解説記事「Plan S:原則と運用」を書きました

『情報の科学と技術』69巻2号(2019年2月)に「Plan S:原則と運用」という解説記事を書きました。同誌の2018年度連載企画「オープンサイエンスのいま」の(自分にとっては)4本目、ラストの回になります。

オープンサイエンスがテーマのくせに例によってpaywallの向こう側にあるのでリポジトリで公開しています。

Plan Sは2018年のオープンサイエンス界隈の最大のトピックだと思うのですが、待てど暮らせど誰もちゃんとした日本語解説を書いてくれない。じゃあ自分が書くか……。書いていいのか? どうせ誰か書いてる途中なんでしょ? いま(2018年12月初旬〆)取り上げるのは適切なんだろうか? 11月末にImplementation Guidanceが発表されて多少は反響が出てきてるからタイミングとしては悪くないのか。フィードバックの締切は2月頭だからまだまだ落ち着いてないけど。……自分のなかでGoを出せるようになるまでに40本近い文献を読み(この時点でどうにかしてこの投資を回収したいという気持ちになっている)、最終的には100本くらいは消化してまとめあげました。労作といえば労作。たかが5ページの原稿にそこまでするかという頭の悪さは否定できない(なお、依頼内容は2ページ。そのへんの無理を通してくれた編集部には感謝しています)。

最後のほうは力尽きて伏線を回収しきれてないところとかあったりしますが(冒頭で"彗星"というタームを使った理由とか)、踏み台としてお役立ていただければ幸いです。なお、最後の手直しが1月15日〆だったので、それ以降の動向はカバーできていません。1月末から2月頭にかけて各所からImplmentation Guidanceへのフィードバックが相次ぎましたが、それは次の課題ということで。

記事にもちらっと書いた通り、Plan Sという無理めな方針に対して、さまざまなステークホルダーからマジな意見が出ているのが、ほんとうに面白いのです。最終的にPlan Sがポシャってもぐにゃっとしてしまっても、このプロセスを刻んでおくこと(というよりも自分が消化すること)には意義があるだろう、今後に生きるだろう。というのが無理をしてもこのネタで書くことに決めた理由だったりします。オープンアクセスというアクセスの問題と、研究者の業績の評価という問題は不可分だと感じていて(不可分になってしまっていることが問題とも言える)、その意味でも改めて勉強になりました。

さて。「六本木の34階で働くデータライブラリアン」こと南山泰之さん(id:y_minami)にそそのかされてこの連載企画に乗りましたが、1年間しんどかった。ほんとしんどかった。理由はたぶん3つあって。「オープンサイエンス」というざっくりしたテーマ(そんなのいまの自分にとっては「なんか書いて」に等しい依頼)だけ与えられて具体的なネタは自分で考えろ、というのがまず辛い。いやもちろん多少は相談に乗ってくれたわけですが。別雑誌の編集に関わっている身からすれば、なんだその楽な丸投げ企画!と文句も言いたくなる。さらに、3ヶ月おきに締切がやってくるというインターバルの短さ、これも辛い。修正が終わって原稿がやっと出たー!と思ったら翌月初旬にはまた締切がやってくるので、すぐにネタを探し始めないといけないというプレッシャーにいつも押しつぶされていた。一方、この締切→刊行までの2ヶ月弱というインターバルの"長さ"は「いま」を切り取るには悠長すぎると感じたのも事実です。せっかく書いたのにどっかの誰かの原稿とネタがかぶるというリスクが少なくない。それだったら自分のブログで即publishしたほうがマシだよ、と思うことは多かった。というわけで、枯れぎみ or スレたネタを選択してばかりいました。最終回は思い切って王道に突っ込みましたが、世に出る瞬間までヒヤヒヤものでした。

佐藤翔くん(@min2fly)、池内有為さん(@oui_ui)のおふたりといっしょにお仕事ができたのは光栄で、とても嬉しいことでした。ありがとうございます。南山さんもいつもひとり孤独に原稿チェックされてておつかれさまでした。

好評につき(?)2019年度も連載は続いていくということですが、私はここでドロップアウトすることにしました。そのバトンを受け継いでくださるのは大先輩のOさんということで……恐縮至極であります。

# 今日は有休です。