カレントアウェアネス-E No.273感想

2014年最終号(ほんとーに、おつかれさまでした!)。5本すべて外部原稿。バラエティに富んだ、面白いラインナップでした。


■E1638■ 点字利用と読書に関するアンケート調査の結果について

日本点字図書館の杉山さん。

点字図書館というと「E1509 - 「点字図書館オープンオフィス」に込めた思い」を思い出す。このときの執筆者は館長の天野さんだった。オープンオフィスは2013年のこのときが初だったけど、今年も開催されたんだね(ポスターかわいらし。おぉ、黒柳徹子……)。

今回の記事は、点字図書館で行った利用者アンケート調査(実施は2013年)の概要報告。最初らへんで出てくる「視覚障害者の「点字離れ」」というなじみのない表現に興味をそそられた。調査は「点字図書の貸出実績のある利用者600人」を対象に *点字の* アンケート用紙で行われ、回答者は231人で、うち9割が点字図書を読むことができたという。

ここで、実際の視覚障害者における点字普及率のデータを引いても良かったんじゃないかと思う。門外漢なんだけど、厚生労働省の「身体障害児・者等実態調査」がオフィシャルな調査なんだろうか。平成18年度調査が直近で、表18「障害程度別にみた点字習得及び点字必要性の状況 」によると1割強という感じらしい。その前の平成13年度調査でも同じく1割程度だったので、そもそもそんなに普及してないんだなあ。アンケートの回答者は、視覚障害者全体からするとかなり偏った層だと言ってよさそう。

それはともかくとして、点字の読める方々が、点字図書と録音図書をどう使い分けているかというはなしはとても興味深かった。結果を見ていると、なんとなく紙と電子(ウェブ)の使い分けと近しいものがあるような気がした(実際、メディアの違いとしてはそういうことか。あ、いや、点字ディスプレイってものがあるか。。)。

点字図書の貸出量が減少傾向ではあるが,それは,単純に読者が減ったというものではなく,録音図書の利便性が向上し,利用者がうまく使い分けているという状況がある。

というかたちで、冒頭で挙げた疑問に回答を与えているけど、録音図書の貸出は増加傾向にあるんだろうか?というのが気になった。点字図書→録音図書へと一定のシフトが進んでいるのであれば、それはある種の「点字離れ」なのかもしれない。ただ、点字の読めるひとの点字離れよりも、そもそも点字を読めないひとが相対的に失っているであろうもの(が存在するのかどうかは分からないが)のほうが気にかかる。



■E1639■ 米国のウェブアーカイブの現状と課題

電図課の松原さん。

NDSAが米国内のウェブアーカイブ実施機関を対象に行ったアンケート調査報告書“Web Archiving in the United States: A 2013 Survey”の紹介。2011年来、2年ぶり2回目になるらしい。

そもそもこんなアンケートが成立するくらいに実績が豊かだということに驚く。92機関が回答していて、「大学等の教育機関」が52%というのもすごい。日本だとNDL以外にウェブアーカイブやってる機関はあるんだっけ……?

でも

たとえば,収集先サイトに対して何らかの同意を得るか否かは,収集については58%が相手先サイトに対し事前通知も許諾依頼も行っていない。これに対し,収集ロボットのアクセスをそのサイトが受け入れるか排除するかを記述する,“robots.txt”については,55%が遵守すると回答している。これは,前回調査の33%から20%の増加である。

を読むとけっこう雑だなあという印象を受けた。許諾はフェアユースでなんとかなるんだろうか(適当発言)。でもrobots.txtくらい守ろうよ。。

個人的にはArchive-Itの普及率に関心があったので、原文を見てみた(p.18)。

Archive-It remains the dominant external service among survey respondents, with approximately 70% (53 of 75) using the service in both 2011 and 2013.

回答館ベースだと半分以上がこれか。

ウェブアーカイブ事業の共通規格化・標準化が進む方向にあること。
技術的な面で言えば,WARCフォーマットやWaybackビューワーといった標準的な規格を採用する機関が目立って増加している。

という指摘は、こういったツールの収斂と無関係じゃないんじゃないかなあと想像する(けど裏は取ってない)。

内容とは関係ないけど、「”finding aids”(検索補助手段)」という訳に対してツッコミが入っていた。補助というよりは検索手段そのものというイメージを持っているけど、どう訳すのが適切なのかは私には分からない。ぐぐってみるとこう訳している文献もなくはないようだった。そういえば今月リニューアルしたばかりの日文研のOPACには「所蔵リスト / Finding Aids」というメニューがあった。



■E1640■ これからの福島の図書館を考える<報告>

福島県立図書館の吉田さん。

図書館総合展フォーラム「これからの福島の図書館を考える」の報告。二部構成で、ご本人も報告された第1部「福島県における図書館の今」と、第2部「避難指定区域の住民を受け入れている自治体の図書館について」に分かれている。

