若手研究者問題に対して大学図書館員/大学職員としてできることはないだろうか? #西洋史WG

http://historyanddigital.tumblr.com/post/49604116034

タイトルはやや逃げ腰ですが.西洋史学会大会とタイミングを合わせて京大で開催された「西洋史若手研究者問題アンケート調査報告会」を覗いてきましたので,感想を.

  • 日時:2013年5月12日(日) 17:30〜18:45
  • 会場:京都大学文学部新館第7講義室
  • 主催:西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ
  • Twitterハッシュタグ:#西洋史WG → Togetter
  • プログラム
    • 崎山直樹「西洋史若手研究者問題アンケート調査―収入・研究費を中心に―」
    • 菊池信彦「西洋史若手研究者の研究環境―アンケート結果分析(2)―」
    • 大谷哲「『持続可能な歴史学』のために明日からでも可能な若手支援とは?:アンケート調査項目『自由記述欄』に寄せられた意見から」
    • 質疑応答
  • 配布資料

文学部新館の2階に上がったのは4年ぶり2回目くらいかな…….アウェー感が半端無かったです.しっかし,西洋史の(それとも歴史の?人文科学の?)学会ってみんなスーツなんですね……[*1].ぎっしりと,50人くらいの方が集まっていたようですが,ピンクのカーディガン姿のわたしと,ピンクのゴムで長髪をくくった @egamiday 先輩くらいしか図書館員は見当たらなかったと,思います.



このアンケートは,3月まで同僚だった菊池さんの関わっているもので,彼が3月に『カレントアウェアネス』に書いた「若手研究者問題と大学図書館界―問題提起のために―」という記事でも論拠のひとつになっています.

今日の報告会では,ワーキンググループの3人のメンバーから15分ずつの報告がなされ,その後ディスカッション(18:22くらいから)が行われました.報告については,主に,崎山さんがお金のはなし,菊池さんが文献入手のはなし(大学図書館的にはこれがいちばんなじみ深いテーマ),大谷さんが笑いを取りつつ学会運営のはなしをされていました.ベースとなっている中間報告書はウェブで公開されています.今後,属性(院生とか)に応じた分析などを進めていき,2013年度中に最終報告書をなんとか出さればとおっしゃっていました.



そのうち報告資料は公開されると信じて(→されました),大学職員/大学図書館員がこの問題に対して貢献できることはあるのか,あるとしたらそれはなんなのか,という観点から自分が気になったところをメモしておきたいと思います(所属機関とは関係ない,私見です).なお,わたしは菊池さんのCA記事からこの問題を見てしまっているためか,この問題において大学図書館ができることはほんの一部分なんだなぁ(でも確実にできることはある)ということに改めて気付かされました.



(1)文献収集する環境が整っていない

これは菊池さんのCA1790で中心的に指摘されていることですね(特に非常勤講師について).これに対しては,大学図書館が卒業生/学外者へのサービスを拡大することで改善できる可能性があると思います.いやいやそれは公共図書館(国立国会図書館含む)がサポートすべき問題なんじゃないかという声もありますが,個人的には大学図書館が対応したほうが早いのではと思っています.提供対象となるサービスには,電子リソース,ILL,貸出,書庫入庫などがあるでしょうか.なかでも,(たぶん自分が担当していたサービスだからという理由が強い気もするのですが)他の機関/サービスでは代替しづらいサービスとして海外ILLがあると思います.西洋史という領域においては特にそうなんじゃないかな.海外の国立図書館から2〜3週間程度で本を借りてくるサービスをぱぱぱっと提供できる図書館はそうそうないと思ってます.



(2)論文を発表できる媒体が限られている

アンケート結果では,4割がそう感じていたということです.それに対して自由記述で学会誌発行の頻度を増やす(年1回→年2回など)というアイディアが出されて,一方で学会誌の印刷費は学会運営において悩みの種であるというはなしもありました.そこで,冊子体をやめて電子ジャーナルにという可能性が示される,と.……これ,大学図書館でサポート実績のあるはなしだなと思い出しました.電子ジャーナルを発行するオープンソースソフトウェアにOpen Journal Systemsというのがあります.京大はこのシステムを使って応用哲学会のContemporary and Applied Philosophy誌の発行を支援していたはず(むかしOJSのマニュアルの日本語訳には関わったんですが,その後この事業がどうなったのかちゃんと把握してません.すみません).



(3)研究を行う時間が充分に取れない

大学の先生方から,教育や雑務に追われて研究する時間が取れないという声はちらほら聞きます.教育はともかくとして,雑務のほうはなんとかならないのかなぁと大学職員として申し訳なく思ったりします.ただ,何が研究者の皆さんの時間を奪ってしまっているのかがいまだによく分かってないのです(すみません).より詳しく,具体的なことが知りたいなぁと思います.事務側の改善で多少なりともなんとかできれば…….



こんな感じかな……(またあとで書き足すかも).ディスカッションの最後らへんで出た「この話題を口にしていいんだという空気をつくっていく」という発言にはぐっときました(自分が問題だと感じてることに負ける必要はないんだと,個人的に勇気づけられました).

*1:私の指導教官はよれよれのTシャツ+短パン+ビニサンで学会発表するような感じだったので.