カレントアウェアネス-E No.271感想
ちょっと遅くなりました。今回は5+1本で、うち外部原稿が5本。
■E1629■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/11/20現在)
8月中旬〜11月下旬の3か月半ぶんの震災まとめ。
9月にNDLによる吉田家文書の修復が終了した。2012年10月に始まり、同館初となるFacebookページでその活動の様子が報告されていた。(NDLのウェブサイトのFacebookページ一覧には掲載されてないね……? 終わったから? 今は展示会のページがある。)
「思い出サルベージ」がグッドデザイン賞金賞を受賞。おめでとうございます。E1216で柴田先生にインタビューさせていただいたのが懐かしい。
国立文化財機構らの文化遺産防災ネットワーク推進会議の動きは重要だと思うのでメモ。
■E1630■ ウェブ展示「描かれた日清戦争」:アジ歴とBLの共同企画
アジ歴の平野さんとBLの大塚さんというすごいコンビ。ついでに英訳付き(事後英訳は過去にあったけど、こういうスタイルはカレント-Eでは初めて……?)。
アジ歴・BL日本部共催のウェブ展示「描かれた日清戦争~錦絵・年画と公文書~」の報告。BLの版画235点とアジ歴の公文書をセットで展示したもの。日清戦争当時の版画はプロパガンダ的性質を持つため、展示で配慮されているのはとにかく「中立性」。
- 英語での解説では中立性への配慮が十分に伝わらないため、アジ歴をパートナーとして知見を借りる。
- 錦絵だけではなく清国側のプロパガンダを含む年画56点もあわせて展示。プロパガンダ vs プロパガンダによる中和。
- 公文書という「記録」もあわせて展示することで、さらに中立性を心がける。
と、3重に配慮がされている。よくできたはなしだなあ。。それでもやっぱり中国の機関もパートナーに加えるべきだった、という声があったりするのかもしれないけど。
個人的には昨年から展示というと春画のことしか頭になく(結局日本では開催されなかったけど)、今月の日文研フォーラムは気になりすぎる。。
■E1631■ 米国の公共図書館における高等学校の卒業資格取得プログラム
今井さん。CC BY。
へー、そんな動きがあるんだー。知らなかった。公共図書館×MOOCsがちょっとだけ頭に浮かぶ。
なお,高等学校の卒業資格取得のためには先述のGEDが存在する。ただし,GEDでは英語や社会,理科,文学,数学といった主要科目の筆記試験をクリアする必要があり,キャリア形成とは関係のない試験対策を行う必要があるのに対して,COHSでは高等学校の卒業資格と職歴認定資格の取得が同時に進められ,キャリア形成を効率的に行えるという違いがある。
が肝かな。公共図書館による就職支援、と位置づけるほうがふさわしいのかもしれない。
これは米国における教育事情が分かってないと書けない記事(自分には無理)だなあと思う一方で、Career Online High School(COHS)ということばが何を指すのか、Galeとの関係はどういうものなのかが飲み込みづらく、もう少し丁寧に書いてほしかったという気もした。
調べてみると、
- Career Online High School < ed2go < Cengage Learning
- Gale < Cengage Learning
という関係にあるらしい。ということは、Cengage Learningというグループの子会社(?)であるCOHSとGaleが提携して提供しているプログラムってことなのかなあ。で、それを導入した公共図書館では“Career Online High School”という名称のまま提供していることもある(ので、記事中、COHSという略称が初出じゃないところに添えられているように見えるのはミスではない)。この理解が正しいならば、
これらのサービスは全てGale社と“Career Online High School”(COHS)が提携して開設されているプログラムである。
という表現は間違いではないにせよ、COHSはGaleと独立した存在という印象を与えてしまうので不適切ではないかと思ったのですが、なにか誤解してるでしょうか……?>今井先生
さとしょーさん。CC BY。
今年の“祭り”の企画側のおひとりからの報告。企画意図については、
日本国内で科学,研究のあり方を変えるような取り組みを行っている若手研究者にその活動を紹介してもらうとともに,図書館員と彼らの架け橋となる場を設けたいと考えた。(カレント-E版)
おもいっきり刺激的な話をした上で、「で、図書館関係でOAがどうこうって言ってる人々は、この世界についてこられるの? でもOAってこういう世界だよね?」って思いきり煽ろう!(ご本人ブログ版)
ということですね。同じことを言ってるような気もするし、そうでない気もするw
に書いたとおり、私もすみっこで聞いていたけど、正直ついていけない感はあった。ついていけないというか、自分たちがどう絡めるのか分からないというか。でもさとしょーさんの言うように、オープンアクセスを進めるというのはこういうことなんだろうなあ。それによって研究者の皆さんがハッピーになれるのならそれでいいのだけど、私はやっぱりNAIST・駒井先生の「オープンアクセス(オープン化)は研究者のいちばん大切な資源である時間を増やしているか?」という発言が刺さったまんま。
■E1633■ 研究者識別子ORCIDアウトリーチ・ミーティング<報告>
じゅりー。
でこちらのイベントもすでにレポート済みなのであんまり追加の感想はない。基調講演→研究者支援→助成機関という感じできれいにまとめられてるのに感心した一方で、自分がいちばん面白がった台湾の事例報告はきれいに抜かれていた。
冒頭の「多くの識別子が存在する現在及び増えていってしまうであろう未来においてORCIDの識別子(ORCID iD)が果たす役割と意義」と、締めの「ORCID iDと他の識別子とのリンクがどのような世界を可能にするのか,今後の展開が楽しみである」は、ふだんりんくとでーたりんくとでーたとIDたちと格闘しているひとならではの実感が込められているように思えた。
ひとつ、「ORCID de Ninja」じゃなくて「Ninja」が正式名称では。
次は12月11日。