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2012年度NII学術ポータル担当者研修@名古屋大学

イベント

2012年8月1日〜3日に名古屋大学附属図書館で開催された国立情報学研究所(NII)学術ポータル担当者研修に行ってきました.

期待していたとおりの面白さで,かつ3日目が終わるころには腰砕けになってしまったくらい疲れる研修でした.最終日の夜は足がだるくてだるくて…….そんな研修の記録を自分目線でまとめておきたいと思います.これを読んで「来年行ってみたいなー」って思っていただけたらとても嬉しいです.


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スタバも入っている名古屋大学中央図書館


研修の概要

2004年度に始まった学術ポータル担当者研修は長らく機関リポジトリをテーマとしたものでしたが,2011年度に,アカデミック・リソース・ガイド株式会社が研修を受託し,ウェブサービスの企画を行うワークショップ形式の研修へとがらっとリニューアルしました.参加していた id:otani0083 がめちゃくちゃ楽しそうだったのを羨ましく見ていました.研修というものがあまり好きではない僕ですが,今回は(おそらく初めて)自分から行きたいとお願いし,職場の方々にあれこれ調整していただいて参加することができました.

研修講師陣は,ARGの岡本真さんをはじめとして,ファシリテータとして大向一輝さん(NII),山本哲也さん(名大),江草由佳さん(国立教育政策研究所),吉本龍司さん(カーリル),天野絵里子さん(九大),中世古亜希子さん(国立国会図書館)という錚々たる方々.加えて,昨年度の受講生である中田理映子さん(京大.当時は京都工繊大)も登壇.

「サービスの企画」といっても実際にプログラミングをするという内容ではありません.主に,新しいサービスのアイディアをまとめ,それを表現した企画提案書(企画について学内で承認を得るための文書)と要求仕様書(その内容をデベロッパやデザイナに伝えるための文書)を作成できるようになることが目的です.岡本さんが「私はYahoo!知恵袋を作りましたがこれまでに1行たりともプログラミングしたことはありません」と力説していました.

そのためにこの3日間の研修はとにかく実習重視になっています.講義はおまけに近い.実際,カリキュラム全体の構成は講義8本(3時間45分)+グループ討議9本(10時間30分)+発表4本(3時間45分)で,合計18時間のうち講義の時間は2割程度となっています.特に2日目の午後以降はひたすら討議&発表でした.

討議・発表用のツールとしては,模造紙,ふせん,マジック,スケッチブック,ブレインライティングシート(後述)といったアナログなアイテムが用意されています.ノートパソコンやプリンタも用意されていますが,それよりは紙.分かればいい.きれいである必要はない.そういった研修です.

今回の名大会場の参加者は.北は北海道から南は沖縄まで,全国から集まった30人の大学図書館員です(といっても僕は大学図書館員じゃないですが).この30人が6つのグループに分かれて5人+ファシリテータ1名というチームを組み,それぞれ以下のサービスの企画を考えていきます.

  1. 大規模論文データベース(大向さん)
  2. オープンコースウェア(山本さん)
  3. 文献管理ツール(江草さん)
  4. ソーシャルメディア(吉本さん)
  5. ディスカバリサービス(天野さん)
  6. 次世代総合目録(中世古さん)

所属するグループは事前アンケート(自館で提供している学術情報サービスの概要と,それを踏まえた希望グループの理由を書く.アンケート内容は全参加者で共有される)によって研修前に決定・発表されています.

今回の研修では,各グループは企画したサービスを大学図書館の上層部によって却下され,その却下理由を踏まえて企画を3日間で練り直し,再提案を行うという設定になっています.


3日間のカリキュラム

僕は1班「大規模論文データベース」に配属されました.このチームで何を企画したかを交えつつ,3日間の流れを振り返ってみたいと思います.なお,講義資料は公開されるそうなのでその内容はざっと流します.

★1日目

午前中はノンストップで講義.午後は討議→討議→発表→討議→発表.夜は学内のレストランで名大附属図書館の職員の皆さんも交えての懇親会でした.

講義(1)「学術情報流通の現状と課題」岡本真

岡本さんからオリエンテーション(「学術情報流通の現状と課題」というタイトルは完全にダミー).研修の概要や目的.研修後のネットワーク形成が大切→研修参加者用の同窓会的なFacebookグループを紹介.

