医学系ではなぜ学術雑誌掲載論文を博士学位論文にするのか

# 何かご存知の方がいらっしゃったら教えていただきたい的なエントリです。

あらゆる大学でそうなのかは分かりませんが――医学系の周辺では学術雑誌に発表済みの査読論文をそのまま博士学位論文として提出するという“特殊”なスタイルが多く見られるようで。これっていつごろからどういった経緯で始まったのかなあというのを最近調べている(@yukom622 さんとかにも尋ねたりして)。あと、外国ではどうなんだろうかとか。

例えば九大の医学系学府の課程博士では、

◆学位申請論文(主論文)は、以下のいずれかとする。
(1) 英文で作成された原著論文であり,査読のある権威ある学術誌に掲載又は受理されたもの
(2) 上記(1)を含めたテーシス形式論文であるもの(テーシス形式論文の体裁は別添参照)
http://www.grad.med.kyushu-u.ac.jp/doctors_course/data/shinsei01_sample.pdf

と定められている。

論文受理を審査要件とするのではなく、その論文じたいを主論文とするという。ある先生が「学位の審査を外部のジャーナルに丸投げしているだけ」と批判されたりしていたのを思い出す。

学位規則改正(2013年4月)による博士論文のインターネット公表において、(1)の場合、出版社の著作権ポリシーによっては「止むを得ない事由により非公表」ということになってしまいがちである(このポリシーチェックが公表作業では一手間だったりする)。Elsevierの雑誌については、最近物議をかもしている新ポリシーのなかで公表OKとなったので、ちょっと楽になりそうだけど。

なお、(2)のテーシス形式論文というのは「既に英文で作成され、権威ある学術誌に掲載又は受理された論文(以下「対象論文」という)1編以上をもとに新たに執筆されたもの」ということで、他分野における博士論文の概念に近いものだと思う。この用語も他分野では見かけないような気がするけど、ぐぐってみると医歯薬系ではわりかし使われているらしい。

上の例では「英文」という点も定められている。ある大学でむかしむかしは和文誌で良かったという話も聞いたりして、そのへんの変遷も興味深いところ。

例えば以下の論文に目を通してみたところ(最後のは未読)、冒頭の疑問に対する答えにはならなかったけど、この分野の事情がちょっと分かってきた。学位数が多いから審査を楽にしたかったのかなあ、あるいはその逆なのだろうか、などと想像したりした。