カレントアウェアネス-E No.258感想

週末の夜はお気に入りのカフェに来て高速道路と造船所を眺めながらブログを書く、というのが定番化しつつ……(自宅はWiMAXがいまいち遅いせいもあり)。

今号は6本中、外部原稿が3本(うち館内が2本)。





■E1555■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/4/18現在)

2月中旬から4月中旬までの2か月間の状況まとめ。

これで3年。2011年末に作ったこのページも長大なものに……。CA-RとCA-Eの件数が見出しのところに表示されてるといいかなあと思ったのですが、Viewモジュール(Drupal)でそこまでできたかな……。

3月11日を挟むのでこの時期は情報が多くなるのですが、それでも例年に比べると減ってきたのかなという印象を持ちました(いや、実際どうなのかは分からないですが)。2013年(E1403、E1422参照)と2012年(E1263、E1274参照)は1か月というインターバルでまとめられていましたし。

今回気になったのは、ひなぎくはてな(E1543参照)、日出弘さんの『“東日本大震災”外史 : 忘れないこと,伝えたいこと : 東北大学附属図書館工学分館』(記事中にはないけど東北大学附属図書館の専門員の方らしい)、我らが福島さんの「史料と展示『ひなぎく国立国会図書館東日本大震災アーカイブ)』の概要とその意味」(これ、「史料と展示」の部分は要らないのでは。どういうタイトルだろうと悩んでしまった)など。最後の

文化庁被災文化財等救援事業「文化財レスキュー事業」に協力してきた奈良文化財研究所(奈良県)が,海水に漬かった宮城県の文書約250箱分を修復する応急処置を終え,宮城県に発送した。

もようやく、という想い。これだけの時間がかかるものなんだ。





■E1556■ 図書館とファブスペース ~ 導入から1年

慶応SFCメディアセンターの長坂さん。

ひさびさに企画協力しました。Refにも挙がっているMediaNetの記事を読んで、もっと知りたいなあと思ったのがきっかけでした。1年前にITmediaで紹介されたときには先をこされたっ!と悔しく思っていたのですが、今回このように続報をまとめていただけてよかったです。

ファブ活動に携わっている教員の協力を得て設計を行い、学生スタッフ(AVコンサルタント)がサポートを行っていると。大学図書館の学生スタッフに対する相談内容はIT機器のトラブルシューティング(無線LANの接続やプリンタの紙詰まりなど)が多いと思うんですが、そっち系に振り切ったという位置づけ方もできるかな。行ったことがないので印象に過ぎませんが、SFCという場所はファブと相性がいいのでしょう。芸術系大学や芸術系学部を擁する大学(九州大学にも九州芸術工科大学を前身とする芸術工学部がある)でも可能性はあるんじゃないかと思います。

海外の動向を意識して,2014年4月からは新型の3Dプリンタや3Dスキャナ,カッティングマシン,刺しゅうミシンなど新たな機材を取り入れ,より広い場所にファブスペースを移動・拡充した。そこに掲げるのは“FAB is for Everyone”というメッセージである。プラスチックから,紙や布,服へと対象を広げることで,より身近な素材でファブを体験することが可能となった。どのような作品がつくられていくのかますます楽しみである。

記事では言及されてなかったのですが、利用者の属性が気になります。身分、性別、SFC内外、など。あまりはっきりした傾向がなかったからカットしたのかな。

なお、まだ3Dプリンタは使ったことがありません。




■E1557■ ポータルからプラットフォームへ:Europeana事業計画2014

電子情報サービス課の塩崎さん(もちろんお名前は存じ上げてるけれど、残念ながらお会いしたことはない)。

Europeanaの、

しかし,もはや,単なる「ポータル」を超えて,「プラットフォーム」へとその姿を変えつつある。

という動向を、次期戦略計画(2015-2020年)を見据えた2014年版の事業計画にもとづいて紹介。ここでいうプラットフォームというのは、

これは,検索画面上での個人利用を軽視するということではない。コンテンツを利活用するコミュニティを育てること(ユーザ参加型コンテンツ等を含む)に,より焦点を当てるということを指す。特に,創造産業(Creative Industries)との関係構築が興味深い。API等によるデータ提供(Europeana Labs),開発者やクリエイターが新たなアプリ,ゲーム及びサービスを作り出せる環境づくり(Europeana Creative)に取り組むとされている。

ということで、そのためにもデータの利用可能性とクオリティを高めていき、EUの政策のなかにしっかりと自身を位置づけていくことによってサステナビリティを確保していく、と。

地味に感心したのが、

加えて,データの登録状況調査にもとづき,国・分野(文書館及び音楽映像アーカイブが低調)・年代の偏り(近世が弱い)を解消することが目指されている。

という部分。弱点を分析できるくらいにコンテンツの量が充実しているということでしょうけど。

最後の一段落で視線をNDLサーチ(って、正式名称は国立国会図書館サーチないしNDL Searchだと思うのですが、いいのかな。いや、正直NDLサーチと書けるほうが短くてありがたいけれど)に移して、メッセージを。ここが今回の執筆者が塩崎さんだった理由なのかな。




■E1558■ 2014年CEAL年次大会・NCC公開会議<報告>

れきおんのおねーさんこと、奥村さん。

この会議、昨年は現カレント-E担当の篠田さんが出席されていました(E1419参照)。自腹で行こうと考えていたころもありましたが、フィラデルフィアまでの航空機代を調べて諦めたという(結果的に、この時期にそんな余裕はなかっただろうけれど)。