第1部では「全体の避難者数は県外避難より県内避難が多いのに対し,児童だけを抜き出してみるとその数字は逆転する」にふむふむ。また、刻々と変わりゆく避難の状況にあわせて、サービスも変化していかないといけない可能性があるということか。

第2部では会津若松市いわき市から報告があったらしい。いずれも、そんなに派手なことをやっているわけではなく、新しいお客さんが増えたからこれまでのお客さん同様にきちんと対応するという、自然なサービスをしているという印象を受けた。その自然さが自然に流れていったのは、

シンポジウムの中では,両市とも,震災以前から持っていた広域サービスに対する意識の高さと活動の素地が,スムーズな避難住民の受入につながったのではないかとする意見があった。

ということなんだなあ。



■E1641■ 来たるべきアート・アーカイブとは<報告>

よしまさん! このイベントに興味を持たれていたのは知っていたけど、まさかこうしてレポートが読めるとは……。

京都市立芸術大学芸術資源研究センター主催の「来たるべきアート・アーカイブ 大学と美術館の役割」のはなし。このイベントの情報を目にするまで、京都市立芸大にこんなセンターがあったことを知らなかったんだけど、2014年4月にできたばかりだったらしい。

アートアーカイブというテーマは、藝大に総合芸術アーカイブセンターなる組織ができたと知ったときからずっと気にしていた(はてブを見なおしたら2011年12月だった)。ただ、あまりにも情報がない。藝大のも、しばらくはサイトが学内公開で外からは様子が伺えなかった。ときどきアートアーカイブをテーマにイベントが行われるんだけど、開催地は決まって東京で、レポートらしいレポートも少ない。というわけで、今回のイベントのレポートがartscapeに載ったときも嬉しかった。

吉間さんの記事では、基調講演はすっとばして事例報告を中心にまとめている。慶應義塾大学アート・センター、国立西洋美術館情報資料室、国立新美術館情報資料室、京都市立芸術大学(藝大はなしか)。それぞれ読んでいると、まだまだこれからなんだな、という印象を持つ(安心する)。

自分はまだ、アートアーカイブというものがなにものなのか腑に落ちてない段階にいる。つまり、アートという領域に特有のエッセンスが存在するのかどうかが見えてない。ただ、アートも一般には、過去の文脈を押さえつつそれを乗り越えることで初めて評価の俎上に上がることができるものだと理解していて、アカデミアの世界と共通するものがある。そういう意味で、アートにおいてもアーカイブの存在は重要であることは間違いないはずで。体制うんぬんの問題は必然的に出てくるんだろうけど、いまはただ「なにをアーカイブするのか」という議論を楽しみたいという気分(なので慶應の記述がいちばんおもしろかった)。その次はたぶんアートアーカイブのLinked Dataが生み出すものにドキドキすると思う。

artscapeのレポートでは、後半のディスカッションでアーカイブの目的を設定することの是非について議論されていたようだけど、どうやったって権力性なんて出てきてしまうだろうよ、と思う。そこに自覚的である、という開き直り方しかないのでは。

しかしこれ、思っていたより難しい世界だなあ。。あの企画はなんとかなるのかならないのか。

# 最近、くるりがアーカイブスに乗り出して、call for 資料してましたね。
# https://note.mu/quruli/n/nbe9e65354036



■E1642■ 第25回保存フォーラム「続けられる資料保存」<報告>

資料保存課名義。

毎年恒例の保存フォーラムに今年は京大の古森さんが登壇ということでかなりびっくり(裏話は大根のひとに聞いた)。

京大の資料保存環境整備部会のはなし……とは書いてないな。「委員会型の組織(図書館業務改善検討委員会の一部会)」とぼやかした書き方になってる。あれ。古森さんのレジュメによると、図書館サービス部会に吸収されたんだ。あれ? 今年度から?

それはともかく古巣の話なので活動の概要は当然知っているわけだけど、「人事異動等によって人の入れ替わりがあることを前提としており」や「主体はあくまでも各図書館・室であり部会はそのサポートに徹すること,保存環境の向上と情報提供を部会の重要課題とみなし,個々の職員の修復技術向上は課題としないこと」を意識しているってことは知らなかった。えらいなあ。そんなふうにスムーズにサイクルをまわしてる/がまわっているという印象がなかった。。(資料保存にあまり興味がなくてちゃんと見てなかったせいかも。ごめんなさい。でも部会というのはどこもどたばたしているものだとばかり。。)

「個々の職員の修復技術向上」については研修担当の別の部会のほうでサポートするから(課題にしなくてもいい)、という点を添えないとちょっと誤解を招くような気はした。個々の職員任せにしているわけではない、はず。

改めて、パンダねえさんは偉大だなあと思いました。



次号、新年一発目は1月22日。

カレントアウェアネス-E No.272感想

今回は4本。うち外部原稿が2本。


■E1634■ オンライン資料の納本制度の現在(1)フランス

期待の新シリーズ。日本スタートでもいいのではと思ったけどE1464があるからということなのかな。

第一弾はフランス。音楽映像資料課の大沼さん。E1498も書かれていたのでフランス語のエキスパートなんだろう……と思ってちょっと調べてみたらとんでもなくすごい方だった。。こういう人材を擁しているのがNDLのすごいところ。ほんとに。

