NII学術情報基盤オープンフォーラム2016 #SINET5 #of_repo

http://www.nii.ac.jp/csi/openforum2016

国立情報学研究所の学術情報基盤オープンフォーラム2016に行ってきました。最終日には羽田空港大韓航空出火事故があって、3月の出張に続いてまた欠航延泊か……とヒヤヒヤしましたがなんとか帰ってこれました。

自分の発表

用務のひとつはリポジトリトラックでの登壇。今回はオープンアクセスモニタリングのお話をしてきました。

早口すぎた……と超反省。持ち時間が10分ということもあり、今回はいつもと違って「正確な理解」は最優先しなかったにせよ、やっぱり詰め込み過ぎた……。次に人前で話す機会は秋冬の某研修になりそうで、そのときは気をつけよう(あっちは逆に75分もあるんだけど)。

表紙の画像は何?と聞かれましたが、モニタリングといえばダッシュボード(dashboard)でしょということでFlickrから拾ったものです。

最後のページにもあるように、6月にアイルランドのトリニティカレッジダブリンで開催されるOR2016という国際会議でポスター発表をしてきます。ついでにセントアンドリュース大学で開催されるCRIS 2016に寄ってから。CRISはいつか参加したいと思っていたので、セットで行かせていただけることになってとても嬉しいです。福岡→ソウル→ロンドン→エディンバラ→ルーカーズ→CRIS2016@セントアンドリュース→ルーカーズ→エディンバラ→OR2016@ダブリン→ロンドン→ソウル→福岡、という10泊12日の一人旅。何を着て行ったらいいのやら。

機関リポジトリ推進委員会協力員の仕事でこうしたプレゼンをするのは3回目でした。過去2回とは違って今回はresearchmapから離れたトピックに見えるかもしれませんが、関連したものです。

感想

初日は移動日、2日目は終日リポジトリトラック、3日目はクローズドな(なのになぜかフォーラムのプログラムに掲載されている)打ち合わせ、ということで別会場でパラレルに展開されていたCAT2020やERDB、学認の話はまったく聞いておりません。

リポジトリトラックの全般的な感想は #SINET5 #of_repo でツイートしていますので繰り返しません(だれかまとめてください;相変わらずTogetterにハブられてログインできないひと)。

Twitterでは、天野さんの「消えゆくデータを供養する : 人文系研究データのケーススタディ」が反響ありましたね。

個人的には

が楽しかった。DOI登録は昨年度自分でもせっせと手を動かして取り組んだことなので思い入れがあり、最近その事例を原稿(細かいことまで盛り込んだら1万字を超えた)にまとめていたところなので記憶も新しいし。

機関リポジトリにおけるJaLC DOI登録に関する発表はオープンアクセス・サミット2014以来になるのかな。あのときは先行実験館からの報告だったし、今回の加川さんはマクロな分析で、林さんはやや特殊なケースと言えるので、ごくふつーの登録事例があっても良かったんじゃないかとは思いましたが。加川さんの分析からは少なくとも2015年末時点では正直そんなに登録が進んでないということが感じられ、自分の担当プロジェクトでの課題がいくつか頭に浮かびました。まあ、JAIRO Cloudに移行すれば簡単にDOI登録できるよってことでいいのかもしれないけれど。



空き時間にキナリノで読んで気になっていた等々力渓谷に行ってきました。都心からたいして離れてないのに駅から徒歩3分でこの景色かとほんとに驚く。いい環境だなあと憧れたけど、家賃はそこそこ高かった。

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「E1791 - 欧州におけるCRISと機関リポジトリの連携の現状」を書きました

http://current.ndl.go.jp/e1791

昨年10月のE1725に続いて、EUNISとeuroCRISの報告書の紹介記事をカレントアウェアネス-Eに寄稿しました。

この報告書は執筆依頼をいただくまえにいつかどこかの飛行機のなかで読了済みでした。現在の自分の関心テーマどまんなか!なので非常にありがたい情報源ではあるものの、正直ちょっと結論を急ぎすぎてるきらいがあり、広く紹介するのも微妙かなあと感じていました。ただ、そのへんも含めて批判的に紹介してOKという依頼でしたので、お受けしました。ほんとはCOAR Observatory Third Editionが出たときにきちんとまとめるべきやったんや……。

自分の意見は以下の段落で述べています。

ただし,回答数の少なさと国による偏り(7か国では回答数が1機関のみ。回答数上位5か国で全体の6割を超える)を鑑みると,本調査で多様な欧州の現状を把握できたとは言いがたいのではないだろうか。DRIS(CRISのダイレクトリ)に掲載済みのCRISからの回答や,2013年に同様の調査が行われたポルトガルの現状が十分に反映されていない可能性について言及されている点も気にかかる。また,現在はCRISとIRの併用が大半を占めるものの,CRIS導入数の伸びを考えると今後の趨勢は分からない。設問は用意されていなかったが,どちらかに統合したいと考えている機関はないのだろうかという疑問も湧く。ぜひ今後の継続的・網羅的な調査の実施を期待したい。

