OpenAIRE-CORDIS連携
https://www.openaire.eu/reporting-horizon-2020-project-outputs-with-openaire
今月頭にOpenAIREから発表されたネタについて(NIIオープンフォーラム2016の発表でもちらっと紹介しました)。
欧州の研究助成プログラムであるHorizon 2020では成果論文のオープンアクセス化の義務化(と一部分野でのオープンデータ義務化試行)を実施しており、そのモニタリングやサポートを行っているのがOpenAIRE 2020というプロジェクトです。研究者の負担を減らすために、OpenAIREに準拠した機関リポジトリやサブジェクトリポジトリに論文を登録さえすればそれだけで十分というサービスレベルを目指していると理解しています。
助成金を獲得した研究者はオープンアクセス義務化への対応とは別に、プロジェクト全体の成果についてCORDISというシステムで報告する必要があります。今回発表された連携機能は、OpenAIRE準拠のリポジトリに論文を登録しておけば、そのメタデータが自動的にCORDISに流れていって、研究者自身が手入力する必要がなくなるというものです(下のスライドの「List from OpenAIRE」という部分)。裏側のしくみは分かりませんが、リポジトリ登録時にメタデータに入力されるHorizon 2020のプロジェクトIDをキーにしているはず。
日本で言えば、科研費の研究実績報告書を書くのがちょっと楽になるという感じですね。この研究実績報告書では2015年度からオープンアクセスの有無をチェックする欄ができましたが、このように研究者の自己申告に任せるのではなく、実際にリポジトリに登録されたという事実をもとに管理するというのも上手いな、と思います。
NII学術情報基盤オープンフォーラム2016 #SINET5 #of_repo
http://www.nii.ac.jp/csi/openforum2016
国立情報学研究所の学術情報基盤オープンフォーラム2016に行ってきました。最終日には羽田空港で大韓航空出火事故があって、3月の出張に続いてまた欠航延泊か……とヒヤヒヤしましたがなんとか帰ってこれました。
自分の発表
用務のひとつはリポジトリトラックでの登壇。今回はオープンアクセスモニタリングのお話をしてきました。
早口すぎた……と超反省。持ち時間が10分ということもあり、今回はいつもと違って「正確な理解」は最優先しなかったにせよ、やっぱり詰め込み過ぎた……。次に人前で話す機会は秋冬の某研修になりそうで、そのときは気をつけよう(あっちは逆に75分もあるんだけど)。
表紙の画像は何?と聞かれましたが、モニタリングといえばダッシュボード(dashboard)でしょということでFlickrから拾ったものです。
最後のページにもあるように、6月にアイルランドのトリニティカレッジダブリンで開催されるOR2016という国際会議でポスター発表をしてきます。ついでにセントアンドリュース大学で開催されるCRIS 2016に寄ってから。CRISはいつか参加したいと思っていたので、セットで行かせていただけることになってとても嬉しいです。福岡→ソウル→ロンドン→エディンバラ→ルーカーズ→CRIS2016@セントアンドリュース→ルーカーズ→エディンバラ→OR2016@ダブリン→ロンドン→ソウル→福岡、という10泊12日の一人旅。何を着て行ったらいいのやら。
機関リポジトリ推進委員会協力員の仕事でこうしたプレゼンをするのは3回目でした。過去2回とは違って今回はresearchmapから離れたトピックに見えるかもしれませんが、関連したものです。
感想
初日は移動日、2日目は終日リポジトリトラック、3日目はクローズドな(なのになぜかフォーラムのプログラムに掲載されている)打ち合わせ、ということで別会場でパラレルに展開されていたCAT2020やERDB、学認の話はまったく聞いておりません。
リポジトリトラックの全般的な感想は #SINET5 #of_repo でツイートしていますので繰り返しません(だれかまとめてください;相変わらずTogetterにハブられてログインできないひと)。
Twitterでは、天野さんの「消えゆくデータを供養する : 人文系研究データのケーススタディ」が反響ありましたね。
「データベース科研」で作成されたデータベースの一覧。https://t.co/JYbS47t1K7 => 悉皆調査してみると半分くらいは「適切に」管理されていないと言える。これらを機関リポジトリに登録したい。#SINET5 #of_repo
— HAYASHI Yutaka (@hayashiyutaka) May 26, 2016
個人的には
- 機関リポジトリにおけるDOI登録状況(加川さん)
- 学術資源リポジトリ協議会におけるJaLC DOI付与の試み(林さん)