講義(2)「学術ポータル担当者研修2011を振り返って」

中田さんから昨年度研修に参加したきっかけや感想,研修後のことなど.→これによって3日間のダイジェストが体験できてイメージが作れる.こういうのいいですね.

講義(3)「流通する学術情報コンテンツ」

山本さんから絵本プレゼン.学術情報=(学術的に価値がある)データ.データをどう扱うか.

講義(4)「学術情報流通を実現する技術(1)‐要素技術」

江草さんから情報検索(Information Retrieval)やデータベースの細かめの話.転置インデックスの説明など.

講義(5)「モデルサービスの企画意図と技術設計」

各ファシリテータから自己紹介的なライトニングトーク.→彼らからどういった知識・技術を引き出せるのかを頭に入れておく.

グループ討議(1)「学術情報流通の今後」

タイトルとは異なりますが,最初の討議ということでグループ内で自己紹介をしました.お題は「私の好きなサービス」(僕はZOZOTOWNを挙げ).

グループ討議(2)「モデルサービスの現状把握」

各グループのテーマになっているサービスについてメンバー間で共通のイメージを作るのが目的です.大規模論文データベースのモデルサービスであるCiNiiの機能などをふせんに書いて,机の上に広げた模造紙にぺたぺた貼っていく.区切りのいいところでそれを適当にグループ分け.このころはまだ手探りな感じだったと思います.

グループ発表(1)「モデルサービスの現状」

各グループ3分で発表.他グループは発表を聞きながらふせんにコメントを書き,発表終了後に1分以内でポスターの周りに貼ります.以後の発表もこの形式で行われていきました.→この発表形式も良いアイディアだと思います.昨年度研修でも使われたもので,これをラーニングコモンズ会議@阪大で取り入れさせてもらいました.

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グループ討議(3)「モデルサービスの課題把握」

その次は企画するサービスのアイディアをブレストします.ここで「ブレインライティングシート」というツールを使いました.これがとっても面白くて,ぜひまたどこかで使ってみたいです.

ブレイン・ライティング・シート2

ブレイン・ライティング・シート2

横3列×縦6列のマスが印刷されたシートで,各マスはミシン目でちぎれるようになっています.このシートが1枚ずつ渡されます.まず,《2分間で横1列(3マス)にアイディアを書く→左の人に回す》を6回繰り返していきます.すると1枚のシートが18のアイディアで埋まります.各自が1枚のシートにひたすらアイディアを書き出すのではなく,他の人のアイディアが書かれたシートに書き足していくことによって,アイディアが生まれやすくなっているというのに感心しました.続いて2順目,評価のターンです.シートに書かれた18のアイディアのうち「いい!」と思ったものに☆を付けます.何個のアイディアに付けてもOK.これをまた1周させることによって全アイディアに対して全員による評価がなされます.

そしてシートをばらばらにちぎると,0〜6個の☆がつけられた108のアイディアができあがるというわけです.あとは☆の数や内容の類似によってアイディアを模造紙の上にまとめていくという流れです.

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グループ発表(2)「モデルサービスの課題」

ブレインライティングシートを使ったブレストをもとにして企画するサービスに欲しい機能をまとめて発表します.僕たちのチームでは「コンテンツ増」「ユーザー」「無料・割引」「ヘルプ」という4点を打ち出していくことになりました.この時点で最終企画案に登場する構成要素は出揃っていたんだなと今となっては思います.

また,ここで「Super CiNii(仮)」というサービス名も決まりました.誰が言い出したのかは忘れてしまいましたが……(※後日「レッド」から「あたしだかんね!」とツッコミが).正直,安直というかストレートというかツッコミどころ満載のネーミングですよね.でも早い段階でなんでもいいからとにかく名前がつけられたことは大きかったと思います.初対面のメンバーが短い時間で企画を完成形まで持っていくためには強い推進力が必要です.こうして名前をつけることでグループとしての一体感が生まれてきたと思います.

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★2日目

講義3本.昼前からあとはひたすら討議・発表.

講義(6)「学術情報流通を実現する技術(2)‐応用技術」

大向さんからWeb APIの話.

講義(7)「サービスの企画」 &講義(8)「サービスの設計と仕様策定」

岡本さんからラストの講義.2日目に作成する,サービスの「VMSO(Vision / Mission / Strategy / Objectives)」と,特定の機能について説明するための「画面遷移図」についての説明.他にはインセンティブデザイン,ターゲティング,想定問答,プロモーションなどの話題も.