フランスではインターネット資料の納本はBnFとINAの2機関で担当している、という。ざっくりいうとインターネット配信のテレビやラジオについてはINA、それ以外はBnFという役割分担か。INAはほんとにユニークな機関なのでぜひぜひこの本を(珍しく書籍紹介)。

世界最大デジタル映像アーカイブ INA (文庫クセジュ)

世界最大デジタル映像アーカイブ INA (文庫クセジュ)

さて。BnFでは2006年から制度収集を開始。「.fr」だけじゃなく「.re」や「.nc」などのドメインも対象になっているのが面白い。年に一度の大規模収集と、選択的収集。収集したものはBnFの閲覧室で見られる(2008年〜)。これまでに収集したURLの件数は紹介されてなかったけど、2013年度で17億件ということだから100億件には達してないという感じなのかなあ。Internet Archiveは現在4350億ページのもよう(トップページに書いてある)。

NDLのeデポでは無償・有償の別とDRMなし・ありの別が大きなポイントだったけど、記事には

商用のウェブサイトにせよ,個人のブログにせよ,また有償・無償を問わず,広く「フランスのウェブサイト」全てが収集対象となっていると言うことができる。なお,この収集対象にはオンラインで配信される電子書籍も含まれる……

とあるので、そういう細かいことは考えなくていい制度らしい。けど、その電子書籍の部分がうまくいってないらしく、現在納本システムを開発中という。



■E1635■ 図書館でティーンの学びを育む「ラーニングラボ」(米国)

篠田さん。

米国の図書館や博物館のラーニングラボの動向を、“Learning Labs in Libraries and Museums: Transformative Spaces for Teens”というレポートにもとづいて紹介。

どこかで聞いたことがある気がして調べてみると、シカゴ公共図書館YOUMediaか。ここからIMLSの助成プログラムにつながったんだっけ。

名称も空間的特徴も(大学図書館の)ラーニングコモンズにそっくりだけど、

American Libraries誌によれば,ラーニングラボとは,「図書館で得られる活動や興味と,学校や将来のキャリア形成において役立つスキルとの接続を支援する場」とされている。

ラーニングラボは,“Connected Learning”という概念に従って設計されている。これは,興味に導かれ(interest-driven),社会とつながり,教育機会や経済的な機会を拡大するような学びの概念である。その成功に不可欠な要素として,「(ラーニングラボの計画や設計への)ティーンの参画」「メンター」「物理的な空間」の三つが挙げられている。

という説明を読むと、力点がちょっと異なるようにも思える。記事の他の箇所を読んでいても、同じかなあ、いややっぱりちょっと違うかなあ、の間をふらふらしてしまって考えがまとまらない。3Dプリンタなどの設備は「ラボ」という語感にフィットするけれど、そこは本質じゃないはずだし。ラーニングコモンズの一類型としてのラーニングラボ、という捉え方がいいのかなあ。



■E1636■ 第62回日本図書館情報学会研究大会シンポジウム<報告>

安原さん。こちらもラーコモ的な。

先日の学会のシンポジウム「学びの空間デザインとファシリテーション~図書館を活用した学習支援を考える~」の参加レポート。

シンポジウムの冒頭では,Pharrell Williamsの楽曲“Happy”にあわせて,同志社大学のラーニング・コモンズ(LC)での学生によるダンス映像が流れ,パネリストである同志社女子大学上田信行氏,玉川大学の河西由美子氏,三重大学の長澤多代氏,及びコーディネータである日本大学の小山憲司氏がリズムにのりながら登場した。

がとてもすてき。自分も勉強会の開始前にPerfumeのライブDVDをえんえん流していたことがあった……(一緒にするな)。

パネリスト3名によるスピーチ、パネルディスカッション、グループディスカッション、パネルディスカッションという全体構成が面白い。こういう流れだと内容もまとまることは期待できないし、

という感じだったのもうなづける。

ラーニングコモンズのはなしは大学図書館に閉じがちだけど、学校図書館サイドから河西先生が登壇されてるのが良いですよね。当然のことだけど、学生に深くコミットした学習支援というはなしなら大学図書館員より学校図書館員のほうがエキスパートだろうと思うので。とはいえ、アクティブラーニングやラーニングコモンズの一般論にはあんまり興味が持てないのですが……(大学によって異なる学生気質を無視して議論が進むと思えないので)。

河西さんの

子ども達は,書架をキャレルデスクの代わりに使用したり,飾られているオブジェを積み上げたり,デザインの意図を超えた使い方をしている。このように意図した以上のことが誘発されることも含めて「学び」と考えると,今考えられている図書館での「学び」とはとても小さいものなのではないかと河西氏は述べた。

