カレントアウェアネス-E No.249感想

木金土日と開催されているNF(学祭)で,うちのバイトさんたちが「図書館大博覧会」という展示企画を出しているため,この土日もお手伝いに出かけたりしています.自分が学生のころはほとんど興味を持たなかったNFですが,酔っ払った男の子が吐いたまま寝ているのを見かけたり,なかなかカオスなんだなあと思いました.

さて,毎号感想を書き続けていると2週間インターバルの短さをひしひしと感じます.その間,なぜかCA-Rに紹介されたり,念願の英語版インターフェースが公開されたりしました.今号の記事は6本のうち外部原稿が3本.インタビューからはじまり,イベント報告,最新の取組み,文献紹介にレポートと,硬軟入り交じったとてもバランスのいいラインナップだなあと思いました.





E1503 - われわれの館~図書館司書就職支援の館~管理人インタビュー

1本目は先日クローズした「われわれの館」管理人さんインタビュー.

@egamiday 先輩が,Twitterで「インタビュー行き」などと言っていたのをちらっと見かけましたが,それをヒントに企画されたのだろうか(あるいはCA-Rにしたときからそのつもりだったのだろうか).自分も就職活動をしていたころは毎日のように見ていました(なのでURLも覚えています).残念ながらそこで知って応募した求人はぜんぶ落ちたクチですが…….

見る立場だけだったので「求人情報の掲載は,全国600以上の図書館や企業に掲載用IDを割り振り」のところは知りませんでした.また,「偽の取り下げ依頼」はそんなことするひとがいるんだとショックを受けました.が,取り下げ依頼が偽物だからといってその動機が倍率を下げることを狙ったものだと決めつけていいのかな……?と疑問に感じたのですが,なんか記事に含まれてないソースがあるんだろうか(たぶんそうなんだろう).今後の在り方として「#われわれの館」というハッシュタグが例示されていますが,求人情報MLというかたちでもいいんじゃないかなあと思いました.匿名での情報提供がしづらくなるでしょうが…….

この記事の表のコアメッセージは「個人のボランティア活動では限界がありますので,やはり,ここは日本図書館協会などの団体での取りまとめに期待しています」という箇所なんでしょうが,これは,まあ,CAポータルにも跳ね返ってくる一文ですよね.求人情報というジャンルじゃなくても,われわれの館のようなクラウドソーシング的な情報発信サイトの姿は,今後のCAポータルのひとつの在り方なのかもしれないと思っています(もう担当ではないので「いました」が適切か).

ともあれ,13年間(自分はまだ学部生のころだ)も継続されたという偉業に敬意を表したいです.おつかれさまでした!





E1504 - SPARC Japanセミナー2013「再利用とAltmetricsの現在」

鹿児島大学の西薗さん!(個人的に同世代―じゃないかもですが―でその活躍っぷりをいちばん恐れている人です)

セミナータイトルは「オープンアクセス時代の研究成果のインパクトを再定義する:再利用とAltmetricsの現在」で,主に研究データの管理・再利用やそれにおける大学図書館の役割がテーマになっています.このCA-Eの発行直後に,セミナー報告を載せたSPARC Japan News Letter No.19が公開されました.なんつーか,内容を読むよりもまえに,パネルディスカッションの写真がすごいカラフルで思わず吹き出してしまいましたよ.自分も今度機会があったらスーツなんて着るのやめよう…….

トップバッターの池内さんがE1481を書いたときの感想でも述べたんですが(そして池内さんからブログでそれへの「回答のつもりでお話してきました」と書いてくださってるんですが),研究データというものについて大学図書館がどういうサポートをなしうるのか,日本の研究者はほんとうに日本の大学図書館に対して期待をしてくれるのかについて自信が持てないわけです.そういった意味では,今回は研究者である坊農さんがどのように述べておられるかに関心を寄せていました.でもそこは記事ではさらっと流されていたw ただ,SPARC Japan News Letterを見てもそのへんの話はなかったということなのかな…….figshareのMark Hahnelさんは「膨大で多様な研究成果物のオープンアクセスを進めるには図書館の支援や啓蒙活動が必要である」のように発言したんですね.

Jason Priemの発表についての記述で「ストーリーテリング」という単語がさらっと使われていて,ちょっと戸惑いました.なんとなくこのコンテキストでの意味は分かるのだけど.これはImpactStoryの"Story"とも対応する表現なのかな.

オープンアクセスであることと評価の再定義の関係が自分は明確には分かってないことに気づく(オープンでなくても評価はできるわけで.もちろんオープンなほうがいろいろな分析評価はできるけれども).





E1505 - Perma:法律分野におけるオンライン上の参照文献の保存

志村さん.このネタってことは,いまはWARPの担当をされているんですね.

ハーバード大学の研究者らによる「Perma」という取組み.読み方は「パーマ」でいいのかな.知らなかった,と思ったらCA-Rで紹介されているんですね(語尾の「.cc」には見覚えがあった.「.cc」ってなにか含意のあるドメインなんだろうか.Creative Commons? 違うか).「現在Permaにはスタンフォード大学やボストン大学等の26の法律図書館に加えIA及び米国デジタル公共図書館がパートナー機関として参加している」ということなので,注目されている取組みなんだなあ.

