→誰に?
- 壁が寂しい→どう貼ればよく飾れるのか
- ポスターを額縁に入れる
- 絵画を飾る
- 掲示物を見る人の意識に想いを馳せる
- 条件を整理する
- Ex. こまめに張り替える必要があるなら張り替えやすいところに
- 制約は必ずしもマイナスではない
- 目的 x 制約→アンテナが鋭くなる
3. プラス要素をマイナスに変えないために
- 目的を明確にするとその掲示物のプラス要素が見えてくる
- 次にマイナス要素に注意をはらう(参考資料1)
- ポイント1: 素材
- 平行に貼ること(ずらすなら大胆に)
- 折れ,破れに注意
- ポイント2: 色
- 多色は騒色
- どこを見たらいいか分からない
- どこを一番最初に見るかひとによって違う
- 色には性質がある(センスだけじゃない)
- 暖色=進出色(目につきやすい),活動的,積極的,興奮
- 寒色=後退色(遠くに見える),鎮静的,消極的,落ち着き
- 中性色=暖かさも冷たさも感じない色.暖色と寒色が混ざり合ってる.リラックス
- 使い分け
- 本日開催!→暖色
- 来月開催→寒色
- 多色は騒色
- ポイント3: 同じ色でも形や濃淡で工夫ができる
- 色盲の方には色+形,色+文字情報と組み合わせるなど
- ポイント4: 貼り方
- 紙をビニールテープで貼ると目立つ
- 目線の高さ (見るひとの身長は?)
- 文字が細かいものは目線の高さに
- グラフィック重視のものは上でも
- 上下関係
- ランダムに貼られていて順番に見ることができないと疲れる
- その掲示板のなかで適切な情報量は
- 上のほうが重要だと思ってしまいがち
- ポイント5: 情報に順序をつける
- シンプルで伝わりやすい情報から詳細な情報へ
- 色の濃淡,文字の大きさ,かたち(文字の囲みなど)を工夫して
4. プラスをプラスに,マイナスをプラスに
- 以上に配慮すると「空気の流れ自体が変わるくらい」空間がすっきりする
- 読みやすい掲示物を順番に読んでいくひとが出てくる→人の流れができる
- 小さな変化から大きな変化を生み出せる可能性がある
- 変化をしようとしているその姿勢が人を引きつける
ワークショップ(14:25〜)
尼川さんから説明
- 58人を3グループ(A~C) x 3班に分け,3つのミッションに取り組む
- 1. スッキリとした掲示にする←林はこれ
- 2. 見やすい掲示にする
- 3. 興味をひく
- 舞台は普通のホワイトボード(1m x 2m)
- 課題→各班コンセプト説明→講師講評を3グループぶんおこなう
1班の課題「スッキリとした掲示にする : マイナス要素を取り除く」
- お題
- 他種類のポスター・フライヤーをマグネットでホワイトボードに掲示する
- ポスターのサイズ,色,内容はグループによって様々.折り目はわざとつけられていた!?
- マグネットは丸型(白,赤,黄)と棒型(透明,グレー)
- 講師コメント
- ここでは適当に決めたが現場では掲示に適当なチームを組むところから始まる
- A-1班
- 女性5人 + 林
- コンセプト説明(by 林)
- 掲示物の色が左から右へ色が薄くなるように配列
- マグネットの選択にもこだわり(赤色のポスターには赤色マグネット)
- 全体を3ブロックに分け,マージンは適当に
- 資料の選択について説明するの忘れた……
- 講師講評
- ホワイトボードを前後に傾けて「赤は近く,白は向こうに見える」と実演
- 赤を真ん中に持ってきて掲示板の中心に引きつけるという案もある
- 赤とけんかするから緑のポスターを使うのはやめたんですね→そうだっけ……
- B-1班
- 講師講評
- 両端に大きなポスターを持ってくるのは自然で効果的だと
- 絵画展のポスターは力があるので上の方に持ってくると良いかも
- スッキリさせすぎるとガランとしちゃう→適量を
- 揃えるなら揃える.ずらすならちゃんとずらす
- 講師講評
2班「見やすい掲示にする : 人の目線を考える」
- お題
- 色画用紙,セロテープ,ハサミ,定規,カッティングマットを使って1班の成果を改良
- 1班のを張り替えてもいい
- 講師アドバイス
- 試行錯誤の過程を見ておくと勉強になる
- 見やすくするには余白というものも魅力
- 紙は切っても折っても構わない
- A-2班
- 作業ウォッチ
- 男性3 + 女性3,シニア
- いきなり赤いポスター張り替え
- 白いチラシの下に濃い色画用紙をしくアイディア
- A-1班の成果が白紙になった
- 5枚のチラシ+色紙をW字に配置したぞ.色はあんまり考慮してない感じ
- W字の端をチラシじゃなく緑色の住田文庫ポスターに変えた
- 色を考慮してか並べる順番を変え始めた
- ペンで「←開催中!」って書いた
- コンセプト説明
- 赤がきつすぎたのでので掲示物総入れ替え
- チラシをくっきりさせるために色画用紙を
- チラシでW字→余白が気になったので端をポスターと交換し中央下段にチラシを
- 開催中という文字を書いた
- 色画用紙をハートにカット
- 講評
- 文字情報を入れるアイディアは初めてでた
- 手書きは人目をひく.想いが見える→注目される
- ハート型は誰が切ったんだろうとか
- リズム感のある配置
- 寒色を左右に,まんなかを暖色に→これはいいアイディア!