と、上田さんの

図書館はLCのようなスタジオ型になってきているが,もう一歩進むと,ステージ型になる。学生が自分の言葉で作りあげ,人に伝え,人と協力しながら可能性を広げられるようになることは,大学の目標の一つである。そのために図書館をステージにしたいと上田氏は述べた。

は(ちょっとおおげさかもしれないけど)同じことを言っているように思える。その先にあるのは、学生さんたちが、ラーニングコモンズ(図書館)は自分が輝くための舞台だと思ってくれること、だろうか。良い意味での「図書館の私物化」、というのはちょっと言い過ぎかな。でも、そんな方向性。

その意味で、うちの図書館(場所はラーコモだけじゃないけど)で学生サークルが定期的にイベントを行っているのはいいなあと思ったりする。
https://www.lib.kyushu-u.ac.jp/ja/events/Quricon201412



■E1637■ CrossRef×JaLC合同ワークショップ<報告>

まさかの2週連続じゅりー。

先の総合展のJaLC主催フォーラムの参加レポート。申し込んでおきながら裏番組に行ってしまったのでありがたい。登壇者は、武田先生、Ed Pentz、Salvatore Meleのお三方。前号のE1633は識別子の役割と意義について、今回は利活用の事例と可能性についてという書き分けがされている。

ペンツ氏によれば,識別子が有効性を発揮するためには,識別子,標準的なメタデータそれを提供するサービスそのサービスを享受するコミュニティの4要素が全て揃う必要がある。これによって各識別子間の恒久的なリンクができ,識別子を活用することで新しいサービスが生まれ,ひいては研究の促進につながるとのことである。

これはさらっと読んでしまいそうになるけど、10年以上のCrossRefの経験にもとづいた重たいことば。

また,武田氏は,実在の人物ではなくてもORCIDの識別子を取得できてしまうが,ORCIDの参加機関であれば,ORCIDが提供しているAPIを用いて自機関に所属する研究者や教職員等の認証を行うことで,その存在を証明することができるため,機関が身元保証人となることが可能と説明した。

この部分が飲み込めなかったから動画を見た。10:13あたりが該当する。ORCIDの会員(有料)になっている大学は、所属研究者のORCIDのプロファイルに「Trusted」と表示するように(APIを使って登録)できるしくみがあるそうだ。まだあんまり多くの大学で使っているわけではないらしい。ORCIDのサイトで該当する機能を見つけられなかったのではっきりしたことは言えないけど、「APIを用いて」認証するわけではないのでは?

2番目の質問者が「CCCのような機関といっしょに仕事をすることはあるのか」と興味深い質問をされていたけど、時間の都合上カットされてしまっていたのが残念。



次号は12月24日。翌25日は編集企画会議のため関西館日帰り出張の予定。

カレントアウェアネス-E No.271感想

ちょっと遅くなりました。今回は5+1本で、うち外部原稿が5本。


■E1629■ 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/11/20現在)

8月中旬〜11月下旬の3か月半ぶんの震災まとめ。

9月にNDLによる吉田家文書の修復が終了した。2012年10月に始まり、同館初となるFacebookページでその活動の様子が報告されていた。(NDLのウェブサイトのFacebookページ一覧には掲載されてないね……? 終わったから? 今は展示会のページがある。)

「思い出サルベージ」がグッドデザイン賞金賞を受賞。おめでとうございます。E1216で柴田先生にインタビューさせていただいたのが懐かしい。

国立文化財機構らの文化遺産防災ネットワーク推進会議の動きは重要だと思うのでメモ。



■E1630■ ウェブ展示「描かれた日清戦争」:アジ歴とBLの共同企画

アジ歴の平野さんとBLの大塚さんというすごいコンビ。ついでに英訳付き(事後英訳は過去にあったけど、こういうスタイルはカレント-Eでは初めて……?)。

アジ歴・BL日本部共催のウェブ展示「描かれた日清戦争~錦絵・年画と公文書~」の報告。BLの版画235点とアジ歴の公文書をセットで展示したもの。日清戦争当時の版画はプロパガンダ的性質を持つため、展示で配慮されているのはとにかく「中立性」。

  • 英語での解説では中立性への配慮が十分に伝わらないため、アジ歴をパートナーとして知見を借りる。
  • 錦絵だけではなく清国側のプロパガンダを含む年画56点もあわせて展示。プロパガンダ vs プロパガンダによる中和。
  • 公文書という「記録」もあわせて展示することで、さらに中立性を心がける。

と、3重に配慮がされている。よくできたはなしだなあ。。それでもやっぱり中国の機関もパートナーに加えるべきだった、という声があったりするのかもしれないけど。

個人的には昨年から展示というと春画のことしか頭になく(結局日本では開催されなかったけど)、今月の日文研フォーラムは気になりすぎる。。



■E1631■ 米国の公共図書館における高等学校の卒業資格取得プログラム

今井さん。CC BY。

へー、そんな動きがあるんだー。知らなかった。公共図書館×MOOCsがちょっとだけ頭に浮かぶ。

なお,高等学校の卒業資格取得のためには先述のGEDが存在する。ただし,GEDでは英語や社会,理科,文学,数学といった主要科目の筆記試験をクリアする必要があり,キャリア形成とは関係のない試験対策を行う必要があるのに対して,COHSでは高等学校の卒業資格と職歴認定資格の取得が同時に進められ,キャリア形成を効率的に行えるという違いがある。

