CA1775以後の文献管理ツールの動向をおさらい
早いもので「CA1775 - 大学図書館のサービスとしての文献管理ツール」を書いてから一年が経ちました(ゲラ校正終了は2012/8/29).
フォローアップとして,その間に「文献管理ツール(と図書館)」というテーマについて登場したニュースについてまとめてみたいと思います.記事公開後も継続的にウォッチしていましたが,情報を網羅するつもりはなく,執筆時にこのニュースが流れていたら記事に含めたかどうかというのを取捨選択の基本的な基準にしています.
いちばんのビッグニュースは言うまでもなくElsevierによるMendeleyの買収でしょうねえ(その後,あまりにも変化がないのでほんとに買収されたのかという気分にすらなりますが).それ以外にもRefWorks Flowという新サービスの概要が発表されたり,EndNoteスイートの構成に変化があったりと,主要ツールに動きが見られた一年だったと思います.個人的には,Mendeley以前から「文献管理ツールといえばこれだろ!」と使っていたPapersの開発元がSpringerに買収されるというのも驚きのニュースでした.
Timeline
2012年8月
大図研全国大会で @tzhaya さんがMendeley機関版の導入事例を報告
2012年11月
Mendeley CEOのVictor Henningが来日講演
SpringerがMekentosj B.V.社(Papersの開発元)を買収
2013年2月
Mendeley Institutional Edition for Teams発表
- http://www.swets.com/showcasing-at-ala-midwinter-meetings-swets-and-mendeley-expand-collaboration-possibilities-in
- http://www.mendeley.com/mendeley-institutional-edition/ (※下の方の表を参照)
- http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2263120 [*1]
EndNote iPad版リリース
ReadCube[*2]がWileyのジャーナルと連携開始
2013年4月
ElsevierがMendeley買収→ネタが多いので別枠で
Mendeleyのストレージ容量アップ
EndNote Basicリリース
- http://current.ndl.go.jp/node/23395
- EndNote Webの後継
RefWorks Flow発表
- http://cheb.hatenablog.com/entry/2013/04/17/195314
- http://refworkscommunity.ning.com/video/introducing-flow
Zotero v4リリース
2013年5月
EndNote X7リリース
- http://www.usaco.co.jp/products/isi_rs/en17_win_release.html
- http://www.usaco.co.jp/products/isi_rs/manual/WhatsNew_X7.pdf
- http://www.usaco.co.jp/products/isi_rs/images/X4-X7_comparison.pdf
Mendeley Web Importerがちょっと新しく
2013年7月
Mendeley 1.9リリース[*3]
2013年9月
Mendeleyユーザが250万人に[*5]
- http://current.ndl.go.jp/node/24305
- http://keitabando.org/2013/05/08/papership/
- http://www.papershipapp.com/
ElsevierによるMendeley買収
買収の報
- http://current.ndl.go.jp/node/23281
- http://japan.elsevier.com/news/newsreleases/20130409.html
- http://keitabando.org/2013/06/15/openscience/
理由とか心配とかそれに対する回答とか[*7]
- http://elsevierconnect.com/elsevier-welcomes-mendeley/
- http://blog.mendeley.com/community-relations/mendeley-and-elsevier-heres-more-info/
- http://johokanri.jp/stiupdates/policy/2013/04/008438.html
- http://johokanri.jp/stiupdates/policy/2013/04/008418.html
- http://www.quora.com/Mendeley/Is-Mendeleys-open-character-at-risk-after-its-acquisition-by-Elsevier/answer/W-Gunn?srid=ugI&share=1
- http://blog.mendeley.com/community-relations/mendeley-and-elsevier-heres-more-info/ [*8]
Elsevier ConnectにMendeleyというカテゴリができてる
SwetsのサイトにはまだMendeley機関版のページがあるんだよなあ
Mendeleyのサイトにも機関版について"In partnership with Swets"とされたまま
雑誌記事(和文)
井上淳也,プロダクトレビュー : メンデレー機関版が提供する新たな研究評価分析
http://ci.nii.ac.jp/naid/40019557711
岡田英孝,図書館員、文献管理ソフトを使う : 機関リポジトリにおける文献管理の試み
http://ci.nii.ac.jp/naid/40019557669
細矢敬子,RefWorks講習会での利用者の反応から : 外部データベース検索と参考文献の作成について
http://ci.nii.ac.jp/naid/40019557688
坂東慶太,文献管理サービスMendeleyの紹介
http://keitabando.org/2012/10/12/productreviewmendeley/
坂東慶太,Altmetricsの可能性 : ソーシャルメディアを活用した研究評価指標
http://ci.nii.ac.jp/naid/40019495646
林和弘,Mendeleyの誕生と衝撃は突発的なのか?:文献管理環境の変化から研究者コミュニケーションの将来を見通す
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009513423
川鯉光起ほか,研究室規模の蔵書管理と文献共有による学習支援-コードレビューを取り入れた共時学習としての輪講の支援-[*9]
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009551362
ウェブ情報
筑波技術大学附属図書館「Mendeleyの使い方」.以前から存在したドキュメントですが,網羅性でこれを超えるマニュアルは見かけないなあ.