一番興味深かったのはこの部分。スペシャリスト/ジェネラリストという文脈で。

会場の参加者からは活発な発言がされた。「あるライブラリアンは20もの異なる部署を調整している。ライブラリアンは,もはや地域研究のスペシャリストではいられなくなっている」「伝統的な地域研究の文脈では,世界を地理的に分割し,当該地域について,社会,言語,文化,政治の観点から考察してきた。組織再編の名の元に,キャンパスではすべての地域研究を国際研究(International Studies)のプログラムに吸収できると思われているふしがあるが,各々の地域研究に多様性があり,国際研究では扱いきれない」

奥村さんから今年のCEALは研修めいたことをしてくると聞いていたのですが……そのへんはカット……?><





■E1559■ 図書館員のコンピテンシー・インデックス2014

WebJunctionネタだから篠田さんかなあと思ったけれどRUSAが冒頭で出てきたからこれは依田さんだろう、で当たり。

コンピテンシー・インデックス? 初耳かも。今回のは改訂版で、前バージョンは2009年らしいからフォローできてなくても当然か。

図書館員の専門性とか、この手の話は苦手で、そんなに興味が持てないでいます。このドキュメントも、5つに分類され(分類自体はさほど不思議はない)、そのひとつでは30ほどのコンピテンシーが150ほどのスキルや知識とともに記されているらしくて、合計で77ページというので、もうお腹いっぱい。そんななか、記事では改訂版で意識された部分が端的にまとめられていてありがたい。

その改訂の内容は,2009年当時からの環境の変化に対する意識が反映されたものである。導入部分の説明によれば,全体を通じて強調された要素は,「21世紀のスキル」,「アカウンタビリティ」,「コミュニティへの関与」の3つであったという。

先の奥村さんの記事でもcollaborationに関する言及がありましたね。

しかし、冒頭の「米国の図書館界においては,図書館分野で「高い業績」を実現するうえで求められる個人のコンピテンシーを明確にする動きが,以前より積み重ねられている」の括弧は、日本国内のほうの「仕事上の役割や機能をうまくこなすために個人に必要とされる測定可能な知識,技術,能力,行動その他の特性のパターン」という箇所と、対比されているのだろうか。記事中のほかの部分で強調されているわけではない。でも、うまくこなすだけでいいんですか?と、さらっと依田さんのいつもの皮肉がこめられている気がしてならない。





■E1560■ 大学図書館の指導者層の意識調査(米国)

ラストは篠田さん。

ITHAKA S+Rの大学図書館長向け調査のレポート。2010年に続く2回目か。調査内容は「戦略とリーダーシップ,予算と人員,学部生と情報リテラシー,蔵書構築,ディスカバリーサービス,学術コミュニケーションと研究支援の6つの観点で分析されている」ということで、ディスカバリーサービスが独立した項目として立つんだというのに軽く驚き。その内容は、

4分の3近くの館がディスカバリーサービスを導入済であると回答している。未知文献の探索,自館で利用できるオンラインリソースへのリンク,経験が浅い利用者のニーズへの対応において有効であるとみなされている。一方で,図書館のウェブサイトへの利用者の呼びこみ,熟達した利用者のニーズへの対応,既知文献の探索という点においては,ディスカバリーサービスは有効に機能しないと認識されている。

と、おおむね想定通りなんだけど、「図書館のウェブサイトへの利用者の呼び込み」というのははっきりとしたイメージが描けなかった。どこに呼び込みたいのだろう。

「図書館に望ましい変化をもたらすにあたっての制約事項として,財源不足をあげる回答が9割近くにのぼり,次いで,半数近くが職員のスキル不足と回答している」では、具体的にはどういうスキルが足りないと感じているのかが気になった。

「図書については,電子媒体の資料が利用できれば除籍してよい紙媒体資料は全体の1割以下であるとする回答が,図書館長では9割近くにのぼっており,置き換えを想定していないことがうかがえる」にふむふむ。ちょっと意外だった。コレクションについては「電子情報の保存」も何度か登場している。

「図書館長の97%が,図書館が果たすべき役割として学部生への情報リテラシー教育と教育支援を重視して」いるものの、「学部生の研究スキル向上や情報リテラシー教育を主に図書館が担うとする回答は,図書館長では72%であるが,2012年の教員を対象とした調査では22%にとどまっ」ているなど教員との意識のギャップがある(いつも指摘されていること)。一方で、「図書館が果たすべき役割として研究支援を重視するとした回答は,2010年の85%から68%に減少」と、図書館サイドでも学習支援(といっていいよね?)と研究支援とのあいだで温度差があるようで。

# すっかり原文を参照する習慣がなくなったな……。





次は5月22日(5月の発行は1号だけなんですが、GWもあってぼやぼやしてると余裕をなくしたりした想いでが)。

カレントアウェアネス-E No.257感想

福岡移住で落ち着かない日々を過ごしていたので1号(No.256)スキップしてしまいましたが、やっと生活も、IT環境も、落ち着いてきたかなという感じです。ここしばらく引越のことしか考えてなかったので頭がぼけています。リハビリせねば。

新年度最初となる今号は6本で、うち外部原稿は1本。





■E1549■ 芸術を育む図書館に注目を-“Library as Incubator Project”

書き出しで、ああ、依田さんかと分かる。

毎年発表されているMovers & Shakers(日本で相当するものはないかな……?)をトリガーにした記事。Library as Incubator Projectはずっと前から注目してきたプロジェクトでしたが、やっと正面切って紹介することができたという感じかな。