が肝かな。公共図書館による就職支援、と位置づけるほうがふさわしいのかもしれない。

これは米国における教育事情が分かってないと書けない記事(自分には無理)だなあと思う一方で、Career Online High School(COHS)ということばが何を指すのか、Galeとの関係はどういうものなのかが飲み込みづらく、もう少し丁寧に書いてほしかったという気もした。

調べてみると、

  • Career Online High School < ed2go < Cengage Learning
  • Gale < Cengage Learning

という関係にあるらしい。ということは、Cengage Learningというグループの子会社(?)であるCOHSとGaleが提携して提供しているプログラムってことなのかなあ。で、それを導入した公共図書館では“Career Online High School”という名称のまま提供していることもある(ので、記事中、COHSという略称が初出じゃないところに添えられているように見えるのはミスではない)。この理解が正しいならば、

これらのサービスは全てGale社と“Career Online High School”(COHS)が提携して開設されているプログラムである。

という表現は間違いではないにせよ、COHSはGaleと独立した存在という印象を与えてしまうので不適切ではないかと思ったのですが、なにか誤解してるでしょうか……?>今井先生



■E1632■ 「オープン世代」のScience<報告>

さとしょーさん。CC BY。

今年の“祭り”の企画側のおひとりからの報告。企画意図については、

日本国内で科学,研究のあり方を変えるような取り組みを行っている若手研究者にその活動を紹介してもらうとともに,図書館員と彼らの架け橋となる場を設けたいと考えた。(カレント-E版)

おもいっきり刺激的な話をした上で、「で、図書館関係でOAがどうこうって言ってる人々は、この世界についてこられるの? でもOAってこういう世界だよね?」って思いきり煽ろう!(ご本人ブログ版)

http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20141011/1413031534

ということですね。同じことを言ってるような気もするし、そうでない気もするw

に書いたとおり、私もすみっこで聞いていたけど、正直ついていけない感はあった。ついていけないというか、自分たちがどう絡めるのか分からないというか。でもさとしょーさんの言うように、オープンアクセスを進めるというのはこういうことなんだろうなあ。それによって研究者の皆さんがハッピーになれるのならそれでいいのだけど、私はやっぱりNAIST・駒井先生の「オープンアクセス(オープン化)は研究者のいちばん大切な資源である時間を増やしているか?」という発言が刺さったまんま。



■E1633■ 研究者識別子ORCIDアウトリーチ・ミーティング<報告>

じゅりー。

でこちらのイベントもすでにレポート済みなのであんまり追加の感想はない。基調講演→研究者支援→助成機関という感じできれいにまとめられてるのに感心した一方で、自分がいちばん面白がった台湾の事例報告はきれいに抜かれていた。

冒頭の「多くの識別子が存在する現在及び増えていってしまうであろう未来においてORCIDの識別子(ORCID iD)が果たす役割と意義」と、締めの「ORCID iDと他の識別子とのリンクがどのような世界を可能にするのか,今後の展開が楽しみである」は、ふだんりんくとでーたりんくとでーたとIDたちと格闘しているひとならではの実感が込められているように思えた。

ひとつ、「ORCID de Ninja」じゃなくて「Ninja」が正式名称では。



次は12月11日。

カレントアウェアネス-E No.270感想

ここ3か月ほど隔週ペースで飛行機に乗っていたけれど、そんな出張シーズンも終わり。同じく8月の頭ごろから運営に関わっていた某キャンペーンも、ぶじに終わり。やっと一息つけて、2014年もエンドが見えてきた感じ。残る大物は大学院の授業の準備かな。。


今回は5本中、外部原稿が3本。


■E1624■ トークセッション「本+(hontasu)空間 vol.1」

奈良県立図書情報館の乾さん。

奈良県立図書情報館のイベントで知り合ったひとたちが、同館を舞台にイベントを開く、図書館をメディアとして使う、というすばらしい流れ。本プラスαっていうことでこのネーミングなんだ。余白を、広がりを感じる。ほんたす、という響きもいい。相変わらずいろいろうますぎてぐうぐう。

まずは恵文社の堀部店長らをお招きしてトークセッションを開いたそうで。後半、本屋で雑貨(など)を売ることについて字数が割かれていたのが面白かった。

三つの書店に共通するのは,本を売るということはもちろん,現在では珍しくはないが,雑貨を売り,イベントを開催し,飲食も提供するということだろうか。(中略)出発点は書籍単体の利益率の低さと「本屋をやり続ける」ことを両立させるための苦肉の策だったという(中略)「本が売れるためには,一緒に何を売ってもいい」ではなく,来店するであろう人たちの動向を見据え,その人たちへのメッセージがこめられており

