九大図書館の合わせ技:カウンターの統合とILLサービスの改善
3月12日に九州大学中央図書館のカウンターが統合されました.統合についてはこのツイートで知っていたのでどういうデザインになるんだろうと注目していましたが,アナウンスを見たら「ん?サービス時間拡大?なにその合わせ技?」と驚いたというおはなし.
九大は一度も行ったことがないのです.利用案内(PDF)によると,もともとは「貸出・返却カウンター」「相互利用カウンター」「レファレンスカウンター」の3つが独立していたんですね.玄関から入ってすぐ右手に貸返カウンターがあって,相互利用(ILL)はその裏側の奥まったところに……と,一直線ではなく小島のようにばらばらに配置されていた.このように,機能あるいはサービスによってカウンターが独立しちゃってると,他のカウンターにヘルプに入るっていうのが,物理的な移動距離はともかく,心理的におっくうになりそう.
この3つのカウンターひとつに統合されたということですが,写真が見当たらないので何がどうなったのかよく分からないのが残念.カウンターに何人立っていて,どう担当を分担しているのかも気になるところです.
実際の配置はともかくとして,今回の統合によって,従来は平日の17時までしか受けられなかったサービスが,土日祝日を含めて開館時間内ならいつでもOKと拡大された点に注目しています.
というのも,拡大対象サービスのほとんどがILL関係(次の5種)で,へぇ,カウンター統合がそこにつながるんだー,……ってつながるのか?というのが面白かったので.
- 窓口での料金支払いを伴わない複写物・図書の受け取り
- 相互利用を通して借りている図書の返却
- 相互利用を通して借りている館内利用限定の図書の利用
- 文献複写・図書借用の申込
- 他大学等の図書館を利用するための紹介状発行の申請・紹介状の受け取り
ただ,以下の2種は「平日17時まで」のままなんだとか.
- 料金支払いを伴う複写物・図書の受け取り
- マイクロリーダーの利用
対象外となった2つのサービスの共通点はお金のやり取りが発生することでしょう[*1].
以下,古巣でのILL担当経験を踏まえて背景を想像してみます[*2].
おそらく九大の中央館では平日17時以降,職員(正規・非常勤含む)はカウンターに立ってない[*3].閉館時間の22時までは学生アルバイトだけが貸出・返却カウンターに立っていて,レファレンスカウンターと相互利用カウンターは17時以降無人の状態になっている.土日祝日は職員は出勤せず,終日そういった状態になる.
今回の統合によってカウンターの区別がなくなり,学生アルバイトは貸出・返却以外のサービスにも携わることになった.とはいえ(高度とされる?)レファレンスサービスは行わない.また,ILLサービスのなかでも料金の授受が発生しないものだけに限定(現金を扱うためには大学側への登録が必要だから? あるいはトラブル防止? この話題は以前「ILL:大学図書館のカウンターで現金を扱わないようにするための7つの方法」でも触れました.電子マネーなどの方法を導入していれば「受け取り」も対象内になったのかも).アルバイトの皆さんは今回の統合にあたってそれなりのトレーニングを受け,職員側もマニュアルの整備を行ったはず.
とはいえ,このようなサービス時間の拡大はカウンターを統合しないと不可能というわけでもないと感じています.カウンターが分散している環境でも,職員が出払ったあとは相互利用カウンターに「貸出・返却カウンターのスタッフにお声がけください」のような案内を出しておいて,その都度,貸出・返却カウンターの学生アルバイトが対応するという方法も無理ではないと思うんです.
ただ,なんとなくこのままでもいいよねっていう感じだったものを,カウンター統合というチャンスに併せて実現したのかなぁ,と見ています.ふつーに考えればカウンターの統合とサービス時間の拡大って無関係なんじゃないかって思うんですよ.少なくとも外から見るとそう思えるし,カウンターが統合されていても「平日17時まで」なんていう図書館は多い,っていうかたぶん大多数.となると,以前からサービス時間拡大を狙っていた職員がいてうまくアイディアをぶつけてきたのか,あるいはむしろサービス時間拡大のほうがメインの目的だったりするのかしら[*4],などと考えてしまいます.
以上,想像でした[*5].
個人的な経験からすれば,ILLというサービスはヘビーユーザが毎日のように繰り返し利用するというもので,彼らはたいてい日中忙しい,です.慌ただしくやってきて,慌ただしく去っていきます.対応するこちらもなかなか慌ただしいです.よくある「平日17時まで」というサービスデザインは,彼らメインターゲットの行動パターンとミスマッチを起こしていると日々感じていました.サービスをウェブだけで完結してしまえれば支障はないのですが,現物の伴う内容なのでどうしても難しいという側面があります.今回のようなサービス時間拡大は自分も担当だったときに実現したかったものですし,ILLユーザからとても喜ばれると見ています.
うまいことやったなぁ.