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ORCID Outreach Meeting in Tokyo (2014/11/4, NII) #orcid13

http://orcid.org/content/tokyo2014

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NIIで行われたイベントのメモ。


研究者に対してグローバルなIDを与えるORCID。ORCIDに関するイベントが北米や欧州以外で行われるのは初めてということだった。10時から17時半まで、みっちりと計11本のプレゼン(基調講演+3パート x 3本)が行われた。内容は、ORCID、CrossRef、東アジア各国の事例(日本、韓国、台湾、香港。中国はなし)、など。ブレイクの時間はコーヒーやお菓子が振る舞われ、これがなんとWellcome Trust提供だったのでびびる。参加者は図書館員ではなく学会や出版社の方が大半で、黒服多めな感じ(参加申込者一覧)。

資料は後日ウェブで公開されるらしい。また、『月刊DRF』12月号でも特集が組まれる予定とか。


全体的な感想

登録iD数が100万件というひとつのマイルストーンを達成する直前まで来ているけど、研究者自身にとってのメリットが薄いあるいは見えにくいところは相変わらずという印象を受けた。助成機関にとっては、ORCID、DOI、FundRefの三つ組によって自身の助成成果が把握できるという大きなメリットがあるし(Wellcome Trustの女性も、申請時にORCIDを義務化する方向を検討していると言っていた)、研究機関にとっては所属研究者の業績評価がしやすくなるなるんだろうけど。

ただ、グローバルな著者IDの必要性は明らか。メリットがないから増えない、増えないからメリットがないという鶏と卵的な議論をてきとーにいなしつつ、黎明期には黎明期らしく、義務化も含めたあの手この手でとにかく振り続けていくしかないんだろうという、という前向きな気持ちにはなれた。それはたぶんCrossRefのEd Pentzの「DOIも時間がかかった」というコメントを聞いたおかげで。DOIも、10年以上かけて1億件という大台に乗って、その存在もふつーになってきて、やっと日本にもJaLCというRAができた。のんびりしていていいとは思わないけど、諦めずにいればいつかきっとなんとかなる、方向性は間違ってない、そんな想いになれたのがいちばんの収穫だったかな。

正直、グローバルな著者IDなんて必要じゃないというケースがあることも事実。日本語でしか論文を書かない研究者とか……。このあたり、日本語論文のメタデータが世界的に流通していないこととか、日本語論文のcitation indexがないことなどとも関係する問題だと思う。全体としては、研究者まかせだけにしていては進まないと思うので、研究機関による一括登録や助成機関による義務化といったムチによって強引にドライブせざるを得ないこともあるだろう。ということで、後半の事例報告(特に台湾国立師範学校)は参考になった。香港大学もちゃんと見ておかないとなあ。。


各プレゼンのメモ

Laurel Haak (ORCID): ORCID Status and Plans

基調講演らしく、エグゼクティブディレクターからORCIDの現状と今後について。

2014年10月時点で登録されているORCID iDの数は100万をちょっとだけ下回るくらい。54か国からの登録。などなどいろいろな統計値が紹介されていたので、また資料を参照したい。ORCID Statisticsというページもある。

新機能がいろいろ紹介されていたけど、個人的に注目したいのはAccount Delegationで、いわゆる、本人以外のひとによる代理登録機能だと思う(10月リリース)。2015年リリース予定の機能のなかにImprove reporting for university membersというのもあり、個人ではなく機関によるORCIDの利用に向けて必要な部分を着々と埋めていっているという印象を受けた。

ORCIDを活用した事例としては、香港大学のScholars Hub(David Palmerの名とともにむかしから機関リポジトリ業界では有名ですね)が紹介されていた。また、国レベルのものでは、デンマーク(2014.9)、ポルトガル(2013.11)、スウェーデン(national recommendation 2013)、英国(Jisc-ARMA)を挙げていた。


Ed Pentz (CrossRef)

ナマEd Pentz!(名刺交換もさせてもらいました。ぜんぜん思うように話せなかったけど……orz)

