#学習会207 からの #佐藤翔
先週は自分の想いを話して,ひとの想いを聞いて,という時間でした.
#学習会207
木曜日は京都情報図書館学学習会という(歴史ある)勉強会で出向報告をしてきました.
2011年10月にはこの学習会で,いままさに出向中ですよ報告として,ブログ「カレントアウェアネス-R」とそれを支える情報収集の方法についてお話しています.今回はその続きという位置づけで,話題の中心にメールマガジン「カレントアウェアネス-E」を据えつつ,2年間の総まとめをしてみました.
なお,出向前のポジションでの経験についても,別の場所で2011年2月に報告をしています.どうも僕は「経験したことはまとめて周りに伝えるべき」と思い込んでいるふしがあるようで.その理由をよくよく考えてみると,現状の人事異動というものに対する自分の考えがベースにあるんだろうな,と.そのポジションに異動しないと経験できない,というのではなく,異動しなくても経験したことにしたい.できれば自分は異動せずに(軸足を動かさずに,それでいて)いろんなひとの経験を吸収しながら働きたい,という願い.いま必要なことは(いつかやってくるかもやってこないかも分からない異動を待つのではなく)いま吸収しないとだめだろ,という焦り.だったらまずは自分から話をすべきだろうと.今回の発表もそんな想いによるものであって,自分の経験したことが特別だと思ってるとか,何か大きなものを得たからみんなに紹介したいとか,けっしてそんな大それた動機じゃないということは書いておきたいです.
当日はあわせて10数人の方が来てくださいました.はるばる精華町からも数人……と思っていたらなんと和歌山から駆けつけてくださった方がいてマジでびびったわけですが.現在非常勤調査員としてカレントアウェアネス・ポータルに関わっている佐藤翔さんや,まさに某組織に出向中の某めがねさんの前でお話できたのは良かったかな.
今回は所要時間が90分なのにスライドが90枚弱…….といっても半分くらいはスクリーンショットで,ストーリーラインはほとんどしゃべりで作っていきました(そんなわけでスライドを公開してもびみょーなのでやめておきます).必然的に早口になってしまい,聞いていてさぞ疲れたかと思います(すみません).
発表で伝えたかったのは主に以下の3点です.
- カレントアウェアネス-Eの編集の実際
- 自分はどんなことを想いながら仕事をしていたのか
- これからどうしていけばいいのか正直よく分からない
1点目がメイントピック.カレントアウェアネス-Eというメールマガジンの外形的な特徴は,月2回刊行というスピード,1記事あたり2000字というコンパクトな分量,オピニオンではなくファクトを伝えるメディア,といった点にあると思いますが,その根幹にある姿勢ないし哲学は「原文との徹底的な対照」(evidence based)であると言えます.できあがってきた原稿を調査情報係+非常勤調査員+課長という体制でチェックする際には,そこに書いてあることがどのソースに基づいた情報なのか,ソースの読み解きは妥当なのか,そしてそれが原稿で適切に表現されているかといった点について,(文字通り)一文一文,緻密な検証を加えていきます.原稿はたいてい真っ赤っ赤になります.査読誌でもなんでもない“ただの”メールマガジンでここまでやるのか,と最初は驚きました(慣れてしまいましたが).もちろんこの姿勢はブログ「カレントアウェアネス-R」でも季刊誌「カレントアウェアネス」でも共通です.いろいろな媒体に原稿を書かれた経験のある方が「カレントがいちばん丁寧に見てくれる」とおっしゃっていました(伝聞).ただ,めちゃくちゃに赤を入れるのではなく,原文の魅力,執筆者のキャラ,執筆者が記事で伝えたいメッセージ,の3つのバランスに意識して編集していました(タイトなスケジュールでこれを追求するのは難しい……).
2点目は,情報発信というものに対する考え方で,主には
に書いたようなことです.この意味で自分がいちばん思い入れのある仕事はやっぱり情報発信活動インタビュー(E1308,E1314,E1320,E1327,E1332)とそれに対する返答としてのCA1788なんだなぁと改めて.