第2段落の「ウィスコンシン大学マディソン校の図書館情報学修士コースで」というくだりで、以前にも似たような記事があったな……、E1378か(別の文脈で本文中でも引用されている)と。こちらはシラキュース大学情報学の大学院生の活動がきっかけとなったものでした。今回のLibrary as Incubator Projectも、大学院の授業がきっかけでスタート→図書館員(記事中にはどこで勤務してるか書いてなかったけど)となってからも継続→「2014年5月には,“The Artist’s Library: A Field Guide”と題する書籍も刊行する予定」、という流れがいいです。3人での合同プロジェクトであること、ウェブサイトでの情報発信を中心とした無理のない活動というあたりがポイントかなと思いました。





■E1550■ データが変える研究,教育,ビジネス,社会:IDCC14

池内さん(CA1818参照)。

タイトルに「<報告>」とついてないけど、2月にサンフランシスコで開催された第9回国際デジタルキュレーション会議の参加報告。主催者の英DCC+米カリフォルニア大学UC3+CNIという組み合わせが“国際”。

事例報告、人材育成、学術出版モデルという観点からレポートされています。

事例報告ではplanningの話が多かったのかな。カリフォルニア大学のデータリポジトリ(DataShare)ではデータを登録するとDOIが振られるだけじゃなく、トムソンロイターのData Citation Indexに収録される、というのが研究者に対するインセンティブになりそう。あ、Natsuko Nichollsさんだ……(公開後に取り下げられたこのレポートのことを思い出している。ダウンロードしておけばよかったと未だに後悔している)。人材育成の話は、日本ならURAという存在がフォーカスされるだろうし、学術出版モデルのくだりでは、そうか、(OA)ジャーナルのデータリポジトリの有無はAPCの金額の多少に影響を与えうるのか、という当たり前のことに気づく(いや、OAじゃなかったら契約額に転嫁されるだけなんでしょうけど)。





■E1551■ 公共図書館との関係性に基づく米国民の類型

安原さん。

Pewのレポートの紹介。ふう、また調査したのか、どんだけー、という気すらしてしまいましたが、今回は、12月のレポートと同じデータに依拠してさらに深い分析を行うというものなんですね。

「人生における公共図書館の重要性,図書館の使い方,コミュニティにおける図書館の役割をどのように見ているか等の要素に基づきクラスター分析し」、9つのグループに類型化している。結果は、図書館と深い関わりをもつ(1)Library Lovers、(2)Information Omnivores;ある程度の関わりをもつ(3)Solid Center=最大派閥、(4)Print Traditionalists;関わりの低い、(5)Not For Me、(6)Young and Restless、(7)Rooted and Roadblocked;関わりがない(8)Distant Admirers、(9)Off the grid、となったという。

おもしろいなあ。日本で(というのが広ければ東京で)同じことやったらどうなるかな。





■E1552■ 英国の読書習慣調査:読む派と見る派に二分されている?

依田さん2本目。いいタイトル。

最後に9つのクラスターに分けてるところも含めて、先ほどのPewのとめっちゃ似ていて、2つの記事を並べた理由が分かる。

英国民を読書習慣から9つに類型化し,この類型別でも結果を示している。類型はS1「本の虫」,S2「読書好き」,S3「雑誌世代」から,S7「読む時間がない」,S8「読書嫌い」,S9「読まない」などとなっており

でもこちらは「貧困に関する指数である“デプリベーション指数”」(IMD、IDACI)を導入したり、社会経済グループ別の分析を行ったりと、さらに踏み込んだ印象を持つ(英国らしいなあと感じる)。結果は、「この報告書に示された結果は,英国における読書推進にあたっては,生活資源の欠如した不利な環境にある地域へのアプローチが重要となることを示すものと思われる」と、そうなるだろうなあというもの。

# 「英国が本を読む人たちと,テレビやDVDを見る人たちの“ニつの国”に分断されている傾向が示されている」のくだり、「ニ」が「二」じゃなくてカタカナになってますよ。





■E1553■ 学校図書館担当職員に求められる役割と能力向上のための方策

篠田さん。

文科省の会議報告書の紹介。先の記事の「読書」に連なるテーマ。

学校図書館の機能として「読書センター」「学習センター」「情報センター」を挙げ、それぞれにおいて学校図書館担当職員に求められる役割を整理、と。学校図書館のことはよく知らないのでどうしてもそれ単体ではなく大学図書館にひきつけて考えてしまいますが、(大学図書館の)学習支援との関係で気になるのは2つ目の学習センターという機能。学校図書館が抱えてる課題は、たぶん大学図書館でも共通するところが多いんだろうなとぼんやりと思っています。機能の分類を踏まえて、職務が「間接的支援」「直接的支援」「教育指導への支援」の3つに分けられています。そのうち、間接的支援はテクニカルサービス、直接的支援はパブリックサービス、と読める。最後の教育指導への支援というのは、大学図書館で言えば学習支援に相当するのかなあと。

なお,これらの職務は学校図書館担当職員が単独で担うものではなく,司書教諭等の教職員と協同し,分担してあたることが求められるとしている。

大学で「司書教諭」に相当するポジションはあるのかなあ、と。研究支援の文脈においてはURAになるわけですが。@yuki_o や @milkya くんのようなひとたちの仕事になるのでしょうか。