が楽しかった。DOI登録は昨年度自分でもせっせと手を動かして取り組んだことなので思い入れがあり、最近その事例を原稿(細かいことまで盛り込んだら1万字を超えた)にまとめていたところなので記憶も新しいし。
機関リポジトリにおけるJaLC DOI登録に関する発表はオープンアクセス・サミット2014以来になるのかな。あのときは先行実験館からの報告だったし、今回の加川さんはマクロな分析で、林さんはやや特殊なケースと言えるので、ごくふつーの登録事例があっても良かったんじゃないかとは思いましたが。加川さんの分析からは少なくとも2015年末時点では正直そんなに登録が進んでないということが感じられ、自分の担当プロジェクトでの課題がいくつか頭に浮かびました。まあ、JAIRO Cloudに移行すれば簡単にDOI登録できるよってことでいいのかもしれないけれど。
空き時間にキナリノで読んで気になっていた等々力渓谷に行ってきました。都心からたいして離れてないのに駅から徒歩3分でこの景色かとほんとに驚く。いい環境だなあと憧れたけど、家賃はそこそこ高かった。
「E1791 - 欧州におけるCRISと機関リポジトリの連携の現状」を書きました
http://current.ndl.go.jp/e1791
昨年10月のE1725に続いて、EUNISとeuroCRISの報告書の紹介記事をカレントアウェアネス-Eに寄稿しました。
この報告書は執筆依頼をいただくまえにいつかどこかの飛行機のなかで読了済みでした。現在の自分の関心テーマどまんなか!なので非常にありがたい情報源ではあるものの、正直ちょっと結論を急ぎすぎてるきらいがあり、広く紹介するのも微妙かなあと感じていました。ただ、そのへんも含めて批判的に紹介してOKという依頼でしたので、お受けしました。ほんとはCOAR Observatory Third Editionが出たときにきちんとまとめるべきやったんや……。
自分の意見は以下の段落で述べています。
ただし,回答数の少なさと国による偏り(7か国では回答数が1機関のみ。回答数上位5か国で全体の6割を超える)を鑑みると,本調査で多様な欧州の現状を把握できたとは言いがたいのではないだろうか。DRIS(CRISのダイレクトリ)に掲載済みのCRISからの回答や,2013年に同様の調査が行われたポルトガルの現状が十分に反映されていない可能性について言及されている点も気にかかる。また,現在はCRISとIRの併用が大半を占めるものの,CRIS導入数の伸びを考えると今後の趨勢は分からない。設問は用意されていなかったが,どちらかに統合したいと考えている機関はないのだろうかという疑問も湧く。ぜひ今後の継続的・網羅的な調査の実施を期待したい。
最後に第五期科学技術基本計画について触れましたが、ちょうど『情報管理』2016年4月号の「第5期科学技術基本計画における主要指標について」という記事のなかで、
具体的には,筆者は,府省共通研究開発管理システム(e-Rad)と他のデータを結び付けた新たなシステム開発が重要と考えている。
答申案においては,「府省共通研究開発管理システムへの登録の徹底や,当該システムと資金配分機関のデータベースとの連携を進めつつ,総合科学技術・イノベーション会議及び関係府省は,公募型資金に対する評価・分析を行い,その結果を資金配分機関やステークホルダーに提供する」ことがうたわれている。
e-Radは,原則として公募型研究資金制度を対象としており,その運用に当たっては「マクロ分析に必要な情報を内閣府に提供すること」が,公募要領等に明記されている。これにより,府省を超えた政府全体の公募型研究資金制度における資金配分情報について,府省別・配分機関別,被配分機関別・分野別,研究者・男女・年齢別等,さまざまな切り口から分析を行うことができる。
また,論文,特許,商標,製品等に関する指標は,研究開発投資に対するアウトプット・アウトカムといった知的ストックを示す指標である。e-Radにこれら指標をひも付けることにより,政府研究開発投資が生み出した成果を把握することができる。
のように提案されていました。なるほど、e-Radか。今週はKAKENもリニューアルしましたね。funderベースならそれでもいいのだけど……。
# この4月から『情報管理』の読者モニター的な仕事をしています。
INTACTプロジェクト(ドイツ)
ドイツで行われているAPC(Article Processing Charge)がらみのプロジェクトについてメモ。
2015年10月開始したプロジェクトで、DFGから3年間の助成を受けている。ウェブサイトができたのは2月23日で、まさにゲッティンゲン大学でINTACTの話を聞いたその日だったわけだ。
実施機関は、ビーレフェルト大学図書館、ビーレフェルト大学のInstitute for Interdisciplinary Studies of Science (I²SoS)、マックスプランク電子図書館(MPDL)。OpenAPC、ESAC、OA Analyticsという3種類の取組から構成されている。