なお,VMSOはこういうものと説明されました.

  • Vision=実現すべき未来
  • Mission=達成すべき使命
  • Strategy=実施すべき戦略
  • Objectives=到達すべき目標
グループ討議(4〜6)「サービスの企画」「サービスの設計」「サービスの仕様策定」

もはや各討議の境目は記憶がないのでまとめて.

まずサービスのVMSOを考えていきました.各自ふせんに思うところを書いて見せ合いながら試行錯誤をしていたところ,あるメンバー(後に「監督」と呼ばれる)から「学術情報の玉手箱やぁ〜」(彦摩呂)というVisionが打ち出されました.この瞬間が僕たちのチームの最初のターニングポイントだったと思います.つまり,みんなが知っているビジュアルによって企画していくサービスのイメージが強く共有されました.これは非常に大きい.

次にMissionとして「ユーザを取り込む」という点が決まりました.1日目にまとまった4点のうちの1つですね.これを上位に据えて,このサービスではユーザの力を活用していろんな戦略を動かしていくということにしようと.

そしてStrategyとして「ユーザによる評価」「ユーザによるデジタル化リクエスト」というアイディアがわりとすんなり納まりました.その後ここで少し詰まったと記憶しています.しばらくして,却下理由の1つでもあった問い合わせ対応コストを「ユーザによる相互ヘルプ」を3つ目のSとして導入しようと思いつき,3つのSを支えるコンセプトとして仮想通貨「CiNii円」が位置づけられました.

残るObjectives=評価指標は結構適当でした(ぉい

また,もう1つの却下理由である開発コストについても既存のCiNiiをバージョンアップするということにして対応できることにしました.他グループから指摘された,ユーザによる評価においてスパム行為が行われるのではという懸念点については,サービスのターゲットを身元のはっきりした学術関係者とすることで対応することにしました.

あとは「監督」の指導のもとで漫談プレゼンの準備が進められていきました.サービスのコンセプト(VMS)は比較的しっかりした構造を持っていると思えたので,それをロジカルに伝えつつ,あとはVision=彦摩呂や,3つのStrategyを支える「CiNii円」というアイディアを印象強くアピールするために小ネタを挟むという筋書きを作りました.なお,彦摩呂やCiNii円の絵は「画伯」が書きました.

# 3日目のネタになる「論文戦隊」とか「スーパーサイニーズ」といった単語もこの時点でちらほら出ていたような…….

グループ発表(3)「サービス企画仮提案」

発表は僕が担当.トリでした.最後の「以上です。」という台詞では監督から眼鏡をくいって上げてという指示あったのですが案の定忘れた…….発表後に「男を上げたね!」と褒められました.そうか…….

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★3日目

皆疲れ気味w USTREAM中継もされる最終発表に向けた討議・資料作成を行います.

グループ討議(7)「サービス企画提案のブラッシュアップ」

いきなり「監督」が「私,台本を考えてきたの」とおっしゃる.寸劇は非常に恥ずいのでいろいろ反論を試みつつも,押し切られました.そんなこんなで《論文戦隊スーパーサイニーズによる寸劇プレゼン》という方向性が固まる.最終発表では全員出演することにし,僕はナレーション+「ブラウン」を担当することに(1人2役は厳しいと言ったのに許されなかった).他のグループが真面目に討議を行っているときに我々はさっそく仮面やら付けヒゲやらを作っていました…….

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グループ討議(8)「サービス企画提案のブラッシュアップ」

自分とこの準備だけしていたい気分ですが,途中で他のグループの話を聞きに行く時間がありました.ワールドカフェ方式といって,各グループ1人だけが残り,他のメンバーは違うグループの企画を覗きにいく,お留守番してる人は説明担当というものです.プレゼンを聞くよりもじっくり聞けていいなーと思いました.

グループ討議(9)「サービス企画提案のブラッシュアップ」

やや焦りがあり,お昼を早めに切り上げて作業を.台本をfixしてしまい,各自の担当部分のスクリプトや使う資料を固めていきます.発表まで50分という時点で通しの練習を開始するも結局2回しかできず,どちらも3分半程度しか持ちませんでした.大丈夫なのか……と不安が募っていきます.スタンダードなプレゼンならこんなに苦労しなくて済むのになぜ我々はこんなイバラの道を……と思いつつここまできたらやるしかないと開き直っていました(たぶんみんな).