# 冒頭の「2013年3月付」は「2014年3月付」?





■E1554■ 電子情報保存のファイル形式方針の実態調査<文献紹介>

篠田さん2本目。D-Lib Magazineからデジタルプリザベーションネタを……(どうしてこんな渋いネタを選んだのか気になるところ)。

この文献は、ARL参加館が機関リポジトリ電子図書館で採用しているファイル形式についての方針を調査した結果をまとめたもの。方針のうち、特に各形式の「信頼度」をどう評価しているかという点に注目されている。その結果はそんなに驚くようなものじゃないのだけど。

まず、え、方針?と思った。ついで、175館、253のサービス、118の方針という数字を見て、そうだよね、そんな方針ちゃんと決めて公表しているところばかりじゃないよね、と安心した。後半で「調査では,ファイル形式の方針を一から策定している機関がわずかであることも指摘されている」とあって、さらに安心した。方針のグッドプラクティスが紹介されているので参考にできそう。

最後の

また,ファイル形式の方針が,比較的小規模なデータ管理の実績を根拠として策定されていることも指摘されている。中程度の信頼度に分類される形式は,電子情報の長期保存の評価手法を厳格に適応したものというより,学内にその形式のユーザが存在した等の現実を反映したものと推測されている。現状では,図書館でのデジタル化等に使用される画像のファイル形式,ウェブ上の学術情報流通で使用されるテキストのファイル形式については,信頼度の高い形式があるが,表/データベースや動画のファイルは,信頼度が比較的低く,アプリケーション,コンピュータプログラム,地理空間情報,プレゼンテーションについては,信頼度が低い形式しか見いだされなかった。

というくだりで、研究データ管理の話に戻りますね。





次号は4月24日。

カレントアウェアネス-E No.255感想

今年度も残すところあと2号.今回は5本中,外部原稿が4本.




■E1538■ 『変えたい』気持ちを形にする:総長賞と講習会“MBC”

東大の小林さん.いいタイトル!

記事の主役は総長賞を受賞した石田さんと,MBC=Maeda Boot Campの由来にもなっている前田さんですが,小林さんはMBCの主要メンバということでご執筆されてるのでしょうか(かな?).

MBCの成果として石田さんが開発したExcel VBAアプリケーション「図書館ひっこしらくらくキット」は,「連番くん」と「書架棚見出し出力器」の2つから成っている.後者は分かりやすい.前者はシンプルな名前のわりにいろいろできそうで,そのわりに汎用性も持たせているところが特徴なんだろう.自分はVBの文法がきらいなのでほとんど書いたことがなくて,こういうGUIアプリを作って残していけるのは業務上大きなメリットだよなぁ……と分かっていながら,PerlPythonJavaScriptしか書かないわけですが.

MBCについては4年前に大図研京都のワンディセミナーでおはなしを伺ったことがありました.このように講習会という形式を取り,総長賞という装置もあわさってその成果が外でも目立っていると思います.でもたぶんほかの多くの図書館でも職員が自作したアプリなりスクリプトで業務の効率化が行われてますよね.自分もこういうの作ったし,むかし某大学に出張に行ったときにウェブベースの図書館システムの細かい使い勝手をいろんなGreasemonkeyで向上させているのを見て感心したりしました(真似したいけど自分とこのシステムはJavaベースなのでそういう工夫ができない).

職員有志の勉強会は業務につなげていくのが目的のひとつとして意識されていると思いますが,東大のMBCはそれがいちばんうまく行ってる例じゃないかなあとうらやましく感じました.





■E1539■ Europeana Cloud:Europeanaのクラウド化計画

篠田さん.前号のE1535につづいてEuropeanaネタ.

2013-2015年の予定で実施中のプロジェクト「Europeana Cloud: Unlocking Europe's Research via The Cloud」(このTheのニュアンスがうまくつかめない)をテーマに,7つの作業計画(Work Plan)と,各計画の成果物(Deliverables)について大枠を紹介.2月にブログで成果物が紹介されていたことが記事のトリガーなのかな.

タイトルにもある「Europeanaのクラウド化」について,Europeanaはもともとクラウドサービスじゃないのかなあという疑問が浮かぶ.記事の書きぶりからは「Europeana Cloud」という名前の新しい(Europeanaの後継となる?)サービスが出てくるというように思えてくるし,となると,現在のEuropeanaは「クラウド」ではないという位置付けなのかなあ.作業計画のうち「クラウド環境における研究者のニーズの評価と,研究者コミュニティへの関与の担保」や「研究者向けサービスとツールの開発」を見ていると,デジタル人文学(DH)的な側面も強く感じられました.





■E1540■ 図書館向けデジタル化資料送信サービス開始から1か月

利サ企(りさき)の小坂さん.

サービス案内的な記事ですが,

サービス開始から1か月間の利用統計を見ると,全参加館合わせて1日平均約150点の閲覧,約60点の複写が行われている。利用が多い図書館では1日平均30点以上の資料が閲覧されている一方で,数日に1回程度の利用にとどまっている図書館もあり,差異が大きい。図書館の規模や立地の違いに加えて,各図書館が利用者や報道機関への広報をどのように行ったかも影響していると思われる。特に,地域のテレビ局や新聞を通じた広報は効果が大きいようである。


利用された資料の主題を調べると,図書は歴史・地理に関する資料や文学作品,雑誌は経済や産業に関する資料が多い傾向が見られる。ただし,現時点では大学図書館の参加が少なく,今後大学図書館における学術研究のための利用が増加すると利用傾向が変化する可能性が考えられる。

という部分が面白かったです.閲覧はちょっと試しに見てみたというのがたぶんにありそう.でも複写のほうも全体で平均約60点とあります.2月21日時点での参加館数がもはや分かりませんがてきとーに40〜50館程度だったと考えても,各館平均で1日1点以上の複写が行われたことになります.公共図書館のILL事情は詳しく知りませんが,大学図書館の感覚(というか自分の経験)ではこれは「ちょい多い」くらいじゃないかな.サービス開始直後であることを考えると,まずますのスタートという印象を持ちました.ざっくりとですけど.

