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カレントアウェアネス-E No.273感想

2014年最終号(ほんとーに、おつかれさまでした!)。5本すべて外部原稿。バラエティに富んだ、面白いラインナップでした。


■E1638■ 点字利用と読書に関するアンケート調査の結果について

日本点字図書館の杉山さん。

点字図書館というと「E1509 - 「点字図書館オープンオフィス」に込めた思い」を思い出す。このときの執筆者は館長の天野さんだった。オープンオフィスは2013年のこのときが初だったけど、今年も開催されたんだね(ポスターかわいらし。おぉ、黒柳徹子……)。

今回の記事は、点字図書館で行った利用者アンケート調査(実施は2013年)の概要報告。最初らへんで出てくる「視覚障害者の「点字離れ」」というなじみのない表現に興味をそそられた。調査は「点字図書の貸出実績のある利用者600人」を対象に *点字の* アンケート用紙で行われ、回答者は231人で、うち9割が点字図書を読むことができたという。

ここで、実際の視覚障害者における点字普及率のデータを引いても良かったんじゃないかと思う。門外漢なんだけど、厚生労働省の「身体障害児・者等実態調査」がオフィシャルな調査なんだろうか。平成18年度調査が直近で、表18「障害程度別にみた点字習得及び点字必要性の状況 」によると1割強という感じらしい。その前の平成13年度調査でも同じく1割程度だったので、そもそもそんなに普及してないんだなあ。アンケートの回答者は、視覚障害者全体からするとかなり偏った層だと言ってよさそう。

それはともかくとして、点字の読める方々が、点字図書と録音図書をどう使い分けているかというはなしはとても興味深かった。結果を見ていると、なんとなく紙と電子(ウェブ)の使い分けと近しいものがあるような気がした(実際、メディアの違いとしてはそういうことか。あ、いや、点字ディスプレイってものがあるか。。)。

点字図書の貸出量が減少傾向ではあるが,それは,単純に読者が減ったというものではなく,録音図書の利便性が向上し,利用者がうまく使い分けているという状況がある。

というかたちで、冒頭で挙げた疑問に回答を与えているけど、録音図書の貸出は増加傾向にあるんだろうか?というのが気になった。点字図書→録音図書へと一定のシフトが進んでいるのであれば、それはある種の「点字離れ」なのかもしれない。ただ、点字の読めるひとの点字離れよりも、そもそも点字を読めないひとが相対的に失っているであろうもの(が存在するのかどうかは分からないが)のほうが気にかかる。



■E1639■ 米国のウェブアーカイブの現状と課題

電図課の松原さん。

NDSAが米国内のウェブアーカイブ実施機関を対象に行ったアンケート調査報告書“Web Archiving in the United States: A 2013 Survey”の紹介。2011年来、2年ぶり2回目になるらしい。

そもそもこんなアンケートが成立するくらいに実績が豊かだということに驚く。92機関が回答していて、「大学等の教育機関」が52%というのもすごい。日本だとNDL以外にウェブアーカイブやってる機関はあるんだっけ……?

でも

たとえば,収集先サイトに対して何らかの同意を得るか否かは,収集については58%が相手先サイトに対し事前通知も許諾依頼も行っていない。これに対し,収集ロボットのアクセスをそのサイトが受け入れるか排除するかを記述する,“robots.txt”については,55%が遵守すると回答している。これは,前回調査の33%から20%の増加である。

を読むとけっこう雑だなあという印象を受けた。許諾はフェアユースでなんとかなるんだろうか(適当発言)。でもrobots.txtくらい守ろうよ。。

個人的にはArchive-Itの普及率に関心があったので、原文を見てみた(p.18)。

Archive-It remains the dominant external service among survey respondents, with approximately 70% (53 of 75) using the service in both 2011 and 2013.

回答館ベースだと半分以上がこれか。

ウェブアーカイブ事業の共通規格化・標準化が進む方向にあること。
技術的な面で言えば,WARCフォーマットやWaybackビューワーといった標準的な規格を採用する機関が目立って増加している。

という指摘は、こういったツールの収斂と無関係じゃないんじゃないかなあと想像する(けど裏は取ってない)。

内容とは関係ないけど、「”finding aids”(検索補助手段)」という訳に対してツッコミが入っていた。補助というよりは検索手段そのものというイメージを持っているけど、どう訳すのが適切なのかは私には分からない。ぐぐってみるとこう訳している文献もなくはないようだった。そういえば今月リニューアルしたばかりの日文研のOPACには「所蔵リスト / Finding Aids」というメニューがあった。



■E1640■ これからの福島の図書館を考える<報告>

福島県立図書館の吉田さん。

図書館総合展フォーラム「これからの福島の図書館を考える」の報告。二部構成で、ご本人も報告された第1部「福島県における図書館の今」と、第2部「避難指定区域の住民を受け入れている自治体の図書館について」に分かれている。

