学生に好まれる本のサイズ

# タイトルにはやや偽りがあります

ここのところ豪州出張のために(大学図書館向け、主に日本語)電子書籍についていろいろ読んだり調べたりしていた。まだ終わってなくてまだまだ気が重たい状態が続く……。

「紙の本のほうが読みやすい」という声が聞こえてきたりもするんだけど、紙の本と電子書籍と、どちらが読みやすいとか探しやすいとか議論することにはたぶん意味がなくて、紙の本ならではの読みやすさと探しやすさ、そして電子書籍ならではの読みやすさと探しやすさがあるだけなんだろうと思う。うまくいいとこどりできるといい。現状はとても「電子書籍すごく人気です!」「電子書籍探しやすいです!」などとは言いがたいのが正直なところで、どうしたらもっと使ってもらえるのかなあ、探しやすくできるのかなあと頭を抱えている。ほんと、電子書籍というのはなんであんなに探しにくいのか。図書館向けサービスはビューワーも微妙だし。。自分はもう紙の本は買わないと決めてるくらいの人間だけど、本屋さんの探しやすさっていうか解像度ってすげえなと改めて感心する。なんかだんだん「電子書籍なんて紙の本にリーチしてもらうための全文検索インデクスにすぎない」と考えるのもアリだと思えてくる。総じて、まだまだ電子書籍の良さを十分に引き出したサービスになっていないんだろうな(というと他人事のようだけど)。

以下は、関連して、2012年の文献なのでちょっと古いんだけども、慶應の電子学術書プロジェクトの最終報告で面白かったくだり。オンデマンドプリンターで作った本に対する学生からの「意外な反応」というもので。

彼らの意見で多かったのは「本のサイズを小さくしてほしい」というものだった。毎日,5~10冊近い教科書を持って登校する彼らにとって紙の本は重すぎる。文庫本サイズなら10冊でもハードカバー数冊分の重さや嵩になって助かる,という意見である。事実,図9で言えば3分の2の学生が真ん中の「文庫サイズ」を選んでいる。実物を見せ,「本当に読める?字が小さいよ」と聞いたところ,「僕たちはハタチですよ」という答えが返ってきた。現行の書籍サイズは出版社や著者が知恵を絞って考えたものと思われるが,それは「万人向け」のサイズである。最適なサイズは個人や年齢,使い方などによって変わるはずだが,オフセット印刷でそこまで対応することは不可能である。電子書籍で利用できるタイトルが揃い,電子データが流通するようになれば,好みのサイズに印刷して読むという読書スタイルが定着するかもしれない。

http://doi.org/10.1241/johokanri.55.318

なんというか、こういうのもひとつの紙と電子のいいとこどりというか、ハイブリッドだなあと。よく考えたら電子ジャーナルだって印刷して読まれてるんだから、電子書籍だって同じであっていい。

朝の通勤電車では、ときどき(他人の?)ノートを撮影した写真をスマホで見つめて勉強している学生さんを見かけたりする。きっと大学図書館で借りた本も、必要な部分だけ撮影して使っていたりするんだろう。図書館の提供する電子書籍とは違うけど、こういうのもひとつの“電子書籍”のあり方だなあ。

要は学生さんたちが気持ちよく勉強・研究できればいいのであって、あまり狭く考えないように気をつけよう、と思った。