しかし「各参加館におけるNDL図書館送信サービスの利用者向け案内のまとめ」というエントリを立ててから2か月近くが経とうとしていますが,あんまり大学図書館の参加が増えてないんですね……,3月4日現在で5館.大学図書館についてはどこのセクションの所掌になったのかも気になっています(ふつーはILLだと思うのですが).





■E1541■ 第10回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

レファ協事務局からの報告記事.

上司が参加されてたので資料をちらっと見せてもらいました.今回は「教育と図書館の未来」というテーマで「教育」にフォーカス.これは2013年7月に学校図書館の参加が可能になったことからインスパイアされた企画なのかな.そして,ゆきちゃん(岡部晋典氏)がカレント初登場.こうして文章で読むと彼の濃いキャラが身を潜めてしまいますが,「レファ協はもはやインフラ」の部分は「うわー言いそー」とドヤ顔込みでイメージしてニヤニヤしたりしました.まあでもゆきちゃんのようなポジションのひとがレファ協高等教育業界に引っ張り出してくれると面白い展開が見られるのかな.豊中市立図書館の石田さんの

豊中市立図書館登録事例へのアクセス数が多いのは,豊中市民の「問いを立てる力」が評価されているということなのでは,という分析が提示された。

という部分も興味深かった.そのまま真に受けるつもりはないけど,なるほどなぁと.

昨年の第9回はそっか,調査研究報告会と共催だったんだっけ(E1421).もうなんかいろいろ遠くなって忘れつつある…….





■E1542■ WIPOで,図書館等に関する著作権の権利制限が議論される

調査局の鳥澤さん(文化庁にも出向されておられたことのある著作権の専門家).

WIPO著作権等常設委員会(SCCR)で2日間にわたって議論された「図書館及び文書館の利用を促進するための著作権の権利制限」のはなし.マラケシュ条約に続く動き,かな.背景については「国際図書館連盟(IFLA)はデジタル時代を迎えて情報が国境を越えることが急増し,各国の著作権法ごとに図書館等に関する著作権制限規定が異なり,重大な不均衡が生じている」という一文が分かりやすい(デジタル情報以外のはなしもあるけど).しかし,タイトルが「議論される」っていうだけあって,議論されたことがみっしりと詰められた情報量の多い記事でした.これ編集(裏取り)大変だっただろうなあ…….

前半では議論の内容が紹介されていて,特に以下の11が(あらかじめ)論点とされていたことを押さえておきたい(ここに含まれていないのはなんだろう?).

資料保存,資料複写・バックアップ等の複製による利用,法定納本制度の促進,電子書籍を含む資料の貸出しや図書館間貸出(ILL)などの図書館等が行う貸出しの促進,並行輸入,国内法で合法的に利用可能な著作物の国外での利用,孤児著作物(CA1771参照)・著作権放棄された著作物・非商用著作物の利用,図書館等の著作権責任の制限,技術的保護手段の回避による利用,著作権の権利制限規定で可能になる利用を制約する著作権契約の無効化,翻訳による利用

権利消尽についても触れられていて,久しぶりにKirtsaeng v. John Wiley & Sons裁判(「米最高裁が「国外で合法に印刷された図書にもファーストセールドクトリンが適用される」と判決」)のことを思い出しました.

後半は立ち場の異なるプレイヤーの駆け引きを読むことができる(だいたい想像のとおり).「各加盟国間では,アフリカ諸国,南米諸国,インドなどからは各論点について著作権の権利制限を拡大する提案がされたのに対して,米国,EUなどからは,論点によっては著作権制限の拡大に反対する主張が見られた」とか面白かったんですが,中国はどうだったのだろう.





次は3月27日(感想書いてる余裕なんてあるのかどうか).

カレントアウェアネス-E No.254感想

この2週間もいろいろあったなぁ……と,珍しくばたばたしているのであっさりめです.

今回は6本中,外部原稿が1本.





■E1532■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/2/14現在)

もうすぐまる3年.2011年3月17日以来,当初は毎号,最近では1〜2か月のインターバルで途切れることなく続いてきたこの「震災まとめ」が,いまでもこれだけのニュースを紹介しているということにいろいろと想いが重なる.

友人が勤めていることもあってこのニュースがいちばん気になりました.

1月24日,独立行政法人日本原子力研究開発機構国立国会図書館および国際原子力機関と連携し,東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故関連情報アーカイブ化への取組みを本格化すると発表した。
http://www.jaea.go.jp/02/press2013/p14012401/index.html

IAEAも絡んでるんだなあ.





■E1533■ 学生主体の憩いの場―山口大学総合図書館「りぶカフェ」

山口大学の岡崎さん.なんとまだ就職一年目の男の子です.

