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ファシリテーションの“本番”( #NIIウェブ研修 )

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九州大学中央図書館遠景



さて,

のラスト的なおはなし.



もう一週間経っちゃいましたが,NIIの学術情報ウェブサービス担当者研修(7/24〜26,九大会場)にファシリテーターとして参加してきました.

改称されているものの,昨年イチ受講者として参加した(そして足腰がガタガタになるくらい疲れきった)研修と同じものです.そのときの記録はこちらにあります.

この研修はざっくりいうと,約30人の参加者が6グループに分かれて新しいウェブサービスの企画を立てる,そしてその成果を発表する,というものです.講義の時間は少なく,グループワークに比重が置かれているのが大きな特徴です.発表の機会は計4回.最終発表についてはUSTREAMで中継/アーカイブも行われます.なお,各グループに割り当てられたテーマは年によって少しずつ異なりますが,今年は「大規模論文データベース」「MOOCs」「文献管理ツール」「ソーシャルメディア」「電子書籍」「学認」でした.

僕は第5班「電子書籍」のファシリテーターを務めました.過去2年間は大向さんのように教員クラスの方々がファシリテーターを担当されたのですが,今回,2013年度は,試行として過去の研修参加者からファシリテーターが選ばれることになったのです.6月にはNIIでファシリテーター向けの事前ガイダンスが開かれ,そこで担当する班を決めたり,ファシリテーションの心得みたいなんを教えてもらいました.

図書館関係の研修でもちょっとしたグループワークが用意されていることは珍しいことではなく,自分はそこでファシリテーター的な役回りを(意識的に)引き受けることが多いのですが,そういうのはいってみればプレイングマネージャー的な役回りになります.あるいは「ファシリテーター」という肩書きでイベントに参加したことも過去に2回ありますが,いずれも半日程度の短さでした.今回のように3日間みっちり,純粋にファシリテーションに徹するという経験は初めてでした.なかなかできない体験で,とても勉強になりましたし,何より楽しかったです.また,いちど受講生として参加した研修に立場を変えて再び参加するというのも有意義なことだと感じました.ここで考えたことや得たものを,少しでも言葉にして,刻みつけておきたいと思っています(しかし既にいろいろ忘れている).




意識したこと

今回はファシリテーターとしての目標を「自分のチームのメンバーみんなに自信と達成感を持って帰ってもらうこと」と定めました.まずはグループワークを積極的に楽しんでもらうことがいちばん大切.そして「自分たちの力でこれを成し遂げたんだ」という到達感を得てもらいたい.そのために足りないものを足し,余計なものを取り除く.それが3日間の自分の仕事かなと.

知らないものどうしのグループワークは遠慮もあって得てして予定調和になりがちです.そこは少しかき回したいという想いもありました.メンバーの良さを引き出したい.コミットが消極的になってるメンバーを引き込みたい.場合によっては自分がトリックスターを演じる必要があるかもしれない(ほんとはそういうキャラの or 意識的にそういう役回りをするメンバーがチームにいると良いのですが).




実際やってみて

全体としては,初日は強めにグループワークにコミットして,徐々に距離を取っていき(2日目からは完全放置の時間を導入).最終日は基本的に遠くから眺めているという感じでした.

仕事しろよっていう感じもありますが,“仕事”をしないことが仕事,みたいなところがあります.進まない議論を見ていると,どうしてもバンバン横から上から口を出したくなってしまいますが,それでは意味がない.距離の取り方が難しいというのは他のファシリテーターも始終口にしていたことでした.

テクニカルに気をつけたことは以下のような感じでしょうか.ファシリテーションの際にいつも指示していることも,今回最初から決めていたことも,その場で思いついたことも含まれています.

  • 「班」や「グループ」よりは「チーム」という言葉を使う(個人的好み)
  • グループワーク開始時や迷走し始めたときには「いまは何時までに何をするのか」を確認する
  • グループワーク開始時に発表者を決める(発表担当者のコミットが)
  • チームの設定を決めるように二日目最初に指示(大規模大学で,学部はこれくらいで,というような)
  • 意見を口で言うだけじゃなくふせんに書くように指示(指示する機会がいちばん多かった.意見は出ても模造紙は真っ白という状態は焦りを生むので)
  • 研修のベースである「VMSO」というフレームワークを繰り返し意識させる
  • ヴィジョンに沿わない戦略を排除し,戦略の実行がビジョンの実現につながるように意識させる
  • 発表では「自分たちは○○大学という設定でやりました」ではなく「わたしたち○○大学は」となりきるように指示

いずれも大したことじゃないですね.トラックを整備して,あとはチームのメンバーに思いっきり走ってもらうというだけ.“ゲーム”のルールを理解してもらい,それを楽しんでもらうというだけ.