最後に第五期科学技術基本計画について触れましたが、ちょうど『情報管理』2016年4月号の「第5期科学技術基本計画における主要指標について」という記事のなかで、

具体的には,筆者は,府省共通研究開発管理システム(e-Rad)と他のデータを結び付けた新たなシステム開発が重要と考えている。


答申案においては,「府省共通研究開発管理システムへの登録の徹底や,当該システムと資金配分機関のデータベースとの連携を進めつつ,総合科学技術・イノベーション会議及び関係府省は,公募型資金に対する評価・分析を行い,その結果を資金配分機関やステークホルダーに提供する」ことがうたわれている。


e-Radは,原則として公募型研究資金制度を対象としており,その運用に当たっては「マクロ分析に必要な情報を内閣府に提供すること」が,公募要領等に明記されている。これにより,府省を超えた政府全体の公募型研究資金制度における資金配分情報について,府省別・配分機関別,被配分機関別・分野別,研究者・男女・年齢別等,さまざまな切り口から分析を行うことができる。


また,論文,特許,商標,製品等に関する指標は,研究開発投資に対するアウトプット・アウトカムといった知的ストックを示す指標である。e-Radにこれら指標をひも付けることにより,政府研究開発投資が生み出した成果を把握することができる。


http://doi.org/10.1241/johokanri.59.32

のように提案されていました。なるほど、e-Radか。今週はKAKENもリニューアルしましたね。funderベースならそれでもいいのだけど……。

# この4月から『情報管理』の読者モニター的な仕事をしています。

INTACTプロジェクト(ドイツ)

ドイツで行われているAPC(Article Processing Charge)がらみのプロジェクトについてメモ。

2015年10月開始したプロジェクトで、DFGから3年間の助成を受けている。ウェブサイトができたのは2月23日で、まさにゲッティンゲン大学でINTACTの話を聞いたその日だったわけだ。

実施機関は、ビーレフェルト大学図書館ビーレフェルト大学のInstitute for Interdisciplinary Studies of Science (I²SoS)、マックスプランク電子図書館(MPDL)。OpenAPC、ESAC、OA Analyticsという3種類の取組から構成されている。

プロジェクトの目標として

  • ドイツの研究機関におけるオープンアクセス出版の拡がりを把握し、今後のコスト予測の基礎とする
  • APCのデータセットをオープンにし、研究機関から出版社へのキャッシュフローを透明化する
  • 助成機関・図書館・出版社等すべての関係者を含め、APCに関するワークフローを効率化させる

の3点が挙げられていて、それぞれOA Analytics、OpenAPC、ESACに対応している。

Open APC

ビーレフェルト大学図書館が担当(DINIのサポートも受けている)。各大学で支出しているAPCの金額をオープンなデータセットとして(GitHubで)公開するもの。データセット追加・更新の情報はブログで紹介されている。

http://www.intact-project.org/openapc/
https://github.com/OpenAPC/openapc-de

ESAC(Efficiency and Standards for Article Charges)

MPDLが担当。2014年に開始し、2015年11月にINTACTに合流したプロジェクト。活動内容は、APCのビジネスモデルやワークフローの構築、出版社との協力(投稿、著者同定、インボイス、レポーティング)、優良事例やガイドラインの共有、という感じ。ESACのウェブサイトを見ると、Jisc Monitorなど英国の動きに注目しているようだ。

http://www.intact-project.org/esac/
http://esac-initiative.org/

OA Analytics

I²SoSが担当(German Competence Centre for Bibliometricsのメンバーらしい)。フラウンホーファー研究機構(Fraunhofer Society)、ヘルムホルツ協会(Helmholtz Association)、ライプニッツ協会(Leibniz Association)、マックスプランク協会(Max Planck Society)に属する大学・研究機関を対象に、オープンアクセス出版の拡がりを把握するための指標を提供する、ということだけど、具体的にどんな指標なんだろうか。

http://www.intact-project.org/oa_analytics/

出張三昧

2月中旬から始まった出張三昧の日々がようやく落ち着いた。数えてみるとこの1か月間で7日間しか出勤してない。出勤したら出勤したで(というか土日も)レポートや議事録の作成とか……。

2月19日(土)〜2月27日(土)

ドイツ7泊8日。当初は帰国後すぐに米国出張に同行という話もあった……。概要は以下に報告したとおりで、詳細なレポートは執筆中(ほぼ完成)。


3月2日(水)〜3月9日(水)

東京7泊8日。6泊のはずが羽田の悪天候で復路便が欠航しやむなく延泊となった(そのさなかでクレジットカードを紛失した)。空き時間はだいたいミーティング資料を作ったりドイツの振り返りをしていた。花粉症が始まって頭痛と吐き気がひどかった……。ドイツは4か所のホテルを転々としていたのでトランク広げて定住できることのありがたみをしみじみと。

3月2日(水)

  • RDA 7th Plenaryに参加した友人から話を聞いた

3月3日(木)

  • 機関リポジトリ推進委員会ミーティング
  • パデュー大学のMichael Wittさんと情報交換会
    • PURRというデータリポジトリがプロジェクト管理ツールみたくなっていて、研究の始まるところ(データが生まれる前から)押さえようという意気込みを感じた。現時点で登録プロジェクト数は728か。