サービスのしくみはそんなにむずかしくないようで.Perma.ccのウェブサイトで,永久的にコンテンツを保存したいオンライン上の引用文献のURLを登録すると,「http://perma.cc/**********」というURLが与えられる.そのコンテンツは,「権限未付与(unvested)」→「権限付与(vested)」のように人的チェックを経て保存される.要するに,ウェブアーカイブ機能つきの短縮URLサービスっていうイメージを持ちました.人的チェックが介在する手間については,どうせ査読するんだからいいってことかな.しかし,そんなふうに他所様のコンテンツを勝手に保存していいんだろうか.フェアユースなの?





E1506 - 米国大学図書館における電子書籍と冊子体の価格差調査

安原さん.C&RLのプレプリントの紹介.

舞台は米国の中規模大学であるオーバーン大モンゴメリー.2012年秋,(電子書籍の?)PDAの導入を検討するにあたって,教員から購入リクエストのあった図書462冊のうち冊子体書籍・電子書籍の両方が利用できる264タイトルについて,媒体別の価格差を調べてみたというもの.これまでは電子書籍のタイトル買いはしてなかったということなのかな.結果,(1)全体,(2)出版者別,(3)LC分類別,(4)人文科学/社会科学/科学別,のいずれにおいても電子書籍のほうが高額だったという.

ただ,元論文でも指摘されているようですが,単純な購入価格だけ比較しても不十分ですよね.それぞれ,アクセスを提供しつづけるためのメンテナンスコストが必要で,それを加味して検討する必要が(本当は)あるはず.冊子体書籍だったら督促とか督促とか督促とか督促とかあるわけですよ……(恨み節).そういったスタッフ側のコストはもちろんのこと,利用者側の利用に必要なコスト(例えば図書館に出かける時間的コスト)も考慮できるといいですね.そういうのをひっくるめて,冊子体書籍と電子書籍のそれぞれに必要なadditional costっていくらくらいなんだろう? どこかで試算されているんだろうか.知りたい.

記事を通して「冊子体書籍」じゃなく「冊子体」という表現がされている点についてはちょっと違和感があったり.気にしすぎかな.





E1507 - ボーンデジタル資料収集の手引:アーカイブの質向上のために

篠田さん.CLIRの出した文書なんですね.資料の提供者(donors)を対象にしたガイドというのは面白いなあ

構成はすっきりしているけど,内容がやや抽象的だったので読むのにちょっと苦労しました.ここで想定されている「ボーンデジタル資料」というのがどういうものなのか具体的にイメージできず,「ん? 個人情報? そういう話なの?」などといろいろ引っかかってしまい.いろいろ指摘されている事項では,最後らへんの「破損した媒体など現在アクセスできないファイルも,将来的な技術の進歩により解読が可能になることも考えられるため,扱いを検討する必要がある」がもっとも響きました.

この文書を実務でありがたく感じることのできるのは,日本ではどういったひとたちなんだろう.それがいちばん気になったりする.もしかしてあそこ





E1508 - 図書館員の役割はどう変化してきたか:健康科学分野を例に

依田さん.JMLA掲載論文の紹介.今年度の調査研究を意識したセレクトかという妄想が浮かんだのですがどうでしょう.

元論文はヘルスサイエンスライブラリアンの役割について,1990年〜2012年までの文献をシステマティックレビューするというもの.記事ではその手法については細かく(検索に使われたクエリまで!)紹介されており,依田さんの「同じような研究,ヘルスサイエンスライブラリアン以外の分野でもやってみろよ」というドヤ顔メッセージが伝わってくるようです.(ところでこのクエリはどのフィールドを検索したものですか?)

冒頭の「われわれの館」の感想ともリンクする,メーリングリスト(MEDLIB-L)に投稿された求人情報も分析の対象になっているという点についても反応してしまいました.

各種検索の結果,424件の文献が抽出され,それを精査すると50件に絞りこまれたという.日本語文献なら自分でも同じことできそうだけど,英語ではやる気しないな…….分析を経て,ヘルスサイエンスライブラリアンの新たな役割について,「文献で確認された役割・活動」6つ,「求人情報で確認された役割」4つ,「従来の役割における新しい展開」4つが見出された.その中には自分のウオッチしているヘルスサイエンス分野以外でもよく見かけるものもあります(海外のメーリングリストを購読していると求人情報は毎日目にしますので).例えばEmbedded librarian,emerging technology librarian(自分はこういう仕事がしたい),Scholarly communications librarianあたり.一方でTranslational research librarianのように初めて見るものも.Grants development librarianというのも初見ですが,ちょっとURAを連想しちゃいますね.

CODE4LIBやWEB4LIBといったメーリングリストで流れている求人情報も使って,システム系図書館員という分野で同じような研究をやっていたら論文を読んでみたいなあ.





次号は12月12日.ってことは2013年最後の発行日は12月26日=CA編集会議の日なのかな.