3点目はいまの正直な(そして超ウェットな)気持ちをお話しました.出向中の2年間でそれなりに良い仕事をできたという自負はありますし,出向しなかったら得られなった経験を積むことができたと思っています.それは嘘じゃない.でもこの経験は,いまの,そしてこれからの仕事にどうつなげられるのかっていうと,よく分からない,というしかない.単に「2年間楽しかった」で終わらせたくないと思っていても,じゃあいったいどうしていったらいいのかっていうと,自信も展望もなにもない.数か月経っただけでも経験したものがずいぶん薄れてしまったという実感があって,焦っているわけです.まぁ,こんなもんですよ,というオチ無しの話.
そんな自分にいま突き刺さっているのはこの言葉.
協力事業で現場は変わらない。現場は現場の人の力でしか変えられない。現場を変えられないのなら、今まで身に付けたことはなんだったのか。と。エールをこめてつぶやいておく。
— Norihisa Yoda (@solrmame) April 1, 2013
発表が長引いたので質疑応答の時間が短くなってしまったのですが,「出向して自分がいちばん変わったと思うことはなんですか?」といった質問をいただきました.いちばん大きな変化は「◯◯に対して興味がなくなった」ということだと思うんですが,それはあまりにアレなので,「きちんとしたものを書くことの大切さを知った」とか「情報をパブリックに発信することに対して抵抗が薄れた」というようなお答えを返しました.佐藤さんからはあとでTwitterで
@min2fly んー、そうだなあ。書いてるひとたちの顔が見えやすくなった(と思う)、かなあ。いちばん大きいのは。
— HAYASHI Yutaka (@hayashiyutaka) July 18, 2013
と聞かれて,自分は「なかのひとをさらけ出す」のを始めのころから意識してたんだなぁと思いだしました.なんでだっけ……(別にカレントに限らない,仕事というものに対する自分の考え方かも).
#佐藤翔
土曜日には同志社大学まで出かけて,佐藤翔さんの発表を聞いてきました.
発表では生い立ちなど初めて聞くようなエピソードから(中学生のときの図書館デート自慢がさらっと挿入され……),彼が学部・大学院で行なってきた,そしてこれから行なっていきたい研究について,あるいは教育に対する想いについて語られました.対象となっているスパンは過去6年間というところでしょうか.個々の情報については断片的に見知っていても,こうして一本の線に沿って話していただけると改めて得られるものが多い.こういう発表,いいですね.開始直前に「#佐藤翔」というハッシュタグをてきとーに決めたわけですが,まさにそのタグにふさわしい発表でした.
2時間を超す発表でいちばん感じ入ったのは,博士論文の各章についてその内容を詳しく紹介していくという部分です.佐藤さんの研究活動には機関リポジトリという軸がはっきりとある一方で,それ以外にも多彩な研究をされてます.前者に限ったとしても,アクセスログ分析という手法をベースとしつつも,次から次へといろんな切り込み方を試みてこられたという印象があります.お話のなかでは,そのひとつひとつのピースがしっかりした研究目的と研究計画のなかにぴしっぱしっと位置づけられていき,ちょっとした興奮を覚えました(いや,まあ,ちゃんとした研究ってそういうもんですよね;).こんなふうにロジカルに仕事がしたい,しなきゃ,と羨ましい気持ちで眺めていました.
それ以外の多彩な研究を含めても,彼の研究活動にはどこか一本筋の通ったところがあるんじゃないかと思えてきました(ので,質問してみました).
うーん.なんか相変わらずいろいろなテーマに関心をお持ちのようだけど,それでもなにか一本筋が通っているような気もして,でもそれをうまく言葉にできないでいる. #佐藤翔
— HAYASHI Yutaka (@hayashiyutaka) July 20, 2013
(´-`).。oO(「人と資料とをつなげる」ということについて「環境」からアプローチしようとしている人、なのかなあ) #佐藤翔
— egamiday (@egamiday) July 20, 2013
@hayashiyutaka 「あなたの芯は?」 @min2fly 「ユーザとその利用に着目。その研究・分析結果を現場へ還元できたら」 #佐藤翔
— egamiday (@egamiday) July 20, 2013
このへんは江上さんがブログにうまくまとめておられるのでご覧ください.「そんな、実務者になると学術情報流通への興味を満たし続けられない、的なかなしいことを言わせてる場合じゃないですってマジで。」も印象に残るくだりでしたね.
年下でキラキラした才能を持ってる人を見ると嫉妬が先に立ったりする今日このごろですが,佐藤さんは,素直に,すっと見上げていられる存在だなぁと改めて感じました.