カレントアウェアネス-E No.258感想

週末の夜はお気に入りのカフェに来て高速道路と造船所を眺めながらブログを書く、というのが定番化しつつ……(自宅はWiMAXがいまいち遅いせいもあり)。

今号は6本中、外部原稿が3本(うち館内が2本)。





■E1555■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/4/18現在)

2月中旬から4月中旬までの2か月間の状況まとめ。

これで3年。2011年末に作ったこのページも長大なものに……。CA-RとCA-Eの件数が見出しのところに表示されてるといいかなあと思ったのですが、Viewモジュール(Drupal)でそこまでできたかな……。

3月11日を挟むのでこの時期は情報が多くなるのですが、それでも例年に比べると減ってきたのかなという印象を持ちました(いや、実際どうなのかは分からないですが)。2013年(E1403、E1422参照)と2012年(E1263、E1274参照)は1か月というインターバルでまとめられていましたし。

今回気になったのは、ひなぎくはてな(E1543参照)、日出弘さんの『“東日本大震災”外史 : 忘れないこと,伝えたいこと : 東北大学附属図書館工学分館』(記事中にはないけど東北大学附属図書館の専門員の方らしい)、我らが福島さんの「史料と展示『ひなぎく国立国会図書館東日本大震災アーカイブ)』の概要とその意味」(これ、「史料と展示」の部分は要らないのでは。どういうタイトルだろうと悩んでしまった)など。最後の

文化庁被災文化財等救援事業「文化財レスキュー事業」に協力してきた奈良文化財研究所(奈良県)が,海水に漬かった宮城県の文書約250箱分を修復する応急処置を終え,宮城県に発送した。

もようやく、という想い。これだけの時間がかかるものなんだ。





■E1556■ 図書館とファブスペース ~ 導入から1年

慶応SFCメディアセンターの長坂さん。

ひさびさに企画協力しました。Refにも挙がっているMediaNetの記事を読んで、もっと知りたいなあと思ったのがきっかけでした。1年前にITmediaで紹介されたときには先をこされたっ!と悔しく思っていたのですが、今回このように続報をまとめていただけてよかったです。

ファブ活動に携わっている教員の協力を得て設計を行い、学生スタッフ(AVコンサルタント)がサポートを行っていると。大学図書館の学生スタッフに対する相談内容はIT機器のトラブルシューティング(無線LANの接続やプリンタの紙詰まりなど)が多いと思うんですが、そっち系に振り切ったという位置づけ方もできるかな。行ったことがないので印象に過ぎませんが、SFCという場所はファブと相性がいいのでしょう。芸術系大学や芸術系学部を擁する大学(九州大学にも九州芸術工科大学を前身とする芸術工学部がある)でも可能性はあるんじゃないかと思います。

海外の動向を意識して,2014年4月からは新型の3Dプリンタや3Dスキャナ,カッティングマシン,刺しゅうミシンなど新たな機材を取り入れ,より広い場所にファブスペースを移動・拡充した。そこに掲げるのは“FAB is for Everyone”というメッセージである。プラスチックから,紙や布,服へと対象を広げることで,より身近な素材でファブを体験することが可能となった。どのような作品がつくられていくのかますます楽しみである。

記事では言及されてなかったのですが、利用者の属性が気になります。身分、性別、SFC内外、など。あまりはっきりした傾向がなかったからカットしたのかな。

なお、まだ3Dプリンタは使ったことがありません。




■E1557■ ポータルからプラットフォームへ:Europeana事業計画2014

電子情報サービス課の塩崎さん(もちろんお名前は存じ上げてるけれど、残念ながらお会いしたことはない)。

Europeanaの、

しかし,もはや,単なる「ポータル」を超えて,「プラットフォーム」へとその姿を変えつつある。

という動向を、次期戦略計画(2015-2020年)を見据えた2014年版の事業計画にもとづいて紹介。ここでいうプラットフォームというのは、

これは,検索画面上での個人利用を軽視するということではない。コンテンツを利活用するコミュニティを育てること(ユーザ参加型コンテンツ等を含む)に,より焦点を当てるということを指す。特に,創造産業(Creative Industries)との関係構築が興味深い。API等によるデータ提供(Europeana Labs),開発者やクリエイターが新たなアプリ,ゲーム及びサービスを作り出せる環境づくり(Europeana Creative)に取り組むとされている。

ということで、そのためにもデータの利用可能性とクオリティを高めていき、EUの政策のなかにしっかりと自身を位置づけていくことによってサステナビリティを確保していく、と。

地味に感心したのが、

加えて,データの登録状況調査にもとづき,国・分野(文書館及び音楽映像アーカイブが低調)・年代の偏り(近世が弱い)を解消することが目指されている。

という部分。弱点を分析できるくらいにコンテンツの量が充実しているということでしょうけど。

最後の一段落で視線をNDLサーチ(って、正式名称は国立国会図書館サーチないしNDL Searchだと思うのですが、いいのかな。いや、正直NDLサーチと書けるほうが短くてありがたいけれど)に移して、メッセージを。ここが今回の執筆者が塩崎さんだった理由なのかな。