プロジェクトの目標として
- ドイツの研究機関におけるオープンアクセス出版の拡がりを把握し、今後のコスト予測の基礎とする
- APCのデータセットをオープンにし、研究機関から出版社へのキャッシュフローを透明化する
- 助成機関・図書館・出版社等すべての関係者を含め、APCに関するワークフローを効率化させる
の3点が挙げられていて、それぞれOA Analytics、OpenAPC、ESACに対応している。
Open APC
ビーレフェルト大学図書館が担当(DINIのサポートも受けている)。各大学で支出しているAPCの金額をオープンなデータセットとして(GitHubで)公開するもの。データセット追加・更新の情報はブログで紹介されている。
http://www.intact-project.org/openapc/
https://github.com/OpenAPC/openapc-de
ESAC(Efficiency and Standards for Article Charges)
MPDLが担当。2014年に開始し、2015年11月にINTACTに合流したプロジェクト。活動内容は、APCのビジネスモデルやワークフローの構築、出版社との協力(投稿、著者同定、インボイス、レポーティング)、優良事例やガイドラインの共有、という感じ。ESACのウェブサイトを見ると、Jisc Monitorなど英国の動きに注目しているようだ。
http://www.intact-project.org/esac/
http://esac-initiative.org/
OA Analytics
I²SoSが担当(German Competence Centre for Bibliometricsのメンバーらしい)。フラウンホーファー研究機構(Fraunhofer Society)、ヘルムホルツ協会(Helmholtz Association)、ライプニッツ協会(Leibniz Association)、マックスプランク協会(Max Planck Society)に属する大学・研究機関を対象に、オープンアクセス出版の拡がりを把握するための指標を提供する、ということだけど、具体的にどんな指標なんだろうか。
出張三昧
2月中旬から始まった出張三昧の日々がようやく落ち着いた。数えてみるとこの1か月間で7日間しか出勤してない。出勤したら出勤したで(というか土日も)レポートや議事録の作成とか……。
2月19日(土)〜2月27日(土)
ドイツ7泊8日。当初は帰国後すぐに米国出張に同行という話もあった……。概要は以下に報告したとおりで、詳細なレポートは執筆中(ほぼ完成)。
3月2日(水)〜3月9日(水)
東京7泊8日。6泊のはずが羽田の悪天候で復路便が欠航しやむなく延泊となった(そのさなかでクレジットカードを紛失した)。空き時間はだいたいミーティング資料を作ったりドイツの振り返りをしていた。花粉症が始まって頭痛と吐き気がひどかった……。ドイツは4か所のホテルを転々としていたのでトランク広げて定住できることのありがたみをしみじみと。
3月2日(水)
- RDA 7th Plenaryに参加した友人から話を聞いた
3月3日(木)
3月4日(金)
- Asian Open Access Meeting
- L4Dなミーティング
- お昼休みに続いてOpenAIREのひとたちと話をしていたので途中参加になってしまった。主にメタデータの話をしていたんだろうか。
3月5日(土)
3月8日(火)
- researchmapなミーティング
- ドキドキの顔合わせだったけど、今後につながっていきそうで一安心。
3月14日(月)〜3月15日(火)
東京1泊2日。
3月14日(月)
- J-STAGEセミナー「CCライセンスを学ぶ」
- キャンセル待ちで入れていただいた。機関リポジトリでCCを導入するとしたらどんなことが課題になりそうか、という姿勢で話を聞いた。JST内の自販機の価格設定に衝撃を受けた。
- J-STAGEとしては搭載誌がCC採用してくれると外部サービスとの連携がやりやすくなる
- 著者に同意を取るときはCCのバージョンを明記しないほうがバージョンアップの際に楽
- 転載図等を含んでいて論文全体にCCを適用できないときは「Except where otherwise noted, ...」というような表記をするのが一般的
- いったんCCにしたものをAll rights reservedに戻すことはできるが、ユーザがCC時代にアクセスしたことを立証した場合には権利を主張することはできない
3月15日(火)
- 学認運営委員会
- 業者打ち合わせ
- id:otani0083 と合流してProQuest/Ex Librisの話を聞く