Facebookで,

図書館総合展でHayashi Yutakaさんの発表に刺激され、「自分も書いてみたい」を言ったのですが、こんなに早く実現するとは思いませんでした。

と書いてくれてましたが(勝手に引用.ごめんなさい),10月の図書館総合展CAフォーラムのときに「いつか書いてみたいです!」と元気に言ってくれたのでした.以来,なんかぴったりのネタがないかなーと意識していたのですが,運よく山口大学総合図書館で面白い取り組みが実現したので編集部からオファーが届いたのでしょう.こういう流れはCAフォーラム(の特に自分のトーク)の目指すところでしたし,フォーラムやってよかったなぁとしみじみ思ってます.岡崎さんにとって良い経験になってくれてたら何よりです.

 りぶカフェ誕生のきっかけは,当館の耐震改修工事である。当館では2012年10月に,滞在型図書館の機能充実と図書館のさらなる活性化のため,飲食可能なスペースを新設することを決定した。そこに,図書館専門委員会委員の経済学部教員を通じて,学生によるカフェの企画が持ち込まれた。

この部分,教員と学生の関係がくわしく知りたい.授業かなにかが発端だったのかな.学生が図書館に企画を持ち込むのに理由もなく教員を経由するとは思えなくて(教員が図書委員かどうかなんていう情報はあんまり知らないだろうし).

そして,このくだりにはびっくり.

 りぶカフェ実現の大きな後押しとなったのは,「おもしろプロジェクト」である。おもしろプロジェクトとは,学生の自主的活動への山口大学の資金支援制度である。1996年,広中平祐学長(当時)の発案により誕生した。おもしろプロジェクトの特徴は,企画内容については大きな制限がないということである。そして,最高支援額が100万円という非常に高額な支援制度であることもあげられる。これまでの支援総額は約7,000万円にものぼり,「失敗してもいい・思う存分やってみる」という哲学が学生たちの主体的・創造的な学びを促進している。

やー,まさかCAで広中せんせのお名前をお見かけするとは……(正確には「廣中」だったと思いますが).言わずと知れた日本二人目のフィールズメダリストです.山口のご出身だったんですねぇ.その縁から山口大学の学長をされていたのかな.



【追記】このエントリ,見逃しておりました.

猫に夢研究所 カレントアウェアネス-E(CA-E)への執筆依頼をいただきました!
http://nekoniyume.blog.fc2.com/blog-entry-11.html

でも、CAフォーラムで林豊さんがおっしゃっていた「CAポータルは皆さんに成長の機会を提供できる」という言葉を信じて、この機会にしっかりと成長したいと思います。
ここで「自分の「最前線」をちょっと前へ」進めたい!

ありがたやありがたや.





■E1534■ 公共図書館で学術文献を:英国の試み“Access to Research”

篠田さん.

英国の公共図書館で150万件もの学術雑誌記事を無料提供するプロジェクトの紹介.まず,出版業界によるプロジェクトだったいうのにびっくり(何がねらいなんだ).そして,Finchレポートの流れというので納得.出版社にとっては“OAにするよりこのほうがマシ”ということなんだろうか.

以下の部分を見ていると大学図書館におけるウォークインユーザの利用条件と変わらないように見える.となると出版社てきにはそれほど新たな損は発生しないという感じ?

 利用条件には,個人利用であること,公共図書館の館内の端末からセキュアなネットワークで認証を経てアクセスすること,USBなどの媒体や個人の端末へのデジタルデータの保存はできないこと,印刷は1資料につき1部のみであること,印刷物から著作権表示を削除しないこと等の条項があげられている。インタフェースは,ProQuest社のSummon(CA1772参照)が使用されており,文献の一元的な検索が実現されている。

しかしこんなところのSummonが登場するとは.ということはこのプロジェクトで提供されるコンテンツはSummon-indexedなものから選ばれているということなのかな.





■E1535■ Europeana 1914-1918:第一次世界大戦の記憶を共有する試み

篠田さん2本目(菊池さんかなって思ったけど).

 主なコンテンツは,戦争経験者約7,000人の書簡や写真等約90,000点,国立図書館10館等のデジタルコレクション約40万点,約660時間分の映像資料の三種類である。この三種類のコレクションを中心にEuropeana 1914-1918の概要を紹介する。

今回一気にぜんぶ作ったというのではなく,一つ目のコレクションはThe Great War Archiveから,二つ目のコレクションはEuropeana Collections 1914-1918から,三つ目のコレクションはEuropean Film Gateway 1914からと,既存のデジタルアーカイブを組み合わせているらしい.The Great War Archiveのコレクション収集方法のひとつとして紹介されているFamily History Roadshowsは面白いですね.地域資料を収集する全国ツアーみたいな,

この記事ではコレクションの紹介に主眼が置かれてましたが,Europeana 1914-1918というプロジェクト自体のロードマップが気になるところ.Europeanaは戦略がしっかりしてるし,最終的に2014年にこのかたちにまとめ上げることをゴールにしつつ,サブプロジェクトとしていろいろなコレクション構築を進めていたのかなあ.





■E1536■ ミャンマーの図書館事情:アジア財団レポートより

依田さん.

ミャンマーといえば鎌倉幸子さんに「E1384 - タイのミャンマー難民キャンプにおける図書館のいま」を書いていただいたのが一年ちょっと前でした.今回の記事で紹介されているのは,ミャンマーにおける図書館界の現状を俯瞰するありがたいレポート.