http://library.k.tsukuba-tech.ac.jp/ori/Mendeley.pdf
ばんどーさんがStorifyで毎月「Highlights of #Mendeley: August 2013」のようにまとめてくださってるのはありがたい(このメソッドはパクりたい).
http://storify.com/KeitaBando/#stories
ばんどーさんのブログの「My 2012 Year in Review」は「ほんまなんなんこのひと」感にあふれていますが,それが情報管理Webで紹介されたのにはウケましたw
http://keitabando.org/2012/12/24/my2012yearinreview/
http://johokanri.jp/stiupdates/info/2012/12/008055.html
ばんどーさんの「Mendeley機関リポジトリ版という発想」.研究支援の文脈で示唆に富む記事だと思います.これを読んだときの自分のはてブコメに「Mendeley as IR, IR by Mendeley.」とありましたがこれなんでしょうね(後者はIR = Institutional Researchかな).
http://keitabando.org/2013/05/02/mendeleyinstitutionalrepositoryedition/
Mendeleyアドバイザーの @ceekz さんが筑波大学附属図書館で行った「文献管理Tipsセミナー -Mendeleyを使って-」はすごい好評だったみたいですね.50人!
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/portal/news/all.php#20130621-2
「文献管理Tipsセミナー -Mendeleyを使って-」が終了しました。参加してくださったみなさん、講師の吉田さん、どうもありがとうございました!このテーマに50人もの方々が参加してくださったこと、新たな発見でした。[nog] http://t.co/nJAjhgfBmV
— 筑波大学附属図書館 (@tsukubauniv_lib) 2013, 7月 16
東京外国語大学附属図書館の学生スタッフさんによる“Excelで文献管理”.いっそこういうののほうが良かったりして,と思ってしまった.
http://www.tufs.ac.jp/common/library/lc/study/excel_kanri.pdf
徳島大学附属図書館蔵本分館日誌.最近Mendeleyネタが熱くて,ひそかに注目しております.
http://tokudaibunkan.blogspot.jp/search/label/%E6%96%87%E7%8C%AE%E7%AE%A1%E7%90%86
……という感じです.しかしなんだ,こうして振り返ってみると,改めて @keitabando という人物はいったい何者なんだろうかという憧れのまじりつつも若干もやっとした気持ちになりましたね…….
*1:ぐぐっても情報が少なかったなか,これはなんだろうと開いたらまたばんどーさんw 共著者だれw
*2:Mendeleyと連携させるという使い方をちょこちょこ見かけます.http://d.hatena.ne.jp/dastardly/20130825/p1
*3:現在の最新版は1.9.2
*4:Mendeley DesktopからMendeley Web Catalogを検索できるようになった.今後もいろいろな機能が追加されるらしい
*5:CA1775では「約187万人」でした.
*6:Papershipについて触れたいだけだったりします.ばんどーさんが目をつけたものはたいていその後流行るしなあ.
*7:Elsevierの真の狙いについては妄想をたくましくすることはできるけれど,という感じです.個人的には.
*8:“What is the “real” reason for Elsevier acquiring Mendeley?”
*9:図書館とは関係なさそうなんですが,「文献共有による学習支援を提案する」という視点が興味をそそります.