3月4日(金)

  • Asian Open Access Meeting
    • 残念ながら中韓からの参加はなかった。これから立ち上がるコミュニティに期待(というかちゃんとコミットしよう)。「韓国のキープレイヤーはNLK」という発言が印象強く残っている(そうしたら後日こんなニュースが出てた)。
  • L4Dなミーティング
    • お昼休みに続いてOpenAIREのひとたちと話をしていたので途中参加になってしまった。主にメタデータの話をしていたんだろうか。

3月5日(土)

  • 三田・図書館情報学会「大学図書館による研究支援とURA」
    • 東大URA・明谷さんの博士(理学)+弁護士というスペックに圧倒される。ざっくりいうと東大はURAとして雇用されたひとだけじゃなく、関係職員をURA的な存在にしていこうとしているのかな。図書館への期待もいろいろと語られた。天野さんの話はよく見知っているとはいえ、改めてこのひとほんまかっこええな、と感じた。ここで出された「越境」というキーワードが後日SPARC Japanセミナーで引用されたそうで……。

3月7日(月)

  • メタデータなミーティング
    • 言いたい放題で楽しかった。南山さんの「メタデータが好きです」という発言が良かった。

3月8日(火)

  • researchmapなミーティング
    • ドキドキの顔合わせだったけど、今後につながっていきそうで一安心。

3月14日(月)〜3月15日(火)

東京1泊2日。

3月14日(月)

  • J-STAGEセミナー「CCライセンスを学ぶ」
    • キャンセル待ちで入れていただいた。機関リポジトリでCCを導入するとしたらどんなことが課題になりそうか、という姿勢で話を聞いた。JST内の自販機の価格設定に衝撃を受けた。
    • J-STAGEとしては搭載誌がCC採用してくれると外部サービスとの連携がやりやすくなる
    • 著者に同意を取るときはCCのバージョンを明記しないほうがバージョンアップの際に楽
    • 転載図等を含んでいて論文全体にCCを適用できないときは「Except where otherwise noted, ...」というような表記をするのが一般的
    • いったんCCにしたものをAll rights reservedに戻すことはできるが、ユーザがCC時代にアクセスしたことを立証した場合には権利を主張することはできない


3月15日(火)

dissemin:ORCID→ZENODO

承前。仏CAPSHの提供しているdisseminというサービスについてもメモ。

http://dissem.in/

Dissemin helps researchers ensure that their publications are freely available to their readers. Our free service spots paywalled papers and lets you upload them in one click to Zenodo, an innovative repository backed by the EU.

ということで、研究者を対象にしたサービスで、自分の書いた論文をかんたんにリポジトリに登録できるというものらしい。どうもそのへんのウェブサイトに載っければいいやんではなく「リポジトリ」というところに力点があるらしい。そして、登録先にはZENODOを採用している。

ZENODOについては以前書いた。


使い方

1. ORCIDで自分を特定する

氏名で検索 or ボタンからORCIDにログイン。検索した場合は同定して「はい」をクリック。

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2. 自分の業績一覧が表示される

最初はORCIDに登録した業績を利用するのかと思ったんだけど、そうではなく、ORCID iDでさまざまなデータソースを検索して拾ってきてるんだろう。各業績のOA状態やセルフアーカイブ可能かどうかもカラフルに表示される。

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http://dissem.in/0000-0003-0514-5033/

3. 各業績のページ

SHERPA/RoMEOを使って、セルフアーカイブ可能かどうかがバージョンごとに示される。エンバーゴ情報も。

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http://dissem.in/paper/154335/

4. アップロード

2や3で「Upload」ボタンを押すと……ORCIDの認証を求められる。本人じゃないとアップロードできないようにしているんだろうと思ったけど、私のORCID iDでログインしてアップロード画面まで進めてしまった。。え、それでいいのか。よく分からん。最後にアップロードするところでハネてくれると信じたい。

いずれにせよ著者版しか公開できない場合にファイルを自分で用意しなくてはいけないところは通常通りか。

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プレゼン資料

プレゼン資料が公開されている。最初の2つはフランス語だけどスクリーンショットがあり、最後のは英語だけど文章ばかり。
http://association.dissem.in/files/slides-ens-2015.pdf
http://association.dissem.in/files/slides-jao-2015.pdf
http://association.dissem.in/files/slides-liber-2015.pdf

3番目のスライドの最後が商用CRISへの文句で終わっていた。
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感想

研究者データベース(CRIS)からのセルフアーカイブ、の一類型といえるだろうか。

  • 業績リストは静的なものをベースにするのではなくORCIDを使って動的に生成
  • リポジトリとして機関リポジトリではなくZENODOを採用

というのがちょっと変わったところかな。

たぶんORCID/DOIに全面的に依存してるんだろうなあ(日本語圏のことを考えて遠い目)。それで済めばそれに越したことはないよなあ。相手にするリポジトリがZENODOだけで良いならそれも楽ちん。