ちょっと恣意的に略したけど……。これに対する考え方はひとそれぞれで、本屋には本だけあればいいというひともいるらしい。でも、京都に住んでたころは週に何回も恵文社に寄り道して、生活館で雑貨を見るような生活をしていた人間にとっては、本屋に雑貨があるのはものすごく自然、としか言いようがない感じだったりする。

そこにある本とまったく関係のない雑貨が売っているわけでは、ない。本を見ていると雑貨が欲しくなる。雑貨を見ていると本も欲しくなる。そんな空間ができていればそれでいいじゃないか、と思う。少なくとも自分にとって恵文社というのはそういう空間だった。そういう空間になっていた。世の中には本しか置いてないような空間のほうがレアで、自分たちの暮らしている家だってそうであり、いろいろなものが置いてあるほうがその本と暮らす自分もイメージしやすいんじゃないかと思うんだけど、純粋に「本」が好きなひとはそう考えないのかもしれない……。

なお、乾さんについては2年くらい前にこんな記事を書いていた(未だにお会いしたことはありません)。



■E1625■ Linked Dataプロジェクトの実態は?:OCLCによる国際調査

橋詰さん。

OCLCがブログでまとめてたアンケート調査の紹介。ブログの執筆者はKaren Smith-Yoshimuraさん(いつかお会いしたい……!)。

記事の最後に「日本では,国立国会図書館国立情報学研究所を除き,実装レベルでLinked Dataに取り組む図書館はまだあまりないが」とあったけど、何かのMLでこの調査結果が流れていたときにまっさきに気になったのはNDLのプロジェクトが含まれてない点だった。

利用の多いデータセットで挙げられていた「米国賞牌協会のシソーラス(1~5万件/日)」が謎めいている。原文には

American Numismatic Society’s thesaurus of numismatic concepts used by archeological projects and museum databases with 10,000 – 50,000 requests/day

として、Nomisma.orgというサイトが紹介されている。ここで提供されているAPIを眺めていると、さまざまな貨幣(コイン)のデータ(重さとか)を入手できるものらしいけど……、このデータセットで何してるの??

また、「組織外の団体・機関が関与するプロジェクトも多く,外部機関の関与がないのは17プロジェクトだけである。」のところ、どういう外部機関が関与しているんだろう。Linked Dataでよく名前を見かけるZepheria社は最大手だろうけどどれくらい食い込んでいるのかな。



■E1626■ 学術書のオープンアクセスの実現に必要なものは(英国)

武田さん。

OAPEN-UKによる人文・社会科学分野の研究者を対象とした意識調査。レポートは4部構成で、書き手としての立場と読み手としての立場について分けてまとめているのが特徴的。また、最終章がオープンアクセスをテーマにしている。

しかしモノグラフに関する調査って、前もやってなかったっけ、、、と思ったらあれはOAがテーマの調査だった(E1372)。その調査は有効回答数が690件ってことを考えると、今回の2,231件はすごい。OAよりはモノグラフというテーマのほうが入り口として食いつきやすかったのだろうか。

また,学術書出版経験者の69%が博士論文をベースに出版をしているが,英国における博士論文のOAでの提出の進展にともない,出版社側が博士論文ベースの出版を拒否するのではないかとの指摘もなされている。

はいずこも同じ、という。でも、OAの博士論文をベースにしてOAのモノグラフを出版するんだったら、(著者からAPCさえ貰えれば)出版社的には別にかまへんのでは、むしろここはOAモノグラフしかない、といいかげんなことを思ったりした。

適用したCCライセンスを覚えていなかったり(10%),CCライセンスを使用したかどうかを覚えていなかったりするなど(25%),研究者が契約内容に無自覚である

は、質問意図がよく分からない。契約内容うんぬんのまえに、当のコンテンツを見たらライセンスが明記してあるんじゃないか……忘れたっていいのでは……?



■E1627■ 欧州文化遺産の電子化と公開,保存に関する勧告への対応状況

篠田さん。

ECによる、「欧州各国の文化遺産のデジタル化状況,デジタル化した資料のオンライン上での公開状況,デジタル保存の状況をまとめた報告書」というものすごいレポート。各国(「勧告が対象とする32か国のうち25か国」)が「2011年から2013年末までの勧告等への対応状況」についてまとめたレポートにもとづいて作成されたものらしい。「勧告では,加盟国に2年毎に対策の進捗状況を報告するよう定めており,今回が初めての報告」か。2015年までというスパンを念頭に置くと、中間まとめとして位置づけられるのかな。

報告書は、デジタル化の進行状況、パブリックドメイン資料のデジタル化および公開、著作権保護期間内の資料のデジタル化および公開、Europeanaの動向、デジタルプリザベーション、の5部構成。いろいろ聞いたことのあるプロジェクトが出てくる。