前半部分では大学図書館が「政府系の図書館」に入ることとその数が少ないこと,一方でIPRDに登録された図書館は55,755館と非常に多いこと(最初5,755館の間違いじゃないかと目を疑った)に注目しました.図書館といって通常イメージするものとは異なる,小さな小さな図書館が多いんでしょうか.

後半のサンプル調査は面白いですね.こういうの日本でもあるのかな.インタビュー対象に非利用者が入っているところも良いですね.

 今回の調査では,全国の村及び小区にある図書館から206館をサンプルとして抽出している。206館のうち,村の図書館が92%を占めており,また公共図書館として登録されていたのは82%であったという。これらについて,調査員が訪問し,図書館員(206名),利用者・非利用者(各412名),さらに自治体関係者等,計1,275名に対してインタビューを行い,資金,職員,利用状況等についてのデータを収集している。

紹介されている結果のなかでは職員についての部分が気になりました.

 職員についても予算制約により厳しい状況にある。職員の給与に充てられる予算がなく,多くの図書館はボランティアによって運営されているという。図書館員の学歴については,調査対象の206名のうち,高校卒業が39%,大学生が8%,大学卒業が31%となっている。また,年齢層は,48%が40歳以下となっている。男女比はおよそ2:1となっている。98%の図書館では図書館員の公式な研修に資金を投入したことはないという。

男性のほうが多かったのかぁ.





■E1537■ 研究データへの識別子付与と引用可能性向上:DataCiteの活動

依田さん2本目.

前号の「E1531 - 研究データの共有と活用のために:研究データ同盟の分科会」に続くかのような,研究データ関連団体の紹介記事.記事のトリガーがよく分からないけど,いい流れですね.次号あたりで先日の国際シンポジウムの報告が載ったりするのかな.しかしそろそろCAポータルに「研究データ」というタグを作ってもいいような気がします.いっときは「eサイエンス」を振っていましたが.

要は論文だけじゃなくデータセットにもメタデータスキーマを決めてDOIを振って引用できるようにしましょうという話なんですが,この領域だけでもCODATA,ICSTI,FORCE11といろいろな活動があるんですねえ.RDAのWG/IGの話は前回の記事で勉強したけど,ORCIDとDOIのリンク付けをするODINとか知らなかった(しかも欧州委員会のFP7の配下だし).





次号は3月6日…….

カレントアウェアネス-E No.253感想

この2週間ほど某原稿に(気持ちが)かかりっきりだったので前号からあっという間という感じです.

今回は珍しく5本で,うち外部原稿は1本のみ.ReadersFirstのとRDAのが勉強になりました.





■E1527■ 数字を武器に図書館を変えた米国の図書館アナリスト<報告>

日比谷図書文化館の川崎さんから,同館で12月に開催された講演会「アメリカの公共図書館におけるトレンド分析とマーケティング」の報告.

冒頭の「講師は,米国の大学や公共図書館で,トレンド分析,ビジネス・キャリア支援などの専門家として30年近くの勤務経験があるアルカ・バトゥナガー米国大使館情報資料担当官である。」だけでいろいろと思うことが.図書館から大使館かぁ…….このページに経歴が詳しく書いてある.あ,女性だったんだ(愚かにも,データ分析→男性というイメージに引きずられてしまいましたね).インド出身.

日本では分析の前にそもそも基礎データが少なすぎるんだろうな,と以下の部分を見て思いました.

米国国内のトレンド分析機関としては,全米レベルの機関として博物館・図書館サービス機構(IMLS),米国図書館協会(ALA),都市図書館協議会(ULC),OCLC,Pew Research Centerなどがある。また各州の図書館協会やデータセンター,中小企業局,商工会議所,経済産業局などからも,様々な統計情報やリソースを得ることができる。例えばPew Research Centerは2013年1月の調査報告「デジタル化時代の図書館サービス」において,16歳以上の米国人の91%は「地域のコミュニティに図書館は必要」と回答し,一方78%は「図書館には行くが実際に図書館で何ができるのか把握しきれていない」などのトレンドを示している。

これらの機関のなかで,Pew Research Centerについて講演でどれくらい強調されたのかが気になるところ.

記事ではいろいろな取り組みが紹介してあって面白かったんですが(個人的には「マーケティング・ベストプラクティス賞」に関心を持った),データ分析とこれらの企画立案のあいだの関連がよく分からなくてちょっと消化不良ぎみかな.引用されているPewの調査結果が直接関係しているわけでもないし…….ひとつひとつの企画の経緯をくわしく知りたいところ.





■E1528■ 図書館とウィキペディアのこれからの関係は?

依田さん.The Wikipedia Libraryの概要紹介.

Wikipediaと図書館については,編集者に対するデータベースへのアクセスの提供とかWikipedian in Residenceとか(Wikipedia Visiting Scholarsというのもあるんだ)ちらほら見知っているけれど,それらはひとつの大きなプロジェクトだったんだ,というのを初めて知りました.

図書館がWikipediaの使用を避けるように推奨していた状況は変わり,今や図書館は,学生たちが調査の糸口としてインターネットやウィキペディアを頻繁に利用しているという事実を踏まえ,ウィキペディアと協同するようになっていると指摘する。そして,ウィキペディアに示された書誌からフルテキストの参考文献をたどる学生に,図書館は始点でないとしても終点ではあると気付いてもらえるよう取組んでいると指摘する。

「図書館は始点でないとしても終点ではある」はよいことば.幸いにしてお客さんに「Wikipediaを鵜呑みにしてはいけないですよ」と言ったことはないのですが(だいたい最近の学生さんはすでにどこかで教わっているようで「信ぴょう性のある情報じゃないですよね」などと口にする).