CrossRefでORCIDをどう活用してきたか、というはなし。さすが、やれることはだいたいやってるという印象。964,638 ORCID iDs、2,222,880 unique DOIs (in ORCID)、135,473 ORCID iDs in CrossRef、といった数字をメモ。

ジャーナルの論文投稿システムでORCID iDによるログインができるといいよねと言っていた(Editorial ManagerではORCID iDを登録できるようになってるけど、ログインアカウントとして使えるわけではないのかな?)。学認のSPとしてそういうシステムも視野に入れたほうがいいんだろうか……。


TAKEDA Hideaki (NII): Researchers and Identifiers

日本でNIIがどういうことをやっているか、2024年の研究活動を模式化した図(Researchers in 2024)が面白かった。DOIやORCIDなどさまざまなIDが結びついた図を見せて「研究者はこのネットワークの一部しかない」と。

「Multiple IDs can co-exist in a single category」「単一のIDではやっていけない」「Researchers should live with a lot of IDs anyhow」「それを支援するのが我々のミッション」というメッセージ。8月にJaLCのイベントに行ったときも、武田先生は、DOIを付与する対象を限定せずにさまざまなものに振るべきだとお話されていたと思う。でも、ユーザ(研究者)としては自分にまつわるIDがたくさんあるのは面倒だろう。いかにその多様さを意識せずに済ませるか。サービスの設計しだいなんだろうけど。

なお、Ed Pentzと武田先生は図書館総合展2日目の「識別子ワークショップ〜JaLC、CrossRef、DOI、ORCID、そして…〜」にも登壇されている。資料をいただいて来たけど、ぱらぱら見ると重複する話も多かったのかな。動画も公開中。


Choon Shil Lee: Korean Author Names and ORCID: A case report of KoreaMed & Synapse Database

韓国の医学・生物系情報の世界をまったく知らないので、KoreaMed(韓国のPubMed)、Synapse(韓国のPubMed Central)、KAMJE(Korean Medical Journal Information)、KOMCI(Korean Medical Citation Index)とか、いろいろ勉強になった。このうち、KAMJEでは、ORCID、FundRef、CrossMarkを使っている。

それよりも韓国の姓のカオスっぷりがとても面白かった。2000年の国勢調査によると286種類の姓があるらしい。そのうち、Kim, Lee, Parkの3種類で45%。ChoiとChungを加えると半分超、トップ100位を合わせて99.1%になる。ある論文で42人の著者のうち11人がKimという例とか、Kim JHが多すぎる話とか、こんな状況では著者IDの必要性が切実すぎる。


Mikiko Tanifuji (NIMS): ORCID and Ninja project

NIMS谷藤さん。

新しい(というか別の?)研究者データベースNinjaのプロジェクトを紹介。研究者は最先端を切り開いていくからSAMURAI。SAMURAIの次だからNinja。パートタイムも含めた若い研究者をターゲットに。いいなあ、このノリ。

Ninja = ORCID x DOIということで、ORCIDをマスターデータベースとしているのが特徴(それによって研究者の異動にも対応できる)。ORCID iDでNinjaにサインイン。「機関リポジトリのショーケースとして考えている」。国内で動きが見られる、researchmapをマスターデータベースとした研究者データベース、のORCID版で、+いろいろな遊び要素も、という感じ。

ディスカッションで谷藤さんがおっしゃってた「ORCIDはサービスとして誰の方向を向いているかはっきりしない」というコメントはぜひどこかに文章として残していただきたい……(ブレイクのときに再度説明していただいたのに、自分のことばにできてなくて申し訳ない)。

図書館総合展でポスターを見かけたので撮影。

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Mitsuro Mizuno (JST): Making knowledge infrastructure by “Identification”

国内の機関だけど、関東以外ではJSTの話をまとめて聞く機会は少なかったりして、もしかしたら初めてだったかも。JSTという組織の経緯(JICST(information service) + JRDC(funding))も知らなかった。年間予算1350億円の大半はfundingで、JSTはほとんどfunding agency、というのも認識が改まる。