「2014年10月29日の孤児著作物指令の期限までに国内法で法制化されたのは,ドイツとフランスの2か国のみであったが」は知らなかった。

アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)が例に挙がっていて、むかし気合を入れて書いて評判の良かった記事「所蔵作品125,000点の高精細画像が無料でダウンロード・再利用可能、アムステルダム国立美術館がウェブサイト“Rijksstudio”を公開」を思い出す。また、先週、生貝直人さんとお会いしたときにアートアーカイブのはなしをしていて、Europeanaはほとんどアートアーカイブというようなこと(ちょっと違うっけ?)をおっしゃっていて、軽く衝撃的だった。



■E1628■ 第11回電子情報保存に関する国際会議(iPRES2014)<報告>

電図課・本田さん。

あいぷれす。前記事を受けて、デジタルプリザベーションネタ。

DNBでは,電子書籍・雑誌等を受け入れる過程において,2012年末からDRMを自動的に検出するツールを用い,長期保存に対するリスクが中から高程度のものについては,出版者に対してプロテクトがないファイルの再提出を求めている。

がとにかくすげえ。手間かけてるなあ。っていうか、当然全部自動化されてるのかな?(電子納本する際にエラーチェックで弾かれる感じ)

ANDSのくだりを読んで、研究データのデポジットは、まずはサイテーションの手段を確立するためのものという意味合いのほうが強いんだな、と当たり前かもしれないことを考えたりした。他のコンテンツはそうじゃない、のではないか。



次は11月27日(バドミントン大会の直前だ)。

カレントアウェアネス-E No.269感想

感想と感想の合間に何も書かなかった10月(下書きはいろいろある)。

今回は、5本中、外部原稿が1本。



■E1619■ 公共図書館でお金の借り方教えます:金融リテラシー教育支援

巻頭は篠田さん。

米国における経済不況を背景にした、米国消費者金融保護局(CFPB)と公共図書館の連携のはなし。9月に、CFPBが支援のための情報源をまとめたウェブページをリリースし、図書館側からもRUSAがガイドラインを出し、とまとまった動きがあったというのが今記事のトリガー。

ビジネス支援や健康情報サービスにつらなる流れ、なんだろう。こういうはなしではいつもそうだけど、連携相手として図書館が選ばれた理由(図書館以外ではだめだと *外部から* 判断された理由)がいちばん気になる。CFPB側は「図書館員自身が金融の専門家として教育を担うべき」だと無理目な期待をしているわけではないという。が、RUSAのガイドラインは「図書館のレファレンスサービスをより高度に展開するため,金融リテラシーに注目したもの」と紹介されていて、単に専門家への橋渡しをする以上のより踏み込んだことを目指しているように思えた。ガイドライン(未読)ではどのくらいまで手を出すのか適切かというようなことが書いてあるんだろうけど……。



■E1620■ Europeanaの2015-2020年の戦略:文化で世界の変革を

篠田さん2本目。

Eurpeanaの5か年戦略。2011年に出されたもの(E1148)がまだ記憶に新しいのだけど、もう次のが……。

冒頭の3つの行動原則(usable, mutual, reliable)を見て、Europeanaは、とにかくオープンにしたコンテンツを再利用してもらい、それによって社会的・経済的価値が生み出されることに重点を置いているんだなあと改めて。この姿勢を徹底できているサービスって、案外ない。後半では、Europeanaというプラットフォームを、「コア」「アクセス」「サービス」という3つのレベルに分けている。アクセスとサービスを区別するのが面白いな、というか、この内容でサービスって表現はいまいちピンとこないなあ。「ユーザ」とか「コミュニティ」とか言われたほうがしっくりくる。Europeanaというプラットフォームの上で、各プレイヤーが2次的なサービスを展開していってほしいというニュアンスなのだろうか。

(3)エンドユーザー(end-users),新規サービス製作者(creatives),文化機関の専門職(professionals)の三つの利用者グループを想定する「サービス」

第三の課題はサービスレベルに関するもので,三つの利用者グループ間で相互に価値が循環する「コモンズ(Commons)」を育てていくことである。

しかし「欧州の文化遺産3億件のうち,10%しかデジタル化されておらず,そのうちオンラインで利用できるものは34%,再利用されたものはたった3%であった」って、たった3%いうても100万件(≒3億 x 0.1 x 0.03)近いですやん……。そもそもどうやって積算したのか分からないけど。こういった再利用の状況を(事前申請を前提としない制度のもとで)機械的にトラックできることが必要だと思うんだけど、どうやったらよいのだろう。

順調そうに見えるEuropeanaだけど、予算大幅削減のはなしがあったのか。



■E1621■ ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2014)

福山さん。

毎度のDC-2014レポート、今年はテキサス。あのね、自分もポスター発表してきたということをちゃんと書かないと……。

今年のテーマは「メタデータの交差点:文化的記憶の島々をつなぐ架け橋」だったそうで、こちらもEuropeanaよりのネタ。

中でも印象的だったのは,情報資源の提供におけるコンテクスト(文脈)の必要性に対する認識の高まりと,そのコンテクストを提供する手段としてリンク可能な識別子が重要性を増していることである。

