Beyond the collections, Full library discovery.
OCLCのLorcan Dempseyさんのブログ記事「Full library discovery」を読んだので簡単に紹介します.そう長い記事ではないので本文を読んでいただけばいいんですが,名前を刻むことは重要だというノリで.
ざっくり言うとこんな感じです.
ディスカバリー,ディスカバリー言うてる昨今の状況はいわば「full collection discovery」である.所蔵資料にかぎらず(“beyond the catalog”),電子ジャーナルの掲載論文やHathiTrustといったリポジトリのコンテンツ,Khan Academyのような講義映像などさまざまな資料が検索できるようになっているが,あくまでその対象は「資料」である.最近ではそれを超えて(“beyond the collections”),図書館のあらゆる可能性[*1]を検索できるようにする「full library discovery」というトレンドが現れている.そこでは,専門知識を備えた図書館員のプロフィール,LibGuidesのようなリサーチガイドや図書館ウェブサイトの内容なども検索対象に含まれていく.実例としては例えばミシガン大学やスタンフォード大学がある.
……そんなに難しいことじゃないですね.例えば「数学」と検索したとき,そのキーワードに関連する資料だけじゃなく,数学分野のサブジェクトライブラリアンの情報や,数学のデータベース一覧のようなガイドもいっしょに提示されるというイメージ.国立国会図書館サーチでリサーチ・ナビ(「調べ方案内」)が検索対象に入っているのはまさにこの路線ですね.また,ウェブスケールディスカバリーサービスSummonのDatabase Recommenderという機能も(“差し込む”という感じだけど)近い.
このfull library discoveryというフレーズは,過去に書いた「スタンフォード大学図書館のウェブサイトリニューアルについて」「“お弁当”みたいな検索結果の表示方法」でもちらっと出てきていました.また「E1387 - 図書館・情報発見・目録について考えるための13の視点」でも名前は出さないまでも以下のように紹介しています.
第九の視点は,図書館内でバラバラに扱われていた様々なフォーマットの資料を一括して検索できるディスカバリーレイヤーの登場である。但し,これによって別個に目録が存在する必要がなくなったかどうかは議論の余地があるとしている。また,図書館のコレクション全体ではなく,図書館の提供するもの全体を検索できるようにするというアイディアに触れ,その好例としてミシガン大学図書館を紹介している。同館では,図書館のウェブサイトやLibGuidesのコンテンツだけでなく,キーワードに関連する主題分野の図書館員の情報もを一括して検索できるようになっている。図書館のウェブサイトは顔の見えないものになりがちだが,専門家として認められたいならばその専門性を見えるようにしなければならないとデンプシー氏は言う。
さて,catalogを超えて,collectionを超えて,次はもちろんlibraryを超えることになるんだろうと思います.例えば“full university discovery”とか.大学という空間において学術情報はなにも図書館だけが独占しているわけではありません.しばしば研究者総覧というかたちで集約されている学内研究者のプロフィール,あるいはオンラインシラバスに収録された講義情報も,大学図書館の管理するコンテンツとリンクさせると面白いでしょう.などなど.
いったいどこまでの情報を検索させるかという線引き(検索範囲).そして膨大になった情報をどのように効率的に探してもらうか(検索機能).この文脈依存のふたつの問題は,引き続き悩ましい課題になっていきますが.
*1:原文はcapabilities