■E1558■ 2014年CEAL年次大会・NCC公開会議<報告>

れきおんのおねーさんこと、奥村さん。

この会議、昨年は現カレント-E担当の篠田さんが出席されていました(E1419参照)。自腹で行こうと考えていたころもありましたが、フィラデルフィアまでの航空機代を調べて諦めたという(結果的に、この時期にそんな余裕はなかっただろうけれど)。

一番興味深かったのはこの部分。スペシャリスト/ジェネラリストという文脈で。

会場の参加者からは活発な発言がされた。「あるライブラリアンは20もの異なる部署を調整している。ライブラリアンは,もはや地域研究のスペシャリストではいられなくなっている」「伝統的な地域研究の文脈では,世界を地理的に分割し,当該地域について,社会,言語,文化,政治の観点から考察してきた。組織再編の名の元に,キャンパスではすべての地域研究を国際研究(International Studies)のプログラムに吸収できると思われているふしがあるが,各々の地域研究に多様性があり,国際研究では扱いきれない」

奥村さんから今年のCEALは研修めいたことをしてくると聞いていたのですが……そのへんはカット……?><





■E1559■ 図書館員のコンピテンシー・インデックス2014

WebJunctionネタだから篠田さんかなあと思ったけれどRUSAが冒頭で出てきたからこれは依田さんだろう、で当たり。

コンピテンシー・インデックス? 初耳かも。今回のは改訂版で、前バージョンは2009年らしいからフォローできてなくても当然か。

図書館員の専門性とか、この手の話は苦手で、そんなに興味が持てないでいます。このドキュメントも、5つに分類され(分類自体はさほど不思議はない)、そのひとつでは30ほどのコンピテンシーが150ほどのスキルや知識とともに記されているらしくて、合計で77ページというので、もうお腹いっぱい。そんななか、記事では改訂版で意識された部分が端的にまとめられていてありがたい。

その改訂の内容は,2009年当時からの環境の変化に対する意識が反映されたものである。導入部分の説明によれば,全体を通じて強調された要素は,「21世紀のスキル」,「アカウンタビリティ」,「コミュニティへの関与」の3つであったという。

先の奥村さんの記事でもcollaborationに関する言及がありましたね。

しかし、冒頭の「米国の図書館界においては,図書館分野で「高い業績」を実現するうえで求められる個人のコンピテンシーを明確にする動きが,以前より積み重ねられている」の括弧は、日本国内のほうの「仕事上の役割や機能をうまくこなすために個人に必要とされる測定可能な知識,技術,能力,行動その他の特性のパターン」という箇所と、対比されているのだろうか。記事中のほかの部分で強調されているわけではない。でも、うまくこなすだけでいいんですか?と、さらっと依田さんのいつもの皮肉がこめられている気がしてならない。





■E1560■ 大学図書館の指導者層の意識調査(米国)

ラストは篠田さん。

ITHAKA S+Rの大学図書館長向け調査のレポート。2010年に続く2回目か。調査内容は「戦略とリーダーシップ,予算と人員,学部生と情報リテラシー,蔵書構築,ディスカバリーサービス,学術コミュニケーションと研究支援の6つの観点で分析されている」ということで、ディスカバリーサービスが独立した項目として立つんだというのに軽く驚き。その内容は、

4分の3近くの館がディスカバリーサービスを導入済であると回答している。未知文献の探索,自館で利用できるオンラインリソースへのリンク,経験が浅い利用者のニーズへの対応において有効であるとみなされている。一方で,図書館のウェブサイトへの利用者の呼びこみ,熟達した利用者のニーズへの対応,既知文献の探索という点においては,ディスカバリーサービスは有効に機能しないと認識されている。

と、おおむね想定通りなんだけど、「図書館のウェブサイトへの利用者の呼び込み」というのははっきりとしたイメージが描けなかった。どこに呼び込みたいのだろう。

「図書館に望ましい変化をもたらすにあたっての制約事項として,財源不足をあげる回答が9割近くにのぼり,次いで,半数近くが職員のスキル不足と回答している」では、具体的にはどういうスキルが足りないと感じているのかが気になった。

「図書については,電子媒体の資料が利用できれば除籍してよい紙媒体資料は全体の1割以下であるとする回答が,図書館長では9割近くにのぼっており,置き換えを想定していないことがうかがえる」にふむふむ。ちょっと意外だった。コレクションについては「電子情報の保存」も何度か登場している。

「図書館長の97%が,図書館が果たすべき役割として学部生への情報リテラシー教育と教育支援を重視して」いるものの、「学部生の研究スキル向上や情報リテラシー教育を主に図書館が担うとする回答は,図書館長では72%であるが,2012年の教員を対象とした調査では22%にとどまっ」ているなど教員との意識のギャップがある(いつも指摘されていること)。一方で、「図書館が果たすべき役割として研究支援を重視するとした回答は,2010年の85%から68%に減少」と、図書館サイドでも学習支援(といっていいよね?)と研究支援とのあいだで温度差があるようで。

# すっかり原文を参照する習慣がなくなったな……。





次は5月22日(5月の発行は1号だけなんですが、GWもあってぼやぼやしてると余裕をなくしたりした想いでが)。