コンテキスト? 読み進めると、Europeana Data Modelにおける、文書館のメタデータの階層構造のはなしが出てくる。

これまで1つのレコードにパッケージングされていたメタデータを小さなパーツに解体していって、それらに識別子を振り、相互にリンクさせるという流れ。極論を言えば、記述の世界から、識別子と典拠とリンクだけの世界へ。BIBFRAMEも(RDFを念頭に置いているんだから)当初からそういう話をしていたと思う。そうやってばらばらになっていったときに、それらのつながりとしてコンテキストの持つ意味が重要になってくる、という話なのかな。

識別子が大切というのはそりゃそうで、その表現だとポイントが伝わらないのではないか。むしろ識別子を振る単位をどう考えるのかが大切だとと言うべきなんじゃないか(言い換えにすぎないと言われたら認める)。「また,データ構造やソフトウェアが変化しても,識別子は変わらない。したがって,技術や時代の変化にフレキシブルに対応して,永続的に利用することができる。」 本当にそうだろうか? 例えば世の中から数字が消えたら……というのは単なる与太だけど、識別子を与えるべき、あるいは、与えることのできる「単位」のほうは、技術や時代に応じて変わっていくのではないだろうか。過去に振られた識別子を使い続けることはもちろんできても、それが(歴史的な意味以外の)意味を失ってしまうことはありうるのではないだろうか。識別子の永続性というのは、いうほど盤石なのだろうかと、ちょっと思ったりした。



■E1622■ 論文のアクセス権・ライセンス権を表現する試み<文献紹介>

武田さん。

ダウンロードしたっきり読んでなかったんだけど、NISOのInformation Standards Quarterly誌の26(2)巻はOA特集だった。そのなかからAccess and License Indicators(旧Open Access Metadata and Indicators。まだドラフトだったんだ。2014年秋に最終版公開予定)という推奨指針の解説記事をコンパクトに紹介。

推奨指針に挙げられているメタデータの要素は、free_to_readとlicense_refの2つだけらしい。状況が混沌としてるからすごい複雑な仕様になるのかと思っていたので、正直拍子抜けした。あとはデータをしかるべきタイミングで入力して、きちんと流通させていけというだけのことなんだろう。

ひとつめのfree_to_readは「料金やその他の制限なしにオンラインで著作が利用可能」な期間(開始日・終了日)を入力する。ともに空欄の場合は「永続的なフリーアクセスである」か。

もうひとつのlicence_refはその名のとおりライセンス(例:Creative CommonsのCC BY)へのURIを入力する。以下の例(推奨指針の原文より)のように「エンバーゴ期間や権利内容の時間的変化に対応するため,参照する各々のライセンスに対して異なる開始日を指定することができる」。

<license_ref start_date="2014-02-03">http://www.psychoceramics.org/license_v1.html</license_ref>
<license_ref start_date="2015-02-03">http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/deed.en_US</license_ref>

ちょっと逃げた感じ。結局、ライセンスのURIからどういった利用(テキストマイニングOKとか)が許可されているのかを取得するAPIなりなんなりを別に用意するはめになるような。Creative Commonsだけで済むならほぼ決め打ちでいいんだろうけど、そうじゃないだろうし……。

そういえば、同じNISOのKBARTも、バージョン2でaccess_typeっていうフィールドが追加されていて、OA or Fのいずれかを選択できるようになっている(参考:ユサコニュース)。ここもKBART3(?)で統一されていくのかな。



■E1623■ 図書館によるテキストマイニングの研究利用支援<文献紹介>

ラストは安原さん。

Information Technology and Libraries誌から、コロラド大学の事例。

冒頭で、研究チームにレファレンスライブラリアンを派遣しってさらっと書いてある。その研究チームでは生物医学系の雑誌記事をテキストマイニングする必要があって、ライブラリアンがBioMed Cntral、PLOS、Wileyなどと個別交渉していった。その他の出版社も機械的なクロールをしたら「出版社側はこれを異常なダウンロードとみなし,キャンパス全体の資料へのアクセスが停止され」って、また地味に素人くさいオチを挟んできたな……。でもそれによって収集担当の別のライブラリアンの協力を得るきっかけができ、「XML形式の雑誌記事のフルテキストの大規模なコレクション購入のための契約フレームワーク」を作り上げるに至ったという。結果オーライ。なるほど、XMLデータだけを安く買ったのか……(対象タイトルは雑誌本体の契約はしてないの?)。で、次の契約更新のときには、ライセンスにテキストマイニングの条項を含めるというスマートな手段に。

そんなノリだから、CrossRef Prospectのはなしは出てこなかったんだろうなあ。

スピリッツには共感するけど、この契約フレームワークとやらはあんまり真似したくないな……。



次は11月13日。