奈良県立図書情報館のイベント企画の裏側インタビュー!と思いきや……
「いかしごと」というウェブサイトに奈良県立図書情報館の乾聰一郎さんのインタビューが掲載されて話題になっています.
- いかしごと 求める人たちのことばかり考えて仕事をするのは、おかしいと思う。奈良県立図書情報館乾聰一郎インタビュー:前編
- いかしごと 自分にあった仕事なんてありえない。奈良県立図書情報館乾聰一郎 インタビュー:後編
このサイトの存在は初めて知りましたが「いかしごと」というのは「活かす」と「仕事」を組み合わせた造語なのでしょうか.
自分自身の才能や好みだけでなく、性分や在り方そのものまでをはたらかせることで、まわりの人たちや場をより良くいかすような働き方をすること。それを「いかしごと」と考えました。
そんな「いかしごと」な働き方をしているひとたちを対象にインタビューを行うそうで,その第1回目に図書館員が選ばれたというのはちょっと面白いなぁ,と.
奈良県立図書情報館は奈良県の県立図書館です.JR奈良駅からバスで15分というロケーションで,ちょっと不便な位置にあるという話を聞きます(実は行ったことがない).ご存じの方はご存じだと思いますが,あほ[*1]なくらいにイベントをやっています.次から次へと.ファッションショーをやったり,流行りのビブリオバトルにもさくっと食いついたり.2009年から3回にわたって開催された「自分の仕事を考える3日間」というイベントは書籍として出版されてもいます.
だいたいイベント専用のブログを持っている図書館ってたぶんそんなにないですよね.メールマガジン(「Lib Info NARA -奈良県立図書情報館通信」)でもイベントや展示の話がとても多い.あとこれは強調しておきたいんですけど,ポスターのセンスがいつもすごく良くってほれぼれしてしまいます[*2].
そんな奈良県立図書情報館は僕にとって「なぜこんなにたくさんイベントをやっているのか?」「どういった体制でまわしているのか?」「アイディアはどうやって生み出しているのか?」などなどかねてより気になる存在でした.わりあい近いんだから行ってみりゃいいんですけどね.なので,同館でイベントを担当をしている方のインタビューと聞いておおおっ!!と思って読み始めたのですが……,いい意味で肩透かしでしたw
インタビュー前編は14年間の教師生活を経て教育委員会事務局へ異動した乾さんの人生観についての話が多いです.ちょっと抜き出すと:
「これまでほとんど成功体験といえるものはありません。」「卒業式も入学式もバカバカしくて出席しませんでした。ちゃらちゃらスーツなんて着てられるかと。」「大学って何の役にも立たない事をするところだと思ってました。」「僕には、あまり向上心が無くて、どだい、どのように生きても人間たいして変わらないと思っています。」「夢も希望も語らない教師だったと思います。脱線して要らない話ばかりする教師でした。」「突然教師になったから、突然職業が変わっても、なにも思わなかったんです。」「すべて、はずみです。投げやりではないけれど。」
ふむ.半分共感.少なくとも活発な企画から想像していたようなガツガツした感じではない.流れに身を任せるように生きてはる方なんだな,という印象.でも投げやりではない(たぶんここポイント).
イベントの話は最後らへんに出てきます.曰く,
- 企画は3ヶ月先までしか考えていない.
- 開館当初は「交流担当」という役職で部署には自分だけだった.広報のような仕事.
- 西村佳哲さんとの「仕事を考えるフォーラム」は開館記念イベントだった.
とか.あんまりよくわかんない.そして「そもそも、どうして図書館でさまざまなイベントを企画されるんですか?」という問いには,
ここは県民の皆さんの税金でつくられた施設です。だから、人が集まってきて、触発されり刺激を受けたりといった、交流する場でなければいけないと思います。
昔は、図書館のサービスというのは「求める人が求める情報に応える」ということがそもそものサービスだったんです。
でも、それだと図書館が大好きな人、本を読むのが大好きな人しか来ないんです。
当然、そういう人たちも大切だけれど、その人たちだけに応えるのがサービスではないんですよ。
求めてない人に「実はあなた求めてますよ」と語りかけるのが、今の図書館の役割です。足を向けていない人に「足を向けようよ」と言うのが、今の図書館。
いろんな文化施設のなかで、そういうことができるのって図書館だけです。美術館や博物館ではとても難しい。だって、入場料がありますから。
と.「求める人たちのことばかり考えて仕事をするのは、おかしいと思います。」という言葉で前編は締めくくられています.
つづく後編は仕事観に関わる話が多いです.
お付き合いする人の分野はすごく広がっていきました。でも、仕事への想いとして共通するのは、「向上心」がないところですね。あいかわらず。目標も持ったことはないです。
なんだこの人w 自分には絶対無理だw と思いながら読み進めて,ぐっと来たのはこの部分.
──乾さんがされている仕事って、後任への引き継ぎがとても難しいんじゃないかと思いました。
次の方のやりたいようにすればいいですよ。本当にやっていたら、本当にやったことは引き継げないです。
システマティックにフォーマットというかマニュアルはつくれないですから。そういうことをやってきた人の後なら、自分らしくやろうとはじめたら、それでいいと思います。
「私はそんなことは出来ません」と言った時点で終わりですよね。僕がいなくなってもどうこうなるわけではないし、違う人がやって形になるから、それでいいんです。
きっと批判されるでしょうが,僕も心のなかではそう思って仕事をしています.この界隈,優秀な人間なんてごろごろしてるんだから,どうとだってなるのだ.
そんなわけで,インタビューは面白かったけど知りたいことはよく分からなかったよ!
#「新たな情報発信拠点を目指して--奈良県立図書情報館の試み」でも読んでみましょうかね…….