グループワークのうち,初日に行われるものは,ファシリテーターも純粋にメンバーとして参加するという色が強いと思います.自分はそこで,2日目以降の議論が拡散するような/あるいは収束するような“毒”をいくつかしのばせました.そこはちょっとズルかな…….多かれ少なかれきっとみんなしてたよね.

昨年受講生だったときもそうでしたが,2日目,自分たちの提案する新サービスの「ヴィジョン(V)」と「ミッション(M)」を定めるという作業がいちばん苦労しますね.どうしても「うちの大学では……」のように“現場”の問題についての発言が多くなり,広がりが生まれてきません.思考が下のほうに下のほうに落ち込んでしまう.「VとMについては,自分たちのサービスでこうしていきたいという夢みたいなイメージでいいんですよ」と無理やり思考を上向きに,抽象的に促すことがしばしばでした.「例えばこんなもんでいいんだって」と僕の挙げたヴィジョンがいったん採用されてしまって「あかん,ファシリテーター失格や」と胃を痛めたりもしました(その後,ぶじ別のヴィジョンが据えられました).ヴィジョンとミッションの作り方については,もうちょっと講義の時間でサポートがあってもいいのかもしれない.たぶん我々,これがすごく苦手なんじゃないか.

最後の発表はうまくまとまったと思います.実は練習の時点ではひやひやするくらいの出来で,内心「うわ,まずったかも」と思っていたんですが,本番に強いメンバーのおかげで,生き生きと役になりきった発表になりました.お見事.最終発表の時間帯はほんま授業参観を見ている親みたいな気持ちで,立ち上がって室内をうろちょろうろちょろしてました.最終発表の順番を決めるためのあみだくじで一等を引いたのは特筆すべき成果だったかも.



反省点

ひとつめ

メンバーの顔つきが変わって,やばい,時間がない,と焦りつつも,とても楽しそうに,もう遠慮とかためらいとかなく,立ち上がって,ジェスチャーが大きくなって,どんどん声が出るようになったのは,最終発表も近づく3日目の昼ごろでした.

そろそろタイムオーバーかなと議論をやや強引にまとめにかかったことがあったんですが,あるメンバーから強めに「いや,」と反論があったのが嬉しかったです.あ,もう大丈夫だ.こうなったら自分のやることはないな.と,あとは遠くから(・∀・)ニヤニヤ眺めているだけでした.お昼食べに行く時間なんてないねえ,と,6班のファシリテーターである id:otani0083 とふたりで2チーム分のパン(あのパン屋さん美味かった……!)を買いに行ったりしてました.

そんなメンバーの姿を見ていて頭に浮かんだのは「当事者意識」ということばです.この意識を早めに持ってもらうこと.ファシリテーターの役割はそれに尽きるんじゃないか,と思いました.はたして自分はそこに貢献できていただろうか.こういった状態をもっと早く,例えば2日目午後に持ってくるようなファシリテーションはできなかったのか.あるいは,彼らをこの状態に到達させたのはあくまでタイムリミットであって,自分のファシリテーションではなかったのではないか.その点がいちばんの反省点というか心残りです.

とはいえ,何ができるだろう.


ふたつめ

もうひとつは,チームのメンバーがみずからファシリテーションする機会を奪ってやしなかったか,という点です.

今年は教員ではなく自分たち現場の図書館員がファシリテーターを務めたせいでしょう,どうしてもメンバーとの距離が近くなってしまったのだと思います.自分はかなり引いたポジションを心がけていたけれど,それでもやはりまだ近かったのではないか.

自分がチームを離れているときは,あるメンバーとあるメンバーのふたりがぐいぐいと議論を引っ張っていたように見えました.だからこのような心配は杞憂なのかもしれません.ただ,自分は見ていないので分からない……(不確定性原理か).




最後に

自分はファシリテーションというものが好きなのかもしれません.

打ち上げの席で @arg さんに「林さんは向いてるかも」と言われました(こういう何気ない言葉がひとを方向づけるんですよ.怖いですねー).歳のせいか,だんだん自分でやるよりも周りのひとに仕事を振ってかたちにしてもらうほうが楽しくなってきた感じとかあるんですが.たぶん僕は,みんなが得意なことや好きなことを生き生きとやって,それがひとつになって何かしらの成果になる,みたいなんが好きなんだと思います.それはもちろん,自分は,ほんとうは自分が得意な仕事をしたいんだという願いの裏返しなんでしょうが.まあ,プレイヤーを下りるのはまだまだ早いですよね.がんばろう.



片付けの最中,チームのみんなから寄せ書きをもらってしまいました(うるうる).これが今回の評価であり,勲章かな.

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