第1部では「全体の避難者数は県外避難より県内避難が多いのに対し,児童だけを抜き出してみるとその数字は逆転する」にふむふむ。また、刻々と変わりゆく避難の状況にあわせて、サービスも変化していかないといけない可能性があるということか。

第2部では会津若松市いわき市から報告があったらしい。いずれも、そんなに派手なことをやっているわけではなく、新しいお客さんが増えたからこれまでのお客さん同様にきちんと対応するという、自然なサービスをしているという印象を受けた。その自然さが自然に流れていったのは、

シンポジウムの中では,両市とも,震災以前から持っていた広域サービスに対する意識の高さと活動の素地が,スムーズな避難住民の受入につながったのではないかとする意見があった。

ということなんだなあ。



■E1641■ 来たるべきアート・アーカイブとは<報告>

よしまさん! このイベントに興味を持たれていたのは知っていたけど、まさかこうしてレポートが読めるとは……。

京都市立芸術大学芸術資源研究センター主催の「来たるべきアート・アーカイブ 大学と美術館の役割」のはなし。このイベントの情報を目にするまで、京都市立芸大にこんなセンターがあったことを知らなかったんだけど、2014年4月にできたばかりだったらしい。

アートアーカイブというテーマは、藝大に総合芸術アーカイブセンターなる組織ができたと知ったときからずっと気にしていた(はてブを見なおしたら2011年12月だった)。ただ、あまりにも情報がない。藝大のも、しばらくはサイトが学内公開で外からは様子が伺えなかった。ときどきアートアーカイブをテーマにイベントが行われるんだけど、開催地は決まって東京で、レポートらしいレポートも少ない。というわけで、今回のイベントのレポートがartscapeに載ったときも嬉しかった。

吉間さんの記事では、基調講演はすっとばして事例報告を中心にまとめている。慶應義塾大学アート・センター、国立西洋美術館情報資料室、国立新美術館情報資料室、京都市立芸術大学(藝大はなしか)。それぞれ読んでいると、まだまだこれからなんだな、という印象を持つ(安心する)。

自分はまだ、アートアーカイブというものがなにものなのか腑に落ちてない段階にいる。つまり、アートという領域に特有のエッセンスが存在するのかどうかが見えてない。ただ、アートも一般には、過去の文脈を押さえつつそれを乗り越えることで初めて評価の俎上に上がることができるものだと理解していて、アカデミアの世界と共通するものがある。そういう意味で、アートにおいてもアーカイブの存在は重要であることは間違いないはずで。体制うんぬんの問題は必然的に出てくるんだろうけど、いまはただ「なにをアーカイブするのか」という議論を楽しみたいという気分(なので慶應の記述がいちばんおもしろかった)。その次はたぶんアートアーカイブのLinked Dataが生み出すものにドキドキすると思う。

artscapeのレポートでは、後半のディスカッションでアーカイブの目的を設定することの是非について議論されていたようだけど、どうやったって権力性なんて出てきてしまうだろうよ、と思う。そこに自覚的である、という開き直り方しかないのでは。

しかしこれ、思っていたより難しい世界だなあ。。あの企画はなんとかなるのかならないのか。

# 最近、くるりがアーカイブスに乗り出して、call for 資料してましたね。
# https://note.mu/quruli/n/nbe9e65354036



■E1642■ 第25回保存フォーラム「続けられる資料保存」<報告>

資料保存課名義。

毎年恒例の保存フォーラムに今年は京大の古森さんが登壇ということでかなりびっくり(裏話は大根のひとに聞いた)。

京大の資料保存環境整備部会のはなし……とは書いてないな。「委員会型の組織(図書館業務改善検討委員会の一部会)」とぼやかした書き方になってる。あれ。古森さんのレジュメによると、図書館サービス部会に吸収されたんだ。あれ? 今年度から?

それはともかく古巣の話なので活動の概要は当然知っているわけだけど、「人事異動等によって人の入れ替わりがあることを前提としており」や「主体はあくまでも各図書館・室であり部会はそのサポートに徹すること,保存環境の向上と情報提供を部会の重要課題とみなし,個々の職員の修復技術向上は課題としないこと」を意識しているってことは知らなかった。えらいなあ。そんなふうにスムーズにサイクルをまわしてる/がまわっているという印象がなかった。。(資料保存にあまり興味がなくてちゃんと見てなかったせいかも。ごめんなさい。でも部会というのはどこもどたばたしているものだとばかり。。)

「個々の職員の修復技術向上」については研修担当の別の部会のほうでサポートするから(課題にしなくてもいい)、という点を添えないとちょっと誤解を招くような気はした。個々の職員任せにしているわけではない、はず。

改めて、パンダねえさんは偉大だなあと思いました。



次号、新年一発目は1月22日。