冒頭を読んで,あ,Wikipediaには「独自研究は載せ」ちゃだめなんだと改めて認識したんですが,ってことは,市井のひとたちが自分たちの研究結果を公開できるようなオープンかつ「信頼できる出典」となりうるプラットフォームはないのかな,などと(ありましたっけ? ).







■E1529■ 読者を第一に考えて:図書館電子書籍ベンダーガイド,公開

依田さん2本目.ReadersFirstの作成した電子書籍ベンダー評価(システム評価じゃない? ちょっと細かいか)資料の紹介.

「その結果自体もさることながら,“読者のことを第一に考える”ことをコンセプトに,ベンダーの理解を仰ぎながら評価指標を作成している点は興味深い」.たしかに,資料の結果よりもその作成プロセスをひとつのベストプラクティスとして押さえておきたい.いつか自分もこれくらいの仕事ができるといいなあという意味で.いつか自分もこれくらいの仕事ができるといいなあという意味で(大切なry).

2012年6月に共同声明(4原則),続いて“Content Access Requirements”の作成,2013年1月のALA Midwinterでラウンドテーブルを開催,4月に“Vendor Product Evaluation Form”を作成して,5月にベンダに送付,2014年1月に今回の資料を公開,という流れか.

評価は,

評価記録票は,7分野37項目からなる。内訳は,A.諸条件(7項目),B.メタデータ(8項目),C.貸出管理機能(7項目),D.利用者アカウント情報取得機能(4項目),E.利用者へのお知らせ機能(2項目),F.電子コンテンツのフォーマット(2項目),G.サービス支援機能(7項目)である。各項目について重要度の高いものはスコア3,他のものはスコア2.5とし,項目ごとに要件を満たすか否かによりスコアを与える。

という100点満点で,結果は,

OverDrive(85点),3M Cloud Library(84点),Baker & Taylor Axis 360(80点),Ingram MyiLibrary(49点),Gale Virtual Reference Library(39点),EBSCO eBooks(38点),ProQuest ebrary(30点)。

まあ上位3つは予想通り(Axis 360はそんなにスコア高いんだーと驚いたけど,アクセシビリティまわりで稼いだのかしら).下位については,なんかチェックアウト型の電子書籍サービスが前提になった調査になってないか……?と原文も読まずに突っ込んでみる.





■E1530■ 学校図書館における電子書籍の利用動向(米国)

篠田さん.Library JournalとSchool Library Journalという二大業界誌が出している毎年恒例の調査のうち,学校図書館のパートを紹介.

あれ……この調査レポートって有料じゃなかったっけ.2013年版から無料でダウンロードできるようになったんだろうか…….大学図書館編,公共図書館編,学校図書館編と3つに分かれているんですが,カレントでは学校図書館電子書籍ネタは少ないから今回はこの部分だけにフォーカスしてみたんだと想像しています.

こういう結果のは単独で見ていても「ふーん,そうなんだー」としか思えないものだと思うんですが(自分で書いていてもそう思うことが多い),今回は

電子書籍の契約形態
学校図書館電子書籍の契約形態については,60%が永続的なアクセス権を購入している。ローカルでサーバを準備して永続的なアクセス権を購入しているのは26%である。21%が購読契約(subscription)と回答している。

の部分に引っかかりました.ローカルのサーバを用意しているところが26%もあるのか,多いなあと.調査の回答館は1,271館なので,これらすべてがこの問に回答していたとして330館が該当したことになる.これはどういう形態なんだろう.ダグラス郡モデル……?

なお,「現実的な小説」という訳に引っかかりました.「リアルフィクション」かなにかでしょうか…….





■E1531■ 研究データの共有と活用のために:研究データ同盟の分科会

篠田さん2本目.個人的にはRDAといえばこっち……な,2013年設立の研究データ連盟(RDA)の紹介.

分科会の設置状況を通じて,RDA全体の活動のいまを伝えるというアイディアがいいですね.このフレームは使える.こういうの,いろんな国際団体を対象にして書いてほしい(そりゃなにか元ネタがないとほんと大変なんだけど……).元ネタになっているD-Lib Magazineの特集号もそういう感じなのかな.2本のエディトリアルと5本の記事が掲載されていて,今回の記事ではそのうち1+2本が参照されている.

分科会はワーキンググループ(WG)とインタレストグループ(IG)に分かれている.IGで作成された提案書を受けて,WGでは「具体的な成果を出すことを目指して12~18か月と短期間で活動を行う」という二段構えになるほど.現在は27の分科会が設置されており,

カテゴリー WG数 IG数
サイエンス・ドメイン 1 6
データの保存と公開 0 5
研究と教育におけるデータ共有と再利用 1 2
データの参照 2 1
インフラストラクチャー 5 4

という内訳になっているという.なんとなく保存の話がメインで進んでいるのかと思っていたけど,いちばん活発なのはまだインフラストラクチャーの部分だと理解していいのかな.

数をかぞえていてちょっと疑問が.プラーレさんの記事にはたしかにWGが9つ,IGが18つ挙げられている(Figure 1).しかし,パーソンズさんの記事のほうを見ると,WGが6つ,IGが21つと書いてあるんだよねえ(“Six WGs have been formally recognized and are hard at work”,“Currently, 21 IGs are formally recognized and active.”).しかも分科会の名称がビミョーに違う.このズレはなんなんだろ.





次号は2月20日.