- チラシの下にしく色画用紙はチラシ中で使われてる色と同系統にすると調和がとれる
- 空白を活かすことでリズム感のあるものができる
- 作業ウォッチ
- B-2班
- コンセプト説明
- 情報を2パートに分ける:美術関係(赤系ポスター)と図書館関係(緑色ポスター)
- 赤系を左上に,緑系を右下に
- 赤系のチラシは赤色画用紙を下にしく
- マグネットの色もそろえる
- 白いコピー用紙がホワイトボードに溶けこんじゃうので緑色画用紙を下にしく
- 両面印刷されたチラシを2枚,少し重ねて斜めに配置
- 思い切って緑と赤で雰囲気をかえる
- 赤はオーソドックスに,緑はずらして配置
- 講評
- この班は一番最初に色画用紙をカットしはじめた
- 少し歪んでません?
- 薄い色のポスター+濃い色の台紙という組み合わせが良い
- 2パートじゃなくて微妙に3パートに見える→大胆にくっつけて2パートにしても
- コンセプト説明
- C-2班
- 作業ウォッチ
- 紙を使って平行・直角を揃えるアイディア
- チラシの下の色紙を少しズラす
- コンセプト説明
- 講評
- ポスター中の人物の目線を使ったアイディアはすごい.目線だいじ
- 清張のシャツが白色なのでマグネットは黄色じゃなく白でも→やってみたら確かにいい
- 作業ウォッチ
3班「興味をひく : 掲示を演出する」
- お題
- 1, 2班の掲示物はリセットする
- 新しいチラシ(2種類.グループによって違う.枚数もばらばら)
- 色画用紙,ハサミ,テープは使ってOK
- 制限時間は20分
- 講師コメント
- 立体的な要素を入れても
- Cは折るというアイディアが出た.同じチラシがたくさんあれば少しくらいいじめても.
- チラシデザイナーを超えてください
- いろいろなアイディアが出るときこそ最初の目的に戻ってください
- 行き詰まったときはちょっと遠くから見て引いてみる
- 子供ごころに戻って
- 目を引くことと派手なことは違う.シックに大人のテイストでも.
- 折り紙みたいなことやっても
- A班のチラシは見開き型なのでそこを活かしても
- 前回はチラシを切り離したチームがいた
- A-3班
- チラシ1枚目: 戦後日本の科学映画: クリーム色と朱色
- チラシ2枚目: 井上稔展
- 作業ウォッチ
- 扇形に配置?
- 地味,地味という声が
- 枚数が少ないのでもっと欲しいという声が(5枚しかない.他のチームは10枚くらいある)
- 見開き型のチラシを開いてちょっとたわませて立体的に掲示
- それまで苦心していたけどこのアイディアで完全に空気変わった
- コンセプト説明
- はじめは2種類のチラシを半分ずつ使おうと思ったが内容が違うので片方に絞ろうと
- 見開きのが5枚しかなかった←切って10枚にしても良かったんじゃないかな?(林コメント)
- 色画用紙でポケットを作成して真ん中に
- 地味なポスターなので色画用紙で工夫した
- 講評
- 制約はマイナスではないということを思い出せ.あれがあれば,ではなくて
- 少ない枚数という制約をどう活かすか
- 直角や水平ではなくリズム感のある配置にした
- 2つ折のちらしを立体的に掲示し「空をとぶように」なっている
- たしかに地味かもしれないけどデザイン完成度の高いチラシ
- ポケット→触るというアクションを誘う
- 目的を考える必要性
- 「内容が異なる2種類のチラシを掲示する」という目的もありで,まったく別のものができるかも
- B-3班
- 1枚目: 演じる高校生: 黒地に黄色い
- 2枚目: ?
- 作業ウォッチ
- 曲線に沿って重ねて配置
- 1枚だけ裏返して(裏は白),下に黄色の色画用紙を
- 曲線から直線(角度30度)に変わった.チラシ中の斜めに傾いた文字が一直線にきれいに並んで気持ちいい
- 真ん中に配置した「裏」の位置に苦心している」
- 余白を気にしてか赤い色紙に「出場校決定!」と書いて貼った
- 黄色い色紙をとげとげ状に切って赤紙の下に
- コンセプト説明
- たくさん枚数のあったチラシ1枚目だけを使用
- すべらせて7枚を配置
- 遠くからわかるように左上に「出場校決定!」と配置
- 色画用紙をとげとげにカットし,少しくしゃっとさせて立体的に見せる
- 講評
- この3班ではチラシの種類を限定し,数をたくさん用意した
- 狙いは「物量の力で迫力を」
- 7枚貼ったけどあと2枚残ってる→もったいない
- C-3班
- 1枚目: 森村泰昌: 白地.モノクロのざらっとした写真に強烈な赤いライン
- 2枚目: ?
- 作業ウォッチ
- 森村の強烈なチラシで矢印を配置
- 矢印の先端を折り曲げた
- 先端以外も折りたたんできれいな矢印になった
- 先っぽの先にはチラシ2枚目? それがいいのかどうか
- 森村チラシは赤いラインがつながるように配置されててきれい
- コンセプト説明
- 矢印は早くに決まった→折ってきれいに
- 森村チラシは1枚だけ裏側に
- 2種類使うかどうか迷った
- チラシ2枚目(見開き型)は自分でめくれるよう本型に掲示
- 本をめくると森村の展示会の優待券がはさまっているという遊び心!
- 講評
- 単なる立体感だけじゃなく触る,そして宝探し的要素まで
- 矢印は目を引く.何でできているんだろう?という興味をひく