ファッションとアーカイブ(読書メモ)
- 作者: 小川千代子
- 出版社/メーカー: 岩田書院
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
Europeana Fashionのこともあって,最近ファッション×デジタルアーカイブというテーマについてリサーチしています(はてブ)
2008年に出版されたこの本は,東大情報学環・学際情報学府で2006年度に開講された「アーカイブの世界」という授業の成果物です.著者は講師の小川千代子さんと受講者5名.そのなかで,青木淳子さん(大学院生;少なくとも当時は)が第3章「ファッションとアーカイブ」をまとめています.15ページという紙幅もあってか論考にはやや物足りなさを感じるものの,ファッションとデジタルアーカイブに関する日本語文献が少ない(例えば,CiNii Articlesをキーワード「(ファッション OR 衣装 OR 衣服 OR 服飾) アーカイブ」で検索すると7件)現状では,たいへん有難い文献でした.
目次は以下のようになっています.
- 1. はじめに
- 2. デジタルアーカイブの実例
- 2-1. 文化学園服飾博物館所蔵品データベース
- 2-2. 京都服飾文化研究財団(KCI)デジタルアーカイブ
- 2-3. 国立民俗学博物館服装・身装文化(コスチューム)データベース
- 2-4. 杉野学園衣装博物館
- 2-5. その他の博物館・美術館
- 2-6. 海外のファッション関連デジタルアーカイブ
- 3. 服飾とアーカイブ―歴史情報論におけるファッション・アーカイブ―
- 3-1. 衣服の実物資料をアーカイブ(記録)すること:現行と理想
- 3-2. 資料のデータベース作成とデジタル化
- 3-3. ファッションとデジタルアーカイブ
第1節では冒頭で(服飾品を中心としたファッション情報を)「研究者が学術目的に検索する場合、有用なウェブサイトは希少である」とされています.ここで「有用」というのは,必要な情報が現物を見ることなくウェブサイトだけで得られるというような意味と理解しました.やっぱりこの領域はまだまだなのかなという印象を受けました(もう6年ほど前の状況になるわけですが).
第2節はいろいろなウェブサイトが紹介されています.有用そうなものを一部メモ.
- 文化学園服飾博物館所蔵品データベース
- 京都服飾文化研究財団(KCI)デジタルアーカイブ
- 国立民俗学博物館服装・身装文化(コスチューム)データベース
- 杉野学園衣装博物館 #「コレクション」等
- 摂南大学 - 大礼服
- 明治村百選(URL変更) #「大礼服」「ウェディングドレス」「貴顕舞踏の略図」
- 学習院大学史料館 - ヴァーチャル展示室「工芸」
- 東京国立博物館 - 名品ギャラリー(リンク切れ.これのこと?) #分野「装身具類」
- 京都国立博物館 - 収蔵品データベース #「着物」「胴服」「鎧」等のキーワードで検索
- Fashion Museum(英)
- Victoria & Albert Museum(英)
- 故宮博物院(中) - 故宮所蔵の日本文物展
- Costume in The Metropolitan Museum of Art(米)
- Shoes in The Costume Institute(米)
- Dress Rehearsal: The Origins of the Costume Institute(米)
第3節は歴史情報としての衣服という話.衣服からは,当時の着用者の体型,産業や技術の水準が推察できるという.そんな衣服という情報源をどのようにアーカイブとして留めたら良いのか,というので必要な(メタ)データとして以下の項目を挙げています.
- 写真
- 人台(トルソー)に着せ付けたもの(表)。前・後・横・斜め・全体・部分。
- 台などに置いたもの(表)。前・後・全体・部分。
- 台などにおいたもの(裏)。
- テクスト
- 衣服の分類・種類。
- 素材や使用されている技法サイズなど、衣服そのものに関する情報。
- その衣服の製作者や作製年代などの歴史的情報。
- 衣服調査を行った結果明らかになった事柄、推定事項。衣服の着用者やその身分から読み取る、その衣服と社会との関係性。
- 図版(イラスト)
- 製図。
- 詳細図(刺繍の模様等)。
- 傍証資料
- 当時着用されたものの写真。
- 上記が雑誌や新聞といったメディアに掲載されたもの(写真・テクスト)。
そのうえで「現在のファッション関連のウェブサイトでは(中略)写真と時代・分類程度のものが多数」と述べています.
# とりあえずZOZOTOWNが国内最大のファッションアーカイブだと思っていますがどうか.