グループ発表(4)「サービス企画最終提案」

10分発表+10分質疑応答.これまでの3分からいきなり10分に増えるのがちと辛かったですね.質疑終了後には,その企画を(同僚として)通していいかどうかを「青」「赤」のふせんで投票します.

僕らは4番目でした.他のグループの発表を聞きながら急遽筋書きを修正し,最初はふつーにイントロを行い→途中から寸劇を始めるというスタイルに変更することにしました.で……,本番ではみんな噛んだり詰まったりセリフを間違えたりしつつもなんとか10分持ちました.すごい.ほんと本番に強いというかなんというか.今回,「監督」から僕への指示は「藤岡弘ばりの低音で」というものでしたがうまくできていたでしょうか…….

ネタ先行のグループですので問題点に対する細かな議論はできていませんでした.それは分かっていたので質疑応答では僕が口八丁でごまかすというあまりよろしくない感じでなんとか切り抜けることに.いただいたコメントでは「研究者よりも図書館員のほうが多く使うのではないか」「CiNii円の使い道がもっと欲しい」「ILL相殺に使っては」あたりを覚えています.一番苦しかったのは,江草さんからの「私研究者だけど,その評価機能はまったく魅力的じゃありません」というもの.ううむ.根本的だ.と思いつつも「一人の意見として伺っておきます.すべての研究者がそうかどうかは分からないですがー」と逃げる.

失笑で終わるかと心配した寸劇も好意的に受け止められて企画もぶじ承認されました.昨年度のこの班の企画は却下されてしまったらしく,大向さんを連敗させずにすんだことはとても良かったです.

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記念撮影

閉講式のあとでみんなでぱちり.


感想

いやー,つーかーれーたー.ほんとつかれた.でもこんなアホな発表を一緒にやった仲間のことは一生忘れないよ!……というのに尽きます.


僕はこういったワークショップ型のイベントを企画運営したりファシリテータを務めた経験はあるのですが(ku-librarians vs Lifo (#kulifo),ラーニングコモンズ会議@筑波,ラーニングコモンズ会議@阪大),一参加者として参加するのは初めてでした.

そこで今回自分の課題としていたのは初対面同士のグループワークのなかで自分の役割をどう見つけるかということでした.出たとこ勝負でまわりに合わせようということは決めていました.静かなチームなら頑張って騒ぐ人になろう,やかましいチームならまとめ役をやってみよう,と.結果的には,最初はチームのキャラがよく分からず,徐々におもしろ系チームだということが分かってきたという感じで,次々に出されるネタはこのチームの強みとして最大限生かすことにして,自分は,全体が破綻しないように一番後ろで支えるというポジションに座ることにしました.「監督」のムチャぶりにはマジでどうしようかと思ったりもしましたが……なるべく引き受けつつ,そのネタを入れるとバランスがおかしくなったりただのネタになってしまうなどといったところは強めに反論するようにしてみたりとかしつつ進めていきました.質疑応答を担当したのも自分なりの責任の取り方だと思っています.……うん,で,うまく立ち回れていたでしょうか.

なお,すべてのグループがこのようなネタに走ったプレゼンをしたわけではありませんのでご安心ください.むしろうちだけry.でも「大学発ベンチャー企業の社員」とか「◯◯部長」「◯◯課長」といったふうにロールプレイを取り込んだグループは他にもありました.


ともあれ,講師・参加者・その他支えてくださった皆さまに感謝を.


メモ:研修の運営などについて

  • 各自ノートパソコンが用意されていましたがほとんど使わなかったのでは.NII側で準備が面倒ならいっそなくても.
  • 大判のポストイットと模造紙が用意されていましたが模造紙だけで良かったかも.
  • 筆ペンをリクエストしてしまってごめんなさいw>岡本さん でも活用しました.
  • 会場内で飲み物が飲めなかったので休憩なしのノンストップ講義はちょっと辛かったです.5分でいいからどこかでブレイクを入れて欲しかった.
  • テーマの1つに「図書館ウェブサイト」があると面白いかも.
  • こういうグループワーク型研修はラーニングコモンズでやりたい!