JSTのKnowledge Infrastructureは、最近できたfunding management database(FMDB、科研費JST fund)、J-Global / J-STAGE、researchmapを三本柱にしているという。カネ、書誌、ひと、かな。FMDBをオープンにしていくということで、そのうちJST fundがKAKENデータベースで検索できるようになるらしい。ORCIDとFundRefを組み合わせて正しい助成成果をFMDBに取り込んでいけるようになったらなあ、とも言っていた。

researchmapについては、190機関がデータ交換、Scopusからのインポートはもうすぐできるようになる、ORCID→researchmapはすでにできる、例の文科省見解(researchmapにデータを登録して大学のサイトからリンクすればそれでOKよと)、fund情報も2015年度には公開できるようになる、など。Scopus対応にずっと期待している。


Choi Seon (Sunny) Heui: ORCID activities in Korea

韓国KISTIの方。KISTIはカナダのCISTIの韓国版だと言っていた。こちらもJSTよろしく組織変遷を重ねている。

オープンアクセスジャーナルのKorean Journal Publishing Services (KPubS)、200誌以上で使われているPeer-Review System (ACOMS 4.0)、400誌以上を収録したKorea Scienceというデータベース、50万件文献・1000万件引用情報を収録したKorean Science Citation Index (KSCI)、などのはなし。知らないことばっかりだ。後半は国全体の科学技術政策のスキームや研究評価のはなしをしていたけど、図が細かいせいもあってよく分からなかった。Research Information Management System (RIMS)という単語には反応したけど。。

ORCIDの活用状況として、M2community(KISTIと並んでORCIDメンバーの民間企業)のウェブサイトに載っているジャーナル一覧を紹介していた。これは分かりやすい。
http://publishing.m2comm.kr/journals/list.php


Chris Chan: ORCID@HKBU

香港浸会大学。FlickrのCC画像をふんだんに使ったスマートなプレゼン(でも資料だけでは内容がよく分からない系)。

続くKeさんと同様、学内で全研究者にORCID iDを作らせようというプロジェクトをしたそうだ。でも段取りをとちって、副学長からORCID iD作れとメールが飛んでしまって、問い合わせが殺到、という失敗談。ということで、いいのかな。でも大学上層部の関心は高いと分かり、2015年2月にはやることになったという。「ORCIDというのはresearch profileではない、ということが分かるのに一年かかった」と言っていた。でも困ったことにresearch profileでもあるんだよなあ。。


Hao-Ren Ke: ORCID in NTNU

台湾国立師範学校。エネルギッシュなひとだったw

2014年に学内のフルタイム教員全員を対象に、ORCID iD付与プロジェクトを始めたという事例。ひとつのモデルになるかなと思う。1〜2月にORCID memberになって、テストや図書館員への研修もして、学長名で教員にメールを送り、アナウンス。教員は自前でiDを作るのではなく、図書館側でAPIを使って作る(たぶんそのためにmemberになっている。ORCIDのmembershipについて過去に記事を書いた)。すでにiDを持っているひとも、OAuth経由で自分のiDを図書館側のシステムに登録してもらう。結果、1/4がORCID iDを作ってくれた(850人中200人くらい)と言っていた。やるとしたらそういう方法になるよなあ、という感じ。でもこのしくみを各大学で作るのは大変なので、researchmap上でなんとかできないかなあと考えたりしながら聞いていた。

ElsevierのPure Expertsを使っているが、高価なので100人分しかプロファイルを作らなかったという。今後はVIVOの採用を検討しているとか。

なお、学長名のメールのなかにResearchGateという単語がばんばん登場しているのにびびった。そういう状況なんだ。。


Yasuhisa Kondo: JpGU meets ORCID

日本地球惑星科学連合(JpGU)という学会の連合体が、ORCIDを活用したMy JpGUというサービスを作ったというはなし。ORCIDとの間で業績の同期ができるというもので、これは有名なので知っていた。構築に関わったのはアトラスさん(アトラスの方とも名刺交換ができてよかった!)。

質疑で、学会員に対するORCIDの付与まではやってないと言っていた。やろうとすると既に持ってるひとの対応が面倒になるけど、そこは台湾国立師範学校みたいにシステムを作る方法もあるだろう。



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